2007年9月号
特集

3PL市場2007 アセット型3PLの独自モデルを作る

「アセット型3PLの独自モデルを作る」  アセット型3PL を自らの業態と位置付けた。
その ために荷主業種別の専任営業体制を強化すると同時 に、従来のモード別・地域別セクショナリズムの払 拭を図っている。
フルラインの物流機能を社内に抱 えることでライバルと差別化する独自のビジネスモデ ル構築を目指す。
      (聞き手・大矢昌浩) パイは無限にある ──〇九年までの三カ年計画で、3PL事業の売上 高を〇六年度比で四九〇億円増やすことを目標に掲 げています。
今期はその二期目に当たる。
 「当社は3PLの売上高を正式には公表していませ んが、数字は着実に伸びています。
今期に入っても 月に三件〜六件のペースで成約が続いています。
引 き合いの数はその数倍に上ります。
今後も市場が拡 大していくことには疑いがありません。
海外事業まで 含めればパイはいくらでもあると言っていい。
しかし、 そのすべてに手を出すわけにはいかない。
荷主企業が 3PLを選ぶのと同様に、我々も市場と顧客を選ん でいく必要があります」 ──それでも三年で四九〇億円増は容易ではないは ず。
目標達成には物流子会社の買収等が必要になり そうです。
 「当社と売り手側の双方にメリットがある案件なら、 いつでも動く用意があります。
先を読んで積極的に 投資するようにと、上からも指示されています。
し かし、なかなか案件がない」 ──従来の日通は部門別の縦割り意識、あるいは地 域別の縄張り意識が強かった。
これは3PLには馴 染みません。
 「否定はしません。
しかし、そうした問題を解消す るために、とくに現経営陣になってからは『ワンストッ プ化』を強く意識して、部門連携や組織横断的な機 能の強化に向けて多くの手を打っています。
その一 つが〇五年二月に設置した3PL部です。
昨年一〇 月には、ここに従来のグローバルロジスティクス部も 統合して、国内と海外も垣根をなくしました」 ──3PL部のスタッフは現状で二十数名と、それ ほど大きな組織ではない。
 「3PL部のほかに、本社営業部には一〇〇人強 の業種別の専任営業スタッフがいます。
彼らが大手 荷主とのインターフェースになる。
専任営業が窓口 になって3PL案件を持ち込み、3PL部とチーム を組んでソリューションの開発にあたる。
この営業手 法を全社的に定着させることで、事業を拡大してい く方針です」 ──3PL部と専任営業の役割分担は?  「業種別のニーズの把握やノウハウは専任部隊。
そ れに対して、プレゼンテーションやシステム構築、複 数部門の連携を必要とする機能などは3PL部に負 うところが大きい」 ──3PL部も売り上げ予算を持っているのですか。
 「3PL部は二つの数字を持っています。
一つは3 PL部が独自に開拓する新規営業。
これは通常の営 業部隊と同様に、3PL部が売り上げに責任を負う。
もう一つは、業種別の専任営業が持ち込んできた3 PL案件です。
こちらは基本的に専任営業部隊の売 り上げになりますが、3PL部はそれを支援する役 割を担っている」 ──日通の場合、既存客向けに業務範囲を拡大する 余地はかなりありそうです。
 「その通りです。
同時に長期にわたってお付き合い いただいている荷主企業であっても、マンネリ化すれ ば仕事を失う恐れもある。
常に新しい提案をしてい かなければ生き残れない市場になってきた。
適切な 『KPI(業績評価指標)』を設定し、継続的にそれ を改善していくことを契約書にも明記する、欧米型 の物流アウトソーシングが日本でも一般化してきまし た。
これまでのような、なあなあは許されない。
それ を放置すれば結局、3PL側が不利を被ってしまう。
SEPTEMBER 2007  20 Interview 日本通運 大原孝雄 取締役常務執行役員 21  SEPTEMBER 2007 3PL市場 2007 特集 そのため現在、全ての3PL案件の契約内容をチェッ クする作業を進めています」 ──契約のどの部分が問題になるのでしょうか。
 「例えば荷主の多くは、荷物一個当たり、あるいは 料率(通過額に対する割合)を基準にした料金設定 を望む。
しかし、一個当たりの処理にかかる実際の コストは、そのときの状況によって大きく変動します。
かなり緻密な分析をしなければ適切な料金設定はで きません。
しかも荷主から提供されたデータが、正 確であることがその大前提になる。
そこを曖昧にして しまうと、後から大混乱を招く。
あるいは大きな損 害を被ることになる」  「そうしたコスト分析力が3PLの重要なノウハウ の一つにもなっています。
その点で当社はこれまでの 経験の蓄積として荷主の業種・業態ごとに、料金に 関する一定の目安を持っています。
それを基にして 荷主から提供されたデータをそのまま鵜呑みにするの ではなく、その信頼性まで考慮にいれて、案件を判 断しています」 ──つい数年前まで市場では無理な価格競争が横行 していました。
 「おっしゃる通りです。
しかし、今は赤字の仕事を 引き受ける業者はほとんどいなくなりました。
荷主側 のスタンスが変わってきたことも大きい。
最初にキチ ンと機密保持契約を結び、つっこんだ経営データま で我々に公開してくれるようになりました」 “持つ経営”の強みを活かす ──3PLは儲かるという当初の認識も変わってき ました。
そのために撤退する業者も出てきた。
国際 インテグレーターを見ても3PLに本腰を入れている のは今やDHLだけだと言ってもいい。
 「少なくとも当社は3PLを今後の事業の核として いく方針です。
確かに3PL事業自体の収益性はそ れほど高くない。
しかし3PLとして参画することで、 その荷主の周辺業務まで取り込むことができる。
当 社は国内トップの倉庫施設、日本全土にわたる配送 網、また全世界を網羅する海外ネットワークを自社 の資産として抱えています。
それがノンアセット型の 3PLと比較した時の当社の強みにもなっている」 ──3PLビジネスは、規模のメリットを活かしにく いと言われています。
 「当社が外部のアセットを使わないわけではありま せん。
しかし持たない企業に比べて、持っているこ とで選択肢は拡がる。
しかも当社は3PLという言 葉が普及する以前から、荷主の業種別・業態別の専 任営業体制をとってきた。
各業種に特化した知識や ノウハウを持った人材を社内に多く抱えています。
3PLの領域では、贔屓目でなく、当社が一番だと 自負しています」 ──アセットを持つと資本効率が悪化する恐れもあ ります。
株式を公開している企業であれば、そうし た市場のプレッシャーは小さくない。
 「一時は当社も資産を売却する傾向にあったことは 確かです。
しかし現在は一定の資産は社内に残し、 次の世代につなでいこうという考え方に傾いていま す。
今後も拠点投資は積極的に進める計画です」 ──拠点に関してはノンアセットを基本とする国際イ ンテグレーターのモデルとはかなり違いますね。
 「やはり差別化は必要です。
同じモデルの物流企業 がいくつもあっても顧客の価値にはなりません。
これ まで当社が経営スタイルとしてきた顧客第一主義は そのままに、荷主ニーズに立脚した当社独自の3P Lを作っていきたいと考えています」 ●日通の3PL 営業組織──業種別に専任体制を敷いている 3PL部 本社営業第1 部 本社営業第2 部 本社営業第3 部 本社営業第4 部 (計100 人強) 直接営業 (21人) 素材系荷主 メーカー系荷主 商業・流通系荷主 官公庁 新規荷主 営業サポート

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