2001年3月号
キーマン

「私の仕事、私の情報源」

――ロジスティクスとの出会いは。
八〇年代末に大手物流業者のシ ステム開発を手掛けたのが最初で す。
初めは、下請けのそのまた下 請けとして業務を受託しました。
その後、飲み会の席かなんかで、 「パソコンを使えば面白い物流シ ステムができそうだ」といった話 を吹聴していたところ、同席して いたクライアントの方が「面白い、 やってみないか」と声をかけてく れたんです。
当時、業務系のシス テムといえばホストコンピュータ 全盛の時代です。
理解のある担当 者に出会えたことは、当社にとっ てラッキーでした。
――でも物流業務についてはまっ たくの素人ですよね。
そのクライアントの仕事を手伝 うなかで、物流現場に接する機会 がたくさんありました。
徹夜で一 緒に現場作業をしたこともありま す。
こうした経験を通じて、当社 は物流の世界で生きていこうと思 ったんです。
やっぱり現場は大事 です。
パソコンをながめているだ けでは見えないことが分かる。
どういう場面で問題が起こりう るのか、どうすればもっと便利な 仕組みを作れるのか。
また、倉庫 内のどのポイントでスキャニング すれば一番、的確に情報を把握で きるか。
一つずつ具体的に考えて きたわけです。
すべて、現場から 学びました。
――ネット上で宅配業者のサービ スを比較する「宅配ウオッチャ」 を始めたのはいつ頃ですか。
九六年からです。
私はヤマト運 輸以外のほとんどの大手物流業者 と一緒に仕事をした経験がありま す。
ですから各社の物流に対する 考え方の違いが、よく分かった。
宅配ウオッチャも、こうした経験 が原点です。
――最近、イータク・ドットコム というサイトも始めましたね。
これは宅配ウオッチャをリニュ ーアルしたサイトです。
面白いの がね、これを始めてから毎日のよ うに荷主から相談が寄せられるん です。
なぜか大手物流業者ではな く、私達のところに相談にくる。
ようするに、中小以下の荷主とい うのは物流業者に対する交渉力を 持っていません。
そこで我々にコ ンサルティングのようなことを依 頼してくるんです。
――ソニーの常務と兼任する形で 九八年にSLCの社長に就任しま したね。
ソニーでロジスティクスの担当 役員になったのが、その少し前で した。
そのときに最初に考えたの が、物流部門というのは本来どう あるべきか。
物流子会社とはどん な役割を果たすべきかということ です。
輸送や保管といった物流の 実務機能だけみれば、逆立ちして も専業者にはかないません。
しかも、ソニーは現在、「市場 競争力のあるサービスしか要らな い」という方針を貫こうとしてい る。
物流子会社を使うことが、本 当に有利なことかどうかを見極め ようとしています。
ですから私はSLCの社員にも、「死ぬか生き るかだ。
他社より安く良いサービ スを提供できなければ我々の意味 はない」と発破をかけています。
――それでも、昨年四月にソニー は本体の物流部門をすべてSLC に移管しました。
サプライチェー ンにおけるSLCの役割はますま す大きくなっている。
ソニーの物 流子会社戦略の特徴は何ですか。
ソニーの商品力を高めることを SLCの最大の目的としています。
具体的には、ソニーの売上高物流 費比率を少しでも減らすことです。
この点は事業化のためにスピンア ウトした物流子会社と、決定的に 違うのではないでしょうか。
――物流専業者に対するSLCの 競争優位点は何ですか。
荷主の視点で輸送キャリアを自 創刊準備号34 「顧客と宅配業者の意識のズレをウオッチ」 スナーク 富田恭敏 社長 物流キーマン 「私の仕事、私の情報源」 物流業者のサービスというは、 いったん荷主が発送してしまうと 後はブラックボックス化していま す。
今は技術的に見せることが可 能なのに、大手物流業者はやろう としません。
私には、ここに顧客 と大手物流業者の意識のズレが出 ているように思えてなりません。
「物流市場の?目利き〞を目指す」 ソニーロジスティックス 水嶋康雅 社長  由に選べることです。
自社のイン フラを持っている専業者は、どう しても自社の資産効率を考えてし まいます。
その点、我々には持た ざるものの強味がある。
キャリア を選択し自由にネットワークを組 むことができます。
その意味で 我々は物流業者ではありません。
ロジスティクス・サービス・プロ バイダーだと認識しています。
そ れこそが荷主側に立ったロジステ ィクス、企業内ロジスティクスの あり方だという考えです。
――物流市場を?目利き〞するた めの武器は。
キャリアごとに過去の物流事故 の有無や、物流サービス・レベル の違いを蓄積しています。
私達は ?物流品質〞と呼んでいます。
当 社の開発したインターネット物流管理システム「ELog 」の機 能の一部です。
協力業者にも、事 故に関するやりとりなどを日常的 にフィードバックしています。
逆 にどんなに運賃が安くても、品質 に問題があるようでは意味がない と荷主に説得もします。
物流業者 にとってもフェアな存在になって いると思います。
――現在のマテハン市場をどうと らえていますか。
従来は同じマテハンメーカー同 士で競争していました。
ところが 現在はゼネコンや情報システムな どの異業種が次々に参入してきて 他業界との競争がある上、質的な 変化が起きています。
ソフトやコ ンサルティングなど、ハードを販 売する以外の部分の比重が増えて いる。
ハードにしても、かつては 売り上げの八割が生産向けのもの でしたが、最近では流通の川下向 けと逆転しています。
――マテハンメーカーの役割も変 わりますね。
顧客はハードのスペックよりも、 システム全体でどれだけのコスト ダウンを実現できるのかに期待し ています。
「ウチの仕分け機の処 理能力は一時間に一万ケースです」、 「いやウチは一万二〇〇〇ケース です」といったマテハン機器メー カー同士の技術の売り込みや価格 競争では、もはや満足してもらえ ません。
ハードそのもので儲けようとい う考え自体を捨てたほうがいいと 考えています。
これからは機器を 買うのではなくリースし、保守・ 運用サービスを重視する顧客が増 えていくでしょう。
こうした動き に柔軟に対応できるかどうかで勝 敗が決まる。
物流センターの建設 であれば、土地の選定や建物の仕 様決定といった専門領域以外の仕 事もお手伝いできるような能力、 つまり、トータルソリューション 力が求められています。
――ソフト志向が強まるわけです ね。
実際、当社ではハードを売るだ けではなく、導入後の運用まで含 めたサービスを提供するという形 のビジネスが増えています。
当社 のスタッフが導入後も現場に張り 付き、顧客と一緒にシステムを運 用しながら、改善を図っていくわ けです。
――マテハンメーカーの仕事のや りがいとは。
マテハン機器の価格は数千万円 から数億円。
もともと一人の営業 マンが年間に何本もの受注契約を とれるような仕事ではありません。
中には何年も掛かって、ようやく 契約に漕ぎ着けたという仕事もあ りました。
それだけに、顧客との 社会的にも、組織的にも、 ロジスティクスの置かれている 立場はいまだに高いとはいえ ません。
企業経営を大きく左 右するテーマにもかかわらず、 そこに光が当たっていない。
こ れは、やっぱりおかしい。
彼ら に光を当てることが私の使命 だと、そのときに思いこんじゃ ったんですね。
それが私の基 本的なスタンスです。
ですから、その後に私が手 掛けた物流センターでは、そ の辺のオフィスに負けないぐ らいの環境を作りました。
ち ょっとやり過ぎたかもしれない けどね。
しかし、そうすること で物流現場の生産性も上がる はずだというのが、そもそも私 のセンター設計のコンセプト なんですよ。
――ロジスティクスビジネスの魅 力とは。
この世界は、混沌とした未 整理の状態にあります。
従来 の企業組織のような縦割りで はなく、水平統合式の考え方 が求められる世界でもある。
で すから物事を横断的に見てい く面白さがあります。
未開拓 というと言い過ぎですが、手 付かずの部分が多く残されて いるという意味では非常にチ ャレンジャブルな分野です。
――日頃、どんな情報源を活用し ていますか。
全体的な将来の動向を見極 めるためには海外の文献が一 番、参考になりますね。
米C LMの報告書や、一般メディ アのなかのロジスティクス関 連の記事を拾い読みしていま す。
ただ国内での現実の動向 を知るためには、それだけでは ダメです。
日本ロジスティク スシステム協会や日本能率協 会などが主催する講座や研究 会を参考にしています。
私の専門はどちらかという とマーケティング寄りのロジス ティクスですから、日経流通 新聞なんかも参考にしていま すね。
現実的なビジネスに関する情報は、同業のコンサル タントから入手することが少 なくありません。
意外に狭い 世界ですから、「こんな案件が あるんだけれども手一杯なん で助けて欲しい」といったこ とが結構あるんです。
大手の コンサルティングファームから の相談も少なくありません。
35 創刊準備号 「マテハンメーカーの新たなモデルを探る」 ダイフク 大西忠 副社長 ――なぜ長年、ロジスティクスに こだわってきたんですか。
私が物流に携わってもう二 十数年ですが、どうしても忘 れられない光景があるんです。
駆け出し物流マンとして、あ る販売会社に現場の調査に行 ったときの話です。
ちょうど 一カ月間の販売活動を終えた 営業マンが、予算達成を祝っ て打ち上げパーティを開いて いました。
しかし、同じ時間 に地下の倉庫では、受注案件 を処理するために物流マンが 懸命に作業をしていました。
こ の光景を見たとき、これでは イケナイと思いました。
契約が成立した時、つまり判子を もらった時は跳び上がりたくなる ほどうれしかった。
しかも、売って終わりというこ とはなく、顧客とは長期にわたる お付き合いになります。
これから は、さらに売り切り型の仕事が減 っていくわけですから、顧客との つながりがより深くなっていく。
「ダイフクの機械を入れたおかげで、 センター運営が順調だよ」とクラ イアントさんに声を掛けられるこ とが、契約書の判子よりも重みを 持つ時代になるでしょう。
「倉庫番に光りを当てるという使命感」 東京ロジスティクス研究所 重田靖男 社長

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