2001年12月号
特集
特集
リサイクル物流の真実 循環型経済で変わる物流市場
DECEMBER 2001 26
四トン車で年間一・一億台分
一日一人平均九キログラム、年間三・三トン――。
この数字が、いったい何を意味するのかお分かりだろ うか。
答えは、日本国内の家庭や工場から一日に排 出される廃棄物の総量である。
四人家族であれば、そ の量は一日あたり平均三六キログラム、年間十三・ 二トンということになる。
そして日本全体で見れば、年間四・五億トンの廃 棄物が排出されている。
その内訳は、一般家庭から排 出されるゴミ(一般廃棄物)が年間五〇〇〇万トン。
さらに工場や事業所から排出される廃棄物(産業廃 棄物)が、一般廃棄物の八倍にあたる年間四億トン あり、その推移はここ数年横ばい状態にある。
一般廃棄物の処理責任は自治体にあって、産業廃 棄物は企業に処理責任があるので、これらを足し合わ せて考えるのはおかしいのではないか、という意見も あるかもしれない。
しかし、私たちの生活と企業の活 動は密接に関係しており、どちらか一方だけで日本の 社会が成り立っているわけではない。
やはり私たちは 何らかの形で年間一人平均三・三トンの廃棄物にか かわっているのである。
私たちはゴミが目の前にあると、汚い、臭いと気に する。
しかし、いったん自分の手元を離れて、目の前 から消えてしまうとその存在を全く忘れてしまう。
と ころが実際は、四トン車換算で年間一・一億台分の 廃棄物が日本中を移動しているのである。
必ず限界が来る廃棄物処理 大量に排出される廃棄物は、圧縮や粉砕などの方 法で減容化または焼却され、最終的には処分場に行 く。
この際、有用物は途中で選別されてリサイクルの ルートに乗るのだが、様々なものが混在する廃棄物の 中からリサイクルできるものだけを選別するのは容易 ではなく、コストもかかる。
このため従来は、必ずし も積極的にリサイクルが行なわれてきたわけではなか った。
狭い日本の中でどんなに廃棄物を減容化しても、移 動しても、必ず最後は処分場に捨てなければならない。
ところが最近では、処分場の汚染問題などから地域住 民の反対運動が各地で起こっており、処分場の新設 は極めて難しくなっている。
例えば、首都圏の産業廃 棄物最終処分場の残余年数は一年未満、日本全体で も三年余りしかない。
また、有害廃棄物の海外輸出や廃棄物の海洋投棄 にも最近では厳しい国際規制がかけられている。
つま り、従来の廃棄物処理システムは限界に近づいており、 早急な対応策が求められている。
容器包装リサイクル 法や家電リサイクル法などの一連のリサイクル法は、 この対応策として登場してきたのである。
こうした状況は日本に限ったことではなく、程度の 差はあるにしても、欧米各国でも同様の問題が起こっ ている。
大量生産・大量消費・大量廃棄に支えられ た経済構造を有する国々に共通する課題なのである。
環境規制による方向転換 廃棄物問題をはじめとする環境問題は地球規模で 深刻化しており、図1に示したように、環境規制や環 境規格による問題への対応は世界的な潮流になってい る。
この流れを中心的に作り上げてきたのは、ドイツ、 オランダなど欧州の環境先進国といわれている国々で ある。
特に、ドイツは国家戦略として早くから環境問 題への取り組みを始めており、欧州各国はもちろんの こと、日本にも大きな影響を及ぼしている。
「循環型経済で変わる物流市場」 循環型社会経済への転換は、物流業者にとって大きなビジネスチャンス であると同時にリスクをもたらす。
静脈分野に新たな市場が誕生する一方 で、包装容器などを削減する取り組みは本来の動脈分野の物流市場を縮小 させる。
こうした変化を先取りして経営に活かすためには、法規制の底流 にある方向性を理解することが欠かせない。
萩原一平 NTTデータ経営研究所 i-community戦略センター長 理事・エグゼクティブコンサルタント 第4部 27 DECEMBER 2001 リサイクル物流の真実 特集 例えば、一九九一年にドイツで制定された包装廃 棄物法は、その後、フランス、オーストリアなど欧州 各国や日本で制定された容器包装リサイクル法のモデ ルとなった。
容器包装に印刷されている「グリューネ プンクト」という緑色のリサイクルマークは、法律に 基づいて事業者がリサイクル費用を負担しているとい う証明なのだが、その商標はドイツのDSD社という 容器包装リサイクルの運用管理機関が保有し、欧州 各国で共通のマークとして利用されている。
また、九 六年にドイツで施行された循環経済・廃棄物法は日 本の循環型社会形成推進基本法のモデルともいわれ ている。
日本でもこの数年間で、実に多くの環境規制が制 定されている。
わずか数年の間に図2に示すような多 くの環境規制が成立したというのは、恐らくいまだか つてないことであろう。
循環型の経済社会構築に向け た一連の規制の制定は、日本が、生産↓消費↓廃棄 というワンウェイの経済社会構造から、生産↓消費↓ 再生↓生産という循環型の経済社会システムの構築 へと大きく方向転換をしたことを示している。
ワンウェイから「3R」へ この方向転換における3つの大きな柱が「3R」、す なわち、リデュース(発生抑制:Reduce )、リユース (再利用:Reuse )、リサイクル(再資源化:Recycle ) である。
まず、リデュースについては、廃棄物の量を減らす 基本は、廃棄物になるものを使わない、作らないとい うことである。
例えば、シャンプーの容器を詰め替え 容器に変えることによって、また少量でも同じ効果が 出るように製品を改良し容器をコンパクト化すること によって、廃棄される容器包装の量を削減することが できる。
このリデュースの考え方は循環型システムの基本で ある。
間違いなく、排出されるゴミの量は減るし、輸 送効率も上がるため、省エネルギー、排気ガスの削減 にも貢献する。
しかし、物流と言う観点から見れば、 供給側、静脈側ともに、その輸送量が減少するという ことを意識しておく必要があるだろう。
次のリユースは、ゴミにする前に、もう一度利用し ようという考え方である。
例えば、ボトルを再利用す る、部品を再利用する、ということである。
ガラスび んを一〇回再利用すれば、最終的に廃棄される量は 一〇分の一になる。
物流という観点から見れば、輸送 量にはあまり影響しないかもしれないが、輸送ルート には変化が起こる。
従来、廃棄物処理のルートにまわ っていたものが、生産ルートにまわる、すなわち循環 することになるからだ。
そして、最後にリサイクルである。
リサイクルは、 焼却や埋め立てよりも費用がかかるし、エネルギーもかかる可能性がある。
しかし、焼却しても灰が残る。
埋立ててもいつかは処分場が一杯になる。
とすれば、 間違いなくリサイクルは促進していかねばならない。
リサイクルを行うには、素材ごとに分別して排出す ることが必須である。
いろいろな素材が混合したゴミ をそのままリサイクルすることはできず、また混合ゴ ミからリサイクルできるものを選別することも非常に 難しいからだ。
分別排出されたものは、素材ごとに異 なるリサイクルルートにまわることになる。
物流という観点から見れば、従来、廃棄物として一 括して処理ルートにのっていたものが、複数のリサイ クルルートにまわることになるわけで、物流ニーズは 増える方向になる。
この「3R」を経済的に実現できる社会が循環型 図1 DECEMBER 2001 28 経済社会である。
そして、このような社会の構築を目 指そうという国の基本的な考えを明示したのが「循環 型社会形成推進基本法」である。
その方向転換は既 に始まっているのだ。
循環型社会を支える七つの法律 「循環型社会形成推進基本法」は基本的枠組み法と して制定されており、この下に七つの法律が新たに制 定または改正され、「3R」を実現するためのレール が敷かれている。
それぞれについて、簡単にその概要 を紹介する。
(1) グリーン購入法 国や自治体に対して、再生材等を利用した環境配慮 型製品、いわゆるグリーン製品の購入を義務づけた法 律であり、製品のライフサイクルを通じて環境負荷を 軽減するとともに、再生材の利用市場の拡大を図るも のである。
この法律は一般の事業者や国民にも可能な 限りグリーン製品を購入するよう求めている。
(2) 食品リサイクル法 食品を製造、流通、または販売(外食産業等を含 む)している事業者ならびに消費者に対して、食品廃 棄物の発生抑制と再利用を義務付けた法律であり、と りわけ一定規模(年間排出量一〇〇トン)以上の事業者 は削減に向け具体的に取り組まねばならない。
食品廃 棄物は他の廃棄物とは異なり放置すればただちに腐敗 するため、迅速かつ適切な処理が求められる。
(3) 建設リサイクル法 建設廃棄物の排出量は産業廃棄物全体の約二割、最 終処分量では約四割を占めており、その量が多いこと、 さらに不法投棄、焼却時のダイオキシンの発生など環 境負荷が大きいと言われていた。
そこで、同法では発 注者も含めた建設関連事業者に対して、コンクリート や木材等、特定の素材を利用した建築物を解体する 際の分別排出と再利用を義務付けている。
(4) 家電リサイクル法 大型家電製品といわれるテレビ、エアコン、冷蔵庫、 洗濯機の四品目のリサイクルを製造事業者、販売店、 そして消費者に義務付ける法律であり、消費者はリサ イクル費用の負担、販売店は引き取りとメーカーへの 引渡し、製造事業者はリサイクルをそれぞれ実施しな ければならない。
とりわけ消費者は、廃棄物として排 出する際に、直接販売店等引き取り事業者に対して リサイクル費用を支払わねばならない点が他のリサイ クル法とは異なるところである。
(5) 容器包装リサイクル法一連の個別リサイクル法の中で、最初に法制化、施 行された法律であり、容器を製造する事業者、ならび に容器・包装を利用する事業者に対して再商品化の 義務を課している。
ガラスびん、PETボトル、プラ スチック製容器包装、紙製容器包装については、製 造または利用事業者に自らリサイクルを実施するか、 国が定める指定法人にリサイクル費用を支払いリサイ クルの義務を果たさなければならない。
(6) 資源有効利用促進法 この法律は従来の「再生資源利用促進法」が改正さ れ、新たに「資源有功利用促進法」として生まれ変わ ったものであり、特に事業者に対して、「3R」の促 進を義務づけるものである。
法律の狙いは、文字どお 図2 リサイクル物流の真実 特集 29 DECEMBER 2001 り資源の有効利用であり、事業者に対しては、製品そ のものの長寿命化をはじめ、生産プロセスにおける副 産物の発生抑制や再利用などを、業種ごと製品ごと に義務づけている。
(7) 廃棄物処理法 どんなに「3R」を推進しても、人間が生活し、生産 活動を行う限り、それに伴なう廃棄物は発生する。
発 生してしまった廃棄物の適正処理が行なわなければ、 環境汚染は減少しないわけで、今回の法改正では排 出事業者の責任を強化し、最終処分までを見届ける ことを課している。
したがって、不法投棄や環境汚染 が発生した際に、排出事業者はその責任を問われ、場 合によっては原状回復の責任を負うこともある。
例え ば、適正処理に見合うコストを委託事業者に支払わ なかった場合、その結果として汚染等が生じればその 対応をしなければならず、安易な処理コスト削減は極 めて大きな環境リスクを背負うこととなる。
今後さらに、パソコンのリサイクル、自動車のリサ イクルなどの法制度化が予定されている。
いずれも生 産者にリサイクルを義務付けるもので、事業者はすで にそのルート作りを行っている。
法制度が整備され、 あらゆる製品・サービスが循環型に変らざる得ない状 況が作られているといえる。
「拡大生産者責任」の衝撃 企業が循環型経済社会システムへの方向転換を自 らの問題として認識し、進むべき道を決めるためには、 その背景にある国際的な大きな流れである「拡大生産 者 責 任 ( E P R : E x t e n d e d P r o d u c e r s Responsibility )」を理解する必要がある。
例えば、日本や欧州各国で導入されている容器包 装リサイクル法には、この「拡大生産者責任」の考え 方が取り入れられている。
従来、家庭から排出された 使用済みの容器包装は一般廃棄物として市町村が処 理していた。
その処理責任は自治体にあり、処理費用 は税金等の公的費用で賄われており(一部従量制等 の有料化により、市民が収集費用を直接負担する場 合もあるが)、市場経済の仕組みには組み込まれてい ない。
これは、方式の違いはあるが、日本だけではな く、欧米でも概ね同様である。
容器包装リサイクルシステムでは、従来、廃棄物処 理されていた容器包装をリサイクルするために、販売 量に応じて、また素材ごとに、新たにかかる費用を事 業者に負担させる仕組みである。
日本の場合、容器を 製造または利用する企業が、自らリサイクルするか、 リサイクル費用を負担し指定機関に業務委託すること が義務付けられている。
家電リサイクル法も同様であり、家電製品の生産者にリサイクルを義務付けている。
これらのリサイク ル法に共通していることは、生産者(販売者やサービ ス提供者を含め)がリサイクルの責任を負い、その費 用は市場経済の中で決定されるということである。
言 い換えれば、生産者はリサイクルしやすい製品を製造 販売することにより、リサイクル費用の負担を軽減す ることができるのだ。
このように、生産者の責任範囲を、従来、製品を 製造販売し、消費者が使用または消費するところまで であったものを、使用済み製品、または消費後の廃棄 物をリサイクルするところまで拡大する仕組みを「拡 大生産者責任」という。
この「拡大生産者責任」の仕組みを導入することに よって、従来、社会費用として税金で賄われていた、 DECEMBER 2001 30 すなわち外部経済化されていた廃棄物処理を、リサイ クルという形で市場経済の中に取りこむ、すなわち内 部経済化することができる。
そして、仕組みが導入さ れた瞬間に、従来にはなかった新たなリサイクル市場 が創出される。
リ・ネットワーキング 前述したように、リサイクル市場の出現により、新 たな輸送マーケットが創造されることは疑いの余地が ない。
現実に、容器包装リサイクル法の施行により、 全国にいくつものリサイクル施設が新設され、その拠 点へ回収した容器包装を運ぶという輸送ニーズが生ま れた。
また、家電リサイクル法の制定により、各家電 メーカーは自社の対象製品を効率よく収集・リサイク ルするために奔走し、現時点ではメーカー各社を二分 したネットワーク化が進んでいる。
その他にも、建設廃棄物リサイクル、食品リサイク ル、パソコンのリサイクル、自動車リサイクル――な どリサイクル関連法の制定に伴い、次々に新たなリサ イクルビジネスが創出されている。
それに伴い、従来 のような、排出者から廃棄物として一括に処理施設、 そして最終処分場へという流れではなく、排出者から 資源として分別排出、再資源化、そして再生品市場 へという新たな流れが生まれてくる。
したがって、そ れに応える物流ネットワークの構築が急務となること は間違いない(図3参照)。
しかし、出現する輸送ニーズは、サプライサイドの 輸送ニーズはもちろんのこと、従来の廃棄物処理の輸 送ニーズとも異なることを注意しなければならない。
新たに創出される「3R」の世界では、運ぶのは廃棄 物ではなく資源、原料、部品となるものである。
した がって、物によって運ぶ形態も異なる。
例えば、食品廃棄物の場合、飼料にするため には、腐敗を防がなければならない。
場合によっ ては保冷車が必要なケースもある。
部品として リユースするものを運ぶ場合は、機能的または外 観的損傷が発生しないように留意する必要があ る。
当然、運ぶ場所も通る経路も異なる。
従来 であれば比較的民家の少ない中間処理場や最終 処分場であったものが、民家の多い市街地の生 産工場に運ばれるということも有り得る。
また、従来は排出事業者から委託を受け、廃 棄物を輸送し、処理業者に引き渡すか、自ら処 理していたが、「3R」の世界では、輸送し、再 生事業者に引き渡すか、自らリサイクルし、さ らに原料や部品の利用者を探し、商品として彼 らに販売しなければならない。
引き取りから商品 としての販売までのネットワークを確実に作らな ければ、事業としては成立しない。
ドイツでは、自動車リサイクルの場合、自動 車整備工場、部品回収業者、再生事業者、部品メーカーをネットワークしたグループが全ドイツ をカバーして事業を行っている。
スウェーデンで も、解体業者や販売業者がネットワークされた中古部 品データベースがあり、修理工場や個人でアクセスで きるようになっているという。
日本でも、同様に中古 部品を流通するネットワークが構築されている。
いず れの場合も、再生品を利用する顧客をいかにネットワ ークするかがポイントとなる。
このように、各種リサイクル法の制定により、今後、 静脈物流の流れが変わり、ネットワークの再構築、す なわちリ・ネットワーキングが急速に進む。
そして、 サプライチェーン・マネジメント(SCM)において 行われてきたネットワーク作りと情報管理が、「3R」 14040 図3 リサイクル物流の真実 特集 31 DECEMBER 2001 でも必要になる。
まさに今後、SCMからLCM(ラ イフサイクル・マネジメント)への展開が求められる のである。
リサイクル物流は残された最大の市場 前述したとおり、リデュース、リユースを推進すれ ば廃棄物の量は削減する。
さらに、長期的には動脈側 の輸送量も減少する可能性がある。
一方、リサイクル の推進によって、分別排出が促進され、素材ごと、部 品ごとにリサイクルされるため、輸送経路は増え、輸 送ニーズは増加し、その市場は間違いなく拡大する。
これからの物流ニーズは、動脈物流から静脈物流に移 っていく。
しかし、新たに創造される市場は従来の静 脈市場とは全く異なる市場であり、そこに参入するに はそれなりの心構えが必要である。
循環型経済社会とは、物質循環の最適化により、余 分なものを運ばない、物を運ぶのに余分なエネルギー を使わない、余分な排気ガスを放出しない、すなわち 輸送に伴う環境負荷を最少化することである。
したが って、場合によっては、どれだけ輸送時の環境負荷が 小さな輸送手段を提供できるかが決め手になる。
市場構造の変化は、新たに創造される市場獲得の ビジネスチャンスであると同時に、既存の市場を失う ビジネスリスクでもあることを忘れてはならない。
《参考文献》 ●牧内勝哉『リサイクル先進国の新インフラ』ジェトロセンサ ー 2001.11 月号 ●三瓶恵子『ネットで活性化する自動車部品リサイクル』ジ ェトロセンサー2001.11 月号 ●『廃車政令―EU要綱と調整』Deutscher Markt 2000.8 プロフィール はぎわら・いっぺい 七八年早稲田大学理工学部電気工 学科卒業、八五年プリンストン大学大学院修士課程修了、 総合電機メーカー、大手シンクタンクを経て、九七年よ り現職、i-community 戦略センター長・理事・エグゼク ティブコンサルタント、横浜国立大学・大学院環境情報 学府非常勤講師を務める。
著書に『リサイクルの知識』 (九七年日経文庫)他。
問い合わせはh a g i w a r a i @ keieiken.co.jp まで。
図4
この数字が、いったい何を意味するのかお分かりだろ うか。
答えは、日本国内の家庭や工場から一日に排 出される廃棄物の総量である。
四人家族であれば、そ の量は一日あたり平均三六キログラム、年間十三・ 二トンということになる。
そして日本全体で見れば、年間四・五億トンの廃 棄物が排出されている。
その内訳は、一般家庭から排 出されるゴミ(一般廃棄物)が年間五〇〇〇万トン。
さらに工場や事業所から排出される廃棄物(産業廃 棄物)が、一般廃棄物の八倍にあたる年間四億トン あり、その推移はここ数年横ばい状態にある。
一般廃棄物の処理責任は自治体にあって、産業廃 棄物は企業に処理責任があるので、これらを足し合わ せて考えるのはおかしいのではないか、という意見も あるかもしれない。
しかし、私たちの生活と企業の活 動は密接に関係しており、どちらか一方だけで日本の 社会が成り立っているわけではない。
やはり私たちは 何らかの形で年間一人平均三・三トンの廃棄物にか かわっているのである。
私たちはゴミが目の前にあると、汚い、臭いと気に する。
しかし、いったん自分の手元を離れて、目の前 から消えてしまうとその存在を全く忘れてしまう。
と ころが実際は、四トン車換算で年間一・一億台分の 廃棄物が日本中を移動しているのである。
必ず限界が来る廃棄物処理 大量に排出される廃棄物は、圧縮や粉砕などの方 法で減容化または焼却され、最終的には処分場に行 く。
この際、有用物は途中で選別されてリサイクルの ルートに乗るのだが、様々なものが混在する廃棄物の 中からリサイクルできるものだけを選別するのは容易 ではなく、コストもかかる。
このため従来は、必ずし も積極的にリサイクルが行なわれてきたわけではなか った。
狭い日本の中でどんなに廃棄物を減容化しても、移 動しても、必ず最後は処分場に捨てなければならない。
ところが最近では、処分場の汚染問題などから地域住 民の反対運動が各地で起こっており、処分場の新設 は極めて難しくなっている。
例えば、首都圏の産業廃 棄物最終処分場の残余年数は一年未満、日本全体で も三年余りしかない。
また、有害廃棄物の海外輸出や廃棄物の海洋投棄 にも最近では厳しい国際規制がかけられている。
つま り、従来の廃棄物処理システムは限界に近づいており、 早急な対応策が求められている。
容器包装リサイクル 法や家電リサイクル法などの一連のリサイクル法は、 この対応策として登場してきたのである。
こうした状況は日本に限ったことではなく、程度の 差はあるにしても、欧米各国でも同様の問題が起こっ ている。
大量生産・大量消費・大量廃棄に支えられ た経済構造を有する国々に共通する課題なのである。
環境規制による方向転換 廃棄物問題をはじめとする環境問題は地球規模で 深刻化しており、図1に示したように、環境規制や環 境規格による問題への対応は世界的な潮流になってい る。
この流れを中心的に作り上げてきたのは、ドイツ、 オランダなど欧州の環境先進国といわれている国々で ある。
特に、ドイツは国家戦略として早くから環境問 題への取り組みを始めており、欧州各国はもちろんの こと、日本にも大きな影響を及ぼしている。
「循環型経済で変わる物流市場」 循環型社会経済への転換は、物流業者にとって大きなビジネスチャンス であると同時にリスクをもたらす。
静脈分野に新たな市場が誕生する一方 で、包装容器などを削減する取り組みは本来の動脈分野の物流市場を縮小 させる。
こうした変化を先取りして経営に活かすためには、法規制の底流 にある方向性を理解することが欠かせない。
萩原一平 NTTデータ経営研究所 i-community戦略センター長 理事・エグゼクティブコンサルタント 第4部 27 DECEMBER 2001 リサイクル物流の真実 特集 例えば、一九九一年にドイツで制定された包装廃 棄物法は、その後、フランス、オーストリアなど欧州 各国や日本で制定された容器包装リサイクル法のモデ ルとなった。
容器包装に印刷されている「グリューネ プンクト」という緑色のリサイクルマークは、法律に 基づいて事業者がリサイクル費用を負担しているとい う証明なのだが、その商標はドイツのDSD社という 容器包装リサイクルの運用管理機関が保有し、欧州 各国で共通のマークとして利用されている。
また、九 六年にドイツで施行された循環経済・廃棄物法は日 本の循環型社会形成推進基本法のモデルともいわれ ている。
日本でもこの数年間で、実に多くの環境規制が制 定されている。
わずか数年の間に図2に示すような多 くの環境規制が成立したというのは、恐らくいまだか つてないことであろう。
循環型の経済社会構築に向け た一連の規制の制定は、日本が、生産↓消費↓廃棄 というワンウェイの経済社会構造から、生産↓消費↓ 再生↓生産という循環型の経済社会システムの構築 へと大きく方向転換をしたことを示している。
ワンウェイから「3R」へ この方向転換における3つの大きな柱が「3R」、す なわち、リデュース(発生抑制:Reduce )、リユース (再利用:Reuse )、リサイクル(再資源化:Recycle ) である。
まず、リデュースについては、廃棄物の量を減らす 基本は、廃棄物になるものを使わない、作らないとい うことである。
例えば、シャンプーの容器を詰め替え 容器に変えることによって、また少量でも同じ効果が 出るように製品を改良し容器をコンパクト化すること によって、廃棄される容器包装の量を削減することが できる。
このリデュースの考え方は循環型システムの基本で ある。
間違いなく、排出されるゴミの量は減るし、輸 送効率も上がるため、省エネルギー、排気ガスの削減 にも貢献する。
しかし、物流と言う観点から見れば、 供給側、静脈側ともに、その輸送量が減少するという ことを意識しておく必要があるだろう。
次のリユースは、ゴミにする前に、もう一度利用し ようという考え方である。
例えば、ボトルを再利用す る、部品を再利用する、ということである。
ガラスび んを一〇回再利用すれば、最終的に廃棄される量は 一〇分の一になる。
物流という観点から見れば、輸送 量にはあまり影響しないかもしれないが、輸送ルート には変化が起こる。
従来、廃棄物処理のルートにまわ っていたものが、生産ルートにまわる、すなわち循環 することになるからだ。
そして、最後にリサイクルである。
リサイクルは、 焼却や埋め立てよりも費用がかかるし、エネルギーもかかる可能性がある。
しかし、焼却しても灰が残る。
埋立ててもいつかは処分場が一杯になる。
とすれば、 間違いなくリサイクルは促進していかねばならない。
リサイクルを行うには、素材ごとに分別して排出す ることが必須である。
いろいろな素材が混合したゴミ をそのままリサイクルすることはできず、また混合ゴ ミからリサイクルできるものを選別することも非常に 難しいからだ。
分別排出されたものは、素材ごとに異 なるリサイクルルートにまわることになる。
物流という観点から見れば、従来、廃棄物として一 括して処理ルートにのっていたものが、複数のリサイ クルルートにまわることになるわけで、物流ニーズは 増える方向になる。
この「3R」を経済的に実現できる社会が循環型 図1 DECEMBER 2001 28 経済社会である。
そして、このような社会の構築を目 指そうという国の基本的な考えを明示したのが「循環 型社会形成推進基本法」である。
その方向転換は既 に始まっているのだ。
循環型社会を支える七つの法律 「循環型社会形成推進基本法」は基本的枠組み法と して制定されており、この下に七つの法律が新たに制 定または改正され、「3R」を実現するためのレール が敷かれている。
それぞれについて、簡単にその概要 を紹介する。
(1) グリーン購入法 国や自治体に対して、再生材等を利用した環境配慮 型製品、いわゆるグリーン製品の購入を義務づけた法 律であり、製品のライフサイクルを通じて環境負荷を 軽減するとともに、再生材の利用市場の拡大を図るも のである。
この法律は一般の事業者や国民にも可能な 限りグリーン製品を購入するよう求めている。
(2) 食品リサイクル法 食品を製造、流通、または販売(外食産業等を含 む)している事業者ならびに消費者に対して、食品廃 棄物の発生抑制と再利用を義務付けた法律であり、と りわけ一定規模(年間排出量一〇〇トン)以上の事業者 は削減に向け具体的に取り組まねばならない。
食品廃 棄物は他の廃棄物とは異なり放置すればただちに腐敗 するため、迅速かつ適切な処理が求められる。
(3) 建設リサイクル法 建設廃棄物の排出量は産業廃棄物全体の約二割、最 終処分量では約四割を占めており、その量が多いこと、 さらに不法投棄、焼却時のダイオキシンの発生など環 境負荷が大きいと言われていた。
そこで、同法では発 注者も含めた建設関連事業者に対して、コンクリート や木材等、特定の素材を利用した建築物を解体する 際の分別排出と再利用を義務付けている。
(4) 家電リサイクル法 大型家電製品といわれるテレビ、エアコン、冷蔵庫、 洗濯機の四品目のリサイクルを製造事業者、販売店、 そして消費者に義務付ける法律であり、消費者はリサ イクル費用の負担、販売店は引き取りとメーカーへの 引渡し、製造事業者はリサイクルをそれぞれ実施しな ければならない。
とりわけ消費者は、廃棄物として排 出する際に、直接販売店等引き取り事業者に対して リサイクル費用を支払わねばならない点が他のリサイ クル法とは異なるところである。
(5) 容器包装リサイクル法一連の個別リサイクル法の中で、最初に法制化、施 行された法律であり、容器を製造する事業者、ならび に容器・包装を利用する事業者に対して再商品化の 義務を課している。
ガラスびん、PETボトル、プラ スチック製容器包装、紙製容器包装については、製 造または利用事業者に自らリサイクルを実施するか、 国が定める指定法人にリサイクル費用を支払いリサイ クルの義務を果たさなければならない。
(6) 資源有効利用促進法 この法律は従来の「再生資源利用促進法」が改正さ れ、新たに「資源有功利用促進法」として生まれ変わ ったものであり、特に事業者に対して、「3R」の促 進を義務づけるものである。
法律の狙いは、文字どお 図2 リサイクル物流の真実 特集 29 DECEMBER 2001 り資源の有効利用であり、事業者に対しては、製品そ のものの長寿命化をはじめ、生産プロセスにおける副 産物の発生抑制や再利用などを、業種ごと製品ごと に義務づけている。
(7) 廃棄物処理法 どんなに「3R」を推進しても、人間が生活し、生産 活動を行う限り、それに伴なう廃棄物は発生する。
発 生してしまった廃棄物の適正処理が行なわなければ、 環境汚染は減少しないわけで、今回の法改正では排 出事業者の責任を強化し、最終処分までを見届ける ことを課している。
したがって、不法投棄や環境汚染 が発生した際に、排出事業者はその責任を問われ、場 合によっては原状回復の責任を負うこともある。
例え ば、適正処理に見合うコストを委託事業者に支払わ なかった場合、その結果として汚染等が生じればその 対応をしなければならず、安易な処理コスト削減は極 めて大きな環境リスクを背負うこととなる。
今後さらに、パソコンのリサイクル、自動車のリサ イクルなどの法制度化が予定されている。
いずれも生 産者にリサイクルを義務付けるもので、事業者はすで にそのルート作りを行っている。
法制度が整備され、 あらゆる製品・サービスが循環型に変らざる得ない状 況が作られているといえる。
「拡大生産者責任」の衝撃 企業が循環型経済社会システムへの方向転換を自 らの問題として認識し、進むべき道を決めるためには、 その背景にある国際的な大きな流れである「拡大生産 者 責 任 ( E P R : E x t e n d e d P r o d u c e r s Responsibility )」を理解する必要がある。
例えば、日本や欧州各国で導入されている容器包 装リサイクル法には、この「拡大生産者責任」の考え 方が取り入れられている。
従来、家庭から排出された 使用済みの容器包装は一般廃棄物として市町村が処 理していた。
その処理責任は自治体にあり、処理費用 は税金等の公的費用で賄われており(一部従量制等 の有料化により、市民が収集費用を直接負担する場 合もあるが)、市場経済の仕組みには組み込まれてい ない。
これは、方式の違いはあるが、日本だけではな く、欧米でも概ね同様である。
容器包装リサイクルシステムでは、従来、廃棄物処 理されていた容器包装をリサイクルするために、販売 量に応じて、また素材ごとに、新たにかかる費用を事 業者に負担させる仕組みである。
日本の場合、容器を 製造または利用する企業が、自らリサイクルするか、 リサイクル費用を負担し指定機関に業務委託すること が義務付けられている。
家電リサイクル法も同様であり、家電製品の生産者にリサイクルを義務付けている。
これらのリサイク ル法に共通していることは、生産者(販売者やサービ ス提供者を含め)がリサイクルの責任を負い、その費 用は市場経済の中で決定されるということである。
言 い換えれば、生産者はリサイクルしやすい製品を製造 販売することにより、リサイクル費用の負担を軽減す ることができるのだ。
このように、生産者の責任範囲を、従来、製品を 製造販売し、消費者が使用または消費するところまで であったものを、使用済み製品、または消費後の廃棄 物をリサイクルするところまで拡大する仕組みを「拡 大生産者責任」という。
この「拡大生産者責任」の仕組みを導入することに よって、従来、社会費用として税金で賄われていた、 DECEMBER 2001 30 すなわち外部経済化されていた廃棄物処理を、リサイ クルという形で市場経済の中に取りこむ、すなわち内 部経済化することができる。
そして、仕組みが導入さ れた瞬間に、従来にはなかった新たなリサイクル市場 が創出される。
リ・ネットワーキング 前述したように、リサイクル市場の出現により、新 たな輸送マーケットが創造されることは疑いの余地が ない。
現実に、容器包装リサイクル法の施行により、 全国にいくつものリサイクル施設が新設され、その拠 点へ回収した容器包装を運ぶという輸送ニーズが生ま れた。
また、家電リサイクル法の制定により、各家電 メーカーは自社の対象製品を効率よく収集・リサイク ルするために奔走し、現時点ではメーカー各社を二分 したネットワーク化が進んでいる。
その他にも、建設廃棄物リサイクル、食品リサイク ル、パソコンのリサイクル、自動車リサイクル――な どリサイクル関連法の制定に伴い、次々に新たなリサ イクルビジネスが創出されている。
それに伴い、従来 のような、排出者から廃棄物として一括に処理施設、 そして最終処分場へという流れではなく、排出者から 資源として分別排出、再資源化、そして再生品市場 へという新たな流れが生まれてくる。
したがって、そ れに応える物流ネットワークの構築が急務となること は間違いない(図3参照)。
しかし、出現する輸送ニーズは、サプライサイドの 輸送ニーズはもちろんのこと、従来の廃棄物処理の輸 送ニーズとも異なることを注意しなければならない。
新たに創出される「3R」の世界では、運ぶのは廃棄 物ではなく資源、原料、部品となるものである。
した がって、物によって運ぶ形態も異なる。
例えば、食品廃棄物の場合、飼料にするため には、腐敗を防がなければならない。
場合によっ ては保冷車が必要なケースもある。
部品として リユースするものを運ぶ場合は、機能的または外 観的損傷が発生しないように留意する必要があ る。
当然、運ぶ場所も通る経路も異なる。
従来 であれば比較的民家の少ない中間処理場や最終 処分場であったものが、民家の多い市街地の生 産工場に運ばれるということも有り得る。
また、従来は排出事業者から委託を受け、廃 棄物を輸送し、処理業者に引き渡すか、自ら処 理していたが、「3R」の世界では、輸送し、再 生事業者に引き渡すか、自らリサイクルし、さ らに原料や部品の利用者を探し、商品として彼 らに販売しなければならない。
引き取りから商品 としての販売までのネットワークを確実に作らな ければ、事業としては成立しない。
ドイツでは、自動車リサイクルの場合、自動 車整備工場、部品回収業者、再生事業者、部品メーカーをネットワークしたグループが全ドイツ をカバーして事業を行っている。
スウェーデンで も、解体業者や販売業者がネットワークされた中古部 品データベースがあり、修理工場や個人でアクセスで きるようになっているという。
日本でも、同様に中古 部品を流通するネットワークが構築されている。
いず れの場合も、再生品を利用する顧客をいかにネットワ ークするかがポイントとなる。
このように、各種リサイクル法の制定により、今後、 静脈物流の流れが変わり、ネットワークの再構築、す なわちリ・ネットワーキングが急速に進む。
そして、 サプライチェーン・マネジメント(SCM)において 行われてきたネットワーク作りと情報管理が、「3R」 14040 図3 リサイクル物流の真実 特集 31 DECEMBER 2001 でも必要になる。
まさに今後、SCMからLCM(ラ イフサイクル・マネジメント)への展開が求められる のである。
リサイクル物流は残された最大の市場 前述したとおり、リデュース、リユースを推進すれ ば廃棄物の量は削減する。
さらに、長期的には動脈側 の輸送量も減少する可能性がある。
一方、リサイクル の推進によって、分別排出が促進され、素材ごと、部 品ごとにリサイクルされるため、輸送経路は増え、輸 送ニーズは増加し、その市場は間違いなく拡大する。
これからの物流ニーズは、動脈物流から静脈物流に移 っていく。
しかし、新たに創造される市場は従来の静 脈市場とは全く異なる市場であり、そこに参入するに はそれなりの心構えが必要である。
循環型経済社会とは、物質循環の最適化により、余 分なものを運ばない、物を運ぶのに余分なエネルギー を使わない、余分な排気ガスを放出しない、すなわち 輸送に伴う環境負荷を最少化することである。
したが って、場合によっては、どれだけ輸送時の環境負荷が 小さな輸送手段を提供できるかが決め手になる。
市場構造の変化は、新たに創造される市場獲得の ビジネスチャンスであると同時に、既存の市場を失う ビジネスリスクでもあることを忘れてはならない。
《参考文献》 ●牧内勝哉『リサイクル先進国の新インフラ』ジェトロセンサ ー 2001.11 月号 ●三瓶恵子『ネットで活性化する自動車部品リサイクル』ジ ェトロセンサー2001.11 月号 ●『廃車政令―EU要綱と調整』Deutscher Markt 2000.8 プロフィール はぎわら・いっぺい 七八年早稲田大学理工学部電気工 学科卒業、八五年プリンストン大学大学院修士課程修了、 総合電機メーカー、大手シンクタンクを経て、九七年よ り現職、i-community 戦略センター長・理事・エグゼク ティブコンサルタント、横浜国立大学・大学院環境情報 学府非常勤講師を務める。
著書に『リサイクルの知識』 (九七年日経文庫)他。
問い合わせはh a g i w a r a i @ keieiken.co.jp まで。
図4
