2003年6月号
特集
特集
物流管理の常識とは大違い ロジスティクスの手引きなぜ物流改革は失敗するのか
ロジスティクスの手引き
物流管理の常識とは大違い
特 集
日本型3PLの人材教育
長迫令爾 アルプス物流 会長
物流ABCが拓くマネジメント
内田明美子 日通総合研究所 経営コンサルティング部
コンサルタント
数百億円を投じた最新の需要予測システム
が全く機能しない―― 自社開発した全自動
マテハン設備がすぐに不要になった―― 物流
拠点を集約したのに在庫が減らない。
物流コ ストはむしろ悪化した―― 世間で物流先進 企業と目されている会社でさえ、一皮めくる とそんな改革の失敗が山積みになっている。
華々しい成果を上げた物流改革の取り組み が紹介される一方で、巨額の投資が全くのム ダになってしまったプロジェクトも決して少な くはない。
失敗は表に出にくいだけで、むしろ 成功よりもその数は多い。
それが実務家たち の実感だ。
実際、プロジェクト失敗の責任を 問われて、ひっそりと会社を去る改革担当者 は後を絶たない。
選り抜きのエリートが集まり知恵を絞った。
社外のコンサルタントや専門家の意見も確認 した。
十分な予算も確保した。
万全を期した はずのプロジェクトが、悲惨な結果を招いてし まうのはなぜか。
これまで物流管理の常識とさ れてきたアプローチに決定的な問題のあること が大きな要因の一つになっている。
物流改革プロジェクトの多くは物流の効率 化を目指す。
センター作業を改善し、輸送網 を最適化して生産性を上げ、物流コストの削 減を図る。
そのために必要な投資も行う。
し かし、その努力は酬われない可能性がある。
「も ともと必要のない物流をいくら効率化しても 意味がないからだ」。
日通総合研究所の湯浅和 夫常務はそう説明する。
効率的な庫内オペレーションや理想的な輸 送網も、拠点網が再編されれば一からやり直 しだ。
物流センターを集約しても生産活動が 従来通りであれば在庫は全く減らない。
保管 場所が物流センターから他のどこかに移るだけ。
さらには需要予測を強化して必要なだけしか 生産しない体制を組んでも、調達が同じなら 製品在庫の代わりに原材料や仕掛品の在庫が 増えてしまう。
従来のアプローチで物流効率化を進めると、 そのしわ寄せが他部門の非効率を招く。
個別 部門の最適化が全体の効率を阻害する?合成 の誤謬〞が起きる。
それを回避するために生 まれた全体最適化のためのコンセプトがロジス ティクスだ。
さらに管理対象を社外にまで広 げて、流通全体の最適化を図ろうとするのが サプライチェーン・マネジメント(SCM)だ。
これまでの物流管理と、ロジスティクス/S CMは、その出発点から異なっている。
企業経営に必要なのは物流の効率化ではなく、最 終的な利益だ。
今日のビジネスでは、効果的 なビジネスモデルの構築が利益を生むための条 件になる。
それがロジスティクス/SCMの出 発点になる。
物流効率化によるコスト削減は、 ビジネスモデルが定まって初めて活きる。
その 逆はない。
実際、ビジネスモデル次第でマネジメントの 焦点は大きく異なってくる。
ベリングポイント の入江仁之バイスプレジデントは、サプライチ ェーンをそのコスト構造から、?設備投資や 人件費の割合が大きい資産集約型、?資材調 達費の割合が大きい原材料集約型、?流通費 なぜ物流改革は失敗するのか 解説 本誌編集部 物流改革へのテクノロジー 福島和伸 城西大学 教授 「ザ・ゴール」に学ぶ ロジスティクスのTOC=制約管理 小林俊一 日本能率協会コンサルティング 取締役 グローバルワン・サプライチェーン ――ITが可能にする新しいモデル 五十嵐慎二 アクセンチュア パートナー サプライチェーンの評価方法〈前編〉 ダグラス M・ランバート オハイオ州立大学/ノースフロリダ大学 教授 テレンス L・ポーレン ノースフロリダ大学 教授 連載 事例で学ぶ現場改善―第6回 作業員五〇人以下の現場のコスト管理 中根治 日本ロジファクトリー 取締役 新連載 講座 SCMの常識――改革プロジェクトの現場から 理論編『SCMとは何か』 実践編『改革プロジェクトの現場から』 杉山成正 ベリングポイント ディレクター CLO実践録―第7回 食品メーカーのロジスティクス管理 川島孝夫 味の素ゼネラルフーヅ 常勤監査役 ロジスティクス・リーダーシップ論―第8回 コラボレーションのための標準化 楢村文信 P&G ECRネットワーキング・マネージャー の割合が大きい流通集約型の三つのモデルに 分類している(表参照)。
それぞれのモデルで 改善すべきテーマと、施策は全く違う。
原材料の入手から最終的な顧客に商品を提 供するまでにはたくさんのプロセスが存在する。
通常は複数の企業が機能を分担して一つのサ プライチェーンを構成している。
そのうち最も 処理能力の低いボトルネック、すなわち「制 約」がサプライチェーン全体の生産性を決定 する。
従って制約以外のプロセスをいくら改善 してもサプライチェーン全体の能力は向上しな い。
全体最適のための改善は制約に集中する 必要がある。
この「制約理論=TOC」がSCMの基本理 論だ。
当然、ロジスティクス管理の照準も制 約に向けられる。
制約を改革し、制約を最大 限活用するためにロジスティクス面での施策を 打つ。
その結果、物流コストが増加しても、そ れ以上に利益が増えるのなら構わない。
これま での物流管理の常識は往々にしてロジスティ クス管理では非常識になる。
ところが、多くの企業がロジスティクスの常 識を無視したまま物流改革に取り組んでいる。
そこではロジスティクスと物流が全く混同され ている。
「米国でも同じだ。
ロジスティクスや SCMのコンセプトが十分認識されていると は言い難い。
ロジスティクスと物流の区別もつ かない経営者やマネジャーがいまだに圧倒的 だ」と、米オハイオ州立大学のダグラス・M・ランバート博士は指摘する。
とりわけ日本では物流の教科書は数あれ、ロ ジスティクスの教科書となると現状では全く存 在しない。
ロジスティクスを教育するプロフェ ッショナルもいない。
欧米のノウハウも、その ままでは日本市場には適用できない。
それでも ビジネスは回り続けている。
企業の実務家た ちは手探りのマネジメントを余儀なくされてい るのが実情だ。
そんな実務家たちの試行錯誤 から生まれたロジスティクスの知恵を今回は特 集する。
抽象的な机上の空論ではない、改革 の現場からの報告だ。
サプライチェーンの3つのモデル 取材を基に本誌が作成 設備投資や人件費の割合 が大きい アセット・インテンシブ (Asset Intensive) 資産集約型 マテリアル・インテンシブ (Material Intensive) 原材料集約型 ディストリビューション・インテンシブ (Distribution Intensive) 流通集約型 素材メーカー、サービス業 稼働率×製品利益率が最 大になるように設備と労 働力を使う 設備や労働力の引き当て の最適化 設備能力・労働力 資材調達費の割合が大きい カギとなる資材の調達 カギとなる資材の引き当て の最適化 カギとなる資材の在庫をで きるだけ利益率の高い商品 に引き当てる 組み立てメーカー 流通費の割合が大きい 店舗の棚スペース、販売機会 の確保 欠品、販売機会損失の最小化 必要な場所に必要な時に商品 を供給する 一般消費財メーカー モデル コスト構造 制約 SCMの焦点 施策 業種
物流コ ストはむしろ悪化した―― 世間で物流先進 企業と目されている会社でさえ、一皮めくる とそんな改革の失敗が山積みになっている。
華々しい成果を上げた物流改革の取り組み が紹介される一方で、巨額の投資が全くのム ダになってしまったプロジェクトも決して少な くはない。
失敗は表に出にくいだけで、むしろ 成功よりもその数は多い。
それが実務家たち の実感だ。
実際、プロジェクト失敗の責任を 問われて、ひっそりと会社を去る改革担当者 は後を絶たない。
選り抜きのエリートが集まり知恵を絞った。
社外のコンサルタントや専門家の意見も確認 した。
十分な予算も確保した。
万全を期した はずのプロジェクトが、悲惨な結果を招いてし まうのはなぜか。
これまで物流管理の常識とさ れてきたアプローチに決定的な問題のあること が大きな要因の一つになっている。
物流改革プロジェクトの多くは物流の効率 化を目指す。
センター作業を改善し、輸送網 を最適化して生産性を上げ、物流コストの削 減を図る。
そのために必要な投資も行う。
し かし、その努力は酬われない可能性がある。
「も ともと必要のない物流をいくら効率化しても 意味がないからだ」。
日通総合研究所の湯浅和 夫常務はそう説明する。
効率的な庫内オペレーションや理想的な輸 送網も、拠点網が再編されれば一からやり直 しだ。
物流センターを集約しても生産活動が 従来通りであれば在庫は全く減らない。
保管 場所が物流センターから他のどこかに移るだけ。
さらには需要予測を強化して必要なだけしか 生産しない体制を組んでも、調達が同じなら 製品在庫の代わりに原材料や仕掛品の在庫が 増えてしまう。
従来のアプローチで物流効率化を進めると、 そのしわ寄せが他部門の非効率を招く。
個別 部門の最適化が全体の効率を阻害する?合成 の誤謬〞が起きる。
それを回避するために生 まれた全体最適化のためのコンセプトがロジス ティクスだ。
さらに管理対象を社外にまで広 げて、流通全体の最適化を図ろうとするのが サプライチェーン・マネジメント(SCM)だ。
これまでの物流管理と、ロジスティクス/S CMは、その出発点から異なっている。
企業経営に必要なのは物流の効率化ではなく、最 終的な利益だ。
今日のビジネスでは、効果的 なビジネスモデルの構築が利益を生むための条 件になる。
それがロジスティクス/SCMの出 発点になる。
物流効率化によるコスト削減は、 ビジネスモデルが定まって初めて活きる。
その 逆はない。
実際、ビジネスモデル次第でマネジメントの 焦点は大きく異なってくる。
ベリングポイント の入江仁之バイスプレジデントは、サプライチ ェーンをそのコスト構造から、?設備投資や 人件費の割合が大きい資産集約型、?資材調 達費の割合が大きい原材料集約型、?流通費 なぜ物流改革は失敗するのか 解説 本誌編集部 物流改革へのテクノロジー 福島和伸 城西大学 教授 「ザ・ゴール」に学ぶ ロジスティクスのTOC=制約管理 小林俊一 日本能率協会コンサルティング 取締役 グローバルワン・サプライチェーン ――ITが可能にする新しいモデル 五十嵐慎二 アクセンチュア パートナー サプライチェーンの評価方法〈前編〉 ダグラス M・ランバート オハイオ州立大学/ノースフロリダ大学 教授 テレンス L・ポーレン ノースフロリダ大学 教授 連載 事例で学ぶ現場改善―第6回 作業員五〇人以下の現場のコスト管理 中根治 日本ロジファクトリー 取締役 新連載 講座 SCMの常識――改革プロジェクトの現場から 理論編『SCMとは何か』 実践編『改革プロジェクトの現場から』 杉山成正 ベリングポイント ディレクター CLO実践録―第7回 食品メーカーのロジスティクス管理 川島孝夫 味の素ゼネラルフーヅ 常勤監査役 ロジスティクス・リーダーシップ論―第8回 コラボレーションのための標準化 楢村文信 P&G ECRネットワーキング・マネージャー の割合が大きい流通集約型の三つのモデルに 分類している(表参照)。
それぞれのモデルで 改善すべきテーマと、施策は全く違う。
原材料の入手から最終的な顧客に商品を提 供するまでにはたくさんのプロセスが存在する。
通常は複数の企業が機能を分担して一つのサ プライチェーンを構成している。
そのうち最も 処理能力の低いボトルネック、すなわち「制 約」がサプライチェーン全体の生産性を決定 する。
従って制約以外のプロセスをいくら改善 してもサプライチェーン全体の能力は向上しな い。
全体最適のための改善は制約に集中する 必要がある。
この「制約理論=TOC」がSCMの基本理 論だ。
当然、ロジスティクス管理の照準も制 約に向けられる。
制約を改革し、制約を最大 限活用するためにロジスティクス面での施策を 打つ。
その結果、物流コストが増加しても、そ れ以上に利益が増えるのなら構わない。
これま での物流管理の常識は往々にしてロジスティ クス管理では非常識になる。
ところが、多くの企業がロジスティクスの常 識を無視したまま物流改革に取り組んでいる。
そこではロジスティクスと物流が全く混同され ている。
「米国でも同じだ。
ロジスティクスや SCMのコンセプトが十分認識されていると は言い難い。
ロジスティクスと物流の区別もつ かない経営者やマネジャーがいまだに圧倒的 だ」と、米オハイオ州立大学のダグラス・M・ランバート博士は指摘する。
とりわけ日本では物流の教科書は数あれ、ロ ジスティクスの教科書となると現状では全く存 在しない。
ロジスティクスを教育するプロフェ ッショナルもいない。
欧米のノウハウも、その ままでは日本市場には適用できない。
それでも ビジネスは回り続けている。
企業の実務家た ちは手探りのマネジメントを余儀なくされてい るのが実情だ。
そんな実務家たちの試行錯誤 から生まれたロジスティクスの知恵を今回は特 集する。
抽象的な机上の空論ではない、改革 の現場からの報告だ。
サプライチェーンの3つのモデル 取材を基に本誌が作成 設備投資や人件費の割合 が大きい アセット・インテンシブ (Asset Intensive) 資産集約型 マテリアル・インテンシブ (Material Intensive) 原材料集約型 ディストリビューション・インテンシブ (Distribution Intensive) 流通集約型 素材メーカー、サービス業 稼働率×製品利益率が最 大になるように設備と労 働力を使う 設備や労働力の引き当て の最適化 設備能力・労働力 資材調達費の割合が大きい カギとなる資材の調達 カギとなる資材の引き当て の最適化 カギとなる資材の在庫をで きるだけ利益率の高い商品 に引き当てる 組み立てメーカー 流通費の割合が大きい 店舗の棚スペース、販売機会 の確保 欠品、販売機会損失の最小化 必要な場所に必要な時に商品 を供給する 一般消費財メーカー モデル コスト構造 制約 SCMの焦点 施策 業種
