2001年9月号
SCC報告
SCC報告
小売りと製造のギャップ
SEPTEMBER 2001 60
1.
はじめに
欧米を起点としたビジネスルネッサンス活
動の一環として、ビジネスプロセス改善を梃
子(LEVERAGE
)とした、SCM(Supply
Chain Management
)活動が日本に紹介さ
れてきた。
また、SC(Supply Chain )の参 照モデルとしてのSCOR(Supply Chain Operational Reference-model )も、SCC 日本支部の活動を通して同様に紹介されるに 至っている。
そこで本論では、日本電気の「全NEC C&Cシステムユーザー会(全NUA:会員 数三〇〇〇)」の中の有志が、このSCOR について勉強し、異業種間でサプライチェー ンについて議論した経緯を抜粋して紹介する。
*基本となった論文は「全NUA SCM研 究会 活動報告書(平成十一年度)」である。
この研究会の最大の収穫は、異業種間での 討議を通して、「サプライチェーンにおける小 売・製造のギャップ」が朧げながら見えてき たことである。
製造と小売の双方のギャップ を洗い出すため、モデル企業を参加メンバー 各社より選定し、それぞれグループに分かれ 検討を重ねた。
お互いに今まで見えてなかっ たギャップが鮮明になり、多くのことが理解 できた。
反面、更なる課題も出てきた。
それ らの活動の概要を紹介する。
2. メンバー企業による SCORの評価 研究会ではまず最初に参加各社に対して自 社のサプライチェーンをSCORで記述し、 相互に発表してもらうようにお願いした。
そ の結果、SCORを使って自社のサプライチ ェーンを見る時と他社を見る時の違いの問題 を総括して、次のようにSCORを評価した。
第6回 小売りと製造のギャップ NECソリューションズ 情報システム部 システム企画部 企画マネージャー 大石高至 前号に続きSCOR入門の第二回となる今回は、NEC のユーザー企業有志が、業態の違いを超えて集まり討議した 研究成果を紹介する。
研究会の共通言語としてSCORを 活用したことで、SCMにおけるメーカーと小売間のギャッ プが明らかになった。
短期集中連載〔第二部〕 SCORワークショップ・エグゼクティブサマリー・ 物 流 関 連 ・化粧品メーカー ・マテハンメーカー ・重電メーカー ・小売・卸業 ・ソフト業 ・食品メーカー ・事務機器メーカー ・空調機器メーカー ・機械メーカー ・商社 ●有志企業 1社 1社 1社 1社 1社 4社 2社 1社 1社 1社 1社 61 SEPTEMBER 2001 ■ SCORの利点 ?どのような業種業態の企業であっても共通 に適用できる ?サプライチェーンを構成する企業間の矛盾 が発見しやすい ?ベンチマークのような標準的な効率尺度が あることで自社を客観的に評価できる ■ SCORの欠点 ?商品特性によるサプライチェーンの違いを 記述しにくい ?各プレイヤーが何を目標(戦略)にサプラ イチェーンプロセスを作りあげているのか を記述するのは難しい 3. サプライチェーン 分類の必要性 SCORの欠点として挙げた「商品特性に よるサプライチェーンの違い」や「サプライ チェーンの戦略目標」を、SCORを使った 一連の活動の中に折り込んでいくためには、 その前提としてサプライチェーンの分類が必 要になる。
このサプライチェーン分類で問わ れる主題は以下の二つである。
?最初の問い 自社のサプライチェーンの問題を解決した り、継続的に改善するためのサプライチェー ンの構造的な管理単位を設定したり、他社と の性能を比較したりするために、自社のサプ ライチェーンをどのように特性付けて切り出すべきか。
単純に言えば、自分の会社が、い くつのサプライチェーンビジネスプロセスモ デルで構成されていのるかをどう見極めるか ということである。
一般的には、製品別に購買する部品がまっ たく異なれば、異なるサプライチェーンとし て分類される方が望ましいであろう。
また、 販売側にしても、まったくオーダーの特性が 異なる(例、大量一括受注 VS 小口集約 受注)のであれば、別のサプライチェーンと して管理運営する方が望ましいことになるで あろう。
?第二の問い 自社のサプライチェーンとは、どこからど こまでを指しているのか。
そして、自社のサ プライチェーンは、原材料から最終消費者へ と至る垂直統合的な全体のバリューチェーン の中で、どこにポジショニングされているの か。
ポジショニングされた全体サプライチェ ーンの中で、利益に富んだ活動をするために 自社はどのようなプレイヤーとして役割を果 たすべきか。
川下、川上のプレイヤーとはい ったい誰であって、どのような取引が行われ ているか。
そして将来、サプイチェーン上の 何処に自社を再ポジショニングしようと考え るのか。
すなわち、戦略的な課題への問いで ある。
実は以上のような「問い」に大体の見当を つけてからでないと、SCORのようなツー ルを使ってサプライチェーンを書いても、ま ったく無意味な(特長が薄まってしまった) 記述になってしまう。
それが当研究会メンバ ーの共通した認識である。
4. 異業種交流プログラム 実際、参加各社に自社のサプライチェーン をSCORで記述してもらった当初は、先に 述べたサプライチェーンの分類の概念が曖昧 であった。
そのため、次の活動ステップとし ては、参加企業に各業種ごとのサプライチェ ーン分類をまとめてもらい、それらをベース に議論をしようということになった。
具体的には次のようなストーリーである。
(1) 研究会のメンバーを大きく、供給系(製造 の視点:メーカー系の研究会メンバー)と 需要系(小売の視点:リテール系の研究会 メンバー)のグループに分ける (2) 各々の視点から見た必要特性(供給特性、 需要特性)を各々自社のビジネスニーズ中 心の内容でまとめる (3) 各自グループでまとめた内容を発表しても らい、他グループから見て理解可能、コミ ュニケーション可能、調整可能な問題なの かを討議する 5. 供給特性(製造の視点) 供給特性の分類方法として合意が形成され SEPTEMBER 2001 62 たものは以下である。
(図1) (1) 出荷頻度と出荷量の二軸で特性化する (2) 製造業では、製品ライフサイクルの視点が 重要 (3) 製品ライフサイクルに沿って ・ 投入型供給特性 ・ 補充型供給特性 ・ 在庫型供給特性 ・ 受注生産型供給特性 をパターンとして区分する。
用語の定義 ●投入型供給特性 需要変動が大きい。
その変 動に対して追随するために、コストより変動 対応を重視する供給メカニズム。
在庫を持つ、 持たない(BTO)は戦略による。
●補充型供給特性 需要が安定している前提で、 在庫補充方式の供給メカニズムにより、オー ダーに対する充足率の維持、リードタイムの 短縮を図る。
●在庫型供給特性 需要が比較的安定している前提で、在庫を持つ戦略によりオーダーに 対する充足率を維持する。
CODP(顧客要 求分岐点:Customer Order Decoupling Point )は製品在庫。
●受注生産型供給特性 オーダーが到着した 後に、部品の購買手配を行う。
部品の在庫リ スクを持たない、完全なMTO(受注生産)。
6. 需要特性(小売の視点) 需要特性として合意が形成されたものは以 下である。
(図2) (1) 商品特性(売価のメーカー支配力の強弱) と出荷量の二軸で特性化する (2) 小売では、店舗の品揃えの視点が重要 (3) 顧客の小売店舗認知&ロイヤルティの度合 いに沿って ・企画もの(ひきつける) ・定番商品(儲けさせて頂く) ・店舗品揃え品(はなさない) ・一点もの(テストマーケティング&サービ ス)をパターンとして区分化する 用語の定義 ●企画もの 商品の品質において革新的であり、 市場を形成するだけの大量生産が可能な商品 のこと。
メーカーのマーケティングが消費者 に直結しており、ダイレクト販売が可能な領 域である。
ただし、大量に商品を販売するた め、既存の流通経路を多用することが不可欠 である。
また、商品そのものの革新性から市況価格は下がることがなく、在庫も各流通に 対する『割り当て』によることが多い。
市場 に商品が広がると、商品は定番商品としての 性格を強くすることにもなる。
●定番商品 流通の売場形成の中核をなす商品 のこと。
流通業において最も事業収益性に影 響する商品である。
消費者の購入頻度も高く、 大量に普及している商品である。
一般的に、 類似商品、代替商品も多く、メーカの価格決 定力は相対的に低くなる。
従って、商品の調 達の成果が流通の損益に直結するため、商品 の在庫や鮮度、仕入れ価格、欠品などが厳し く問われることになる。
●店舗品揃え品 店舗の売場は、良く売れる定 番商品だけでなく、品揃え品を伴い形成され 定番製品 企画もの 店舗品揃品 1点もの 弱 ← メーカー支配力 → 強 大 量 ↑ 出荷量 ↓ 少 量 図2 需要特性 補充型 投入型 在庫型 発注型 安 定 ← 出荷予定 → 散 発 大 量 ↑ 出荷量 ↓ 少 量 図1 供給特性 63 SEPTEMBER 2001 るものである。
損益に寄与する割合は低いも のの、消費者をひきつける売場を作るために は必須の商品であるため、ロスを最小限にす ることが最も優先される課題となる。
(爪楊 枝、お線香など) ●一点もの 代替の品物はなく、商品そのもの が限定されているため、販売数量が極端に少 ない。
そのため市場の形成は極めて限られた 分野である。
また、限定品であるが故に市況 価格の形成メカニズムは通常の商品とは根本 的に異なる。
オーダーメイドは、ある種の商 品を半完成品として提供し、調整、補正をサ ービスするものであるため、ここには入らな い。
リピートが可能であれば、『企画もの』 に分類される。
オークション等はここに分類 される商品を扱うことを可能としたと考えら れる。
7. 合意事項 製造視点での供給特性と、小売視点での需 要特性を各社が相互に発表しあうことによっ て、商品区分が以下の四つ組み合わせにおい て、サプライチェーン分類を形成することで 合意を得た。
8. サプライチェーン分類の記述 それらの供給特性と需要特性による分類 を考慮し、各々のサプライチェーン上で製造、 卸/物流、小売が受け持つ業務領域をマッ ピングしたものが図4である。
図中では、左側に製造系、中心に販社・ 代理店および卸・流通系、右側に小売を配 置してあり、右端が最終顧客となっている。
製造サイドには、供給特性により区分され た製品を、小売サイドには需要特性により 区分された商品を置いて、それぞれ対応する ものを矢印で結んでいる。
また、需要特性による区分ではないが、小 売サイドには利益率に影響するPB(プライ ベートブランド)を書き加えている。
同様の 企画もの 1点もの 弱 ← メーカー支配力 → 強 大 量 ↑ 出荷量 ↓ 少 量 補充型 投入型 発注型 安 定 ← 出荷予定 → 散 発 大 量 ↑ 出荷量 ↓ 少 量 図3 供給特性と需要特性との関係 定番製品 在庫型 店舗品揃品 需要特性 企画もの 定番 店舗品揃え品 一点もの 供給特性 ?投入型 ?補充型 ?在庫型 ?受注生産型 1点もの 定番 店舗 品揃え品 企画もの PB 小売り 受注 生産型 補充型 在庫型 投入型 販社 代理店 卸・物流 供給特性 製品ライフサイクル PB化によるコストダウン 専門化 共同物流 製造 B2C戦略 品揃・サービス・物流強化 品揃え・利益率 最 終 顧 客 図4 サプライチェーン分類と戦略目的 需要特性 SEPTEMBER 2001 64 視点から製造業ではONE TO ONE 戦略(B2C戦略)として書き入れた。
図の 網掛けは、それぞれのサプライチェーンにお いての各プレーヤー(製造、販社/代理店、 卸/流通、小売)の領域を示している。
供給特性で区分された製品と需要特性で区 分された商品との関係を一枚の図としてまと めた結果、次のことが明らかになった。
◆製造サイドから小売サイドに向かって伸び る戦略 ―B2C戦略(121戦略) ―品揃え・サービス・物流強化の戦略 ◆小売サイドから製造サイドに向かって伸び る戦略 ―PB戦略 ―専門化戦略 「全体サプライチェーンの中で、利益に富 んだ活動をするために自社はどのようなプレ イヤーとして役割を果たすべきか」という戦 略目標の問いかけに対する、これが汎用的な 答えとなっている。
9. P1「サプライチェーン計画」 による需給調整 今回分類したサプライチェーンに共通して 重要な点は、それが需要サイドのP1プレイ ヤー(SCORで最上位の計画プロセスのこ と)と供給サイドのP1プレイヤー間での調 整パターンを示しているということである。
異なる特性の需給調整であれば、当然、異な る協働型計画機能が対応すべきである。
しか し、サプライチェーンの実際を議論するに際しては、誰が主役のP1プレイヤーであるの か、異なるP1プレイヤー間で会話する意思 があるのか、などの疑問がより本質的な問い になるであろう。
以下に、需給調整別に異なる計画機能を説 明する。
?投入型―企画もの 比較的大きな需要変動に対応するため、在 庫リスクよりも変動への対応を重視し、サプ ライチェーン参加プレイヤー間(製造←→ 小 売)でのリスクシェア、合意プロセス、5W 1Hの情報共有がポイントとなる。
現状では 生産計画は販社/代理店の出荷計画と調整 されている。
在庫はサプライチェーンの川上 (製造サイド)に多く、川下(小売サイド)に 行くほど少なくなる。
?補充型―定番 需要が比較的安定している前提で、卸/物 流での品揃え出荷、在庫を持つ戦略によりオ ーダーに対する充足率を維持する。
生産計画 は、販社/代理店の納入計画と調整されてい る。
また、卸/物流での品揃えが行われる。
小売サイドではこの定番商品をPB化するこ とが、利益率に大きく影響する。
在庫は川上 で少なく、川下に多い。
?在庫型―店舗品揃え品 需要変動はあまり大きくないが、販売量も 少ない。
サプライチェーン全体での在庫を少 なくするため、サプライチェーン計画の調整 が製造サイドと小売サイドの間で行われる。
製造メーカーは集約されていて比較的少ない。
?受注生産型―一点もの オーダーが到着した後に、部品の購買手配 を行う。
部品の在庫リスクを持たない、完全 なMTO生産。
製造サイドでは、卸/小売を 介さないB2C戦略によって、在庫削減、C S向上を目指す。
1.0 終わりに 当初、SCORの欠点と考えられた、商品 特性を考慮したサプライチェーン記述やサプ ライチェーンの目標(戦略目標)を考察する ために、製造業の視点と小売業の視点を各々 出し合って、需給調整別のサプライチェーン 分類をパターン化した。
それらの作業を通し て、サプライチェーンの戦略目標(PB戦略、 B2C戦略)や需給調整別の異なる計画機能 要件の抽出を試みた。
汎用的で応用可能な、 それなりの成果は得られたと思う。
これからのテーマとしては、eビジネスや eCRMの進展に伴うサプライチェーン戦略 面へのインパクトの研究や、需給調整のため のベストプラクティスと言われるCPFRの 研究を行って、SCOR利用方法をより実践 的にする必要があるだろう。
また、SC(Supply Chain )の参 照モデルとしてのSCOR(Supply Chain Operational Reference-model )も、SCC 日本支部の活動を通して同様に紹介されるに 至っている。
そこで本論では、日本電気の「全NEC C&Cシステムユーザー会(全NUA:会員 数三〇〇〇)」の中の有志が、このSCOR について勉強し、異業種間でサプライチェー ンについて議論した経緯を抜粋して紹介する。
*基本となった論文は「全NUA SCM研 究会 活動報告書(平成十一年度)」である。
この研究会の最大の収穫は、異業種間での 討議を通して、「サプライチェーンにおける小 売・製造のギャップ」が朧げながら見えてき たことである。
製造と小売の双方のギャップ を洗い出すため、モデル企業を参加メンバー 各社より選定し、それぞれグループに分かれ 検討を重ねた。
お互いに今まで見えてなかっ たギャップが鮮明になり、多くのことが理解 できた。
反面、更なる課題も出てきた。
それ らの活動の概要を紹介する。
2. メンバー企業による SCORの評価 研究会ではまず最初に参加各社に対して自 社のサプライチェーンをSCORで記述し、 相互に発表してもらうようにお願いした。
そ の結果、SCORを使って自社のサプライチ ェーンを見る時と他社を見る時の違いの問題 を総括して、次のようにSCORを評価した。
第6回 小売りと製造のギャップ NECソリューションズ 情報システム部 システム企画部 企画マネージャー 大石高至 前号に続きSCOR入門の第二回となる今回は、NEC のユーザー企業有志が、業態の違いを超えて集まり討議した 研究成果を紹介する。
研究会の共通言語としてSCORを 活用したことで、SCMにおけるメーカーと小売間のギャッ プが明らかになった。
短期集中連載〔第二部〕 SCORワークショップ・エグゼクティブサマリー・ 物 流 関 連 ・化粧品メーカー ・マテハンメーカー ・重電メーカー ・小売・卸業 ・ソフト業 ・食品メーカー ・事務機器メーカー ・空調機器メーカー ・機械メーカー ・商社 ●有志企業 1社 1社 1社 1社 1社 4社 2社 1社 1社 1社 1社 61 SEPTEMBER 2001 ■ SCORの利点 ?どのような業種業態の企業であっても共通 に適用できる ?サプライチェーンを構成する企業間の矛盾 が発見しやすい ?ベンチマークのような標準的な効率尺度が あることで自社を客観的に評価できる ■ SCORの欠点 ?商品特性によるサプライチェーンの違いを 記述しにくい ?各プレイヤーが何を目標(戦略)にサプラ イチェーンプロセスを作りあげているのか を記述するのは難しい 3. サプライチェーン 分類の必要性 SCORの欠点として挙げた「商品特性に よるサプライチェーンの違い」や「サプライ チェーンの戦略目標」を、SCORを使った 一連の活動の中に折り込んでいくためには、 その前提としてサプライチェーンの分類が必 要になる。
このサプライチェーン分類で問わ れる主題は以下の二つである。
?最初の問い 自社のサプライチェーンの問題を解決した り、継続的に改善するためのサプライチェー ンの構造的な管理単位を設定したり、他社と の性能を比較したりするために、自社のサプ ライチェーンをどのように特性付けて切り出すべきか。
単純に言えば、自分の会社が、い くつのサプライチェーンビジネスプロセスモ デルで構成されていのるかをどう見極めるか ということである。
一般的には、製品別に購買する部品がまっ たく異なれば、異なるサプライチェーンとし て分類される方が望ましいであろう。
また、 販売側にしても、まったくオーダーの特性が 異なる(例、大量一括受注 VS 小口集約 受注)のであれば、別のサプライチェーンと して管理運営する方が望ましいことになるで あろう。
?第二の問い 自社のサプライチェーンとは、どこからど こまでを指しているのか。
そして、自社のサ プライチェーンは、原材料から最終消費者へ と至る垂直統合的な全体のバリューチェーン の中で、どこにポジショニングされているの か。
ポジショニングされた全体サプライチェ ーンの中で、利益に富んだ活動をするために 自社はどのようなプレイヤーとして役割を果 たすべきか。
川下、川上のプレイヤーとはい ったい誰であって、どのような取引が行われ ているか。
そして将来、サプイチェーン上の 何処に自社を再ポジショニングしようと考え るのか。
すなわち、戦略的な課題への問いで ある。
実は以上のような「問い」に大体の見当を つけてからでないと、SCORのようなツー ルを使ってサプライチェーンを書いても、ま ったく無意味な(特長が薄まってしまった) 記述になってしまう。
それが当研究会メンバ ーの共通した認識である。
4. 異業種交流プログラム 実際、参加各社に自社のサプライチェーン をSCORで記述してもらった当初は、先に 述べたサプライチェーンの分類の概念が曖昧 であった。
そのため、次の活動ステップとし ては、参加企業に各業種ごとのサプライチェ ーン分類をまとめてもらい、それらをベース に議論をしようということになった。
具体的には次のようなストーリーである。
(1) 研究会のメンバーを大きく、供給系(製造 の視点:メーカー系の研究会メンバー)と 需要系(小売の視点:リテール系の研究会 メンバー)のグループに分ける (2) 各々の視点から見た必要特性(供給特性、 需要特性)を各々自社のビジネスニーズ中 心の内容でまとめる (3) 各自グループでまとめた内容を発表しても らい、他グループから見て理解可能、コミ ュニケーション可能、調整可能な問題なの かを討議する 5. 供給特性(製造の視点) 供給特性の分類方法として合意が形成され SEPTEMBER 2001 62 たものは以下である。
(図1) (1) 出荷頻度と出荷量の二軸で特性化する (2) 製造業では、製品ライフサイクルの視点が 重要 (3) 製品ライフサイクルに沿って ・ 投入型供給特性 ・ 補充型供給特性 ・ 在庫型供給特性 ・ 受注生産型供給特性 をパターンとして区分する。
用語の定義 ●投入型供給特性 需要変動が大きい。
その変 動に対して追随するために、コストより変動 対応を重視する供給メカニズム。
在庫を持つ、 持たない(BTO)は戦略による。
●補充型供給特性 需要が安定している前提で、 在庫補充方式の供給メカニズムにより、オー ダーに対する充足率の維持、リードタイムの 短縮を図る。
●在庫型供給特性 需要が比較的安定している前提で、在庫を持つ戦略によりオーダーに 対する充足率を維持する。
CODP(顧客要 求分岐点:Customer Order Decoupling Point )は製品在庫。
●受注生産型供給特性 オーダーが到着した 後に、部品の購買手配を行う。
部品の在庫リ スクを持たない、完全なMTO(受注生産)。
6. 需要特性(小売の視点) 需要特性として合意が形成されたものは以 下である。
(図2) (1) 商品特性(売価のメーカー支配力の強弱) と出荷量の二軸で特性化する (2) 小売では、店舗の品揃えの視点が重要 (3) 顧客の小売店舗認知&ロイヤルティの度合 いに沿って ・企画もの(ひきつける) ・定番商品(儲けさせて頂く) ・店舗品揃え品(はなさない) ・一点もの(テストマーケティング&サービ ス)をパターンとして区分化する 用語の定義 ●企画もの 商品の品質において革新的であり、 市場を形成するだけの大量生産が可能な商品 のこと。
メーカーのマーケティングが消費者 に直結しており、ダイレクト販売が可能な領 域である。
ただし、大量に商品を販売するた め、既存の流通経路を多用することが不可欠 である。
また、商品そのものの革新性から市況価格は下がることがなく、在庫も各流通に 対する『割り当て』によることが多い。
市場 に商品が広がると、商品は定番商品としての 性格を強くすることにもなる。
●定番商品 流通の売場形成の中核をなす商品 のこと。
流通業において最も事業収益性に影 響する商品である。
消費者の購入頻度も高く、 大量に普及している商品である。
一般的に、 類似商品、代替商品も多く、メーカの価格決 定力は相対的に低くなる。
従って、商品の調 達の成果が流通の損益に直結するため、商品 の在庫や鮮度、仕入れ価格、欠品などが厳し く問われることになる。
●店舗品揃え品 店舗の売場は、良く売れる定 番商品だけでなく、品揃え品を伴い形成され 定番製品 企画もの 店舗品揃品 1点もの 弱 ← メーカー支配力 → 強 大 量 ↑ 出荷量 ↓ 少 量 図2 需要特性 補充型 投入型 在庫型 発注型 安 定 ← 出荷予定 → 散 発 大 量 ↑ 出荷量 ↓ 少 量 図1 供給特性 63 SEPTEMBER 2001 るものである。
損益に寄与する割合は低いも のの、消費者をひきつける売場を作るために は必須の商品であるため、ロスを最小限にす ることが最も優先される課題となる。
(爪楊 枝、お線香など) ●一点もの 代替の品物はなく、商品そのもの が限定されているため、販売数量が極端に少 ない。
そのため市場の形成は極めて限られた 分野である。
また、限定品であるが故に市況 価格の形成メカニズムは通常の商品とは根本 的に異なる。
オーダーメイドは、ある種の商 品を半完成品として提供し、調整、補正をサ ービスするものであるため、ここには入らな い。
リピートが可能であれば、『企画もの』 に分類される。
オークション等はここに分類 される商品を扱うことを可能としたと考えら れる。
7. 合意事項 製造視点での供給特性と、小売視点での需 要特性を各社が相互に発表しあうことによっ て、商品区分が以下の四つ組み合わせにおい て、サプライチェーン分類を形成することで 合意を得た。
8. サプライチェーン分類の記述 それらの供給特性と需要特性による分類 を考慮し、各々のサプライチェーン上で製造、 卸/物流、小売が受け持つ業務領域をマッ ピングしたものが図4である。
図中では、左側に製造系、中心に販社・ 代理店および卸・流通系、右側に小売を配 置してあり、右端が最終顧客となっている。
製造サイドには、供給特性により区分され た製品を、小売サイドには需要特性により 区分された商品を置いて、それぞれ対応する ものを矢印で結んでいる。
また、需要特性による区分ではないが、小 売サイドには利益率に影響するPB(プライ ベートブランド)を書き加えている。
同様の 企画もの 1点もの 弱 ← メーカー支配力 → 強 大 量 ↑ 出荷量 ↓ 少 量 補充型 投入型 発注型 安 定 ← 出荷予定 → 散 発 大 量 ↑ 出荷量 ↓ 少 量 図3 供給特性と需要特性との関係 定番製品 在庫型 店舗品揃品 需要特性 企画もの 定番 店舗品揃え品 一点もの 供給特性 ?投入型 ?補充型 ?在庫型 ?受注生産型 1点もの 定番 店舗 品揃え品 企画もの PB 小売り 受注 生産型 補充型 在庫型 投入型 販社 代理店 卸・物流 供給特性 製品ライフサイクル PB化によるコストダウン 専門化 共同物流 製造 B2C戦略 品揃・サービス・物流強化 品揃え・利益率 最 終 顧 客 図4 サプライチェーン分類と戦略目的 需要特性 SEPTEMBER 2001 64 視点から製造業ではONE TO ONE 戦略(B2C戦略)として書き入れた。
図の 網掛けは、それぞれのサプライチェーンにお いての各プレーヤー(製造、販社/代理店、 卸/流通、小売)の領域を示している。
供給特性で区分された製品と需要特性で区 分された商品との関係を一枚の図としてまと めた結果、次のことが明らかになった。
◆製造サイドから小売サイドに向かって伸び る戦略 ―B2C戦略(121戦略) ―品揃え・サービス・物流強化の戦略 ◆小売サイドから製造サイドに向かって伸び る戦略 ―PB戦略 ―専門化戦略 「全体サプライチェーンの中で、利益に富 んだ活動をするために自社はどのようなプレ イヤーとして役割を果たすべきか」という戦 略目標の問いかけに対する、これが汎用的な 答えとなっている。
9. P1「サプライチェーン計画」 による需給調整 今回分類したサプライチェーンに共通して 重要な点は、それが需要サイドのP1プレイ ヤー(SCORで最上位の計画プロセスのこ と)と供給サイドのP1プレイヤー間での調 整パターンを示しているということである。
異なる特性の需給調整であれば、当然、異な る協働型計画機能が対応すべきである。
しか し、サプライチェーンの実際を議論するに際しては、誰が主役のP1プレイヤーであるの か、異なるP1プレイヤー間で会話する意思 があるのか、などの疑問がより本質的な問い になるであろう。
以下に、需給調整別に異なる計画機能を説 明する。
?投入型―企画もの 比較的大きな需要変動に対応するため、在 庫リスクよりも変動への対応を重視し、サプ ライチェーン参加プレイヤー間(製造←→ 小 売)でのリスクシェア、合意プロセス、5W 1Hの情報共有がポイントとなる。
現状では 生産計画は販社/代理店の出荷計画と調整 されている。
在庫はサプライチェーンの川上 (製造サイド)に多く、川下(小売サイド)に 行くほど少なくなる。
?補充型―定番 需要が比較的安定している前提で、卸/物 流での品揃え出荷、在庫を持つ戦略によりオ ーダーに対する充足率を維持する。
生産計画 は、販社/代理店の納入計画と調整されてい る。
また、卸/物流での品揃えが行われる。
小売サイドではこの定番商品をPB化するこ とが、利益率に大きく影響する。
在庫は川上 で少なく、川下に多い。
?在庫型―店舗品揃え品 需要変動はあまり大きくないが、販売量も 少ない。
サプライチェーン全体での在庫を少 なくするため、サプライチェーン計画の調整 が製造サイドと小売サイドの間で行われる。
製造メーカーは集約されていて比較的少ない。
?受注生産型―一点もの オーダーが到着した後に、部品の購買手配 を行う。
部品の在庫リスクを持たない、完全 なMTO生産。
製造サイドでは、卸/小売を 介さないB2C戦略によって、在庫削減、C S向上を目指す。
1.0 終わりに 当初、SCORの欠点と考えられた、商品 特性を考慮したサプライチェーン記述やサプ ライチェーンの目標(戦略目標)を考察する ために、製造業の視点と小売業の視点を各々 出し合って、需給調整別のサプライチェーン 分類をパターン化した。
それらの作業を通し て、サプライチェーンの戦略目標(PB戦略、 B2C戦略)や需給調整別の異なる計画機能 要件の抽出を試みた。
汎用的で応用可能な、 それなりの成果は得られたと思う。
これからのテーマとしては、eビジネスや eCRMの進展に伴うサプライチェーン戦略 面へのインパクトの研究や、需給調整のため のベストプラクティスと言われるCPFRの 研究を行って、SCOR利用方法をより実践 的にする必要があるだろう。
