2007年10月号
特集

環境物流の進め方 国土交通省──優良事業者には優遇措置

国土交通省──優良事業者には優遇措置  輸送事業者に対する環境規制の過度な締め付けは 零細の排除につながる恐れがある。
急激な淘汰は望 ましくない。
その一方で日本の国際公約となってい るCO2の削減は期限までに達成しなくてはならない。
苦しい板挟みに合いながら、改正省エネ法の運用を コントロールする必要に迫られている。
テコ入れ策を検討 ──改正省エネ法は経産省が荷主企業を担当し、国 交省が物流事業者という役割分担ですが、経産省の 特定荷主と違って国交省の場合は、対象となる事業 者のリストが予め決まっていたわけですか。
 「そうです。
改正省エネ法の対象となる事業者は、 自動車の場合は保有車両台数二〇〇台以上ですから、 営業用トラックであれば車両の登録台数から対象が特 定できます。
そのため今年六月末時点で指定された 約四二八社(うち営業用トラック運送三二二社、自 家用トラック運送一〇六社)という数字は、今後そ う大きく動くことはないはずです。
既に輸送量の届け 出は一〇〇%集まりました。
定期報告書も作成に手 間取って提出が遅れている事業者が若干出ていますが、 これも全て揃うはずです」 ──もともと輸送事業者の省エネには国交省も従来 から取り組んでいました。
改めて法律ができたことで 何か変化はあったのでしょうか。
 「全く反応が違いますね。
実際、報告書の締め切り が近づくにつれて、事業者からの内容や書き方につい ての相談で、各地の運輸局では電話が鳴りっぱなし になりました。
今回は初めて荷主も規制の対象になっ たことで輸送事業者側の認知度もかなり高かったよう です。
また保有車両台数が二〇〇台以下でも、荷主 が報告書を作るために資料を作らなければならない輸 送事業者も出てきて、そうした事業者には、かなり 文句も言われました」 ──エネルギー使用量の算出方法として、ガイドライ ンでは「燃料法」「燃費法」「改良トンキロ法」の三 つがあげられていましたが、実際にはどの方法がとら れたのでしょうか。
 「まだ正式に集計はしていませんが過半数が『改良 トンキロ法』です」 ──『改良トンキロ法』は計算が簡単な分、厳密性 に欠け、効率化の効果を補足しにくいという欠点が 指摘されています。
今後、別の算出方法をとるよう に行政から指導していくつもりはありますか。
 「確かに計算方法としては厳密性が高い方がよいの ですが、計算するのにあまりに時間やコスト負担をか けさせることは避けたい。
また、省エネ法の狙いはあ くまで環境負荷の低減で他社との比較ではありません ので、途中で計算方法を変えてしまうと前年との対 比が難しくなってしまう。
継続性のほうが大事だと考 えています」 ──報告書に記載された各社の削減計画の内容につ いては?  「大手企業に関しては、それなりに信頼性のある計 画が出ているのですが、中堅以下では、あれをやりま す、これをやりますとは計画としては書かれているも のの、これで本当に削減できるのかと個人的には疑問 に思うものもあります。
何らかのテコ入れをする必要 がありそうだという印象を持っています」 ──計画自体を国交省が個別に指示することは。
 「基本的にはありません。
毎年CO2を一%ずつ減 らしていくという成果さえ出せれば、その方法につい ては干渉するつもりはありません。
そもそも計画書に 書かれている取り組みの多くは、かなりザックリとし た内容で、細かく口を出すようなものでもない」 ──結果として減らなかったらどうするのですか。
 「減らせるのに減らさないところと、減らしたくても 減らせないところと二つのパターンがあると思います。
減らせるのに意図的に減らさない事業者には、立ち入 り検査などを実施して強く指導していきます。
一方で 国土交通省 平川貴光 総合政策局 環境政策課 専門官 OCTOBER 2007  22 第3部「改正省エネ法」運用の行方 23  OCTOBER 2007 特集環境物流の進め方 減らせない。
減らし方が分からないといった事業者に 対しては、優良改善事例集などを作って地道に助言 していくつもりです」 ──それだけでは、あまり効果も期待できないのでは。
 「我々が強権的に動くよりも、むしろ改正省エネ法 をきっかけにして、荷主が輸送事業者を選ぶときの 判断材料に、環境という尺度が加わってくることのほ うが大きいと考えています。
それを後押しするために、 国交省としても環境面で優良な輸送事業者、省エネ 対策や省CO2対策に積極的に取り組んでいる輸送事 業者に対して、いわゆる“お墨付き”を与える、推 奨していくような仕組みを検討しています。
ムチだけ でなく飴も用意していきたい」 ──環境に優しい経営だと認められた物流事業者を 顕彰する「グリーン認証」制度が既に二〇〇三年か ら始まっています。
 「ただし、現在は認証しているだけです。
それを一 歩進めるかたちで具体的なインセンティブを加えるこ とを検討しています。
例えば、輸送事業者に対する 各種の支援事業の優先採択や、低公害車に対する補 助等も優先するといった方法が考えられます。
また経 産省と連携して、荷主側に対する働きかけも強めて いきたい。
輸送事業者の環境対策は荷主次第という 傾向が強い。
そのため、この分野に関しては国交省 と経産省の間で積極的に人事交流も行うなど、縦割 り行政の悪弊を避けて一体となって動ける体制を作っ ています」 ──輸送事業者を強制的に締め付けることはしない?  「あまりギチギチに強制すれば、とくに中小零細の 事業者は非常に苦しむことになるのではないかと危惧 しています。
車両を代替するにしても、零細の輸送 事業者だと、もともと保有台数に余裕がないために、 替えが効かないということがある。
一度、依頼を断っ てしまうと二度と仕事は回ってこない。
しかも零細は 営業力がないため中堅以上の企業に比べて、新規荷 主の獲得も難しい、といった話を耳にしています」 零細企業への影響を懸念 ──車両の代替はそうでも、エコドライブなど金のか からない省エネ活動はいくらでもあります。
本来、省 エネはコストダウンにつながるのですから、中小零細 こそ必死に取り組むはずでは。
 「そのはずなのですが、ドライバーが嫌がるのか、 アイドリングストップなどにしても、期待したほどに は浸透していない。
そんな状態で、あまりに締め付け を強化してしまうと、事業の継続自体を阻害してし まうことにもなりかねません」 ──淘汰は悪だとは言えません。
 「しかし急激な変化は好ましくない。
時間をかけて 変えていくほうがいい」 ──もともと国交省、経産省にしても同じですが、か つては環境規制に対して、事業者を擁護する側に立っ ていました。
しかし、そのスタンスが現在は一八〇度、 逆転した格好です。
 「事業者には戸惑いもあるかも知れません。
それで も国交省のなかには今でも事業者を支援する組織も あるし、省庁間の話し合いなどでは輸送事業者の実 情に配慮して、行き過ぎた環境規制を抑えるように 動く場面もあります。
しかし京都議定書で国がCO2 の削減を公約した以上、我々は務めを果たさなくては ならない。
本来は九〇年比で六%の削減をしなけれ ばならないところが現状では逆に大きく増えてしまっ ている。
残された時間は限られており危機感はぬぐえ ません」 ?改良トンキロ法 CO2排出量 = 燃料使用量 × CO2排出係数 燃料使用量からCO2排出量を算定 高い 制度・作業負荷 ?燃料法 CO2排出量 = 輸送距離/燃費 × CO2排出係数 ?燃費法輸送距離と燃費からCO2排出量を算定 CO2排出量 = 輸送トンキロ × 代替手法B 積載率と車両の燃料種類、最大積載量別の 輸送トンキロからCO2排出量を算定 ●改正省エネ法では3つの算定方法が採用されている●改良トンキロ法の算定式 CO2排出量 (t-CO2) = × × × × × × 輸送トンキロ (トンキロ) 改良トンキロ法 燃料使用原単位 (ℓ/トンキロ) 1/1,000 (kℓ/ℓ) 単位発熱量 (GJ/kℓ) 排出係数 (t-C/GJ) 輸送重量 (トン:t) 輸送距離 (キロメートル:km) 44/12 (t-CO2/t-c) 標準手法 代替手法A トラック限定 改良トンキロ法 CO2排出原単位

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