2001年3月号
Interview

ビジネスモデルで敵を知る

創刊準備号8 ビジネスモデルとは何か ――「ビジネスモデル」という言葉が注目 されています。
昨年の 12 月にはビジネスモ デル学会も設立されました。
国領先生ご 自身も、学会の設立を支援されていまし たね。
国領 ビジネスモデル学会の役割は基本 的には日本の産業構造を変える手助けを することです。
日本には優秀な人材、技 術が揃っている。
しかし、そうした人材 や技術が既存の組織や仕組みの中にキツ くロックされてしまっている。
流動性が ないわけです。
縦割りの縛りが強く、水 平展開できない。
残念ながら日本では、企業同士が人材 や技術を持ち寄って別の組み合わせ、つ まり新たなビジネスモデルを創造するよう な取り組みがほとんどない。
既存のサプ ライチェーンは、ある特定のメーカーのた めのサプライチェーンにすぎない。
大切な のは、そのほかのメーカーが活用できるよ うにオープンなプラットフォームにしたり、 川上から川下に流れるサプライチェーン を川下から川上に流れるデマンドチェー ンに変えたりすることです。
こうしたこと は抽象的なレベルでは語られていても、具 体的には実現されていない。
――ビジネスモデルという言葉自体、輪 郭がぼんやりしていてわかりにくい。
たと えば「業態」という言葉とは、どこが違う のでしょう。
国領 ビジネスモデルは四つの要素で決 まると考えています。
提供価値、デリバ リーメカニズム(配送機構)、インセンテ ィブシステム(動機付けの仕組み)、レベ ニュー(収入源)です。
私は、この四つの設計思想のことをビジネスモデルと呼 んでいます。
――サプライチェーンとビジネスモデルは 同じですか。
国領 一般にサプライチェーンの設計と は、デリバリーメカニズムの仕組みを構 築することだけを指します。
それだけでビ ジネスモデルとはいえません。
――それは先生が整理したものですか。
ビ ジネスモデルには既にオーソライズされた 整理の仕方や理論があるのですか。
「ビジネスモデルで敵を知る」 運賃無料――。
既存の物流業者がダンピング合戦にどっぷりつか っているうちに、そんな看板をひっさげたライバルが全く異質な業 界から突如として登場するかも知れない。
競争相手は、もはや業界 内にはとどまらない。
企業の構造改革とは、すなわち新しいビジネ スモデルの創造だ。
ビジネスモデルの視点を欠いた経営で新世紀を 生き抜くことはできない。
国領二郎 慶應義塾大学ビジネススクール 教授 編集長インタビュー 9 創刊準備号 国領 ありません。
というより、それぞれ が勝手に定義しているといったほうが正 しいでしょう。
だから、学会ができたので す。
整理することで役に立つ知見が出て くると考えています。
――企業の中で、ビジネスモデルは経営 者が考えるべきことですか。
それとも、ビ ジネスモデルについて専門的な知識のある 社員が組織を作って担当すべきことなの でしょうか。
国領 ビジネスモデルは経営の根幹です。
当然、トップマネジメント・マターです。
それをスタッフが支える形になるでしょう。
ビジネスモデルとはデザインの話であって、 日々のオペレーションとは違う。
見えないライバルに喰われる ――日本企業のトップの大多数はビジネ スモデルなど意識していないと思います。
それでも、これまで生き残ってきました。
国領 今の時代は、何十年もライバルだ った企業に負けることよりも、異質な企 業に仕事をもっていかれることのほうが 多くなっています。
ライバルよりも五% 〜一〇%安い商品を提供することで競争 してきたが、それよりももっと安い、例え ば無料で提供する企業が出てくる。
音楽をインターネットで無料配信する など、今まで有料だったサービスがある 日突然、無料になったりする。
思っても みなかったところからライバルが登場する ようになっています。
そうした敵が出てき た時に、「何で無料にできるのか」そのこ と自体を理解できないと太刀打ちしよう がない。
敵が明確に見えていて、敵と自分たち との構造が似ている時は攻勢を受けても 頑張れるし、それほど大勝ちも大負けも しません。
ところが、思いもかけない企業 や異質のビジネスモデルを持った企業が 自分たちの領域に現れて利益を吸い始め ると、完全に身動きがとれなくなること がある。
90 年代にコンピュータメーカー各社は、 敵はIBMだと思って技術開発などを進 めてきました。
ところが、実際にはインテ ルやマイクロソフトに足元をすくわれる結 果となった。
全く異質なところから敵が 現れて、利益を根こそぎ持っていかれた のです。
私がビジネスモデルを考えなければなら ないと強調している理由は、そこにあり ます。
ビジネスモデルについて理解がない と敵の戦略、敵のビジネスモデルを分析 できません。
無理です。
――実際にビジネスモデルを考えていく上 で最も重要なのは、先ほどの四つの要素 のうちのレベニューモデル、すなわちどこ で稼ぐかという点になりますか。
国領 その点は、よく注意して見ておか なければなりません。
確かに最近のIT ベンチャーには、異質で突飛なレベニュ ーモデルが出てきています。
しかし、実証 実験をして ウェブのコストを実際には誰 が負担しているのかを調べると、 IT企業 なのに古典的な物販でカバーしていると いうケースも多く見受けられます。
地域性の違いもあります。
例えば米国 ではバナー広告モデルが比較的機能して いるのに対し、日本ではうまくいっていな い。
売上高などの数値を見てもそれは明 らかです。
もっとも、今後は分かりません けれどね。
いずれにせよ、どこで売り上げるか、川 下からいただくか、川上からいただくか、 モノでいただくか、サービスでいただくか、 パッケージコンテンツでいただくか、そん な軸でビジネスを分析すると、色々なこ とが見えてくる。
――同じ業態の企業がライバルという、こ れまでの構図は崩れるわけですか。
国領 まったくその通りです。
同じ業態 ではなく、同じビジネスモデルを持つ企 業がライバルになるのです。
Interview

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