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若松梱包運輸倉庫─グリーン物流で勝ち残る
石川県に本社を置く独立系の中堅物流会社。 運送会社
の下請け仕事はしないという方針を堅持して、1985 年に
メーカー向け共同配送事業を開始。 北陸三県を網羅する
加工食品の共配ネットワークを築き上げた。 現在、加工食
品メーカーを中心に約80 社が利用している。 環境問題の
高まりを追い風にして順調に事業規模を拡大させている。
荷主の拠点集約を逆手にとる
──二〇年以上も前から、北陸で食品の共同配送事
業を展開されている。 そもそもきっかけは何だったの
ですか。
「最大荷主だった食品メーカーの在庫集約です。 当
社の地元に保管されていた在庫が中央に引き上げら
れることになってしまった。 当社としては大打撃です。
しかも、在庫集約の動きはその後、他のメーカーにも
波及していくことが予想されました。 そうであるなら、
むしろ荷主の在庫集約を逆手にとろうと考えたのが
きっかけです」
「在庫が中央に移されると我々の地元にはT C
(Transfer Center : 在庫を保管しない通過型セン
ター)型の『スルー物流』だけが残されることになり
ます。 そこで、荷主の在庫集約を恐れてビクビクし
ているのではなく、むしろ当社から荷主に在庫集約
を提案して、スルー物流を取り込んでいこうという
発想です」
──当時の事業規模は?
「年商で八億円程度です。 それでも地場の運送会社
としてはそれなりの規模でしたが、大手特積みとは比
較にならない。 実際、地元の運送会社のほとんどは
特積みの下請けとして生計を立てていた。 ところが当
社は私の父親に当たる先代社長の時代から、運送会
社の下請け仕事はしないという方針をとっていた。 そ
のために無謀にも大手の向こうを張ってメーカーと直
接取引のできる共配に進むしかなかった。 しかし結果
として、共配事業を開始して以降はバブル景気も挟
んで、当社は世の中の景気の動きとは全く関係なく
事業規模を伸ばすことができました」
──具体的には、どういうかたちでスルー物流のイン
フラを整えたのですか。
「金沢にある路線業のトラックターミナルに入居す
るかたちで拠点を構えました。 入荷した商品を素早く
仕分けるためには、積み卸しに便利な高床式で、荷
さばき場があり、かつ入荷用と出荷用のトラックバー
スを備えている必要があります。 保管していた在庫か
ら出荷するように設計された通常の倉庫では対応でき
ません。 実際、共配の庫内オペレーションは特積みに
近い。 ただし共配の場合は特積みのような不特定多
数を対象にするのではなく、特定のメーカーの荷物だ
けを扱う。 配送先が重なる食品メーカーの荷物だけを
集めていったわけです」
──結果としてライバルメーカー同士の荷物を混載す
ることになりますね。
「当時、同業者同士の共同配送には、ライバルに
情報が漏れるのではないかとか、ライバルとの混載は
困るといったアレルギーがありました。 そのため荷主
主導の共配はなかなか進まなかった。 それに対して当
社は勝手に混載して先に既成事実を作ってしまった。
それが徐々に荷主側にも認識されるようになってきた
という流れです」
「もちろん今では皆さん共配だと分かって当社の仕
組みに乗ってもらっています。 アレルギーはすっかり
なくなりました。 コストと品質、安全の問題をクリア
できれば誰と混載しようが構わない。 むしろ特積みの
ように、どんな商品と混載されているか分からないよ
りは、同じ種類の荷物と一緒に運んで欲しいという
考え方になっている」
──共配はインフラビジネスですので、固定費をペイ
できるだけの物量を集めるまでの最初の期間が収益的
には一番苦しかったはずです。
「その通りです。 しかも当社は納品先と直接顔を合
若松梱包運輸倉庫 若松明夫 社長
OCTOBER 2007 18
第2部規制強化をビジネスチャンスに
19 OCTOBER 2007
特集環境物流の進め方
わせる末端の配送には傭車を使わず全て自社便を充
てるという方針をとったため、先行投資にもなったし、
一社ずつ荷主を増やしていくのは時間もかかりました。
それでも今では配送ネットワークも完成し、北陸三県
ではこれ以上は納品先を増やしようがないというとこ
ろまで来た。 さらに石川のほかに富山にも近く拠点進
出します。 来年三月に開通する東海北陸自動車を使っ
て輸送を効率化する。 これは今年度の『グリーン物
流パートナーシップ推進事業ソフト支援事業』として
国土交通省の認定も受けています」
名古屋でも共配を提案
──共配が上手くいった背景として、やはり北陸は
配送密度が低い、そのため配送効率も悪いという事
情があるのでしょうか。
「もちろんです。 結局、北陸には加工食品の在庫型
の拠点がほとんどなくなってしまいました。 これが東
京や大阪であれば、在庫拠点は必要だし物量もまと
まるため共同化をする必要もない。 ただし名古屋は違
います。 東京や大阪から距離がないため、現地に在
庫を置かずに済む。 しかも商圏としては大きい。 それ
だけ在庫を集約した時の効果も大きい。 そこで当社
も名古屋には既に進出しています。 メーカーに対して
名古屋の在庫を東西二拠点に撤収しませんかという
提案をしているわけです」
──ということは、北陸でなくても、在庫を引き上
げることのできるエリアであれば、つまり東京と大阪
以外は、どこでも同じ共配事業が展開できるわけで
すか。
「理屈としてはできます。 ただし、全国展開しよう
とは考えていません。 当社は北陸だけでいい。 名古屋
をはじめ、東京や大阪にも基地は持っています。 しか
し、それもあくまで北陸の地盤を守るためにそうして
いるに過ぎません」
──なぜ全国展開しないのですか。
「企業体力の点でも、人材的にも難しい。 そのため
に株式を公開しようとも思わない。 そもそも物量の波
動を吸収するには、共配事業単独ではダメなんです。
バランスをとる必要がある」
──バランスとは?
「一つは荷主のバランスです。 物量のピークが重な
らない荷主をバランスよく組み合わせる必要がある。
売り上げのバランスもある。 当社の場合、共同配送
は五〇%、他に3PL、倉庫、運送、国際物流など
を、それぞれ一〇%程度の比率で維持している。 こ
の比率が崩れると事業がうまく回らなくなる。 例えば
単純な運送事業は利益率が低い。 しかし、それも日
常的に運営していないと、必要な時に輸送力を確保
できなくなってしまう。 幹線輸送を傭車するにも一定
の仕事を常に提供していないとイザというとき逃げら
れてしまう」
──それは共配事業とは直接関係がないのでは。
「実は当社のような地域共配は荷主の工場や中央在
庫拠点から地場配送の仕分け拠点まで運んでくる部
分の幹線輸送の効率が収益性を大きく左右するのです。
幹線輸送の効率を上げるためには、ボリュームを確保
しなければならない。 そのために共配だけでなく、幹
線輸送を強くする他の仕事を一定の比率で抱えてお
く必要があるわけです」
──当面の課題は。
「料金の値上げです。 二年ほど頃から、お願いに回っ
ています。 そのことで取引を打ち切られた荷主もあり
ます。 しかし、それ以上に新しい仕事が入ってきてい
るため全体の売り上げとしては伸びています」
若松梱包運輸倉庫・企業プロフィール
創業は1927年(昭和2年)に遡る。 梱包業とし
て創業し戦後、地場配送を中心とする小型運送業、
倉庫業、トランクルームと事業領域を拡げた。 現社長
は三代目に当たる。 85 年、金沢トラックターミナル
に食品の地域共配を手がける「JIT 物流センター」を
設置。 以降、共同配送事業をメーンとして事業規模
を拡大している。 06年9月、グリーン経営認証を取得。
現在年商は約55億円に上っている。
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