2001年3月号
キーマン

「私の仕事、私の情報源」

――ずっと日本ロジスティクスシ ステム協会(JILS)の要職に ついていますね。
いまJILSがやっていて、僕 もかかわっているロジスティクス 情報化推進会議(CLIP)では、 中間流通が担っている情報変換の 部分を、標準EDIに統一しよう としています。
会社として標準化 を進めてもらうよう、いま大手小 売り各社のトップを口説いている ところです。
今年の六月ぐらいに は、業界団体も巻き込んで標準化 のルールを決めてもらうつもりで す。
何も一億円も二億円も必要とい う話ではありません。
せいぜい多 くても二〇〇万円。
これすらでき ないような会社は、潰した方がい いという程度の額です。
この標準 化を実現するだけで多くの問題を 解決できます。
中間流通の機能を 本来、誰がやるべきかという点は、 それから考えればいいんです。
――理屈は分かりますが、現実に は簡単ではありませんね。
これまで標準化が進まなかった 理由も、まさにそこです。
情報変 換とか物流とか販促などの中間流 通の機能を、それぞれ機能別に考 える必要があります。
まず大きな 意味で、物流を機能分離するべき です。
おおむね理解されているこ とですが、流通は商流+物流であ るという視点を、もっときちんと 掘り下げる必要があります。
標準化や合理化によって物流の 効率化はできるけれど、実はそれ を阻んでいるのは商流に関するし がらみだということを理解すべき なんです。
メーカーの業務につい てもそうです。
工場での生産業務 というのは実は半分は物流なんで すね。
しかし、物流は二次的な業 務としてしか扱われてこなかった。
そんな位置付けでは、物流の合理 化が進まないのは当然です。
ただ、僕みたいな人間は非常に 少数派です。
こうやって標準化の 重要性なんかを主張し続けている と、そんなの当たり前だとか、話 が細かすぎるとか言われてなかな か理解されない。
そんなことをし ても売り上げは伸びないとか言わ れてね。
でもね、上手くやればこ の分野は宝の山だという確信を僕 は持っている。
――ロジスティクスに関する情報 ――トヨタがロジスティクス事業 に本格参入した狙いは。
従来、トヨタの産業機器部門は フォークリフトと倉庫内物流に傾 注してきました。
フォークに関し ては最近二年間を見ると、ほぼ四 〇%のシェアを確保しています。
しかし今後、この分野の大幅な伸 びは望めない。
我々のビジネスを 拡大していくためには、もう少し 周辺業務に手を広げる必要がある。
そう考えてロジスティクス事業に 力を入れ始めたんです。
ただし、マテハン機器の何もか もを自社でやろうと考えているわ けではありません。
トヨタは九〇 年頃、バブル期の人手不足の際に、 工場内のさまざまな作業のハンド リングを自動化しようとした時期 がありました。
ちょっと極端に走 ったんだね。
人手の世界から、い きなり自動化機器の世界にいった わけですから。
その時の経験から、事業として 産業機器の分野を見たとき、本当 に競争力のある部分だけに集中し た方がいいということになった。
そこで着目したのが流通のマテハ ン分野です。
ラックやパレタイ ズ・ロボットなどの、いわゆる保 管系ですね。
できれば近いうちに、フォーク の売上比率が八割、保管系が二割 という売り上げ構成に持っていき たいと考えています。
つまりフォ ークの売上高を維持しながら、二 割は業容拡大によって確保したい ということです。
――マテハン専業メーカーとの最 大の違いは。
自動倉庫などの専業メーカーと は、棲み分けが可能なのではない でしょうか。
確かに一時期、我々 創刊準備号36 「標準化を説き続けるミスター?EDI〞」 東芝物流 大久保秀典 常務 トヨタ自動車 佐藤則夫取締役 も自動倉庫などを手掛けていまし た。
しかし、今後は保管系に注力 していくつもりです。
小型フォー クとラックなどの組み合わせによ って、いかにトヨタ的な物流を提 案できるかが課題です。
無人化を 目指すとか、製造業のマテハン全 てをカバーするという発想とは、 少し力点が異なります。
――トヨタ生産方式のコンサルテ ィングも行っていますね。
この分野で事業を成立させる のは大変です。
ときどき頼まれて お手伝いはしていますが、それも 原価です。
コンサルティングで儲 けるつもりはありません。
ただ、ある倉庫を建てるときに、 どうやってモノを流せば効率的か、 あるいはラックと自動化機器をど う使い分ければいいのか、といっ たノウハウについては我々の経験 が活きてきます。
そこで全体のレ イアウトを提案し、必要な設備 を我々が納入するということはあ り得ます。
もっとも、トヨタ生産方式とい うのは、本当は目に見えるもので はありません。
物事の考え方であ り、仕事のやり方のことですから。
運用の思想でありマネジメントな んです。
その点を十分理解した上 で、仕事のやり方や仕組みをすべ て変えていかないと、できない理 由ばかりが並べられることになる。
理屈を教えるのは簡単ですが、ト ップ以下、皆がその気にならなけ れば実際には成功しませんね。
「トヨタ生産方式という?思想〞で運用する」 源は。
JILSの委員会や講座などか ら得る情報が大きいですね。
あと は社内の仕事をやっていれば、日 常的にさまざまな情報が入ってき ます。
正直なところ、メディアの 情報はあまり頼りにしていません。
というのも、私が取り組んでいる 標準化のようなテーマは先例のな いことが多いからです。
――トランコムは共同配送ベンチ ャーというイメージが強いのです が、最近では求貨求車事業が好調 のようですね。
昨年度の売り上げが四〇億円。
今年の三月期には五五億円を見込 んでいます。
当社が求貨求車事業 を始めたのは、ある人との出会い がきっかけでした。
結局、その方 に当社のこの分野での事業の基礎 を作ってもらうことになるんです が、彼は個人で?水屋〞をやって いたんです。
当時のトラック業界 の認識では、ミズヤ稼業は決して イメージのいいものではなかった。
いわばアウトローです。
輸送秩序 の確立という点では、運賃の値崩 れを引き起こす張本人と位置付け られていました。
しかし私はね、安くてもできる というのはスゴイことだと思った んですよ。
お客さんが値引きを要 請するのは当然だし、運輸会社に とっても帰り荷の確保は切実な課 題です。
見方によっては、きわめ て経済原則にのっとったビジネス です。
「これだ!」と思いましたね。
――マッチング作業はどうやるん ですか。
電話です。
求貨求車事業を当社 では物流情報サービスと呼んでい るのですが、現場は人海戦術です。
一言でトラックといっても、砂利 を運ぶものから、食品を運ぶもの まで様々です。
システム化しよう にも例外事項が多過ぎる。
もちろ ん最近のウェブを使った求貨求車 システムには非常に興味があるん ですよ。
当社もインターネット上 でマッチングするための準備を進 めています。
IT関連の子会社で あるトラフィックアイで、具体的 な事業化モデルなどを検討してい ます。
しかし、なかなか難しい。
やる以上は商売にならなければ、 意味がありませんから。
――事業アイデアの源は。
うーん。
僕はね、本も読まない し、新聞もさらっと見るだけです。
あんまり勉強しない。
ただし、マン ガチックな話ですけどね、必ず正 義は勝つと考えているんです。
よう は鞍馬天狗ですよ。
机上で考えて 正しいと思えるものは、想い続け て行動に移していけば、ほとんど は実現できると信じているんです。
当社が手掛けている事業は、す べて基本的にはトラックの台数を 少なくしようという話です。
同じ す。
その人が、非常に真面目な 方でね。
松下は「あらゆる環境 規制から逃げない」と正面切っ て言うんです。
これは信頼できる なと思いました。
それから家電製品協会との付き 合いも始まり、九四年からはソニ ーと、九五年からは松下と組んで 家電リサイクルの実証実験を手掛 けています。
ちょうどその頃に物 流の重要性も認識しました。
そこ で物流子会社のエコートランスポ ートを設立したんです。
――その後、中間処理業者の全国 組織、マリソル・ネットワークを 構築しました。
九〇年代の半ば頃から、家電メーカーをはじめとした大手排出業 者と話す機会が増えてきたんです。
すると「中田屋については分かっ た。
でも北海道や九州はできない んでしょ」という話が頻繁に出る。
そこで私は二年間、時間をくれと 言ったんです。
それから二年間で 全国の中間処理業者を組織して作 ったのがマリソル・ネットワーク です。
現在では全国に二十一社、 一七〇カ所ほどの処理工場を持つ 全国組織になりました。
――物流ネットワークはどうなっ ているんですか。
中田屋としても全国十数社の物 流業者によるネットワーク構築を 進めています。
物流関係について は、消費者から廃家電を引き取る 一次物流を含めて、松下とも相談 しながら非常に丁寧にネットワー ク作りを進めているところです。
ここが上手く機能するかどうかで、 家電リサイクルの行く末が大きく 左右されることになります。
日本通運のような大手に一括し て頼むのは、確かに楽です。
しか し、この業界にはすでに長年、収 集運搬業に携わってきた人達がい ます。
我々は彼らと上手く連携を 取りながら、全国的な物流網を構 築しようとしています。
マリソ ル・ネットワークに参加している 処理業者二十一社も、それぞれ主 体的に物流網の構築を進めている ところです。
――最近、日本でも環境に対する 社会的な認識がようやく高まって きました。
昔から日本には「臭い物には蓋」 とか「水に流す」といった言葉あ ります。
私はここに日本人の根底 にある意識が象徴的に表れている ように思えてなりません。
目の前 にある問題から目を背け、これを 先送りしようという姿勢です。
し かし、もはや限界です。
37 創刊準備号 「机上論は正しい、最後に正義は勝つ」 トランコム 武部芳宣 社長 ――リサイクル業者として中田屋 は、家電リサイクルの柱になって いますね。
九〇年代の始めに、リサイクル の研究開発を手がける財団法人 クリーン・ジャパン・センターの 講座で、たまたま松下の担当者 の隣りに座ったのが家電業界と つき合うようになったきっかけで 物流キーマン 「私の仕事、私の情報源」 量の荷物を少ないトラックで運ぶ ことができれば、荷主にとっても、 地球環境にとってもいい。
これは 正義です。
ようはそういうことで すよ。
「家電リサイクルの命運を握るのは物流」 中田屋 中田彪 社長

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