ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年8号
特集
定温ビジネスの誤算 いずれは汎用型センターに収斂する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

「いずれは汎用型センターに収斂する」 AUGUST 2001 38 まずは土台づくり ――味の素系物流子会社三社が合併して味の素物流 が発足してから一年三カ月が経ちました。
「それぞれ四〇年以上歴史のある会社を一つにする わけですから、やるべきことは山ほどあります。
合併 から一年以上経ちますが、あと二年は会社としての土 台づくりに多くの時間を費やさなければならないでし ょうね。
業績を伸ばすことよりもまずは土台づくりと 贅肉落とし。
前期は経常利益十二億円でしたが、合 併に伴う特損を計上した関係で最終利益は赤字でし た。
これも仕方のないことだと割り切っています」 ――定温物流業者の利益率が高いのは何故ですか。
「うちはちっとも高くありませんよ(笑)。
定温物流業 者の利益率が高い理由は二つあると思うんです。
一つ はこの分野は歴史が浅く、プレーヤーがまだ少ないと いうこと。
定温の仕事はドライの仕事よりもはるかに 細かい作業を求められます。
温度帯に応じたノウハウ や技術が必要で、誰にでもできる仕事ではありません。
だから、なかなかプレーヤーも増えなかった。
競争が 激しくなかったから利益を確保できたんです」 「もう一つの理由は、投資負担です。
定温の施設に はドライとは比べものにならないくらい莫大な投資が 必要です。
メーカーの製造工場と同じような設備が求 めれる。
そのため、これまで多くの物流業者が手をつ けられずにきたのでしょう」 ――しかし、定温分野にも新規参入が相次いでいます。
高収益体質は崩れるのではないでしょうか。
「物流業そのものが利幅の薄い商売です。
定温分野 でも競争が激しくなるでしょうから、利益率は下がっ ていくでしょうね」 ――このような状況の中で生き残っていくためにはど うしたらよいのでしょうか。
「これといった特効薬はありませんよ。
最後は人材 の質の勝負になるでしょう。
専門的な知識や技術、機 能でどれだけ他社と差別化できるかが生き残りのカギ になるはずです。
人を効率的に運用できる会社と、そ うではない会社とでは一ケース当たりの物流コストが 大きく違ってきますから」 「IT化がどれだけ進展しても、物流が労働集約型 産業である限り、最後は人材の善し悪しで勝敗が決ま ります。
ただし、人間が機械のようになる仕組みでは ダメです。
明るく仕事ができて、なおかつコストダウ ンも実現できるような組織が理想です」 ――現在の外販比率は。
「売り上げ全体に占める味の素商品の扱い比率は二 六%、味の素グループで五一から五二%。
残りの四八 から四九%が外販です」 ――味の素物流は、サプライチェーンの主にどの部分 の業務を請け負っているのですか。
「原材料メーカーから、食品メーカーの製造工場ま での調達部分。
そして工場から卸まで。
卸から量販店 の専用センターや外食産業の専用センターまで。
主に この三つの部分の配送を請け負っています。
外食向け の店舗配送は行っていますが、量販店の店舗配送は 手掛けてはいません」 ――主要顧客である卸の数は減る一方ですね。
「メーカーと小売業が直接、取引をするようになる と当社の仕事はなくなるかもしれませんね。
今後どの 分野にターゲットを絞っていくべきか考えていかなけ ればならないでしょう」 ――卸は生き残り策の一環として小売りの専用センタ ーを請け負っています。
その卸の下請けとしてセンタ ー運営を代行することはないのですか。
サンミックス、三宝運輸、三福の3社が合併して発足した味の 素物流は、売上高約670億円を誇る定温物流企業だ。
今後2年間 は拠点の統廃合など土台づくりに専念し、事業拡大の時期に備え るという。
将来は汎用型の定温物流センターを全国に設置。
得意 の冷凍分野を中心に、チルド、ドライの3温度帯をすべて網羅す ることを理想とする。
Interview 味の素物流横江有道 社長 食品物流の担い手に訊く 食品物流企業トップ 第1部 第3部 第2部 39 AUGUST 2001 「一部卸の下請け業務も受注していますが、基本的 にはこの分野には手をつけないつもりです。
何故やら ないのか。
それは当社が味の素の子会社だからです。
味の素の商品はすべての量販店、卸に扱ってもらって いる。
だから、例えばヨーカー堂のセンターは受けて、 ダイエーのセンターは受けないというわけにはいかな い。
卸についても同じ。
国分とは付き合うが、菱食と は付き合わないというわけにはいかないのです」 あくまでも冷凍が軸 ――定温とドライの売り上げ比率は? 「旧サンミックスでいうと定温が六、ドライが四の 割合でしたが、三社合併によってこの比率が変わりま した。
六七〇億円の売り上げのうち、約二〇〇億円 が定温に相当します」 ――定温とはどの温度帯ですか。
「ほとんどが冷凍です。
構成比としては冷凍が七、チ ルドが二、ドライが一。
ただし、このドライとは定温 で運んでいるドライ貨物という意味です」 ――どの温度帯が儲かるのでしょうか。
「温度帯によって儲かる儲からないが決まるわけで はありません。
当社の得意分野は冷凍ですが、だから といってチルドが弱いというわけでもない。
チルド製 品を扱うためのノウハウにも自信がありますよ。
合併 後の土台づくりが済んで、売り上げ一〇〇〇億円を 目指して営業を強化していこうという時には当然チル ドの分野も狙っていきます。
ただし、今はまだそうい う時期ではない」 ――拠点には主に冷凍の機能を持たせるのですか。
「冷凍のみに対応する拠点よりも全温度帯型の拠点 が主流になるでしょうね。
全国にこうした全温度帯の 拠点をいくつか設けたい。
とくに汎用型の拠点を全国 展開したいと考えています。
もちろん場合によっては 専用センターを設けることもあるかもしれません。
た だし、基本は汎用型です。
専用センターは特定荷主に 縛られて身動きがとれなくなる可能性がありますから」 ――目先の収益を考えると、専用拠点を用意したくな りますよね。
「確かにそうなんですけれど、汎用型中心でネット ワークを構築するという姿勢は崩したくありませんね。
何故、汎用型にこだわるかというと、私には物流に対 する一つの信念みたいなものがあって、『物流の究極 の姿は共同化である』と考えているんです」 「日本の小売業は量販店もコンビニエンス・ストア も専用センターを持つのが主流になりつつありますよ ね。
すべての小売業が専用センターを持つようになっ たらどうなりますか。
空きスペースだらけのセンター が日本の至るところに出現します。
こうした動きは高 度経済成長の名残り。
明らかに無駄なんです。
そして 結局は汎用型のセンターに戻すことになる。
そうなれば汎用センターを用意している当社にとってチャンス が生まれてくるのです」 ――青果物の扱いに本腰を入れる計画はありますか。
「もちろん青果物も視野には入っています。
ただし、 この分野は扱いがとても難しい。
ダイコン、ニンジン など根物はともかく、レタスやキャベツなど葉物は特 に扱いが厄介です。
野菜の種類によって、適温がまっ たく違いますから。
お客さんからのニーズもあるし非 常に魅力的な分野だと思うのですが、現実問題として ビジネスとして立ち上げるのは難しいでしょう。
イン ターネットで産地から直接野菜を購入するというモデ ルがたくさん登場しましたが、あまりうまくいってい ませんよね。
その大半が物流の仕組みづくりに手を焼 いているのではないでしょうか」 特集定温ビジネスの誤算 本社 低温物流センター 物流センター 営業所 ●味の素物流の拠点分布図

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