2001年7月号
SOLE

Webでロジスティシャンを育成

JULY 2001 78 ロジスティクス学会(SOLE)は ? Logistics Spectrum 〞という機関誌を発 行している。
今回は、この雑誌から「インタ ーネット経由のロジスティクス・エンジニア リング学習:ユニークな遠隔教育の経験」 (?Logistics Engineering 〞 Through The Internet :A Unique Distance Education Experience )という論文を紹介する。
著者はBenjamin S. Blanchard, Lisa J.McCade, and Larry H.Wolfe である。
はじめに 一九六〇年代から普及しはじめた遠隔教育 は、その後、目を見張るような発展を遂げて きた。
仕事のかたわら自分の固有スキルを向 上させたい人や、勤務場所や学校の所在地の 関係で学習の機会を得られずにいる人に、コ ースやアカデミック・プログラムを提供する。
それが遠隔教育の基本的な狙いである。
その具体的な手法は、次のように分類でき る。
?主に週単位で教員が移動し、そこで実際に 行う教育 ?衛星テレビジョン(ビデオ、オーディオ)経由 ?通信ケーブル(VITEL/PICTEL) 経由 ?インターネット(Webベースのインストラ クション)経由 ?上記の各手法の組合わせによる教育 最初の三つは一般的で、特に八〇年代以降 は各地で行われてきたものだ。
そして近年の インターネットの普及と電子商取引の発展は、 遠隔教育の可能性を大きく拡げつつある。
本 論 文では、ネット経由の「ロジスティクス・ エンジニアリング」コースでの経験を報告する。
ホームページで教材を提供 ポートランド州立大学(=PSU、米国オレゴン州)では最近、「システム・エンジニア リング」のマスターを目指す学生のための遠隔 プログラムを立ち上げた。
ロジスティクス・エ ンジニアリングの領域も充実しているこのコー スは、?WebCT〞というソフトウエアを用 いてインターネット経由で提供されている。
ここで言うロジスティクスとは、システムの 取得から配送、維持管理、システム支援に至 るライフサイクル・アプローチまでを含むもの と定義されている。
具体的に同コースでは、ロ ジスティクス入門、測定、システム・エンジ ニアリングのプロセス、支援性分析、ロジス ティクスならびにシステムのライフサイクル (システム設計と開発、生産、システム運用、 システムの退役と資材 のリサイクル/廃棄)、 ライフサイクルの各フェーズにおける支援活 第4回 Webでロジスティシャンを育成 79 JULY 2001 動の管理――などの領域をカバーしている。
配送とかサプライチェーン・マネジメントに 関することも述べられてはいるが、このコース の特徴は、自動車などのシステム製品に適用 されるライフサイクル・アプローチにより重点 を置いている点である。
「ロジスティクス・エンジニアリング」コー スの第一回目は、PSUの春期(二〇〇〇年 三月〜六月)に開催された。
受講者の所属は 様々で、米国とそれ以外の六カ国(イタリア、 中国、メキシコなど)から二十一人が参加。
コ ース管理者は米バージニア州在住のリサ・マ ッケードが務め、同じくバージニア州のベン・ ブランチャード教授が指導にあ たった。
九〇年代にブリティッシュコロンビア大学 で開発されたWebCTというソフトウエア は、教育プロセスを支援するための機能を豊 富に備えている。
まず学生は「ウエルカム・ ページ」という機能によってコースの概要を 理解し、続いてホームページ(HP)から教 材にアクセスして必要なインフォメーションを ダウンロードする。
そのなかの「講義摘要」というアイコンを クリックすると、コースの説明、目的、評価 基準などを調べることができる。
次に「インス トラクター/学生のHP」を覗くと、学生、イ ンストラクター、管理者の紹介がある。
参加 者間のコミュニケーションを良好にするための 工夫である。
「学生ガイド」ではコースの構造やWebCT の操作方法が示し、 また「コース内容」とい うコーナーでは学習モジュールと宿題を与え る。
「コースイベント」の内容を閲覧すれば、活動日程や宿題の締め切りを確認することも 容易だ。
ホームページには、ロジスティクス学会(S OLE)のニュースレターや、ロジスティクス 関連参考書(一七〇項目)もリンクされてお り、知識の幅を拡げるための糸口を探ること ができる。
コミュニケーションを支援するため の「チャット」(インストラクターや学生が同 時に参画しコミュニケーションする)や「掲 示板」などの機能も豊富だ。
結果として、この「ロジスティクス・エンジ ニアリング」コースの評価は高かった。
コース は集中的で当初、予想されていた以上にイン ストラクターと学生の双方 に努力を求めるも のだった。
挑戦的な試みだったが、全体とし てよい経験になったと評価されている。
インストラクターからのコメント 最近の電子商取引の進展とインターネット の普及は、世界中の学習希望者が時と場所を 選ばずにロジスティクス教育を受けることを 可能にした。
実際、コースでは学生が遠隔地 にいても、何ら困難を感じることはなかった。
このような取り組みは今後も進めるべきで ある。
そのためにも、まずはインストラクター が必要な技術に馴染み、そこで何ができるか を知ることが肝要だ。
そのうえでコースの目 的を明確にし、Web上で利用する教材を開 発する。
私の場合はまずWebCTを習得し てから、九九年九月に教材の準備にとりかか り、約三カ月かけてコースを開発した。
かつ て衛星テレビや双方向ビデオなどを利用する 教育を手掛けた経験があったため若干、有利 だった面はあるが、インターネット経由での教 育は私にとっても初めての経験。
手間取る事 も少なくなかった。
また、コースを開発するためには完全な「チ ーム・アプローチ」が欠かせないことを私は学 んだ。
コースをスタートさせる前、あるいはコ ースの立ち上げ期間に、WebCTに慣れて いなかったり、技術的な問題を抱える学生か ら多くの質問や支援 要請があった。
こうした とき私はコース管理者に助けられ、そのコー ス管理者もまた、大学などに所属する技術スタッフによる支援インフラに支えられていた。
コースでの仕事は、ほとんどフルタイムで取 り組む必要があった。
私はメールや掲示板機 能、電話、ファクスなどを頻繁に利用するこ とにより、学生との良好なコミュニケーション を築くことに務めた。
学生に与えた宿題への 回答は、まちまちの時間に、異なったフォー マット(ワープロソフト、表計算ソフト、プレ ゼンテーションソフトなど)で送られてくる。
それらをレビューし採点して、結果を二四〜 三〇時間以内に学生に戻す。
このやり方は仕 事を増やし たが、私としては可能な限りベス トなサービスを提供し、学生の信頼を最大に したいという狙いがあった。
奇妙な話だが、目の前の学生に教えるとき よりも、今回の遠隔教育では学生をより身近 JULY 2001 80 に感じることができた。
これは恐らく、最初か ら良好なコミュニケーションを交わそうという 意識的な努力があったためだろうと理解して いる。
コース管理者からのコメント 全体の流れを円滑にするためにも、コース 管理者はできるだけ早い段階から参画すべき だ。
今回の取り組みでは、コース登録や立ち 上げに多くの手間がかかった。
登録手続きは 長い時間を要する作業である。
我々は学生ご とに手続きの内容を確認し、彼らのオンライ ン・アクセスを軌道に乗せ、さらには大学の 卒業記録をレビューする必要があった。
いざコースが開始されると、今度はソフト ウエアの問題や技術上の質問、一般的な欲求 不満を解消するためのコミュニケーションが 欠かせなかった。
学期の終了時に行 うオンラ インでの最終試験には三時間という制限時間 がある。
しかし、技術上の問題が少なからず あって、モデムが遅いとか、ブラウザーの問題 とか、JAVAスクリプトのエラーなどのトラ ブルが頻発した。
学生が快適な体制を技術的 につくるだけでも多くの困難がある。
学生を支援するコース管理者は、必要な技 術を十分に理解する必要がある。
もっとも、今 回は学生の協力を得られたこともあり上手く いった。
海外から参加した学生について、技 術上の問題がわずかしかなかったことは驚嘆 に値する。
地理的に遠く離れていても「チー ム」として活動することが可能だという発見 は、遠隔教育における非常に有意義な経験と いえる。
学生からのコメント 私は、メキシコから参加した六人グループ のリーダー役を務めた。
コースが立ち上がる 早い段階から参加したが、インストラクター と同様、学生も早い時期からかかわることが 重要だと感じた。
WebCTを使いこなすに は、ある程度の習熟が求められるためだ。
遠隔教育では、学生が質問に回答したり、宿 題や問題をインストラクターに返す際には、時 間的な余裕を持たせるべきだ。
幸いWebC Tのフォーマットが柔軟だったため、多くの 学生は便利なポータブル・コンピュータを用 いて上手くコースをこなしていた。
全体的に、学生 はこのコースは役に立った と感じている。
提供される教材は有用だし、イ ンストラクターならびにコース管理者からの支 援も、学生がコースをこなす上で有効だった。
こうした取り組みを続けることにより、ロジス ティクス領域における更なる発展が見込める はずだ。
まとめ インストラクター、コース管理者、学生の 各参加者から見て、この遠隔教育システムは 大きな成功を収めることができた。
この活動 を通じて、参加者の多くはすばらしい経験を した。
電子商取引やインターネット技術の進 展は、このような手法による教育の可能性を 大きく広げる。
こうした遠隔教育は世界中どこから参加し ても、チームアプローチが可能な素晴らしいコ ミュニケーション・プロセスである。
このプロ グラムは驚くべき速さで広まると予想され、学 習意欲のある人に無限の機会を与えることに なるだろう。
SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開催して いる。
五月のテーマは好評の「現場見学」で、富士写真 フイルム(足柄工場)の見学会に二五人が参加した。
同 工場はレンズ付きフイルム(LF)「写ルンです」の生産 工場であると同時に、リサイクル、リユース、リデュース のいわゆる3Rを目指す?循環生産工場〞でもある。
工場の概要説明を聞いた後、循環生産システムの現場 を案内してもらった。
その後、最後にシステムについての 解説を聞いたのだが、すべての参加者が深い感銘を受け ていたようだ。
参加者の感想をいくつか紹介しよう。
「いままでのわが国のリサイクルといえば、手分解、手 選別を中心とす る人海戦術が頭にあった。
しかし、足柄 工場では回収されたLFの仕分け、分解、清掃、検査、補 修、組み立て製造をすべてが自動化している。
ラインを見 て驚いた」 「シンプルで分かりやすいこのシステムは、循環型モデ ルの一つの到達点に思えた」 「メーカーの方針として循環生産を掲げ、設計段階からリ ユースを考慮している点が革新的だと感じた」 「世の中で言うリサイクルが低レベルに見えてくる程、見 事に循環型になっている」 SOLE東京支部についてのお問い合せ、ご意見は sole_consult@jmac.co.jp まで。
東京フォーラム報告 81 JULY 2001 Q1 アベイラビリティ(即応性)を構成する関数として正し いのはどれでしょうか? a.信頼性と支援性 b.信頼性と保全性 c.信頼性と故障率 d.信頼性と信頼性配分 Q2 予防保全(Preventive Maintenance)の説明として適 切なものは? a.予防保全とは、一定のパフォーマンス水準にシステムを 維持するために行う計画的な活動で、システマティック な点検、検査、測定、状態監視、あるいは差し迫った故 障を防ぐために主要なアイテムを交換するといった行為 を指す b.予防保全とは、一定のパフォーマンス水準にシステムを 復旧するために行う計画的な活動で、システマティック な点検、検査、整備、測定、状態監視、あるいは差し迫 った故障を防ぐために主要なアイテムを交換するといっ た行為を指す c.予防保全とは、一定のパフォーマンス水準にシステムを 維持するために行う計画的な活動で、システマティック な点検、検査、整備、測定、状態監視、あるいは差し迫 った故障を防ぐために主要なアイテムを交換するといっ た行為を指す d.予防保全とは、一定のパフォーマンス水準にシステムを 復旧するために行う計画的な活動で、システマティック な点検、検査、測定、状態監視、あるいは差し迫った故 障を防ぐために主要なアイテムを交換するといった行為 を指す Q1は「アベイラビリティ」に関する設問。
アベイラビ リティは「即応性」、「稼働率」などと訳されますが、一 般に「品物が満足に役に立つ割合」のことで、平均故障 間隔(MTBF)/[平均故障間隔(MTBF)+平均修復 時間(MTTR)]という式で表される。
MTBFは平均無 故障時間ともいわれる信頼性の尺度。
また、MTTRは保 全性の尺度のため正解は「b」となる。
信頼性とは故障しない度合いであり、保全性とは修理 の容易さを意味する。
信頼性を高めることによって、す なわち故障しない製品を作ればアベイラビリティは向上 するし、仮に故障しても修理が容易であれば、すなわち 保全性が高ければ、製品を直ちに復旧してアベイラビリ ティを高めることができる。
Q2は[予防保全]についての設問。
「予防保全」とは あらかじめ壊れる前に壊れそうな品物を点検して、取り 替えるなど故障発生防止の処置を指す。
問題の記述はい ずれも似通っているが、「a」と「c」はシステムを「維 持するため」といい、「b」、と「d」は「復旧するため」 といっています。
復旧のために行うのは「事後保全」で すから、正解は「a」と「c」のいずれか。
さらに作業 項目を見ていくと、「c」には「整備」が入っているため 正解は「c」となる。
今回の問題は、物流に携わっている方には馴染みが薄 かったかもしれませんね。
しかし、車両や物流機器、物 流センターを管理している方とっては、「アベイラビリテ ィ」も「予防保全」も大変重要な事柄です。
第4回 CPLの試験問題に挑戦 今回は第3領域「調達と製品支援」の問題をご紹介しましょう。
この分野の設問は難易度の高いものが多いよ うですが、ぜひ挑戦してみてください。
Q1 日にち単位でやるべき活動や仕事、施設の負荷状況、進捗具合などを表示するのによく使われる手法は次 のどれか? a.PERTチャート b.ガントチャート c.フローダイヤグラム d.リニアプログラミング Q2 ソフトウェアの信頼性に関する以下の文章のうち、正しいのはどれか? a.故障は、生産(複製)、使用、プログラム保守において無視してよい程度の影響もあるが、主として設計エラ ーに帰する b.故障は運転や保管の時間経過に関係する c.故障は設計、生産、使用、保守における欠陥に起因する d.故障は損耗やエネルギー関連の現象に帰する CPL(Certified Professional Logistician)の試験問題に挑戦 前回のおさらい ※今回の設問の答と解説は、本誌8月号の当コーナーでお読みいただけます

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