2003年6月号
特集
特集
物流管理の常識とは大違い ロジスティクスの手引き 作業員50人以下の現場のコスト管理
作業員50人以下の現場のコスト管理
JUNE 2003 42
◆経験と勘以上、物流ABC未満
コンサルタントである我々にとって、物流AB
C(Activity Based Costi
ng:活動基準原価計算)はやりがいのあるテー
マだ。
ただし、本格的にABCを実施するには丸 一年あっても足りない。
全商品の動きを調べるだ けで、一年ぐらいかかってしまう。
現場の動きを 全て数値化しようとすれば二年を覚悟しなければ ならない。
そのため話題になっている割には、物流ABC を実際に導入・運用している会社はそれほど多く はない。
大手の先進企業で導入されるケースが専 らで、中小企業にはあまり浸透していない。
当社 の事例を振り返っても、簡易的な物流ABCを当 社から提案・実施して効果を上げることはあって も、クライアントから物流ABCを導入したいと 相談に来るケースは希だ(ちなみに弊社では一九 九九年から物流ABCの概念を改善活動に取り入 れている)。
通常、物流ABCのアウトプットが出るのは調 査開始から三カ月ほどかかる。
調査結果に基づい て実際の改善に取りかかろうとする頃には環境は 変わっていることが珍しくない。
例えば物流現場 に二〇人のアルバイトがいたとする。
個々人のア クティビティを調べる。
その結果を基に最も効率 の良いパターンで人員配置と業務手順を決める。
と ころが、それが決まった頃には主要なメンバーの 多くは入れ替わっている。
あるいは、とても能力が高いアルバイトがいたと する。
物流ABCの結果、そのアルバイトを別の 業務に配置することになった。
ところが当人は「い や、ダメです。
私は一三〇万円枠がありますから」 という。
社会保険の加入が義務になる年収一三〇 万円を超えては働きたくないというわけだ。
その 時点で改善がストップしてしまう。
業務プロセスが単純過ぎる場合も物流ABCは 役に立たない。
配送業務を例に取ろう。
アクティビティは「運転」と「荷物積み込み・ 受け渡し作業」。
最も効率を阻害している業務は 「得意先センターへの納品待ち時間」。
そしてコス ト・ドライバーは「運転手本人(人件費が大半)」。
この場合、コスト削減のカギとなるのは、納品待 ちをなくすための得意先との交渉であり、物流A BCでは一台の車両について運転方法や積み卸し のプロセスをいくら詳細に分析しても、その効果 は知れている。
物流ABCは業務内容が複雑になればなるほど、 現場の規模が大きくなればなるほど効果が出る。
作 業員数が五〇人以上もいるような、大規模で業務プロセスが明確な現場であれば明らかな効果が期 待できるだろう。
しかし、それ以下の規模では徒 労に終わることも少なくない。
とくにパート・アル バイト(以下P/A)が七〜八割を占めているよ うな現場では調査が全くのムダに終わる可能性も 否定できないのだ。
少なくとも継続性・応用性が低い業務、詳細な アクティビティを設定しようがない業務、設定し たとしても改善の手法が限られる業務は、物流A BCが活きてこない。
逆に物流ABCの導入が活きるケースとは「競 争相手が多い地域において、物流ABCを行うこ とで作業を標準化・機械化・自動化できることが 見込める、物量、手間の多い仕事」のような場合 物流ABCは確かに効果的だ。
しかし、小さな現場には適さない。
調査に手間がかかる上、改善がムダに終わる可能性も高い。
作業員 数50人以下、しかもパート・アルバイトが全体の7〜8割を占める ような現場のコスト管理では、物流ABCの導入よりむしろ7人程 度のチームによる小集団管理のほうが現実的だ。
中根治 日本ロジファクトリー取締役 連載 事例で学ぶ現場改善《特別編》 43 JUNE 2003 などである。
作業員の人件費自体、つまり労働力の調達コス トは同一地域内においてはさほどの違いはない。
と りわけ最近はP/A、派遣人材についても、法律 の整備によって調達コストは社員と同様のレベル に近づきつつある。
同じエリアで労働集約型の作 業を見積もっても、その地域の賃金基準の中でし かコスト削減余力はない。
また熟練前と熟練後で の生産性の違いはあるが、熟練後は長期的に見てさほどの生産性の差はなくなる。
したがって、同一地域内の他社の物流センター と作業コストに差をつけられるとすれば、?労働 集約型の現場運営を標準化し、機械化・自動化を 進め、?業務プロセス自体を抜本的に見直し、プ ロセス自体をなくす、あるいは短縮する場合に限 られる。
ただし、そのためには、 ・分析した業務がその指示を含めて標準化され、業 務プロセス短縮などの変革が図れるものである こと ・その仕事が今後も続き、継続して物量を確保で きること が条件になる。
この条件を当てはめることができ る現場が果たしてどれだけあるだろうか。
物流センターの多くは、仕事内容が安定してお らず、非連続的かつ単純な仕事の繰り返しという 条件下に置かれている。
しかも非正社員が多く、職 場としての調査・分析まで持ち込む現場責任者の 牽引力に期待はできない状態にある。
このような 物流ABC以前の現場に対応した問題解決の方法 論、ざっくばらんに言えば「経験と勘以上、物流 ABC未満」の大多数の物流現場に合った仕組み が必要だ。
◆ラグビー式7人制「小集団管理」 私は経験上、そうした過渡期の物流現場には小 集団管理の導入が一番現実的で効果が高いと考え ている。
小集団管理の?小集団〞とは物流マネー ジャーが十分に意思疎通できる人数、?管理〞とは 従業員が出社して退社するまでに行われる現場業 務のコントロールのことである。
小集団管理で行われる現場業務改善へのアプロ ーチは物流ABCと良く似ている。
私が実際に行 ったアプローチは、いくつかの小集団が業務を並 行して行う中で発生する共通問題をアクティビテ ィとして、この問題の改善仮説の設定を責任者が 行い、逐次共有するというものだ。
物流ABCと 違う点は「アクティビティの設定が随時変化する こと」と、「問題を感じた時点から実務改善がスタ ートする」ことだけである。
物流コンサルタントになる以前に、私はある会 社で物流センター長として働いていた。
その会社 では、毎日のように新店のオープニングの準備を 行っており、最盛期には一年間で一四〇店舗の新 店が誕生した。
当時の会社の差し迫った問題は「一 四〇人の店長をどうやって確保し、育成するのか」 であり、物流現場に社員を投入する余裕などなか った。
物流はP/Aで処理するしかない。
現場は一日でも先に入社した人間のつたない経 験と勘だけで、なんとか運営をしているというのが 実情であった。
業務ノウハウの伝達がままならな いため、P/Aのモラルもモチベーションは落ち、 規定時間の勤務さえままならない。
P/Aの数は なし崩し的に膨らんだ。
現場のコストは跳ね上が り、生産性は落ち続けた。
そこで目を付けたのが「小集団管理」という方 法であった。
ヒントは学生時代にやっていたラグ ビーの経験である。
ラグビーはご存知の通りフォ ワード七人とバックス人名という二つの集団が集 物流管理の常識とは大違い ロジスティクスの手引き 特集 ABC/ABMの考え方 ・利益 ・人件費 ・光熱費他 の変動費 ・管理費用 ・地代家賃 コスト削減要素が見つからない ABC ○円の利益が欲しい パート時給は○円 △人で○円かかる 保険は○円で△人… 電気代は○円 ダンボール代は○円 ガソリン代は○円… パートの管理者が必要、 時給○円… 坪△円の倉庫で□坪使う、 一個○円… どの部分にいくらかかっているかわかる →コスト削減要素がわかる、ムダが見える 光熱費他 の変動費 物を取り出す 検品する 箱詰めする 伝票を書く トラックに積み込む 運転手が配送する 現地で待機する 荷物をおろす 検品する 客先から戻ってくる 事務所で報告書作る ある仕事は単一の要素で成り立 っているわけではなく、1つの仕事を するために様々な要素が関わり合っ て、価格を作っています。
いままでは、「1業務について○円 ぐらいかかるだろう」という、経験と 勘に基づいて値決めをする場合が ほとんどでした。
「ABC/ABM」では、その仕事をさ らに細かく切り分けて、1つ1つの業 務でコスト削減の要素がないかを見 直し、さらに安いコストでできないか を検証することが大きな役割です。
物を運ぶ 物を運ぶ 今まで 物を運ぶ仕事一 式として認識。
どの部分にいく ら費用がかかっ ているかわから ない 利益 人件費 地代家賃 管理費用 ABM 物を運ぶ人件費 ○分 ○分 ○分 ○分 ○分 仕事をその活動毎に時間で切り分け、 時間当たりのコストを算出する (活動要因分析) JUNE 2003 44 合してチームを構成している。
これに「ナンバー 8」と呼ばれるチームの司令塔が配置される。
ナ ンバー8は、チームの要の役割を果たす。
チームとしての最終目的はボールをゴールポス ト下まで持っていくことで共通しているが、フォワ ードとバックスの役割はそれぞれ厳格に定められ ている。
なおかつ目標達成のためには即時的確な 判断と臨機応変な行動が求められる。
このラグビ ーの考え方を仕事に応用したのである。
◆パート・アルバイト主導の改善 実際には次のように現場を組み立てた。
まず私自身が責任を追う業務を明確に定めた。
「P/Aが負えない責任を伴う業務が社員の仕事」 という仮説を立て、具体的には?人事・採用、? 昇給・昇格評価と教育、?給与計算と現金出納、 ?対外折衝と、?出荷商品に対する最終責任、の 五つを社員の仕事と定義した。
このほかの業務は すべてP/Aに実行してもらうわけだ。
次に集団編成にあたり、「一人の人間が十分に意 思疎通できる人間は七人程度ではないか」という 仮説を立て、私はまず七人のP/Aリーダーを育 成することとした。
各P/Aリーダーの下には、さ らに七人のP/Aを所属させる。
そして一連の業 務遂行とP/Aの出退勤や出社日の調整を全て P/Aリーダーに管理させる。
これで七×七=四 九人の小集団からなる組織を作った。
そして各集団に任せる業務の内容を見直した。
入 荷、出荷、検品、在庫管理それぞれについて各集 団が最も効率の良い方法を考え、朝礼で発表しあ う。
良い方法が出たらP/Aリーダーを集め、す ぐに方法を共有させる。
この集まりは必要に応じ は、現地で見やすければよい」という仮説から発 案された。
背景にはコンピュータの伝票発行スピ ードが遅いということもあった。
当然、納品書は 出すが、その納品書は出荷前に全部のダンボール に書かれた商品数の合算を打っただけのものだ。
この改善は店舗の陳列棚に商品をすぐに陳列す るときにも役立った。
ダンボールにはナンバリング がしてあり、新店オープンの時などはこの番号ど おりに商品を棚入れしていくと、一日で開店準備 完了となる。
それまでは新店用の商品陳列には一 週間がかかっていた。
楽をするための取り組みは仕入れや注文対応に まで及んだ。
今思えばずうずうしい限りなのだが、 「棚卸を効率的にするため仕入れの入荷は月末にし ないで欲しい」とバイヤーに要請した。
また特に 注文の多い得意先は積極的に電話で入荷予定情報 を流し、その得意先が大口に注文をまとめて来た ときに「今日は○○さんの日!」という特別シフ トを組んで出荷するようにした。
これもP/Aの アイデアだった。
FAXでの受注対応から、電話 での御用聞き、さらには発注日の誘導まで始めた のである。
こうしてチーム制で現場を運用していくうちに、 自然と小集団、P/A同士で役割分担もできてき た。
PC入力が得意な人は端末周辺に独自の分類 表を壁に貼り、PCの辞書に用語登録を始めた。
フ ォークリフトを乗るのが好きなP/Aは、仕事が やりやすくなるようにロケーションを毎日のように 変えた。
改善アイデアはラベルシールの糊の粘度 にまで及んだ。
P/Aリーダーのアイデアはいつも私を驚かせ た。
その一つに休憩時間の設定がある。
あるリー て不定期に行った。
連絡事項は休憩室に大学ノートを置いて情報共 有させた。
私自身が学生時代にアルバイトをして いた二四時間営業のファミリーレストランで行っ ていたやり方を流用したものだ。
大学ノートには、 たわいもないことを書いても構わない。
これは「意 志の疎通は会話の投げかけの回数で決定する」と いう仮説に基づいている。
実際、飲み会の予定と、 作業ルールの変更のお知らせが同じページに書か れていることもしばしばだった。
センターでは商品カテゴリー別に小集団を編成 した。
商品ごとに販売のルール、受注、納品条件 に特長があったからだ。
ただし、商品カテゴリーご との違いはあっても、共通化することで得られる ノウハウはすぐさま仮説を立て、検証し、共有し た。
物流ABCならばさしずめ「アクティビティ の抽出」作業にあたるだろうか。
管理を厳しくして生産性を高めるというより、 「いかに手をかけないか、仕事を楽にするか」とい うのが合言葉だった。
例えば一時期、商品出荷に 際して腰痛になるP/Aが続出した時期があった。
この時は台車での運搬をやめ、商品棚に車をつけ て入荷した商品を臨時的に陳列し、荷捌き場に商 品を持ってきてピッキングをするように改善した。
「作業動線を見直す」のではなく、「荷物を動かす と腰を痛めるから、荷捌き場で作業をする」ので ある。
各集団はお互いに場所を融通しながら、稼 動棚を転がして作業スペースを作り出した。
駅売 りの催事から得た発想である。
同時にダンボールも見直した。
ダンボールの横 面に出荷商品分類表を印刷して伝票を発行する、と いう作業自体をなくした。
「伝票に書いてある情報 45 JUNE 2003 ダーが「昼一時間の休憩を午前一〇時より一五分、 昼に三〇分、午後三時に一五分で設定させて欲し い」という。
なぜかと尋ねると、保育園に子供を 出しているパートさんがスムーズに仕事に入れて、 負い目なく仕事をあがらせたいからという。
能力も高く、責任感も強い彼女は、他のメンバ ーが仕事で忙しい中を抜けていくことにすまなさ を感じていたようだ。
「あまり仕事の途中で出入り しては申し訳ない」ということで出勤日を自発的 に減らしているというのである。
勤務時間の変更は全体の問題であるので、皆に お願いし調整を図った。
結果としては昼の休憩が三〇分では短すぎるということで終了時間を三〇 分延ばして対応した。
このことで休眠化していた パートメンバーが数人復活し、ワークスケジューリ ングが非常に楽になった。
いったんやめてしまったメン バーに声をかけ、再度臨時にで も仕事に復帰してもらうことは 心理的にしづらいものであるが、 このことがきっかけとなり、ある メンバーは繁忙期に自分の子供 も総出で仕事に対応してもらっ た。
笑い話と思われるかもしれ ないが、実際に良い素養を持つ P/Aをつなぎとめることは私 にとって至難だった。
小集団管 理によってこのようなリスクヘ ッジも図れたのである。
◆物流ABC以前の管理 「物流ABC」は合理的かつ正 確な管理を可能にする改善の方 法論の一つといえる。
しかし実 際の現場で活きるかどうかは、そ の現場の置かれた条件と運用者 のスキルに大きく左右される。
ま たモノにするまでの手間とコス トを考えた時、導入には二の足 を踏む企業も多いのではないだ ろうか。
私自身が現場担当者であっても、導入条 件を維持することには相当の労力を使うことにな ると思う。
「経験と勘」で運用されている現場に今、自分は 置かれている。
そう思う物流マネージャーは、一 足飛びに物流ABCを導入するのではなく、「小集 団管理」という改善の方法論があることを思い出 して欲しい。
小集団管理によって物流ABCの導 入を成功させるために不可欠な現場条件の整備と 維持、およびアクティビティの設定訓練ができる。
また小集団管理は思い立ったときにスタートでき る手軽さがある。
最後に、物流ABCの実施はどのようなケース でメリットを見出せるのかについて、私の考えをお 伝えしておきたい。
おそらく複数の営業所を持つ 物流企業、または営業ターゲットを絞り込んだ軽 作業請負企業、毎日のデリバリーが発生する卸売 業全般については導入効果が高い。
これらの企業 にとって物流ABCの実施は、原価をしっかり掴 むことによる価格交渉力の強化と、不採算の業務 の見直しによる採算性の向上という「守りの面」の 強化が見込める。
企業経営の視点からはアクティビティの設定に 知恵を使う必要があるが、物流ABCで得られた データは自社の原価管理から公正なスタッフの評 価、労働環境改善、事故防止など、多方面に応用 できる。
物流ABCを導入するのであれば、「従来 比何%の改善効果」といったベンチマーク型の改 善アプローチではなく、「こうありたい」という仮 説を実現するような、従来の制約条件から業務改 善活動を解き放つための方法として活用して頂き たいと考えている。
物流管理の常識とは大違い ロジスティクスの手引き 特集 業種:メーカー 取扱品:建築資材(内装品) センター面積:400坪×2層 稼動従業員数:延べ40人/日 作業の特徴: 商品1セットを出荷するためには数種類のダ ンボール入り部品を荷合わせする必要がある。
現場納品のため、製品を傷つけず、取り間違い の無いようセットアップする必要あり。
物流ABC実施後のアクション 検品と移動に時間が費やされていたため、ロケ ーション変更とピッキングリストのレイアウト 改善を中心に行い、ラベル貼付作業を入荷時に P/Aが行うなど、作業役割分担を見直した。
サンプルNo.4の結果 総作業時間(秒) 総歩数 ピッキング総数 ピッキングリスト行数 移動距離(cm) 1行当たりに費やす時間 1個当たりに費やす時間 930 341 0 32 13,640 29 秒 歩 個 行 cm 秒 秒 36)チェック 1)移動 29)貼付(商品シール及び荷札) 26)閉梱 3)取る(商品) 20)確認(リスト類と商品) 35)ゴミを捨てる 9)置く(商品) 30)記入する(個口数) 28)結束バンド処理 38)詰め替え 21)数える(個口数) 4)取る(梱包箱) 23)拭う(商品) 10)置く(梱包箱) 24)組立てる(梱包箱) 16)探す(梱包箱) 37)サイン 22)戻す(商品、付属品、梱包箱) 2)取る(リスト類) 34)用度作業 8)置く(リスト類) 13)置く(ハンディスキャナー) 14)探す(リスト類) 15)探す(商品) (空白) 総計 143 127 126 91 84 77 69 60 58 51 43 39 39 28 22 20 11 11 10 9 6 6 5 4 3 0 1142 15.38% 13.66% 13.55% 9.78% 9.03% 8.28% 7.42% 6.45% 6.24% 5.48% 4.62% 4.19% 4.19% 3.01% 2.37% 2.15% 1.18% 1.18% 1.08% 0.97% 0.65% 0.65% 0.54% 0.43% 0.32% 0.00% 作業区分 各作業時間に 構成比 費やす時間(秒) 物流ABC実施例
ただし、本格的にABCを実施するには丸 一年あっても足りない。
全商品の動きを調べるだ けで、一年ぐらいかかってしまう。
現場の動きを 全て数値化しようとすれば二年を覚悟しなければ ならない。
そのため話題になっている割には、物流ABC を実際に導入・運用している会社はそれほど多く はない。
大手の先進企業で導入されるケースが専 らで、中小企業にはあまり浸透していない。
当社 の事例を振り返っても、簡易的な物流ABCを当 社から提案・実施して効果を上げることはあって も、クライアントから物流ABCを導入したいと 相談に来るケースは希だ(ちなみに弊社では一九 九九年から物流ABCの概念を改善活動に取り入 れている)。
通常、物流ABCのアウトプットが出るのは調 査開始から三カ月ほどかかる。
調査結果に基づい て実際の改善に取りかかろうとする頃には環境は 変わっていることが珍しくない。
例えば物流現場 に二〇人のアルバイトがいたとする。
個々人のア クティビティを調べる。
その結果を基に最も効率 の良いパターンで人員配置と業務手順を決める。
と ころが、それが決まった頃には主要なメンバーの 多くは入れ替わっている。
あるいは、とても能力が高いアルバイトがいたと する。
物流ABCの結果、そのアルバイトを別の 業務に配置することになった。
ところが当人は「い や、ダメです。
私は一三〇万円枠がありますから」 という。
社会保険の加入が義務になる年収一三〇 万円を超えては働きたくないというわけだ。
その 時点で改善がストップしてしまう。
業務プロセスが単純過ぎる場合も物流ABCは 役に立たない。
配送業務を例に取ろう。
アクティビティは「運転」と「荷物積み込み・ 受け渡し作業」。
最も効率を阻害している業務は 「得意先センターへの納品待ち時間」。
そしてコス ト・ドライバーは「運転手本人(人件費が大半)」。
この場合、コスト削減のカギとなるのは、納品待 ちをなくすための得意先との交渉であり、物流A BCでは一台の車両について運転方法や積み卸し のプロセスをいくら詳細に分析しても、その効果 は知れている。
物流ABCは業務内容が複雑になればなるほど、 現場の規模が大きくなればなるほど効果が出る。
作 業員数が五〇人以上もいるような、大規模で業務プロセスが明確な現場であれば明らかな効果が期 待できるだろう。
しかし、それ以下の規模では徒 労に終わることも少なくない。
とくにパート・アル バイト(以下P/A)が七〜八割を占めているよ うな現場では調査が全くのムダに終わる可能性も 否定できないのだ。
少なくとも継続性・応用性が低い業務、詳細な アクティビティを設定しようがない業務、設定し たとしても改善の手法が限られる業務は、物流A BCが活きてこない。
逆に物流ABCの導入が活きるケースとは「競 争相手が多い地域において、物流ABCを行うこ とで作業を標準化・機械化・自動化できることが 見込める、物量、手間の多い仕事」のような場合 物流ABCは確かに効果的だ。
しかし、小さな現場には適さない。
調査に手間がかかる上、改善がムダに終わる可能性も高い。
作業員 数50人以下、しかもパート・アルバイトが全体の7〜8割を占める ような現場のコスト管理では、物流ABCの導入よりむしろ7人程 度のチームによる小集団管理のほうが現実的だ。
中根治 日本ロジファクトリー取締役 連載 事例で学ぶ現場改善《特別編》 43 JUNE 2003 などである。
作業員の人件費自体、つまり労働力の調達コス トは同一地域内においてはさほどの違いはない。
と りわけ最近はP/A、派遣人材についても、法律 の整備によって調達コストは社員と同様のレベル に近づきつつある。
同じエリアで労働集約型の作 業を見積もっても、その地域の賃金基準の中でし かコスト削減余力はない。
また熟練前と熟練後で の生産性の違いはあるが、熟練後は長期的に見てさほどの生産性の差はなくなる。
したがって、同一地域内の他社の物流センター と作業コストに差をつけられるとすれば、?労働 集約型の現場運営を標準化し、機械化・自動化を 進め、?業務プロセス自体を抜本的に見直し、プ ロセス自体をなくす、あるいは短縮する場合に限 られる。
ただし、そのためには、 ・分析した業務がその指示を含めて標準化され、業 務プロセス短縮などの変革が図れるものである こと ・その仕事が今後も続き、継続して物量を確保で きること が条件になる。
この条件を当てはめることができ る現場が果たしてどれだけあるだろうか。
物流センターの多くは、仕事内容が安定してお らず、非連続的かつ単純な仕事の繰り返しという 条件下に置かれている。
しかも非正社員が多く、職 場としての調査・分析まで持ち込む現場責任者の 牽引力に期待はできない状態にある。
このような 物流ABC以前の現場に対応した問題解決の方法 論、ざっくばらんに言えば「経験と勘以上、物流 ABC未満」の大多数の物流現場に合った仕組み が必要だ。
◆ラグビー式7人制「小集団管理」 私は経験上、そうした過渡期の物流現場には小 集団管理の導入が一番現実的で効果が高いと考え ている。
小集団管理の?小集団〞とは物流マネー ジャーが十分に意思疎通できる人数、?管理〞とは 従業員が出社して退社するまでに行われる現場業 務のコントロールのことである。
小集団管理で行われる現場業務改善へのアプロ ーチは物流ABCと良く似ている。
私が実際に行 ったアプローチは、いくつかの小集団が業務を並 行して行う中で発生する共通問題をアクティビテ ィとして、この問題の改善仮説の設定を責任者が 行い、逐次共有するというものだ。
物流ABCと 違う点は「アクティビティの設定が随時変化する こと」と、「問題を感じた時点から実務改善がスタ ートする」ことだけである。
物流コンサルタントになる以前に、私はある会 社で物流センター長として働いていた。
その会社 では、毎日のように新店のオープニングの準備を 行っており、最盛期には一年間で一四〇店舗の新 店が誕生した。
当時の会社の差し迫った問題は「一 四〇人の店長をどうやって確保し、育成するのか」 であり、物流現場に社員を投入する余裕などなか った。
物流はP/Aで処理するしかない。
現場は一日でも先に入社した人間のつたない経 験と勘だけで、なんとか運営をしているというのが 実情であった。
業務ノウハウの伝達がままならな いため、P/Aのモラルもモチベーションは落ち、 規定時間の勤務さえままならない。
P/Aの数は なし崩し的に膨らんだ。
現場のコストは跳ね上が り、生産性は落ち続けた。
そこで目を付けたのが「小集団管理」という方 法であった。
ヒントは学生時代にやっていたラグ ビーの経験である。
ラグビーはご存知の通りフォ ワード七人とバックス人名という二つの集団が集 物流管理の常識とは大違い ロジスティクスの手引き 特集 ABC/ABMの考え方 ・利益 ・人件費 ・光熱費他 の変動費 ・管理費用 ・地代家賃 コスト削減要素が見つからない ABC ○円の利益が欲しい パート時給は○円 △人で○円かかる 保険は○円で△人… 電気代は○円 ダンボール代は○円 ガソリン代は○円… パートの管理者が必要、 時給○円… 坪△円の倉庫で□坪使う、 一個○円… どの部分にいくらかかっているかわかる →コスト削減要素がわかる、ムダが見える 光熱費他 の変動費 物を取り出す 検品する 箱詰めする 伝票を書く トラックに積み込む 運転手が配送する 現地で待機する 荷物をおろす 検品する 客先から戻ってくる 事務所で報告書作る ある仕事は単一の要素で成り立 っているわけではなく、1つの仕事を するために様々な要素が関わり合っ て、価格を作っています。
いままでは、「1業務について○円 ぐらいかかるだろう」という、経験と 勘に基づいて値決めをする場合が ほとんどでした。
「ABC/ABM」では、その仕事をさ らに細かく切り分けて、1つ1つの業 務でコスト削減の要素がないかを見 直し、さらに安いコストでできないか を検証することが大きな役割です。
物を運ぶ 物を運ぶ 今まで 物を運ぶ仕事一 式として認識。
どの部分にいく ら費用がかかっ ているかわから ない 利益 人件費 地代家賃 管理費用 ABM 物を運ぶ人件費 ○分 ○分 ○分 ○分 ○分 仕事をその活動毎に時間で切り分け、 時間当たりのコストを算出する (活動要因分析) JUNE 2003 44 合してチームを構成している。
これに「ナンバー 8」と呼ばれるチームの司令塔が配置される。
ナ ンバー8は、チームの要の役割を果たす。
チームとしての最終目的はボールをゴールポス ト下まで持っていくことで共通しているが、フォワ ードとバックスの役割はそれぞれ厳格に定められ ている。
なおかつ目標達成のためには即時的確な 判断と臨機応変な行動が求められる。
このラグビ ーの考え方を仕事に応用したのである。
◆パート・アルバイト主導の改善 実際には次のように現場を組み立てた。
まず私自身が責任を追う業務を明確に定めた。
「P/Aが負えない責任を伴う業務が社員の仕事」 という仮説を立て、具体的には?人事・採用、? 昇給・昇格評価と教育、?給与計算と現金出納、 ?対外折衝と、?出荷商品に対する最終責任、の 五つを社員の仕事と定義した。
このほかの業務は すべてP/Aに実行してもらうわけだ。
次に集団編成にあたり、「一人の人間が十分に意 思疎通できる人間は七人程度ではないか」という 仮説を立て、私はまず七人のP/Aリーダーを育 成することとした。
各P/Aリーダーの下には、さ らに七人のP/Aを所属させる。
そして一連の業 務遂行とP/Aの出退勤や出社日の調整を全て P/Aリーダーに管理させる。
これで七×七=四 九人の小集団からなる組織を作った。
そして各集団に任せる業務の内容を見直した。
入 荷、出荷、検品、在庫管理それぞれについて各集 団が最も効率の良い方法を考え、朝礼で発表しあ う。
良い方法が出たらP/Aリーダーを集め、す ぐに方法を共有させる。
この集まりは必要に応じ は、現地で見やすければよい」という仮説から発 案された。
背景にはコンピュータの伝票発行スピ ードが遅いということもあった。
当然、納品書は 出すが、その納品書は出荷前に全部のダンボール に書かれた商品数の合算を打っただけのものだ。
この改善は店舗の陳列棚に商品をすぐに陳列す るときにも役立った。
ダンボールにはナンバリング がしてあり、新店オープンの時などはこの番号ど おりに商品を棚入れしていくと、一日で開店準備 完了となる。
それまでは新店用の商品陳列には一 週間がかかっていた。
楽をするための取り組みは仕入れや注文対応に まで及んだ。
今思えばずうずうしい限りなのだが、 「棚卸を効率的にするため仕入れの入荷は月末にし ないで欲しい」とバイヤーに要請した。
また特に 注文の多い得意先は積極的に電話で入荷予定情報 を流し、その得意先が大口に注文をまとめて来た ときに「今日は○○さんの日!」という特別シフ トを組んで出荷するようにした。
これもP/Aの アイデアだった。
FAXでの受注対応から、電話 での御用聞き、さらには発注日の誘導まで始めた のである。
こうしてチーム制で現場を運用していくうちに、 自然と小集団、P/A同士で役割分担もできてき た。
PC入力が得意な人は端末周辺に独自の分類 表を壁に貼り、PCの辞書に用語登録を始めた。
フ ォークリフトを乗るのが好きなP/Aは、仕事が やりやすくなるようにロケーションを毎日のように 変えた。
改善アイデアはラベルシールの糊の粘度 にまで及んだ。
P/Aリーダーのアイデアはいつも私を驚かせ た。
その一つに休憩時間の設定がある。
あるリー て不定期に行った。
連絡事項は休憩室に大学ノートを置いて情報共 有させた。
私自身が学生時代にアルバイトをして いた二四時間営業のファミリーレストランで行っ ていたやり方を流用したものだ。
大学ノートには、 たわいもないことを書いても構わない。
これは「意 志の疎通は会話の投げかけの回数で決定する」と いう仮説に基づいている。
実際、飲み会の予定と、 作業ルールの変更のお知らせが同じページに書か れていることもしばしばだった。
センターでは商品カテゴリー別に小集団を編成 した。
商品ごとに販売のルール、受注、納品条件 に特長があったからだ。
ただし、商品カテゴリーご との違いはあっても、共通化することで得られる ノウハウはすぐさま仮説を立て、検証し、共有し た。
物流ABCならばさしずめ「アクティビティ の抽出」作業にあたるだろうか。
管理を厳しくして生産性を高めるというより、 「いかに手をかけないか、仕事を楽にするか」とい うのが合言葉だった。
例えば一時期、商品出荷に 際して腰痛になるP/Aが続出した時期があった。
この時は台車での運搬をやめ、商品棚に車をつけ て入荷した商品を臨時的に陳列し、荷捌き場に商 品を持ってきてピッキングをするように改善した。
「作業動線を見直す」のではなく、「荷物を動かす と腰を痛めるから、荷捌き場で作業をする」ので ある。
各集団はお互いに場所を融通しながら、稼 動棚を転がして作業スペースを作り出した。
駅売 りの催事から得た発想である。
同時にダンボールも見直した。
ダンボールの横 面に出荷商品分類表を印刷して伝票を発行する、と いう作業自体をなくした。
「伝票に書いてある情報 45 JUNE 2003 ダーが「昼一時間の休憩を午前一〇時より一五分、 昼に三〇分、午後三時に一五分で設定させて欲し い」という。
なぜかと尋ねると、保育園に子供を 出しているパートさんがスムーズに仕事に入れて、 負い目なく仕事をあがらせたいからという。
能力も高く、責任感も強い彼女は、他のメンバ ーが仕事で忙しい中を抜けていくことにすまなさ を感じていたようだ。
「あまり仕事の途中で出入り しては申し訳ない」ということで出勤日を自発的 に減らしているというのである。
勤務時間の変更は全体の問題であるので、皆に お願いし調整を図った。
結果としては昼の休憩が三〇分では短すぎるということで終了時間を三〇 分延ばして対応した。
このことで休眠化していた パートメンバーが数人復活し、ワークスケジューリ ングが非常に楽になった。
いったんやめてしまったメン バーに声をかけ、再度臨時にで も仕事に復帰してもらうことは 心理的にしづらいものであるが、 このことがきっかけとなり、ある メンバーは繁忙期に自分の子供 も総出で仕事に対応してもらっ た。
笑い話と思われるかもしれ ないが、実際に良い素養を持つ P/Aをつなぎとめることは私 にとって至難だった。
小集団管 理によってこのようなリスクヘ ッジも図れたのである。
◆物流ABC以前の管理 「物流ABC」は合理的かつ正 確な管理を可能にする改善の方 法論の一つといえる。
しかし実 際の現場で活きるかどうかは、そ の現場の置かれた条件と運用者 のスキルに大きく左右される。
ま たモノにするまでの手間とコス トを考えた時、導入には二の足 を踏む企業も多いのではないだ ろうか。
私自身が現場担当者であっても、導入条 件を維持することには相当の労力を使うことにな ると思う。
「経験と勘」で運用されている現場に今、自分は 置かれている。
そう思う物流マネージャーは、一 足飛びに物流ABCを導入するのではなく、「小集 団管理」という改善の方法論があることを思い出 して欲しい。
小集団管理によって物流ABCの導 入を成功させるために不可欠な現場条件の整備と 維持、およびアクティビティの設定訓練ができる。
また小集団管理は思い立ったときにスタートでき る手軽さがある。
最後に、物流ABCの実施はどのようなケース でメリットを見出せるのかについて、私の考えをお 伝えしておきたい。
おそらく複数の営業所を持つ 物流企業、または営業ターゲットを絞り込んだ軽 作業請負企業、毎日のデリバリーが発生する卸売 業全般については導入効果が高い。
これらの企業 にとって物流ABCの実施は、原価をしっかり掴 むことによる価格交渉力の強化と、不採算の業務 の見直しによる採算性の向上という「守りの面」の 強化が見込める。
企業経営の視点からはアクティビティの設定に 知恵を使う必要があるが、物流ABCで得られた データは自社の原価管理から公正なスタッフの評 価、労働環境改善、事故防止など、多方面に応用 できる。
物流ABCを導入するのであれば、「従来 比何%の改善効果」といったベンチマーク型の改 善アプローチではなく、「こうありたい」という仮 説を実現するような、従来の制約条件から業務改 善活動を解き放つための方法として活用して頂き たいと考えている。
物流管理の常識とは大違い ロジスティクスの手引き 特集 業種:メーカー 取扱品:建築資材(内装品) センター面積:400坪×2層 稼動従業員数:延べ40人/日 作業の特徴: 商品1セットを出荷するためには数種類のダ ンボール入り部品を荷合わせする必要がある。
現場納品のため、製品を傷つけず、取り間違い の無いようセットアップする必要あり。
物流ABC実施後のアクション 検品と移動に時間が費やされていたため、ロケ ーション変更とピッキングリストのレイアウト 改善を中心に行い、ラベル貼付作業を入荷時に P/Aが行うなど、作業役割分担を見直した。
サンプルNo.4の結果 総作業時間(秒) 総歩数 ピッキング総数 ピッキングリスト行数 移動距離(cm) 1行当たりに費やす時間 1個当たりに費やす時間 930 341 0 32 13,640 29 秒 歩 個 行 cm 秒 秒 36)チェック 1)移動 29)貼付(商品シール及び荷札) 26)閉梱 3)取る(商品) 20)確認(リスト類と商品) 35)ゴミを捨てる 9)置く(商品) 30)記入する(個口数) 28)結束バンド処理 38)詰め替え 21)数える(個口数) 4)取る(梱包箱) 23)拭う(商品) 10)置く(梱包箱) 24)組立てる(梱包箱) 16)探す(梱包箱) 37)サイン 22)戻す(商品、付属品、梱包箱) 2)取る(リスト類) 34)用度作業 8)置く(リスト類) 13)置く(ハンディスキャナー) 14)探す(リスト類) 15)探す(商品) (空白) 総計 143 127 126 91 84 77 69 60 58 51 43 39 39 28 22 20 11 11 10 9 6 6 5 4 3 0 1142 15.38% 13.66% 13.55% 9.78% 9.03% 8.28% 7.42% 6.45% 6.24% 5.48% 4.62% 4.19% 4.19% 3.01% 2.37% 2.15% 1.18% 1.18% 1.08% 0.97% 0.65% 0.65% 0.54% 0.43% 0.32% 0.00% 作業区分 各作業時間に 構成比 費やす時間(秒) 物流ABC実施例
