ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年11号
特集
卸が描く日本の流通 持ち株会社は合併への一里塚

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2002 22 ――今年四月にダイカ(東日本)、伊藤伊(中部)、サ ンビック(九州)が持ち株会社「あらた」を発足した ことで、日雑卸業界は年商四〇〇〇億円弱のあらた とパルタックが並び立つ二強時代に入りました。
「全国ネットをする日雑卸が二社体制になったとい うことは言えるでしょうね。
あとは関東の中央物産と か、関西の共和グループなどもいますが、彼らの活動 は地域に限定されていますから」 ――あらた発足の経緯は? 「九八年四月にユニ・チャームの代理店会が東京で 開かれ、私も参加しました。
その翌日、名古屋でホー ユーという染毛剤メーカーの社長交代披露に出席した のですが、たまたま私と伊藤伊の伊藤社長、サンビッ クの瓜生社長が、同じ名古屋行きの新幹線に乗り合 わせたんです。
もちろん以前から親しい間柄だったの ですが、このとき三人の座席が偶然、横並びになった」 「ちょうど当時は、日本で長らく禁じられていた持 ち株会社の解禁が話題になっていました。
そこで私が 彼らに一緒に持ち株会社の研究をしてみないかと持ち かけたところ、二人とも面白そうだと興味を示した。
ただし当社はすでに上場していたのですが、二社は株 式公開の準備を進めているところだった。
『三社が株 式公開を終えた時点で、もう一度よく考えよう』とい う話になったんです」 ――そのときは、そこまでで終わったわけですね。
「その後、一昨年の九月に伊藤伊が、昨年三月にはサ ンビックが株式を公開。
このときサンビックの瓜生さ んが、そろそろ例の話をしないかと声をかけてきたん です。
そこで昨年の四月二五日に、とあるメーカーの 会合の後で三人揃って抜け出して話をしたのが、初め ての本格的な検討会です。
それから何回か会合を重ね て話を詰め、三カ月後の七月一六日に発表しました」 ――九八年に新幹線のなかで話をしたときから、いず れ全国化は避けられないと確信していたのですか。
「ダイカが、タナカと富士商会の二社と合併したの がちょうど九八年です。
これによって東日本一円のネ ットワークはできたのですが、やはりそれだけでは中 途半端だった。
いずれは全国卸にならざるを得ないと 考えていました。
しかし、自分たちだけで全国にネッ トワークを拡大していくのは、時間もかかるし、金も かかる。
この点については、伊藤伊もサンビックも同 じような認識を持っていました」 過去のしがらみをゼロリセット ――あえて持ち株会社という形態をとった理由は。
「従来のダイカは、対等合併といいながらも実質的 には吸収合併を繰り返してきました。
しかし今回ばか りは、ダイカのやり方にすべて右へ倣えしてくれとい うわけにはいかない。
それぞれに経営規模が大きいし、 地域のナンバーワンとしてやってきたプライドもある。
これまでのようにはいきませんよ」 ――となると持ち株会社の解禁というのが、三社にと ってはタイムリーだったわけですね。
「その通りです。
実は私は持ち株会社の解禁が最初 に話題になったときから、勉強会などに出席して研究 を続けていました。
ただ当初は法律が未整備で、税制 上の問題などが少なからずあった。
それがだんだんと 法的な整備も進み、みずほグループのような事例が出 てきた。
タイミング的にはいいなと思いました」 ――しかし、二〇〇四年四月には、再び合併を含めて 抜本的な見直しをすることも明言しています。
「最初に話し合いをしたときから、私は『二年後に 再編成して完全に一つの会社になろう』と強く主張し てきました。
持ち株会社を作り、その下に各社がある 「持ち株会社は合併への一里塚」 今年4月、日雑卸業界2位のダイカと、同4位のサンビッ ク、同5位の伊藤伊の3社が持ち株会社「あらた」を発足。
2年後の合併を前提に経営を統合した。
ここに四国の徳倉 も加わり、あらたはパルタックに並ぶ全国卸として名乗り を上げた。
ダイカ大公一郎社長(あらた理事長) Interview 23 NOVEMBER 2002 状態は確かに居心地がいい。
それぞれに社長がいて、 役員もたくさんいる。
それでもいいのかもしれません が、間接コストの引き下げや、全社が一体になって仕 事をするという意味ではメリットを出しにくい」 「もう一つは、三社とも合併を繰り返してきた過去 の経緯があるため、多かれ少なかれしがらみを抱えて いる。
過去に合併した会社の社長さんは、みんな役員 になっていますからね。
これを一度すべて白紙に戻し、 まったく新しい会社として適材適所や、ネットワーク を追求したいという意図があった。
だから持ち株会社 の契約書を締結するときに、とにかく二年後には『分 割・合併』するという一文を入れてしまったんです」 ―― 「合併」は理解できますが「分割」というのは、 どういう意味ですか。
「合併だけでもよかったのですが、場合によっては、 ある部分を分割して社外に出すとか、子会社になって いる部分を中に入れるケースもあり得ると考えたため です。
もっとも、どういう形態にするかを最初に決め たわけではありません。
当初は地区ごとに会社を作ろ うか、なんて案も検討したぐらいですよ」 物流は流用・情報システムは再構築 「結論としては、全国を八支社に統合する方針に落 ち着きました。
現在ではダイカ、伊藤伊、サンビック の三社に、四国の徳倉を加えた四社になっているわけ ですが、あらたの本社を東京に置き、全国を八支社 (北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州) で管理します。
まだ変わる可能性もありますけどね」 ――物流や情報システムはどうしますか。
「まさに今、詰めている段階です。
現在、あらたの 本社は東京都港区にあるのですが、社員はまだ三人し かいません。
これが二〇〇四年四月には、下手したら 一〇〇人くらいの規模になっているかもしれない。
執 行部も東京に移し、情報システムや物流、総務人事 といった機能を集約するつもりです。
四社が現在、本 社としているところは、各地の支社になるはずです」 ――情報システムの統合だけでも三、四年はかかると みているようですね。
「各社が四通りのやり方でやってきたわけですから、 これを統一するのは簡単ではありません。
ですから既 存のシステムとは別に、まったく新しく一〇〇%オー プンな分散処理システムを構築する方針で、外部のコ ンサルタントも入れて検討を続けています」 ――物流も各社がそれぞれに高度化してきました。
「物流センターを統一する必要はないんです。
イン ターフェースを変える部分はありますが、マテハンを 動かすシステムは基本的に従来通りでいきます。
今度、 『神奈川物流センター』というのを作りますが、ここ を動かす情報システムにはダイカの筑波センターで使 用中の『DARWIN2000 』を使います。
新システムの完成を待ってはいられませんからね」 ――中間流通の機能として、汎用型と専用型のどちら を追求しているのでしょうか。
「基本的には汎用センターです。
汎用であれば全体 としてのスケールメリットを追求できるし、在庫回転 率もよくなる。
卸の良さを活かすためには汎用センタ ーの方が有利です。
もっともコンビニエンスストアの 場合だけは、専用センターでやらなければ上手くいか ないと思いますがね」 「あらたとしては、まず汎用センターに取り組み、専 用センターはケースバイケースで考えます。
すでにダ イカはイトーヨーカ堂の専用センターをやっているし、 サンビックも一部でやっています。
伊藤伊もユニーの ためにやろうとしている。
要は採算の問題です」 ダイカ本社 徳倉本社 サンビック本社 あらた本社 伊藤伊本社 ●4社でほぼ全国をカバーする「あらた」の物流ネットワーク ダイカグループ 伊藤伊グループ サンビックグループ 徳倉グループ 重複エリア ※(株)ダイカ、(株)伊藤伊、(株)サンビック  と業務提携しております。

購読案内広告案内