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佐高信
経済評論家
57 SEPTEMBER 2006
『週刊現代』の八月一九日・二六日合併号か
ら「安倍晋三『空虚なプリンス』の血脈」の
連載が始まった。 筆者は松田賢弥。 その第一
回に、先日急逝した安倍の叔父、西村正雄
(日本興業銀行元頭取)が登場し、靖国神社に
は参拝するなと安倍に忠告しつづけてきた、
と語っている。
私も何度か西村には会って、直接その「忠
告」を聞いたが、松田によれば、死の間際に
も次のような手紙を安倍に送ったらしい。
〈偏狭なナショナリストと離れろ。 世間では
「戦争好きの安倍が総理になったら、中国や韓
国との関係が悪くなる」という見方がある。
靖国神社の付属施設『遊就館』では、太平洋
戦争はルーズベルト米大統領に騙された陰謀
だというビデオが上映され、戦争を美化して
正当化しているのだ。 「リメンバー・パールハ
ーバー」の精神が生きている米国でも、靖国
神社は軍国主義の社
やしろ
と捉えられている。 国家
を誤らせる偏狭なナショナリストとは、一線
を画すべきじゃないか〉
その西村が「おもしろいから、いつも見て
いる」と言っていたのが、朝日ニュースター
の「TV
ウワサの眞相」だった。 御意見番
はもちろん、一時休刊の『噂の眞相』編集長、
岡留安則で、私も準レギュラー的に出ている。
あまりに過激なので、私は三回も持たないの
ではないかと思っていたが、月一回で一年半
になんなんとし、今度『噂の眞相
おかわりっ!』(講談社)として活字化された。 岡留が
「はじめに」に書いているように、ゲストコメ
ンテーターに「御用系」の人間を入れなかっ
たことが最大の特徴だろう。
この第一章は「ポスト小泉の虚像を剥ぐ」
で、「安倍晋三のアキレス腱」から始まる。
最初に岡留がジャーナリストの魚住昭に水
を向けると、魚住はいきなり、
「彼は嘘つきです」
NHKの番組改変問題で安倍が圧力をかけ
たことははっきりしているが、それを報じた
朝日新聞の記者に、安倍は、夜遅くに自宅に
やってきて、風邪で寝こんでいるのに五分間
もインターフォンを鳴らし続け、あんたは右
翼団体と関係あるんですかなどと、ひどい取
材をしたと難癖をつけた。 しかし、これはま
ったく違う。 そもそも、朝日の記者が取材に
行ったのは夕方の六時だし、安倍夫人が主人
は風邪で寝こんでいるといった事実もなく、
インターフォンに至っては、安倍邸のそれは
三分間で自動的に切れる仕組みになっている。
耐震偽装問題で逮捕されたヒューザーの小
嶋進についても、安倍は飛びこみでやってき
たと言ったが、議員会館に飛びこみで入れな
いことは周知の事実である。 イケシャアシャ
アと嘘をつくのが?坊っちゃんタカ〞の安倍
の習性だということだろう。
ジャーナリストの須田慎一郎は、この番組
でなければ言えないようなことを言い、その
まま活字に残した。
昨年秋の総選挙で自民党が大勝した数日後、
銀座のクラブで安倍を囲むプライベートな会
合が開かれた際、遅れて入って来た安倍は開
口一番、
「僕、大臣になれるかな、どうかなあ。 総理
の考えていることってさっぱりわからないん
だよね」
と情けない顔をしてもらしたという。 それで、出席者の一人が、
「大丈夫ですよ、ちゃんとなれますよ」
と言うと、
「ほんとうかなあ」
と自信なげな表情で答える。
たまりかねて、ある出席者が、
「おまえ、こんなところでそんなことを言う
もんじゃないよ」
とたしなめた。 そのとき須田は「彼の精神
面というのは非常に脆弱なんじゃないか」と
思ったというのだが、弱い犬ほどよく吠える
ということなのだろう。
「TVウワサの眞相」だけしか報じない事実
素顔は脆弱な?坊っちゃんタカ〞の安倍晋三
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