2001年12月号
再入門

あなたの会社の物流レベルは?

DECEMBER 2001 62 物流が進んでいるか 判断するのは簡単 物流先進企業などという言葉があるが、一体 どんな企業なのであろうか。
また、物流が進んで いる、遅れているというのはどのような基準で判 断するのであろうか。
立派な物流センターがある から進んでいるというわけでは決してないだろう。
また、物流サービスレベルが高いなどというのも 進んでいる理由にはならない。
それでは、物流の レベルはどう判断すればよいのか。
今回はこのテ ーマを探ることで、物流のあるべき姿を考えてみ よう。
結論から言ってしまうと、実は、物流が進んで いるかどうかの判断基準は明確である。
この連載 を読んでこられた読者なら、すぐに答えが出るは ずである。
連載の第1回のタイトル「物流はない のが一番」が答えである。
可能な限り物流をやらな いで済ませている会社が「物流先進企業」である。
こういうと、物流をやらないなどという抽象的 な基準では具体的に判断できないではないかと批 判されそうであるが、とんでもない。
物流の「や らない度」は具体的に識別できるものである。
こ こで、物流のやらない度を段階に分けて、提示し てみることにする。
読者の会社がどの段階に入る かの判断は簡単にできるので、ご自身で自社の物 流レベルを評価していただきたい。
「物流はやらないのが一番」という視点で、企 業の物流管理レベルを分けると、5段階に分け ることができる。
その5段階を示してみれば以下 のとおりである。
その命名がよいかどうかは別にして、レベルと しては、1が最も低く、だんだん上がって5が最 も高いという関係になる。
レベル1は物流管理不 在で一番遅れた状態である。
レベル2は物流管 理は行われているが、遅れていると言ってよい状 態である。
レベル3がせめてこの段階には入って いてほしいという当たり前の段階である。
レベル 4になって初めて進んでいるといえる段階になる。
レベル5は最も進んだ段階であるが、現実には、 先進企業でもその入り口に差し掛かった程度と いうのが現状と言ってよい。
5段階の「やらない度」で 物流レベルを評価する 以下、それぞれのレベルの特徴とレベルを分け る判断基準について説明するので、自己診断し てみてほしい。
まず、レベル1であるが、ここにおける大きな 特徴は発生場所ごとに物流が行われているという 点にある。
発生場所とは、各工場、各支店や営 「あなたの会社の物流レベルは?」 湯浅和夫 日通総合研究所 常務取締役 第9回 我が社の物流管理は進んでいるのか、遅れているの か。
遅れているとすれば、どの程度なのか。
物流の 「やらない度」を見れば、すぐに判断できる。
今回は 「物流レベルの五段階評価」について解説する。
レベル1 管理不在の段階 レベル2 効率化中心の段階 レベル3 物流システムの段階 レベル4 ロジスティクスの段階 レベル5 SCMの段階 63 DECEMBER 2001 業所などであり、それぞれの場所で発生した物流 をそれぞれが独自に行っているという状態である。
物流を管理するという考えはなく、発生した物流 をいかに処理するかが最大の関心事であり、物流 の発生の仕方に合わせて倉庫や輸送を手配する という業務に終始していると言ってよい。
この段階については説明の必要はないと思われ る。
要するに、全社の物流を管理する部門はなく、 物流管理不在という状態である。
本来、レベル 分けの対象にもならないという状態であるが、実 は、いまでもこの段階にある企業が少なくないの である。
このような企業においては、未だに物流 はコスト削減の宝庫であるという、うらやましい 状況にある。
さて、レベル2であるが、この段階は、全社の 物流を管理する部門はあるが、本来的な物流管 理が行われていないという状態である。
この連載 の中で何度か触れているが、物流コストを削減す るためには、大別すると、二つの取り組みがある。
一つが「効率化」であり、もう一つが「減量化」 である。
このうち効率化を中心に管理が行われて いるレベルがこの段階である。
レベル判断のために、ここでちょっと説明を加 えさせていただく。
物流は、簡単に言えば、在庫 を保管し、在庫を輸送する活動であるが、その活 動自体をいかに効率的に行うかという取り組みが 「効率化」であり、保管し、輸送する在庫の量そ のものを減らすための取り組みが「減量化」であ る。
物流コストは、これら二つの取り組みを通し て大幅に削減されることになる。
これら二つの取り組みは、本来的には、減量化が先行すべきテーマである。
本来移動させる必要 がない在庫をいくら効率的に輸送しても意味がな いからである。
腐った魚をいくら効率的に送って も意味がないということである。
ところが、減量化を実施するには、在庫のコン トロール権を物流部門が持つ必要がある。
また、 出荷・在庫動向についてのリアルタイムに近い情 報が常時把握できる体制にないとできない。
その ため、現実には手がつけられないという企業が少 なくない。
そこで、物流部門が力を入れてきたのが、効率 化という取り組みである。
現実に目の前に存在す るセンター内作業や保管、輸送という活動をいか に効率的に行うかという取り組みである。
数多く 点在している倉庫を集約して物流センターを設け るという「拠点集約」やロケーション管理などの センター内作業のシステム化、自動化・省力化 機器の導入、共同化などの取り組みは、すべて効 率化を目指したものである。
見かけの立派さと 管理レベルは無関係 もちろん、このような取り組みも否定されるべ きものではないが、物流管理本来の取り組みであ るとはいえない。
物流管理とは本来、物流をやら ないで済ますためのマネジメントであるはずだか らである。
このような効率化を主体に取り組んでいる段階 がレベル2である。
一見すると、物流センターが DECEMBER 2001 64 整備され、センターの中にも各種の機器が入り、 作業もシステム化され、物流が確実にレベルアッ プしているように見える。
企業の物流担当者の中 には、これこそが物流部門の仕事だと錯覚してし まう人がいるくらいである。
しかし、いくら物流センターが整備されようが、 そこを通過する在庫がコントロールされていない のなら、その物流は明らかに遅れている。
薄暗い 倉庫を使っているが、在庫のコントロールは行わ れているというのなら、そちらの方が物流は明ら かに進んでいる。
みかけの立派さとレベルは、ま ったく関係しない。
もっとも、視点を変えれば、在庫のコントロー ルができていないということは、まだ大幅な物流 コスト削減余地があるということでもある。
進ん でいる企業からすると、うらやましい限りという ことになるのかもしれない。
出荷対応日数の分かる 「レベル3」が及第点 さて、物流を管理しているなら最低でもここに は入りたいという段階がレベル3である。
特徴は 減量化への取り組みが行われているということで ある。
言葉を換えれば、物流システムが動いてい る状態である。
市場への出荷動向が常時把握され、この情報 に基づいて在庫が動かされている。
各地の物流セ ンターでは何日分の在庫を持つかという在庫規模 が設定され、在庫アイテム別に出荷動向に応じ て在庫量がメンテナンスされている。
工場でつく られた在庫は、すべて市場の販売動向に合わせて 配置され、補充が行われるという仕組みである。
販売計画や営業担当者の都合や思惑で在庫が 動かされることはない。
その結果、売れもしない 在庫を動かすという無駄が排除される。
動かされ る在庫はすべて市場が必要としているものだけだ からである。
この無駄の排除で物流コストが二〜三割削減 されるということもめずらしくない。
効率化では 考えられないコスト削減効果を減量化はもたらす といってよい。
物流管理は、この段階に至っては じめて本来の姿を見せ始めるのである。
なお、ある会社がこの段階に入るのか、その前 のレベルにあるのかの識別は簡単である。
物流セ ンターの在庫アイテムごとに、いまの在庫量で現 在の出荷動向が続くとすると、あと何日分の出 荷に対応できるかという「出荷対応日数」が常 時把握されているかどうかが判断基準である。
そ んな数字はないというのなら、レベル2の段階で ある。
出荷対応日数をベースに使わない限り、物 流システムを動かすことは不可能だからである。
物流レベルとしては、本来的には、このレベル 3が許容できる最低のレベルというということが できよう。
物流管理をやっていると胸を張れるの はこのレベルからといっていい。
当面の目標が「レベル4」 これで在庫は大幅に減る 出荷動向に関する情報をベースに在庫の配置 と移動を行えるようになれば、次にその情報を使 65 DECEMBER 2001 って生産をし、仕入れをしようと考えるのは必然 である。
出荷動向に関する情報があり、それで在 庫が動かされているなら、在庫を生み出す活動も その情報に従って行われるのが自然だからである。
このように、出荷動向に合わせて生産、仕入、 物流という供給システムを動かそうというマネジ メントこそがロジスティクスである。
レベルは高 いが、考え方としてはごく当たり前のマネジメン トであるといえる。
この段階になると、企業の在庫は大幅に減る。
在庫を保管し、移動させる物流の減量化が一気 に進む。
物流レベルとしては、かなり高いレベル といってよい。
企業の物流担当者は、このレベル への到達を急ぐべきである。
自社内のシステムで あるから、そして当たり前なシステムであるのだ から、実現は十分可能なはずである。
レベル5となる最後のステップは、言葉として はお馴染みの、究極のローコスト物流が実現する と言われるサプライチェーン・マネジメント(S CM)の段階である。
SCMについては、すでに 連載の中で触れてきたので詳しい説明は省くが、 ポイントはサプライチェーンの中で移動する在庫 を極小にできるということである。
最高レベルの 減量化が可能になるのである。
ただ、この取り組みは、物流部門だけでは難し い面が少なくない。
もちろん、問屋から注文を受 けずに、メーカー側の予測に基づいた判断で、必 要な商品を必要なだけ送り込むというSCMの 嚆矢と言ってよい取り組みも、すでに始まってい る。
しかし、まだSCMというレベルには至って いない。
この段階に入る企業は、まだ例外的な存在と いうことができる。
したがって物流管理レベルと いう点では、レベル4のロジスティクスを現在の 最高レベルとするのが妥当かもしれない。
さて、あなたの会社は どのレベルに入りましたか 物流レベルを5段階に分け、その特徴を説明 してきた。
レベル区分というのは物流のあるべき 姿を見るのに最適な方法である。
ただ、問題は 「あるべき」の基準に何を持ってくるかである。
こ れによって、同じ企業でもレベルは大きく変わっ てしまう。
ここでは、区分の基準に物流の「やらない度」 を使っている。
私としては、この基準がレベルを 診るには最も妥当であると思っている。
物流の理 想の姿は、市場が必要としているものを必要とし ている量だけ移動させるというところにあるから である。
この区分で、読者の会社の物流は、どのレベル に入ったであろうか。
読者によっては遅れている というレベルに入ったかもしれない。
だからと言 って、悲観することなどさらさらない。
繰り返し になるが、まだやることがいっぱいあると思えば よい。
物流コスト削減余地がたくさんあるといっ て喜べばよいのである。
もちろん、高いレベルに 入った企業は、大いに胸を張っていただきたい。
いずれにしろ、すべての企業のさらなるレベルア ップを期待したい。
湯浅和夫(ゆあさ・かずお) 1971年早稲田大学大学院修士課程修 了。
同年、日通総合研究所入社。
現在、 同社常務取締役。
著書に『手にとるよう にIT物流がわかる本』(かんき出版)、 『Eビジネス時代のロジスティクス戦略』 (日刊工業新聞社)、『物流マネジメント 革命』(ビジネス社)ほか多数。

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