2007年3月号
特集
特集
在庫管理白書 在庫削減の終わりと次の一手
MARCH 2007 10
在庫と連動して収益性が改善
二〇〇〇年代以降、日本でもSCMが機能し始め
た。
このたび本誌は日本の全上場メーカーを対象に、 過去一〇年にわたる棚卸資産の動向調査を行った(左 頁「調査の方法」参照)。
その結果、連結決算で見た ときの日本の上場メーカーの在庫回転期間は九九年 の一・八四カ月をピークとして、〇六年の一・四一カ 月まで、ほぼ一貫して減り続けていることが分かった ( 図1)。
収益性も改善している。
調査対象企業の合計の総 資産利益率(ROA:Return On Assets)は、〇二 年の三・三六%を底に〇六年の七・二二%まで、過 去四年間連続で向上している。
その動きは在庫回転 率のトレンドと重なる( 図2)。
SCMを旗印とした 在庫削減が収益性の改善を下支えした可能性が高い。
日本でSCMブームがわき上がったのは九〇年代の 中頃のこと。
ERP(基幹業務パッケージソフト)や需要予測エンジンなど、SCM用のITツール導入に 多くの日本企業が巨額の投資を断行した。
在庫削減 がその直接的な狙いだった。
しかしマクロ的に見ると 九〇年代を通じて日本の在庫は結局、減らなかった (本誌〇二年二月号特集詳細)。
多頻度小口化の進んだ日本企業は、欧米に比べ格 段に少ない在庫でビジネスを回している――そんな誤 った常識が、九〇年代まで日本の産業界に蔓延して いた。
しかし実際に企業の財務諸表を比較してみると、 トヨタ自動車をはじめとした一部のロジスティクス先 進企業を例外として、日本企業の大部分が海外の同 業者よりもはるかに大量の在庫を抱えていた。
図3は日米の半導体メーカーの在庫回転率を比較 したものだ。
もともと格差があったのに加え、九〇年 在庫削減の終わりと次の一手 日本の上場メーカーの在庫は1999年のピーク時 から23%削減された。
SCMで先行した米国企業に 10年遅れで追いついた格好だ。
これに伴いROAの 改善も進んでいる。
在庫削減の時代は終わった。
日 本企業のSCMは次の段階に進む。
(大矢昌浩) 解説 11 MARCH 2007 代以降は米国企業がSCMによる在庫回転率の改善 を進めたのに対し、日本企業が横ばいで推移したこと から、一時は二倍もの開きが出ていた。
しかし九九年 以降は格差が解消に向かっている。
九〇年代と二〇〇〇年代以降で日本企業のSCM はどこが変わったのか。
在庫管理に詳しいTSCコン サルティングの勝呂隆男代表は「二〇〇〇年代以降、 とくに〇三年頃から、在庫削減に理論的に取り組む 日本企業が増えてきた。
それに対して九〇年代までの 日本の在庫削減は、多分に精神主義的だった」と指 摘する。
適正な在庫量を理論的に判断できないため、とにか く在庫はゼロを目指せということになってしまう。
現 場の目につくところに在庫がなければそれでいい。
そ のため工場では直送方式と称して、完成した製品をす ぐに出荷する。
それによって工場内は片付いても、在 庫は物流センターに移るだけ。
財務諸表にはしっかり 棚卸資産として計上される。
サプライヤーに在庫を押しつけるVMIもまたしかりだ。
日本企業の現場管理の技術は今でも世界最高水準 にある。
しかし、その代表的手法とされるJITで実 現できるのは、工場内の工程間や工程内の仕掛かり 品在庫の削減だけだ。
棚卸資産に占める割合は工程 投入前の部品在庫や製品の流通在庫のほうが、圧倒 的に高い。
にもかかわらず、いったん工場の外に出た 在庫は考慮されなくなってしまう。
現場の効率化が収支上もプラスになるとは限らない。
工場の歩留まりが向上しても、必要以上に在庫が増 えればキャッシュに響く。
在庫の陳腐化によって最後 は収益性まで悪化する。
こうした個別最適を避け、サ プライチェーン全体を最適化するには、管理会計の技 術が必要だ。
日本企業の弱点とされる領域だ。
MARCH 2007 12 米国では八〇年代末に財務会計の欠点を補うため、 「ABC(活動基準原価計算: Activity Based Costing)」が開発され、精度の高い原価管理とコスト の?見える化〞が進められた。
それに対して日本では、 作業費や物流費などの間接費を一律で割り振る大量 生産・大量消費時代の全部会計方式がいまだに幅を きかせている。
日本にキャッシュフロー会計が導入されたのは九九 年。
米国よりちょうど一〇年遅れた。
その間に日米の 管理会計社には大きな差がついてしまった。
在庫管理 も同様だ。
適正な在庫量を算出するには、まず許容欠 品率を設定する必要がある。
しかし、ほとんどの会社 が基準を持っていない。
あるいは欠品ゼロを基準にし ている。
お手本とされるトヨタ自身は、アイテム別に安全在 庫の基準を明確に設定している。
理論上、欠品はゼロ にならない。
しかし、実際に欠品することは許されな い。
欠品することが判明した段階で、それを回避するために航空便など緊急輸送を行うことで対処する。
そ のための物流コスト増には目をつぶるというスタイル だ。
一方で欧米には一〇%以上の欠品率を設定して いる有力企業も珍しくない。
在庫管理に一般解はない。
企業によって思想は違う。
ただし、核となる基本理論 は変わらない。
「二〇〇〇年以降、マクロ的な日本企業の在庫が減っ てきた理由は恐らく二つある。
一つは、在庫管理技術 の向上だ。
その一方で精神主義的な在庫削減の行き 過ぎもあると見ている」と勝呂代表はいう。
営業部門 は顧客の短納期要求に応えたい。
しかし工場は?J ITかぶれ〞で、とにかく在庫を持とうとしない。
仕 方なく営業はウソの注文を入れる。
その結果、トータ ルの棚卸資産は減っても、欠品と過剰在庫が増えてし カシオ計算機は九九年に最初のSCMプロジェク トを立ち上げた。
九六年三月末時点で一二八日とな っていた在庫回転日数を、六〇日以内にまで短縮す ることが目的だった。
「六〇日はソニーや松下といっ た同業他社の在庫水準を意識して設定した数字。
競 争力を維持するうえで不可欠な目標だった」と矢澤 篤志執行役員業務開発部長は振り返る。
プロジェクトは同社の主力製品である電卓を対象 にスタートし、その後、楽器、時計といった具合に カバーする領域を徐々に拡げていくかたちで進めら れた。
部門間の情報連携のため、製品コードを統一 してERPを導入。
SCP(サプライチェーン計画 ソフト)の導入にも踏み切った。
ところが、この取り組みは失敗に終わった。
肝心 13 MARCH 2007 の在庫は半減するどころか、むしろSCM導入前に 比べ増加する結果となった。
九九年三月末時点で九 〇日だった在庫は翌年に一〇四日へ。
さらに翌々年 も一〇二日とほぼ横ばいで推移した。
その理由として、同社は?欠品による販売機会ロ スを恐れる営業部門に、在庫を多めに確保しておき たいという意識が根強く残っていた、?設計部門で 部品の共通化が進まなかった、?SCPソフトの処 理能力に限界があって計画サイクルの週次化を実現 できなかった――ことなどを挙げている。
結局、S CMプロジェクトはERP導入に成功したことを除 けば、ほとんど成果を上げられないまま、〇二年三 月をもって一時中断することを余儀なくされた。
しかし、その約半年後には再びSCMプロジェク トを発足させた。
過去の反省点を踏まえ、今度は営 業部門の意識改革から着手した。
営業部門の実績を 評価する指標として新たに「在庫」という切り口を 用意。
在庫に関する責任の所在を明確にすることで、 営業部門からのムダな発注、そしてムダな生産を抑 制するようにした。
設計では部品のプラットフォーム化に乗り出した。
ムダな部品在庫を減らすのが狙いだ。
需要予測シス テムにもメスを入れた。
従来はSCPソフトが様々 な制約条件を加味して弾き出した需要予測値を基に 生産計画を立案していた。
しかし計算ロジックが複 雑なため、予測値の算出に時間が掛かり、計画サイ クルの週次化を阻害していた。
これに対して〇四年 に稼働した新システムではコンピュータが弾き出し た数値を参考にしながら、最終的には人間の判断で 生産計画を確定するように改めた。
まう。
そんなケースが往々にして見受けられる。
財務諸表上の在庫は確かに減った。
〇五年から〇 六年は、むしろ微増に動いている。
肝心の業績も回復 している。
在庫削減の時代は終わったように見える。
しかし連結決算と単独決算の在庫回転期間を比較す ると、同じ業種でもまだ二割程度の差が見られる。
単 独のほうが、在庫が少ない(図2)。
本社と連結会社 の管理精度の差に加え、組織エゴや企業エゴから偏在 しダブついている在庫が、まだかなり残っていると考 えられる。
サプライチェーンの上流と下流、あるいは 本国と海外等の在庫分担を適正化することで、もう 一段レベルを上げる余地が残されている。
在庫管理の 焦点は、削減から適正化に軸足を移す。
削減から適正化へ PRTMの入江仁之パートナーは「日本国内のサ プライチェーン改革は既に一段落したと言えるだろう。
必要なITツールの導入も済んでいる。
しかしグローバル・ネットワークの最適化はこれからだ。
グローバ ル化の進展はSCMに税効果への配慮までも強いてい る。
在庫配置は実効税率を大きく左右するからだ。
ま た海外の販社や販売代理には、手つかずのまま残って いる在庫も少なくない」という。
そもそもサプライチェーン運営コストの大部分は、 ネットワークの設計によって決まる。
しかも環境は常 に変化する。
ところが、ネットワークと在庫配置は、 いったん稼働してしまえば再評価されることがない。
PRTMの調査によると、ほとんどネットワークの再 評価をしない、もしくは二年おきと答えた企業が半数 以上に上った。
優位性を維持するにはサプライチェー ンの最適化の状況を常に把握し、継続的に改善し続 けていく必要がある。
SCMは次の段階に進む。
「ITには過去の実績データなどをベースにした判 断しか下せないというデメリットがある。
しかし人 間同士の交渉なら、部品ベンダーに納品を前倒しし てもらったり、工場に一時的に生産能力を引き上げてもらうといった柔軟な対応が可能だ。
新システム ではITと人間がコラボレーションすることで、よ り精度の高い計画を立案できるようになった」と業 務開発部の木下理氏は説明する。
こうして第一次SCMプロジェクトで浮き彫りと なった課題を一つひとつ解決していくことで、リベ ンジに成功した。
在庫は〇四年三月末に当初の目標 だった六〇日を達成。
さらに翌年には五七日となっ た。
直近の〇六年三月末では五一日にまで改善が進 んでいる(左図参照)。
カシオのSCMはこれまでコンシューマ向けの製 品を対象としてきた。
「この製品群については業界内 でも競争力のある水準まで在庫を減らすことができ たと自負している」と矢澤執行役員。
今後、同社で はSCMの取り組みを通信機器やデバイスといった 製品群に横展開していく計画だ。
それによってさら なる在庫削減を目指すという。
カシオ計算機の 矢澤篤志執行役員 業務開発部長
このたび本誌は日本の全上場メーカーを対象に、 過去一〇年にわたる棚卸資産の動向調査を行った(左 頁「調査の方法」参照)。
その結果、連結決算で見た ときの日本の上場メーカーの在庫回転期間は九九年 の一・八四カ月をピークとして、〇六年の一・四一カ 月まで、ほぼ一貫して減り続けていることが分かった ( 図1)。
収益性も改善している。
調査対象企業の合計の総 資産利益率(ROA:Return On Assets)は、〇二 年の三・三六%を底に〇六年の七・二二%まで、過 去四年間連続で向上している。
その動きは在庫回転 率のトレンドと重なる( 図2)。
SCMを旗印とした 在庫削減が収益性の改善を下支えした可能性が高い。
日本でSCMブームがわき上がったのは九〇年代の 中頃のこと。
ERP(基幹業務パッケージソフト)や需要予測エンジンなど、SCM用のITツール導入に 多くの日本企業が巨額の投資を断行した。
在庫削減 がその直接的な狙いだった。
しかしマクロ的に見ると 九〇年代を通じて日本の在庫は結局、減らなかった (本誌〇二年二月号特集詳細)。
多頻度小口化の進んだ日本企業は、欧米に比べ格 段に少ない在庫でビジネスを回している――そんな誤 った常識が、九〇年代まで日本の産業界に蔓延して いた。
しかし実際に企業の財務諸表を比較してみると、 トヨタ自動車をはじめとした一部のロジスティクス先 進企業を例外として、日本企業の大部分が海外の同 業者よりもはるかに大量の在庫を抱えていた。
図3は日米の半導体メーカーの在庫回転率を比較 したものだ。
もともと格差があったのに加え、九〇年 在庫削減の終わりと次の一手 日本の上場メーカーの在庫は1999年のピーク時 から23%削減された。
SCMで先行した米国企業に 10年遅れで追いついた格好だ。
これに伴いROAの 改善も進んでいる。
在庫削減の時代は終わった。
日 本企業のSCMは次の段階に進む。
(大矢昌浩) 解説 11 MARCH 2007 代以降は米国企業がSCMによる在庫回転率の改善 を進めたのに対し、日本企業が横ばいで推移したこと から、一時は二倍もの開きが出ていた。
しかし九九年 以降は格差が解消に向かっている。
九〇年代と二〇〇〇年代以降で日本企業のSCM はどこが変わったのか。
在庫管理に詳しいTSCコン サルティングの勝呂隆男代表は「二〇〇〇年代以降、 とくに〇三年頃から、在庫削減に理論的に取り組む 日本企業が増えてきた。
それに対して九〇年代までの 日本の在庫削減は、多分に精神主義的だった」と指 摘する。
適正な在庫量を理論的に判断できないため、とにか く在庫はゼロを目指せということになってしまう。
現 場の目につくところに在庫がなければそれでいい。
そ のため工場では直送方式と称して、完成した製品をす ぐに出荷する。
それによって工場内は片付いても、在 庫は物流センターに移るだけ。
財務諸表にはしっかり 棚卸資産として計上される。
サプライヤーに在庫を押しつけるVMIもまたしかりだ。
日本企業の現場管理の技術は今でも世界最高水準 にある。
しかし、その代表的手法とされるJITで実 現できるのは、工場内の工程間や工程内の仕掛かり 品在庫の削減だけだ。
棚卸資産に占める割合は工程 投入前の部品在庫や製品の流通在庫のほうが、圧倒 的に高い。
にもかかわらず、いったん工場の外に出た 在庫は考慮されなくなってしまう。
現場の効率化が収支上もプラスになるとは限らない。
工場の歩留まりが向上しても、必要以上に在庫が増 えればキャッシュに響く。
在庫の陳腐化によって最後 は収益性まで悪化する。
こうした個別最適を避け、サ プライチェーン全体を最適化するには、管理会計の技 術が必要だ。
日本企業の弱点とされる領域だ。
MARCH 2007 12 米国では八〇年代末に財務会計の欠点を補うため、 「ABC(活動基準原価計算: Activity Based Costing)」が開発され、精度の高い原価管理とコスト の?見える化〞が進められた。
それに対して日本では、 作業費や物流費などの間接費を一律で割り振る大量 生産・大量消費時代の全部会計方式がいまだに幅を きかせている。
日本にキャッシュフロー会計が導入されたのは九九 年。
米国よりちょうど一〇年遅れた。
その間に日米の 管理会計社には大きな差がついてしまった。
在庫管理 も同様だ。
適正な在庫量を算出するには、まず許容欠 品率を設定する必要がある。
しかし、ほとんどの会社 が基準を持っていない。
あるいは欠品ゼロを基準にし ている。
お手本とされるトヨタ自身は、アイテム別に安全在 庫の基準を明確に設定している。
理論上、欠品はゼロ にならない。
しかし、実際に欠品することは許されな い。
欠品することが判明した段階で、それを回避するために航空便など緊急輸送を行うことで対処する。
そ のための物流コスト増には目をつぶるというスタイル だ。
一方で欧米には一〇%以上の欠品率を設定して いる有力企業も珍しくない。
在庫管理に一般解はない。
企業によって思想は違う。
ただし、核となる基本理論 は変わらない。
「二〇〇〇年以降、マクロ的な日本企業の在庫が減っ てきた理由は恐らく二つある。
一つは、在庫管理技術 の向上だ。
その一方で精神主義的な在庫削減の行き 過ぎもあると見ている」と勝呂代表はいう。
営業部門 は顧客の短納期要求に応えたい。
しかし工場は?J ITかぶれ〞で、とにかく在庫を持とうとしない。
仕 方なく営業はウソの注文を入れる。
その結果、トータ ルの棚卸資産は減っても、欠品と過剰在庫が増えてし カシオ計算機は九九年に最初のSCMプロジェク トを立ち上げた。
九六年三月末時点で一二八日とな っていた在庫回転日数を、六〇日以内にまで短縮す ることが目的だった。
「六〇日はソニーや松下といっ た同業他社の在庫水準を意識して設定した数字。
競 争力を維持するうえで不可欠な目標だった」と矢澤 篤志執行役員業務開発部長は振り返る。
プロジェクトは同社の主力製品である電卓を対象 にスタートし、その後、楽器、時計といった具合に カバーする領域を徐々に拡げていくかたちで進めら れた。
部門間の情報連携のため、製品コードを統一 してERPを導入。
SCP(サプライチェーン計画 ソフト)の導入にも踏み切った。
ところが、この取り組みは失敗に終わった。
肝心 13 MARCH 2007 の在庫は半減するどころか、むしろSCM導入前に 比べ増加する結果となった。
九九年三月末時点で九 〇日だった在庫は翌年に一〇四日へ。
さらに翌々年 も一〇二日とほぼ横ばいで推移した。
その理由として、同社は?欠品による販売機会ロ スを恐れる営業部門に、在庫を多めに確保しておき たいという意識が根強く残っていた、?設計部門で 部品の共通化が進まなかった、?SCPソフトの処 理能力に限界があって計画サイクルの週次化を実現 できなかった――ことなどを挙げている。
結局、S CMプロジェクトはERP導入に成功したことを除 けば、ほとんど成果を上げられないまま、〇二年三 月をもって一時中断することを余儀なくされた。
しかし、その約半年後には再びSCMプロジェク トを発足させた。
過去の反省点を踏まえ、今度は営 業部門の意識改革から着手した。
営業部門の実績を 評価する指標として新たに「在庫」という切り口を 用意。
在庫に関する責任の所在を明確にすることで、 営業部門からのムダな発注、そしてムダな生産を抑 制するようにした。
設計では部品のプラットフォーム化に乗り出した。
ムダな部品在庫を減らすのが狙いだ。
需要予測シス テムにもメスを入れた。
従来はSCPソフトが様々 な制約条件を加味して弾き出した需要予測値を基に 生産計画を立案していた。
しかし計算ロジックが複 雑なため、予測値の算出に時間が掛かり、計画サイ クルの週次化を阻害していた。
これに対して〇四年 に稼働した新システムではコンピュータが弾き出し た数値を参考にしながら、最終的には人間の判断で 生産計画を確定するように改めた。
まう。
そんなケースが往々にして見受けられる。
財務諸表上の在庫は確かに減った。
〇五年から〇 六年は、むしろ微増に動いている。
肝心の業績も回復 している。
在庫削減の時代は終わったように見える。
しかし連結決算と単独決算の在庫回転期間を比較す ると、同じ業種でもまだ二割程度の差が見られる。
単 独のほうが、在庫が少ない(図2)。
本社と連結会社 の管理精度の差に加え、組織エゴや企業エゴから偏在 しダブついている在庫が、まだかなり残っていると考 えられる。
サプライチェーンの上流と下流、あるいは 本国と海外等の在庫分担を適正化することで、もう 一段レベルを上げる余地が残されている。
在庫管理の 焦点は、削減から適正化に軸足を移す。
削減から適正化へ PRTMの入江仁之パートナーは「日本国内のサ プライチェーン改革は既に一段落したと言えるだろう。
必要なITツールの導入も済んでいる。
しかしグローバル・ネットワークの最適化はこれからだ。
グローバ ル化の進展はSCMに税効果への配慮までも強いてい る。
在庫配置は実効税率を大きく左右するからだ。
ま た海外の販社や販売代理には、手つかずのまま残って いる在庫も少なくない」という。
そもそもサプライチェーン運営コストの大部分は、 ネットワークの設計によって決まる。
しかも環境は常 に変化する。
ところが、ネットワークと在庫配置は、 いったん稼働してしまえば再評価されることがない。
PRTMの調査によると、ほとんどネットワークの再 評価をしない、もしくは二年おきと答えた企業が半数 以上に上った。
優位性を維持するにはサプライチェー ンの最適化の状況を常に把握し、継続的に改善し続 けていく必要がある。
SCMは次の段階に進む。
「ITには過去の実績データなどをベースにした判 断しか下せないというデメリットがある。
しかし人 間同士の交渉なら、部品ベンダーに納品を前倒しし てもらったり、工場に一時的に生産能力を引き上げてもらうといった柔軟な対応が可能だ。
新システム ではITと人間がコラボレーションすることで、よ り精度の高い計画を立案できるようになった」と業 務開発部の木下理氏は説明する。
こうして第一次SCMプロジェクトで浮き彫りと なった課題を一つひとつ解決していくことで、リベ ンジに成功した。
在庫は〇四年三月末に当初の目標 だった六〇日を達成。
さらに翌年には五七日となっ た。
直近の〇六年三月末では五一日にまで改善が進 んでいる(左図参照)。
カシオのSCMはこれまでコンシューマ向けの製 品を対象としてきた。
「この製品群については業界内 でも競争力のある水準まで在庫を減らすことができ たと自負している」と矢澤執行役員。
今後、同社で はSCMの取り組みを通信機器やデバイスといった 製品群に横展開していく計画だ。
それによってさら なる在庫削減を目指すという。
カシオ計算機の 矢澤篤志執行役員 業務開発部長
