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NOVEMBER 2002 14
黙っていればメーカーは変わらない
――菱食、国分という二大卸がメーカーの共同物流事
業に着手したというニュースに、メーカー各社は戦々
恐々としています。 小売り段階のセンターフィー問題
がついに、メーカー〜卸間まで逆流してきた。 卸にセ
ンターフィーという名目で新しいマージンを要求され
ることになる。 メーカー側はそう受け取っているよう
です。
「それは我々の認識と全く違いますね。 我々の狙い
は非常に単純です。 流通の片方に生産者がいる。 もう
片方には消費者、小売業さんがいる。 そして卸がその
中間にいる。 それをトータルして、流通と呼んでいる
わけです。 しかし、流通の実態を見ていくと、そこで
踊っているのは卸と小売りだけであって、メーカーは
流通の土俵にすら上がっていない」
「一年三六五日稼働しろ。 欠品率はこのレベルを守
れと、小売業さんから卸には今日、様々なニーズが上
がってきています。 それに対応することで小売業のニ
ーズを満たそう、顧客満足度を高めようと我々は一生
懸命になっている。 ところが、もう一方のメーカー側
を見た場合には、いまだに過去の流通のしがらみが非
常に根強く残っている。 生産者起点だった時代の仕
組みを今も維持しようとしている」
「実際、我々が三六五日稼働しているのに対して、メ
ーカー側では土日祝日、ゴールデンウイーク、お盆休
み、年末年始など、平気で休んでしまう。 今年の年末
年始はなんと九連休だそうです。 その間、発注は受け
付けない。 我々卸にとっては考えられないことです。
実際、そのしわ寄せを卸は被っている。 これに対して
卸が黙っていれば、要求が来ないのをいいことに、メ
ーカーは一向に変わろうとしないでしょう」
――しかし、メーカーにとっても今や物流は大きな経
営テーマになっています。 生産者起点の「プッシュ型」
から、消費者起点の「プル型」へのモデルの転換も課
題として強く認識されている。
「確かに一部のメーカーは流通問題に真剣に取り組
み、我々の事情もよく理解して下さる。 しかし、その
一方でオンライン発注にさえ対応できないメーカーが、
まだいくらでもある。 そのために我々は電子化された
データをわざわざファクスに落として発注するなどと
いうムダなことをしている。 メーカーがオンライン発
注に対応できれば、そんなことをする必要はないわけ
です」
――加工食品業界でもメーカー同士の共同物流が一部
では既に始まっています。 わざわざ卸がメーカーの物
流共同化を主導する必要が本当にあるのでしょうか。
「私の見る限り、加工食品メーカーの共同物流はメ
ーカーの都合しか考えていません。 例えば我々は顧客
である小売業さんの店内オペレーションを合理化する
ために、店舗レイアウトに合わせて通路別・ゴンドラ
別に商品を納入しています。 同じ理屈で言えば、メー
カーも我々卸の倉庫レイアウトに合わせて商品をパレ
タイズして納品してくれてもいいはずです。 そうなれ
ば、我々の倉庫オペレーションは合理化される。 また
メーカーの納品精度が正確であれば、検品も不要にな
る。 さらに要求するならば、各メーカーがバラバラに
卸に納品にするのではなく、我々卸が小売業に対して
実施しているように、各メーカーが荷物をまとめて一
括して納品して欲しい」
「そのように卸のニーズを満たすために、共同物流
センターを作るという発想が、本来はメーカー側から
出てこないとおかしい。 しかし現実にはそうなってい
ない。 だったら、我々と国分さんで一緒にそうした形
「メーカーを流通の土俵に乗せる」
国分と菱食という加工食品業界の2大卸がメーカーの共
同物流を主催する。 今年8月、2社は合弁で「フーズ・ロジ
スティクス・ネットワーク(FLN)」という共同物流会社を
設立した。 現在、同社は共同物流への参加をメーカーに広く
呼びかけている。 その狙いはどこにあるのか。
菱食 市瀬英司常務
Interview
15 NOVEMBER 2002
を作っていこうということになったわけです」
――メーカーの物流が共同化されることのメリットと
しては、先ほどの「休み」の問題が一つですね。 メー
カーが休めば、その分の在庫を卸が負担しなければな
らない。 正月休みが九日であれば、九日分を余計に持
つ必要がある。
「そうです。 そこを『フーズ・ロジスティクス・ネッ
トワーク(FLN)』では毎日受注する。 メーカー側
で設定している最低発注ロットの制約も解消できる。
それだけ卸の在庫負担は軽くなる」
まずは二〇〜五〇社の参加を目指す
――FLNの説明会には主だったメーカーが全て参加
していたようですが、大手も含めて全てのメーカーが
FLNの対象になるのですか。
「それは難しいでしょう。 第一号となる北関東拠点
の倉庫スペースは五〇〇〇坪強に過ぎません。 大手メ
ーカーであれば数社で満杯になってしまう。 共同化に
ならない。 やはり対象は中堅以下のメーカーです。 少
なくとも二〇社から五〇社ぐらいのメーカーが参加す
る共同化でないと、大きな効果は見込めない。 当面は
共同倉庫に保管する在庫を一週間程度に抑えて、ク
ロスドックのTC型で仕分ける機能をメーンにしない
と上手く回らないでしょう」
――確かに輸送ロットのまとまる大規模メーカーには
共同化のメリットはなさそうです。 となると零細メー
カーから中堅までが対象になる?
「ただし極端に扱い規模の小さいメーカーばかりで
は、オペレーションが複雑化し過ぎる可能性もある。
我々は慈善事業を始めるわけではありません。 対象と
なるメーカーは必然的に決まってくる」
――本来は共同倉庫にフルラインで在庫できたほうが
いいのでは。
「理想論を言えばそうですが、そのためには数万坪
の倉庫が必要になります。 現実的ではない。 将来そう
なる可能性はあっても当面は無理です。 何しろ初めて
の取り組みですから、最初からあまり高いハードルを
掲げても成功しない」
――FLNは純粋な物流業者であって帳合いは発生し
ませんね。 つまりメーカーがFLNという物流会社に
在庫管理を委託する形です。 その時の委託料はどうや
って決まるのですか。
「従来、メーカーで発生していたコストより安く設
定する。 しかも、顧客である卸の満足度は高くなる。
そう設定すればいいのですから、単純な話です」
――しかし場合によっては従来より高くなってしまう
かも知れない。 それをメーカーは恐れている。
「仮に高くなっても、当社側のオペレーションにメ
リットが出るのであれば、そこは卸価格自体を上げる
ことで相殺することだってできる。 また卸側ではFL Nで実現した納品形態を、その後の小売りに繋がるオ
ペレーションのプロセスのなかで、どう活かすかとい
うことが問われてくる。 その辺りは実際に動かしてみ
ないと分からない部分がある」
――メーカーは既に倉庫を持っています。 それに対し
て新たにFLNを使うことになれば、拠点が分散して
しまう。 そのままではコストアップになってしまう。 既
存の倉庫を閉鎖するぐらいしないとFLNによるメー
カーの物流効率化は実現しないのでは。
「それはメーカーさんが判断する問題です。 倉庫の
閉鎖といってもメーカーさんには、それぞれ事情がお
ありでしょう。 そこまで卸が口を挟むわけにはいかな
い。 しかし最終的には効率の良いほうへと自然に収れ
んされていくことになると思います」
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