2006年2月号
大学院体験記

アメリカの輸送はダイナミック

FEBRUARY 2006 94 アメリカの輸送はダイナミック 日本 米国 ファッションの話題で盛り上がるときも、ビジネスの視点を 忘れない二人。
実体験を交えて米国と日本の輸送事情を比較し ながら、ロジスティクスのあり方について語り合いました。
(本誌編集部) たまにはオシャレの話でも さわちゃん、お元気? 突然だけど、私がアメリカで大好き だったアパレルのブランド、バナナ・リパブリック(通称バナ・ リパ)が、昨年9月に日本に初上陸したのは知っている? 出 店先はプランタン銀座の1階。
バナ・リパは1983年からGAPの傘下に入っていて、日本で もGAPジャパンがサプライチェーンをしているらしいね。
Y> 洋服の話題でしかも、バナ・リパとなると私たちの得意分野 だね。
バナ・リパがついに日本に上陸したとは知らなかった! GAPグループは、オハイオ州のコロンバス近郊に本社を置く Limited brands社と共にアメリカのファッションを代表してき たと言えるよね。
S> そうだね。
リミテッドも大抵のショッピングモールにあるし。
さわちゃんは、リミテッドのディストリビューションセンター (DC)の拠点配置やロジスティクスについて、どんな特徴や戦 略があるか知っている? アメリカではアパレルのリファンド (返金)も一般的だけど、回収物流はどのようになっているのか な。
OSUの授業で事例研究を行ったり、ゲストスピーカーを招 いたりしたことはある? S> グループ会社であるLimited Logistics Serviceが実質上のロ ジスティクス機能を持っているのは知っているけれど、ロジス ティクスの事例研究でリミテッドを扱ったことはないの。
Facility Design(拠点設計)の授業で、リミテッド社のDCは なぜ本社と同じコロンバスにあるのかをディスカッションした 際に、それはアジアとヨーロッパからの商品をうまく集め、鮮 度の高い商品をアメリカ国内の需要に応じて配送するためで、 国内を縦断、横断している幹線道路にアクセスのしやすいコロ 第3 回 Sawako Yuki Yuki アメリカのバナナ・リパブリック店舗  バナ・リパは日本の若い女性にも すごい人気で、ハワイのお土産に買 っていくという人もいると聞いたこ とがある。
アメリカのショッピング モールでは、GAPと共におなじみ のブランド。
サイズ展開も豊富だから、 小柄なアジア人には貴重な存在。
 最近、アメリカのオンラインショ ッピングで女性向けにPetiteという サイズ展開を開始。
これはアジア系 アメリカ人のマーケットを意識した ものだと思う。
アメリカの店舗では Petiteサイズはまだ展開されていな いので、個人的には今後のバナ・リ パに店舗でのPetite展開を期待。
Sawako メモ  バナ・リパは、アメリカンカジュ アルの代名詞的な存在であるGAP ブランドと同系列にありながら、G APのカジュアルさとは全く異なる 雰囲気を持つ、洗練された都会的な ブランド。
日本では銀座の他に六本木、 横浜、日本橋にも出店し、現在計4 店舗がある。
 同じ系列でGAPよりさらにカジ ュアルなOLD NAVYの日本で の展開は、日本マーケットの様子見 的な要素を持つと思われる。
 アメリカのバナ・リパでは、2カ 月くらい経った新商品は、店の奥の 常設セール品コーナーに移される。
そこで掘出し物を探すのが楽しかっ た思い出がある。
Yuki メモ Sawako 95 FEBRUARY 2006 ンバスに戦略的にDCをつくったと聞いたよ。
それまでの私の認識では、商品を輸入するビジネスでは大き い倉庫は海岸近くに設計するものと思っていたので、内陸のコ ロンバスになぜだろうと疑問に思ったことを今でも覚えている。
Y> 私がサンフランシスコに駐在していた当時(2002年〜2003 年)、アメリカ中央部のイリノイ州やオハイオ州辺りに本社や DCを構える企業が多いと感じた。
その理由として考えられるのは、ひとつにはアメリカの広い 国土の中央部に位置することで、東海岸と西海岸のどちらにも 近いという点。
それから、シカゴ周辺が航空でもトラックでも 鉄道でも交通網のハブ(中心拠点)になっている点も大きいね。
アメリカの場合、港から内陸部まで鉄道(RAIL/ダブル スタック・トレイン)によって海上コンテナが2段積みでダイ ナミックに運ばれるので、世界の工場であるアジア発のボリュ ームの大きい貨物が到着する西海岸から、BNSF(Burlington Northern Santa Fe)やUP(Union Pacific)という国鉄で内 陸部までコンテナのまま輸送されるの。
米国の鉄道会社も統廃合が進んで、西海岸中心のBNSF とUP、東海岸中心のNSとCNX、カナダのCPという体系 になっている。
船会社はこれらの鉄道会社と連絡を密にして、 B/L(船荷証券)上の内陸の荷受地まで輸送する流れ。
S> なるほど。
キャリア(輸送会社)同士のコミュニケーション が必要という点で、日本とは違うね。
Y> もう一つ、アメリカ中西部が物資集散のハブになっているの は、食品流通のハブだった影響も大きいみたい。
シカゴ穀物取 引所や食肉解体場、食肉市場等、豊かな中西部の農牧地帯の 中心であったこと、そしてそこにフォード、GMをはじめとする 自動車産業が生まれたこともあると思うよ。
S> 確かに、オハイオ州にはホンダの北米生産拠点、ケンタッキ ー州にはトヨタの北米生産拠点、テネシー州には日産の北米生 産拠点というように、日本勢も中西部に拠点を構えているね。
ゆきちゃんは前に海上コンテナ輸送業務に携わっていたわけ だけれど、何か気づいたことはある? 日米で大きく異なる輸送事情 Y> 海上コンテナ輸送の場合、コンテナは日米ともに船会社の持 ち物。
でも、アメリカではコンテナを載せる台=シャーシも船 会社の持ち物で、すべて船会社が管理しているの。
日本ではシ ャーシの管理は船会社の業務範囲外だから、これは大きな違い。
Sawako Yuki Yuki Sawako Yuki リミテッドブランドの1つ、EXPRESS店舗  リミテッドは7 つのブランド (『VICTORIA'S SECRET』、『EXPRE SS』、『BATH & BODY WORK S』、『THE LIMITED』、『THE WHI TE BARN CANDLE CO.』、『HEN RI BENDEL』、『C.O.BIGELOW』) で構成されている。
婦人服、下着、 バス・トイレタリー用品、生活用品 などさまざまな分野に展開しており、 アメリカにおいてファッション帝国 を築き上げた会社と言える。
 最近ではEXPRESSというブラン ドの男性版も新設されていて、同じ ショッピングモールにリミテッドブ ランドが経営する店舗がいくつもある。
 創業者であるLes Wexnerは全米 で有名。
Sawakoメモ VICTORIA'S SECRET店舗 FEBRUARY 2006 96 アメリカのような土地の広い国でシャーシの需給バランスまで 調整するのは、かなり大変なはずだしね。
S> 船会社と鉄道会社の関係が密接であるということは、そうい ったところにもあらわれているんだね。
面積の広い国では必然 的に複合輸送が多くなるから、両者に接続しやすいことが輸送 ビジネスの成功の鍵であると納得。
日本では主に、乙仲(通関 業者)がやっている分野を、アメリカでは実際のキャリアが担 当しているというところかな。
ところで、西海岸で荷揚げした貨物を鉄道(RAIL)で中西 部まで運ぶと何日くらいかかるの? Y> 通常、西海岸からシカゴまでちょうど5日間。
輸入貨物でB/ Lがシカゴまできられていた場合、西海岸のロスやサンフランシ スコに船が到着してからRAILで5日間なので、B/Lの荷受地着 日の5日前から輸入申告ができるアメリカの輸入通関システム (ABI)上で通関のタイミングが把握しやすいの。
ただ、私がサンフランシスコに着任した2002年10月は、労使 交渉がもつれた影響で、西海岸にヤードから搬出できないコン テナが溢れ、着岸できない船が沿海に停滞したり、着地港変更 になったり、コンテナの需給バランスが崩れてめちゃくちゃだ った。
正常な状態に戻るまでに2、3カ月かかったよ。
S> ロックアウトの時期、私はOSU(オハイオ州立大学)の学部 で「トランスポーテーション(輸送)」のクラスを履修していて、 ロックアウトの事件をリサーチし、ロジスティクスの不確実性 (アンコントローラブルな部分)と関連付けて簡単な論文を書 き、エクストラクレジット(特別単位)を稼いだ記憶があるよ。
このクラスはMBLE(ビジネスロジスティクス工学修士課程) の必修科目で、私が使ったテキストは“Transportation 5th edition” (John J. Coyle, Edward J. Bardi, Robert A. Novac著)。
ちなみに現在のMBLEでは6th editionを使用。
輸送の歴史、重 要性、法律、各モードの詳細と体系化された内容なので、機会 があったら読んでみて。
ところで、国内輸送という点で、実務を通じて感じた日米の 大きな違いは何だった? Y> 国内輸送という点で、アメリカと日本との違いは、何と言っ ても国土の広さと、配送ロットの大きさの違い。
国土が大きく、 配送ロットが大きいからこそ、アメリカのロジスティクスは発 達したのだと思う。
日本のように多頻度、多品目、小ロットが 求められる業態とは大きく異なると思うんだ。
広い大地を横断する鉄道網と整備された道路、国内航空網は 素晴らしいし、国土が広いからこそ、遠隔地までの輸送のサー ビスで、価格のレイヤーをつけやすかったのでは。
Sawako Sawako Yuki Yuki 米国のコンテナ2段積み列車、ダブルスタック トレイン  アメリカは輸出よりも輸入がメイ ンの国なので、海上輸送の場合は、 広いアメリカ国内で空コンテナのハ ンドリングや、全世界で使用される 需給に見合った空コンテナ数の調整 が必要となる。
 ある船会社の話では、1年に4回専 用システムを使って全世界の実入り コンテナと空コンテナの配置を調べ、 空コンテナの所在の調整をしている らしい。
最近はコンテナの管理にR FIDを活用している船会社もある とか。
 船会社自体についても、本社を海 岸近郊部でなく内陸部に置いて、書 類のオペレーションもそこで行って いるところが多い。
Yukiメモ 日本と違う、アメリカの船会社事情 97 FEBRUARY 2006 UPSやFedExのサービスにしても、例えばアメリカの西海岸 から東海岸に発送する場合に1 Day Serviceから5 Days Service まであるように、サービスの種類と貨物の重量によって値段が 分かれているから、顧客は必要に応じた選択ができるものね。
日本と異なり、トラックやトレーラーのサイズも大きいので、 容積よりも重量でトラックタリフが分かれているのも特徴だね。
ロジスティクスではスピードが大切だけれど、輸送のスピード は、速いだけでなく遅い方がいいこともあるし。
適時適量のロ ジスティクスにとって、速ければ高い、遅ければ安い、という コスト面での条件付けと選択肢のマトリクスをつくりやすい環 境が整っていたのだと思うよ。
S> 確かにアメリカの高速道路は多くの場合がフリーウェイにな っている点からも、インフラの整備はすすんでいると言えそう。
「サービスレベルとコストはトレードオフであり、ロジスティク スとは、コストとサービスのトレードオフを管理することだ」と 学部で勉強した際に教えられたけれど、この概念は国土の広い アメリカであるからこそ生まれたのだと改めて実感。
かくいう私も、オハイオで、工場の設備部品を扱う商社に勤 務していた頃に輸送の選択肢の多さを体験した一人。
当時商品 発送にはUPSを使っていたのだけれど、通常のUPS GROUND を使用するとカリフォルニア州まで通常5日かかるところを、緊 急事態にはUPS RED(Next Day Air)、UPS BLUE(2 Days)、 UPS ORANGE(3 Days)を活用し、顧客の急ぎ具合に応じて 配送を手配したもの。
オハイオ州の広さだけでも、日本の北海 道と四国をあわせた面積に匹敵するくらいだから、州をいくつ もまたぐのには相当な時間を要するよね。
主要な都市なら翌日 配送が当たり前の日本とは、事情が全く異なるね。
Y> 本当にその通りだね。
土地ごとの地域性が出るから、ロジス ティクスはおもしろい。
最初の話に戻るけれど、バナ・リパが日本市場にどう馴染む のか、ロジスティクスの部分だけではなく、アメリカと異なる 地域戦略を立てるのかなど、今後が楽しみだね。
S> うん。
Limited brandsに関しては、学生団体(Student Association)の集まりにゲストスピーカーが来たらいろいろ聞 いてみるね。
(以下、次号に続く) 日本の大学に在学中、米国ワシントン州ゴンザガ 大学、中国北京大学に短期留学。
大学卒業後、日 本通運に入社。
通関士を取得。
米国・サンフラン シスコ支店で1年間研修。
帰国後、メーカー物流 に携わる傍ら、昨年4月、多摩大学大学院経営情 報学研究科修士課程ロジスティクスコースに入学。
小林由季(こばやし・ゆき) オハイオ州立大学マーケティング・ロジスティクス 専攻を卒業後、OTEC, Inc. (米国)、フレームワ ークス(日本)で働いた経験を持つ。
フレームワー クスでは、新工場・倉庫建設プロジェクトにかか わった。
昨年9月、オハイオ州立大学大学院ビジネ スロジスティクス工学修士課程に入学。
岩田佐和子(いわた・さわこ) Sawako Yuki MBLEの「トランスポーテーション」クラ スで使用されているテキスト アメリカのトラック Sawako

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