ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年8号
SOLE
ユビキタス社会に不可欠な存在RFID技術開発の現状を学ぶ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2007 80 電子タグシステムの技術開発」が 掲げられた。
経済産業省の「セキ ュア電子プロジェクト」(二〇〇六 年八月〜二〇〇七年三月)である。
技術開発にあたっては、各種委員 会、業界団体、コンソーシアムと の連携を密にとり、開発成果の市 場への適用と、国際標準化への提 案を重要な目的として取り組みを 進めた。
セキュア電子タグシステムの概 要は、商品ライフサイクル全体に わたる電子タグ運用において、安 全・安心の観点から必要な機能を 検討・技術開発し、 (?) タグ・IC チップにおける、プライバシー保護 の技術開発、企業情報保護の技術 開発、 (?) セキュア電子タグシステ ム運用方式の検討と実施として、セ キュリティー脆弱性対策の方式開 発と実証、 (?) システム運用評価― ―を行うことである。
(?) のプライバシー保護について、 現状(ISO18000 ―6タイプ C)では、KILLコマンド(タ グの無効化)やタグデータの全消 去を実行すると、二次流通・保守 ではタグデータを使用できない。
こ れを、今回の技術開発では、消費 者にわたる時点で読み取り不可と し、通信距離を制限可能とした。
ま た、正当なユーザーからのパスワー 術の活用が期待されている。
また、 食の安心・安全をはじめとする社 会要請・消費者ニーズや、機会損 失/潜在リスクの低減などユーザ ー(企業)ニーズからも、RFI D技術の活用が期待されている。
RFID技術は、現在も多くの 実証実験が継続されているが、一 部では実際に導入が始まっている。
導入例として、欧米では、米ウォ ルマート、独メトロ、英テスコ、米 国防総省など、国内では、三越、阪 急百貨店、高島屋、伊勢丹、日産 自動車、青山商事、ヨドバシカメ ラ、エコスなどがある。
日立製作所の超小型RFIDで あるミューチップは、愛知万博の 入場券管理に利用された。
発行枚 数二〇〇〇万枚の大規模なもので あった。
愛知万博での利用を成功 裡に終え、ここでの技術が「響プ ロジェクト」へ承継された。
響プロジェクトは、「低価格で高 品質なICタグを開発し、市場に 安定供給」することを目指した、経 済産業省の研究開発委託事業であ 今回のフォーラムでは、日立 製作所セキュリティ・トレーサ ビリティ事業部の中島洋副事業 部長に「RFID活用の現状と 展望」と題してご講演いただい た。
中島氏は、ICタグの普及 を目指して実施された国家プロ ジェクト「響プロジェクト」の中 心人物である。
RFIDが牽引するユビキタス 我が国の情報通信政策として、二 〇〇一年以降、「e―Japan」、 「e ―Japan2」、「u―Japan」 が策定され、実施されてきた。
こ れらの施策が目指す「ユビキタス 社会」とは、いつでも、どこでも、 誰でもITの恩恵を実感できる社 会のことである。
ユビキタス社会では、生活を支 える膨大な数の「モノ」が情報発 信し、ユビキタスネットワークで繋 がるようになる。
情報発信する、膨 大な数の「モノ」の識別、個品管 理の識別技術として、RFID技 SOLE日本支部フォーラムの報告 ユビキタス社会に不可欠な存在 RFID技術開発の現状を学ぶ The International Society of Logistics る。
日立製作所に委託され、日立 製作所の関連企業およびRFID に知見のある協力企業とともに、二 〇〇四年八月〜二〇〇六年七月の 期間で行われた。
プロジェクトの目的は、?IC タグ低価格化のための要素技術の 開発、?安定的に大量に供給でき る体制の整備、?世界で共通に使 用できるICタグの開発――によ りICタグの普及・発展に寄与することである。
月産一億個の前提で、インレッ ト(ICチップとアンテナが一体 となったもの。
これを加工してI Cタグにする)価格で単価五円を 達成できる見通しを得て、性能面 においても当初要件を達成し、プ ロジェクトは完遂された。
セキュア電子タグプロジェクト 実証実験等を通して、導入効果 とともに運用面、技術面での課題 が明確になってきた。
課題の解決 と、電子タグの更なる普及拡大、国 際競争力強化のために、響タグを ベースに高い付加価値を追加開発 することになった。
こうして、「響プロジェクト」後 の経済産業省の新たな施策として、 「安全・安心機能(プライバシー保 護および企業情報保護)を有する 81 AUGUST 2007 ドにより元の状態に復帰可能とす ることで二次流通・保守でのタグ データ使用が可能となる(図1)。
企業情報保護の技術開発では、I Cタグメモリを構成するセキュリテ ィーバンク、UIDコードバンク、 タグコードバンク、ユーザーバンク のうち、ユーザーバンクをブロック 分割し、メーカー情報・卸売店情 報・小売店情報などのユーザーごと の情報を分割したブロックに格納し、 ブロックごとの読み出し禁止/書き 込み禁止の設定がパスワード入力に より可能となるようにした。
(?) において (?) タグを用いたセキュ ア電子タグシステム運用方式の検 討を行い、 (?) システム運用評価に おいて、今回開発の「セキュア電 子タグ機能」の適用性評価を目的 として三業界(出版、家電、医療・ 医薬)を選定し、実施した。
適用性評価では、サプライチェー ン(製造〜物流〜小売〜保守・リ サイクル)の各プレイヤーによるデ ータ格納を前提とし、今回の開発 成果を適用したタグメモリ運用方 式(プライバシー保護、企業機密 情報保護方式)の検討が行われた。
これと並行して、今回開発した 機能を実装する評価機器(電子タ グ、リーダ/ライタ)とセキュア電 子タグシステムを組み合わせ、業 界ごとの使い方を想定した、機能・ 性能の評価が行われた。
例えば、出版業界における販売 情報管理を想定した場合、プライ バシー保護のために消費者の段階 ではタグの情報を読み出し困難に する必要がある。
従来でもKIL Lコマンド(タグの無効化)を使 えばこれは可能であったが、KI LLコマンドには再活性化不可、つ まり、古書店や図書館では再利用 できないという難点があった。
そこで、今回の開発内容である 一部情報の読み取り不可技術を用 いるとともにタグの通信距離を短 くして、遠距離からの不正読み出 しを防止するようにした。
検討・ 評価は、出版社→取次店→書店→ 図書館→消費者→図書館のプレイ ヤー間で行われた。
求められる総合的アプローチ 物流におけるRFID技術ニー ズは、国・地域、物流プロセス、荷 姿、現場環境により多種多様であ る。
さしあたり現状の課題と期待を整理すると次のようになる。
短所としては、標準規格が整備中 であること、コストが高いこと、国 によって電波法が異なること、金属 や水により電波が減衰し読み取り精 度が落ちること等が挙げられる。
長所としては、データ容量が大 きいこと、データの追加書き換え・ 削除が可能なこと、複数のデータ を遠隔から同時に読み取れること、 ほこり等の影響を受けにくいこと、 データの改ざんが困難であること、 アクティブタグ(電源内蔵のタグ) ならセンサーを搭載することにより 温度や湿度などの輸送環境を感知 できること等がある。
輸送部材の利用形態と課題を見 ると、貨物伝票・海上/航空コン テナでは個体認識ができているが、 通い箱/パレット・製造業用輸送 モジュール・ロールボックスパレッ ト/台車・フレキシブルコンテナ バッグ(フレコンバッグ)の個体認 識には改善課題が多い。
具体的に は、数値・実情に基づく管理が困 難であり、在庫状況・保有/紛失 状況・利用回転率・減耗率がわか らない、取引先を含む管理責任部 門(者)が不明確なことが多いと いった点が挙げられる。
現在考えられている物流ニーズは、 物流の多様性を考えれば、ごく一 部に過ぎないはずである。
RFID 技術の物流への適用・実運用にネ ットワーク、コンピュータシステム、 センサーネット、バーコード、電子 タグ、荷札タグ発行プリンタ、大型 読み取りゲートからPDA/ハンデ ィまで各種リーダ/ライタなど、I Cタグ以外の技術も含めて総合的 なアプローチが必要である。

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