2007年9月号
ケース

アウトソーシングファンケル

アウトソーシング ファンケル 拠点集約を機に物流管理機能を再構築 “丸投げ”を避けて社内にノウハウ蓄積  住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築 施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達 成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
拠点分散で物流機能が劣化  化粧品や健康食品を製造・販売するファン ケルの進める物流改革の大枠が固まった。
八 カ所に分散している物流拠点を、来年六月か ら四カ月かけて日立物流の拠点一カ所(千葉 県柏市)に集約する。
現状では拠点別に計 五社に外部委託しているセンター業務も日立 物流に統合する。
これによって注文のあった 商品をすぐに出荷できる体制を整え、サービ スレベルの向上と業務の効率化を図る。
 ファンケルは化粧品の通販会社として一九 八〇年に事業を開始した。
その後、取扱商 品を健康食品や雑貨などに拡げる一方、販売 チャネルも通販のほかに店舗販売、卸売販売 (量販店、コンビニ)、海外販売へと拡大させ ていった。
自社工場も五カ所に増えた。
 事業の拡大に伴い、これまでは場当たり的 に物流を手当てしてきた感が否めない。
物流 部門の位置づけ自体、他部門から振り回され る弱い立場に置かれていた。
通販事業で利用 者から注文が入ると、まず基幹システムでデ ータを処理する。
物流現場には、この受注デ ータに基づいて打ち出されるピッキングリス トが回ってくるだけ。
指示された作業をこな すだけの役割しか与えられてこなかった。
 その結果、近年は多くの課題が浮上してい る。
ファンケルの物流統括部で新物流センタ ー準備室に所属する永坂順二氏は次のように 説明する。
 「当初は、工場で作った製品をすぐに物流 センターに運び、その日のうちに出荷できた。
『無添加』を売り物にする企業としては『新鮮・ 作りたて』の製品をお届けしたい。
ところが 物流拠点の分散によって、それが難しくなった。
とくに通販の物流拠点では、十数年前に導入 したマテハンをそのまま使っていることもあっ て処理が追いつかず、繁忙期のたびにお客様 に迷惑をかけてしまっている」  利用者が、化粧品と健康食品と雑貨を同 時に注文したとする。
これらの製品を出荷す る拠点はすべて異なり、配送を担う宅配事業 者も違う。
このため利用者にとっては一回の 注文なのに、商品は三回に分かれて届く。
「場 合によっては二日とか三日にわたって玄関の チャイムを鳴らさなければならない。
『なぜ一 回で届けられないの?』とお客様から指摘さ れても、どうしようもなかった」(同)  同社の物流部門は千葉と横浜の物流センタ ーでは現場作業も行っている。
しかし他のセ ンターは協力物流業者に任せきりで、もはや ファンケルにはコントロールしきれなくなって いる。
過去に物流基盤を整備してこなかった ツケがいたるところに山積し、それがコスト の上昇や、在庫の増加を招いていた。
 さすがに危機感にかられた物流部門は、相 次いで顕在化した問題を二〇〇五年十二月 に整理。
自分たちなりに拠点集約などの改善 策を練って経営会議に諮った。
しかし社内に “物流のプロ”として認められるような人材が 国内8 カ所に分散している物流拠点を来年8 月、 1 カ所に集約する。
これに伴い、協力物流会社に依 存ていた従来の管理体制を改める。
物流拠点と 庫内オペレーションは日立物流、マテハンはダイフ クWMS はNEC と、分野ごとにパートナーを選 別し、それぞれを直接管理することで、社内にノウ ハウの蓄積を図る。
SEPTEMBER 2007  58 59  SEPTEMBER 2007 育っていなかったことから、経営陣からは“素 人”の考えが正しいのかどうかを精査するよ うにとの指示が下された。
機能別にパートナーを選び直接管理  〇六年三月、外部コンサルタントの支援も 受けながら「物流戦略プロジェクト」が発足 した。
結果としてこのプロジェクトは、ファ ンケルの物流管理にとっては画期的なものと なった。
それまでの“丸投げ”に近い管理を 転換し、明確な意思に基づく物流のアウトソ ーシングと、それに伴う拠点集約を、正式に 物流部門が主導して推進していった。
半年余 りかけた第一フェーズでは、外部のコンサル タントも使いながら物流部門が策定した計画 を精緻化し、八拠点を一カ所に集約すること を正式に決定した。
 続いて〇六年一〇月にスタートした第二フ ェーズでは、アウトソーシング先の企業を選 定する作業に取り組んだ。
ここで特筆すべき は、拠点を一カ所に集約する方針を掲げなが らも、マテハン、WMS(倉庫管理システム)、 庫内オペレーションの三分野に分けてパート ナーを選定したことだ。
顧客への配送業務に ついてもファンケルが直接、宅配事業者と契 約するという枠組みを最初に作った。
 一社に包括的にアウトソーシングする道を 選ばなかった理由を永坂氏は、「すべてを一 社に任せることも考えていた。
しかし、当社 がコア事業である通販を展開していくうえで、 マテハンやWMSなどの活用を外部に丸投げ したくなかった。
将来は関西に物流拠点を設 置することも検討している。
そのためにも物 流の中核的なノウハウは自分たちのなかに蓄 積しておきたかった」と説明する。
 マテハン分野のパートナー企業を選ぶとき に最も留意したのは、通販事業のピッキング 作業の効率だ。
ファンケルの物流センターで 扱うアイテムは約二五〇〇SKUある。
各ア イテムが一件のオーダーでヒットする確率は 低い。
ピッキング作業の手待ちによるムダを 減らし、逆に繁忙期には作業者を増員するこ とで処理能力を高められるような柔軟な体制 をいかに組むかが、マテハンベンダーに求め られていた。
 またICタグに対応した仕組みを持ってい ることも条件の一つだった。
新センターでは タグの全面活用も考えていたからだ。
入札に 参加した五社のなかで、条件に合致するベン ダーはダイフクとトーヨーカネツの二社だけ だった。
両社の提案したマテハン機器の処理 能力はほぼ同等だったが、ダイフクの提案には、 物量に合わせて作業者の数を柔軟に変えられ るというメリットがあった。
 この点を評価して「ダイフクさんの『先行 ピックタクト方式』という手法を採用した」 と永坂氏。
作業者が手待ちの間に次のオー ダー分を先行してピッキングし、これを「先 行仮置き台」に置いておくというオペレーシ ョンだ。
詳細な作業手順などはまだ検討中だ が、過去のデータによるシミュレーションでは、 一ラインで一時間に一八〇〇件以上を処理で ファンケル・新物流センター 準備室の永坂順二氏 ファンケル美健 千葉工場 ファンケル美健 横浜工場 ファンケル美健 滋賀工場 発芽玄米 長野工場 発芽玄米 香川工場 その他外部 生産工場 全国の個人宅 海外輸出 量販店 コンビニ 図1 2008 年8 月に稼動する新物流センターの役割 NEC の 倉庫管理システム (WMS) 導入 ダイフクの 物流機器 ( マテハン) 導入 通信販売出荷 店舗販売出荷 海外販売出荷 流通( 量販店) 販売出荷 流通(CVS) 販売出荷 流通什器出荷 日立物流による倉庫運営 ファンケルハウス 新物流センター SEPTEMBER 2007  60 きることが分かった。
新拠点には、これを二 本導入する計画だ。
 WMSについても大手ITベンダー五社に 声をかけた。
今回の構想では、異なる四つの 販売チャネルの物流を一つのセンターで処理 することになる。
複雑な業務プロセスが避け られず、既存のパッケージソフトを適用する のは容易ではない。
実際、入札に応じた大手 ITベンダーのなかには、定評のあるWMS パッケージを持っていながら、ゼロからの開 発を提案してきたところもあったという。
 そうした中でNECは、同社の既存のWM Sパッケージである「エクスプランナーLg」 の活用を提案してきた。
四つの販売チャネル に対応するシステムを約一年半後に稼動する という開発期間は決して余裕のあるものでは ない。
それでもNECとしては、ファンケル 向けのカスタマイズを通じてWMSパッケー ジの機能強化が図れるとみた。
両社の思惑が うまく合致したことから、WMSはNEC製 を採用することが決まった。
四社の合同プロジェクトが進行中  庫内オペレーションのための物流事業者を 選ぶコンペも、マテハンやWMSのコンペと 並行して進めた。
このため候補企業にはRF P(提案依頼書= Request For Proposal) を出す時点で、マテハンやWMSについては 最終的にファンケルの指定に従ってもらう可 能性があることを明示していた。
定義や、センターでの運用ルールの取り決め などのための話し合いを続けている。
 今回の構想では三社(日立物流、ダイフク、 NEC)が分担して実務を担うことから、関 連する会議や打ち合わせはすべてファンケル を含む四社の合同体制で進めている。
計画では、 日立物流の新センターが稼動する来年六月か ら移行作業をスタートする。
それから四カ月 かけて段階的に八カ所の物流拠点を集約して いき、一〇月にはすべての移行を完了。
新体 制で年末繁忙期を迎える予定だ。
 新センターで扱うアイテム数は、一般的な 通販事業の拠点と比べると多くはない。
だが  これを前提としながら、〇六年十一月に既 存の協力物流業者を含む計六社にRFPを 提示した。
このうち二社は、この案件の規模 の大きさなどを理由に入札を辞退。
さらに提 案を寄せてきた四社のうちの二社は、ファン ケル側の想定していたコストを大幅に上回る 金額で入札してきたため対象から除外した。
 残ったのは、日立物流と某大手物流事業 者の二社だった。
ファンケルは改めて二社の 提案内容を検証し、認識にズレなどがないこ とを確認。
再び見積もりを依頼した。
二社 が最終的に提示した金額に大差はなかったが、 最後は日立物流をパートナーに選んだ。
理由 は、「ファンケルの企業理念と非常に似てい るところを感じた」からだったという。
 この案件を受託できた場合には、日立物流 は千葉県柏市にある既存の物流拠点をスクラ ップ&ビルドして、新拠点をファンケルに提 供することを約束していた。
実際、このコン ペの後、日立物流は床面積三万六〇〇〇平米・ 六階建ての物件を新設することを正式に決定。
この施設のうち四割弱のスペースを、ファン ケル向けの業務に使うことになった。
 こうしてパートナーの選定は終わり、今年 三月からは計画を具体化していくための第三 フェーズがスタートした。
ファンケルの社内 では組織変更が行われ、物流戦略プロジェク トのメンバー五人による「新物流センター準 備室」が発足。
メンバーは新体制への移行に 専念することになった。
現在はWMSの要件 3F 出荷作業エリア ファンケル使用坪数 約2,700 坪 1F 入出荷エリア ファンケル使用坪数 約580坪 4F 保管エリア    事務所エリア ファンケル使用坪数 約980坪 (事務所エリア除く) CVS 作業エリア 流通什器作業エリア 通販・店舗・流通・ 海外作業エリア 入荷・出荷作業エリア 図2 新物流センターのレイアウト(予定) 61  SEPTEMBER 2007 日付管理やロット管理が必要なアイテムがあ ることから、トータルの業務量はかなり膨らむ。
さらに四つの販売チャンネルを同一拠点で扱 うことに伴う複雑さもある。
センター内のレ イアウトはほぼ決まったが、実際の運用ルー ルなど詰めるべき項目は少なくない。
ICタグで処理スピード向上狙う  拠点を一カ所に集約してからも、配送事業 者はこれまで通り日本通運、ヤマト運輸、佐 川急便を使い分けていく。
あえて配送事業者 を集約しないのは、顧客の注文しだいで宅配 事業者が限られてしまうからだ。
 ファンケルは競合他社がやっていない独自 の物流サービスとして、商品配送時の「置き 場所指定お届け」というメニューを用意して いる。
これは利用者が事前登録した内容に基 づいて、配送時に商品を指定の場所に置いて くるというものだ(図3)。
在宅・不在にか かわらず荷物を置いてくるため、宅配時の受 領印は取れないが、不在になることの多い利 用者の利便を考えて実施している。
 そして、このサービスを日通は提供してく れるが、ヤマトはやってくれない。
そのため 利用者が「置き場所指定お届け」を希望し た場合は、自動的に日通が配送を担当するこ とになる。
一方で時間帯指定などではヤマト の評価が高いため、こうした希望があれば自 動的にヤマトで配送する。
 各社との運送契約も、3PLである日立物 流のアンダーという位置づけにはしない。
こ れまで通りファンケルが直接、契約を交わす。
「すでに非常に安い単価で契約している。
3 PL事業者を通すかたちに見直しても、さら に安くて高品質にすることは難しいはず」と 永坂氏は明かす。
 先にもふれた通り、今回の物流改革では新 センター内のオペレーションにICタグを全 面的に活用する。
庫内で使うプラスチックケ ースやパレットにタグを貼付して、仕分けの 分岐制御や、製品の日付・ロット管理などに 使う。
通販事業だけでもHF帯のタグを一万 五〇〇〇〜二万枚導入する予定だ。
これら の業務は二次元コードでも可能だったが、ラ インスピードを落とさずに対応できることか らICタグに軍配が上がったのだという。
 絶対にI Cタグが必要だったわけではな い。
この決定は、むしろ「他者の真似をせず、 新しいものに取り組む」というファンケルの 社風によるところが大きい。
騒がれているわ りには上手く使っている事例がないようだか ら、自分たちでICタグ活用のモデルセンタ ーを構築してやろうというわけだ。
将来的には、 工場から物流センターに至る物流にも適用で きるかもしれないという思惑もある。
 一連の物流改革が落ち着く二年後には、フ ァンケルは現状で年間四〇億円かかっている 物流コストを二億〜三億円削減できるとみて いる。
在庫水準も現状より一五%程度は減 らせる見込みだ。
まずは「顧客に提供するサ ービスレベルを向上させることが第一」と強 調するが、新体制が軌道に乗ればさらなる削 減効果も期待できそうだ。
 同社の物流部門としては、これをきっかけ に社内における立場が改まることも切望して いる。
「WMSなどを駆使して物流の作業内 容を“見える化”し、販売部門などにデータ で物流コストが高くなっている理由を説明で きるようにしていきたい。
実はそれこそが我々 の一番の狙いでもある」(永坂氏)  近年のファンケルは売り上げこそ伸びてい るが、利益の確保に苦労している。
この状況 を打開するために会社を運営するための基盤 強化を進めており、財務・会計部門へのSA P/R3の導入と、物流基盤の整備はその二 本柱となっている。
新たな体制が計画通り機 能するかどうかは、来年の年末繁忙期を乗り 切るまでは何ともいえない。
それでも、この 取り組みを通じて、物流部門の社内での立場 は以前とは明確に異なるものになっているは ずだ。
  (フリージャーナリスト・岡山宏之) 図3 ファンケル独自の 「置き場所指定お届け」 コード 01 02 03 04 05 06 07 08 09 88 玄関前 ガスメーターボックス 集合ポスト 物置 車庫 管理人預け 洗濯機の中 宅配ボックス 自転車のカゴ 登録取消 ※発注者の在宅・不在にかかわらず、事 前に登録済みの「置き場所」に受領印 不要で届けるサービス 置き場所

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