2007年10月号
特集

環境物流の進め方 ロジスティクス構造改革の威力

OCTOBER 2007  26 ロジスティクス構造改革の威力  A・マッキノンはつぎのように述べている。
 「企業における基礎的レベルのロジスティクス・オペ レーションの“グリーン化”とは、企業風土の変革と 戦略的なプライオリティの見直し以外のなにものでもな い。
ロジスティクス階層構造の最下層にも排出量削減 の可能性はそれなりにあるが、生産と流通段階での輸 送量を削減するポテンシャルは、おもにもっと高いレベ ルに存在する」  H・ウーとS・ダンは同様に、工場がどういうロケー ションにあるか、協力者はだれか、どんな技術を利用し ているか、そしてロジスティクス全体の構造はどうなっ ているのか、などを企業は再検討しなければならないと している。
かれらによれば、環境にやさしいロジスティ クスとは、よりすくない移動・ハンドリング、短い輸 送距離、ダイレクト・シッピング・ルートの有効利用、 などによって特徴づけられる。
また、一企業が構造的 に排出ガスを減らすただ一つの方法は、倉庫を分散化 させ、車輛の積載量を増やして便数を減らすことである、 とJ・クーパーらは論ずる。
 単純な荷物のやり取りが輸送の必要が生じる大きな 原因の一つであるため、調達と配送は環境にあたえるイ ンパクトのうえで中心的な役割を果たす。
より環境に配 慮した判断を下すためには、戦略的/戦術的意志決定 がオペレーションにどう反映するのかを熟知することが 不可欠だ。
 ある研究論文のなかには、原材料をどのように調達 するかという戦略的レベルの決定と、ある特定のデリバ リーにどのトラックを使用するかといったオペレーショ ンレベルの決定のような、組織上のレベルが異なる意志 決定では、生産性にあたえる影響力が異なるという意 見が表明されている。
また、オペレーションレベルにく らべ、戦略的レベルの意志決定のほうが排出ガスに対 するインパクトが大きいとも述べている。
イントロダクション  世界中の企業はつねに競争力の強化に腐心している。
コスト削減やリードタイム短縮など、効率的なオペレー ションを追求するなか、環境に対する配慮はなおざりに なりがちである。
しかし、もし環境問題がもたらす影響を、 時間やコストのようにはっきりと特定・計量することが できなければ、それは将来的に負担となる危険性がある。
環境マネジメントという原則を日々の意志決定プロセス にいかに組みこむかが、ロジスティクス・マネジャーの 腕の見せどころなのである。
 この小論の目的は、ロジスティクスに関連する意志 決定が、どう環境に影響するかを明らかにすることであ る。
内容の検討は三つのケーススタディにもとづいてお こなわれ、意志決定の三つのレベル(戦略・戦術・オ ペレーション)の階層構造が明らかにされるだろう。
も う一つの目的は、環境への負荷軽減とオペレーションの 効率化がどうすれば両立しうるかを解明することにある。
環境負荷低減に取り組む二つのアプローチ  環境負荷を減らすアプローチには大きく二つあるが、 その一つはエネルギー効率を高める新技術によるもので ある。
というのも物品の輸送やロジスティクスの分野で は、エネルギー効率はまだまだ改善の余地があるとされ ているからだ。
二つ目は、各企業によるプロセスの再構 築である。
 ロジスティクスに関する研究論文には、エネルギー効 率を高める技術と、ロジスティクスをこれまでとは違っ たやり方で組織化することの、二つの方法が紹介されて いる。
しかしながら、燃料効率のよいエンジンなどの新 技術だけでは十分ではない。
配達から配送にいたるまで の、よりスケールの大きな構造改革が必要とされている のである。
リンチョピン大学(スウェーデン) ホカン・アロンソン 准教授 マリア・フーゲ・ブロディン 准教授  ロジスティクスの分野で環境のためにできることとはなにか。
一つは新 技術開発によってエンジンのエネルギー効率を高める直接的方法であり、 もう一つがロジスティクス・システムの構造改革をおこなうことによって 間接的に環境負荷を軽減する方法だ。
ここでは後者に焦点をあて、環境 先進国であるスウェーデンの代表的企業三社の物流システム改革を例に とり、その今日的意義と課題を探る。
第5部 27  OCTOBER 2007 特集環境物流の進め方  だが、どのレベルの意志決定がもっとも大きなインパ クトをあたえるかについて、また、そもそもこうした意 志決定が本当に環境に対するインパクトをあたえるかに ついては異論もある。
一回の輸送量を増やして便数を 減らす、現地で調達する、あるいはローカル倉庫を利 用するなどの決定は環境負荷を減少させるという意見が ある。
しかし現代のロジスティクス・ソリューションは、 しばしば反対の方向にむかう。
倉庫と生産は集約化さ れ、調達は世界中から、発注はますます多頻度小口化に、 などである。
対策と効果の関係性  図1は、対象の範疇(技術 VS 構造)と問題領域(マ クロ VS ミクロ・パースペクティブ)がマトリックスを構 成している。
排出ガスに対する技術的ソリューションは、 マクロとミクロ双方にまたがっている。
マクロレベルに おいて、国や公共団体は代替燃料の使用を奨励し、環 境に悪影響をおよぼ す技術の使用に対し ては懲罰的な税を課 すなどの措置をとる ことができる。
研究 資金のふりむけ先を コントロールするこ とで、技術開発の方 向性に関与すること も可能だ。
一方ミク ロレベルでは、企業 は国の政策によって 新技術開発の必要性 にせまられる。
しか し技術革新によって 他社との競争にうち 勝ち、懲罰的課税を免れたうえに、ついには需要家グルー プ(自動車産業など)に受け入れられるといった機会 も生じうる。
また、新技術の開発は、他分野からの新 規参入の機会をも提供することになる。
 構造的範疇でマクロレベルにふくまれるのは、インフ ラ整備や環境負荷の小さい輸送手段へのモーダルシフト をうながすなどの措置だ。
道路網や鉄道路線などのイン フラは輸送距離に関係し、環境負荷に直接影響をおよ ぼす。
しかしミクロレベルの構造的範疇については、実 態に即した調査や計測という点であまり研究がすすんで おらず、環境問題に関してはさらに遅れている。
 図1にしめした例は、環境負荷低減につながるとかん がえられているコスト削減対策である。
だがこうした対 策とその効果のあいだに、明確で直接的な関係性の存 在を立証するにはいたっていない。
同様に、とりわけ納 期短縮の要求が強まるなかで、環境負荷低減と収益性 の向上(もしくは維持)を両立させながら持続可能な 発展をすることがはたして可能であるか、あるいはそれ がどのような場合に実現するかといった議論にも決着は ついていない。
EUや他の政府機関によって推進される 方向性に、もしロジスティクス業界が影響力を行使し たいとかんがえるなら、こうしたことに関する知見を提 供できなければならない。
三つのケーススタディ  ここでわれわれが取り上げるのはスウェーデンの多国 籍企業三社の事例であり、ヨーロッパ内の物流システム、 とくにスウェーデンからヨーロッパ本土への物流に焦点 をあてている。
各社ともヨーロッパ以外の地域にも活発 に展開しているが、今回はヨーロッパ域内にしぼって考 察をしている。
ただし食品メーカーの事例はスウェーデ ン国内の市場を対象としている。
選定基準はつぎの二 つである。
?物流システムの大がかりな再構築をしたか、あるいは しつつある。
?環境負荷低減に対する取り組みで、それぞれの市場 におけるリーディングカンパニーであると競合他社の 多くが認めている。
 ある程度の共通点はあるとはいえ、この三者は物流 システムの再構 築にそれぞれ 違った方法で 取り組んでいる。
図2にその内容 をまとめてある。
 食品メーカー のケースでは物 理的な面もある が、主眼は管理 システムの改革 にある。
情報シ ステムが一新さ れ、それにより 物理的フローの 可視性がめざま しく改善された。
そのため、物理 的フローの計画 を一元化するこ とが可能になっ た。
この管理の 一元化でコスト 削減と環境負荷 低減が同時に実 現されたのだが、 改革ポイント 効果/結果 食品メーカー 家具メーカー 製紙メーカー 図2 各企業の配送システムの改革ポイントとその効果 新たな流通網(倉庫の統廃合) 全倉庫に全機能を付与 (クロスドッキング、セントラル/ ローカル在庫) 新情報システムの導入、計画の一元化 専用車両による二段積み化 排出ガス削減 計画性と可視性の向上 輸送・倉庫費用のコスト削減 倉庫内のエネルギー節約 ヨーロッパ内の調達ー輸送網の再構築 バルク輸送への転換 倉庫の拡大 荷台の標準化 車両の標準化 梱包に便利なプロダクトデザイン 製品ごとに区分された配送サービス 排出ガス削減 コスト削減 納期短縮 配送の正確さの向上 輸送網の再構築 モーダルシフト 荷台の標準化 常時利用可能なシステムの確立 (予約・管理が不要) コスト削減 キャパシティの標準化 配送頻度の向上 リードタイム確度向上 予約の透明性 排出ガス削減 技  術構  造 排出ガスに かかわる 主な分野 ・インフラ(例・道路、鉄道、空港) ・モーダルシフト ・教育 ・輸送需要の削減 図1 直接的・間接的に排気ガスに関係する主な分野    (マクロとミクロ両方のパースペクティブを含む) マクロ・ パースペク ティブ ・効率的エネルギー技術 ・多量な排出ガスをともな う燃料使用の削減(例・ 化石燃料) ・コスト減につながる燃 料効率向上の技術 ・コスト減につながるク ーラー/ヒーターにか かるエネルギー削減 ・規模と範囲の経済 ・自社の全車両の有効活用 ・輸送コストの削減 ・ロジスティクス・コスト全 体の削減 ミクロ・ パースペク ティブ OCTOBER 2007  28 それはリソースの有効利用ができるようになったためで ある。
リソースの有効利用とは、効率的な積載など輸 送に関するものや倉庫の集約などである。
食品は種類に よって保管温度が異なるため、倉庫を集約すると相当 のエネルギー節約になる。
 システム改革によって、さまざまな局面でダイナミッ クなプランニングが可能になった。
分散させず一カ所で 保管するべき商品はどれか、季節商品が多いためいまま ではコントロールが行き届いていなかった。
配送ルート もダイレクト・プランニングの目的の一つで、いまでは 中央倉庫への移動の途中で地域の配送センターに荷物 の一部をおろすことも可能になった。
このケースではコ ストが下がり、しかも環境に対する負荷も軽減した。
 家具メーカーのケースでは、ヨーロッパの中央倉庫へ バルクで送る物流システムを導入したが、それだけでは ない。
デリバリーサービスが製品別になり、それにより コスト削減だけでなくより効率的なフロー・コントロー ルが実現し、さらには中央倉庫の果たす役割が飛躍的 に大きくなった。
この物流システム改革では、マテリア ル・フローの最適化と輸送モードの転換をともなってい る。
輸送は大量のトラックによるものから、毎日運行 する特別列車によるバルク輸送に変えた。
また、リソー スを有効利用するため、車輛だけでなく荷台も標準化 した。
列車による輸送に転換することで数々の利点が 生じ、排出ガスは減少した。
コストが下がると同時に 配送頻度が大幅に減少、また、スウェーデンからヨーロッ パ大陸までの平均運行速度は二〇 km から六五 km に上がっ た。
このスピードアップと輸送モードの転換で、デリバ リーの確実性が向上すると同時に、物流全体をコント ロールすることが容易になった。
 製紙メーカーの事例をみてみよう。
このケースではバ ルク輸送の集約と輸送モードの転換が図られた。
以前 はスウェーデンからヨーロッパ大陸までの輸送に列車が 使用されていたが、その運行スケジュールは不安定だっ た。
さらに、ヨーロッパ各地の客先までのリードタイム が長くて不確実、フローのコントロールが不自由、鉄道 会社へのバーゲニングパワーの不足によるコスト高、な どの問題があった。
また、北ヨーロッパでは鉄道の過密 運行が常態化しており、それが輸送システムの効率に 影響していた。
 そこで新システムでは、まず鉄道を利用してスウェー デン国内からイェーテボリ港(スウェーデン南西部)に 荷を集め、そこからフェリーでゼーブルージュ港(ベル ギー北西部)まで運び、そしてオランダで鉄道に載せか えて各地に届ける体制にあらためた。
輸送量が膨大に なるため、イェーテボリからのフェリーは週六日間毎日 一便が運行される。
 この新たなシステムでかかるリードタイムは以前と大 差ないが、コントロールがきくようになった(このシス テムは荷主自身によって運営されている)ため、デリバ リーの確実性は飛躍的に向上した。
システムの改革は トータルコストの大幅な削減にもつながっている。
大事 な点はリソースの利用効率向上にあるのだが、車両の状 況が把握できるようになって全体として必要となる台数 が減った。
つまり積載効率が重要なファクターとなった。
この一貫したシステムソリューションには、列車とフェ リー両方に合うような荷台の標準化が欠かせない。
そ してこの輸送モードの転換によって、スウェーデンから ヨーロッパ各国への紙の輸送によって生じる環境へのイ ンパクトはかなりの程度減少した。
 さて、これらの事例から、構造改革には二種類ある ことがわかる。
構造改革の主流は整理統合であり、そ れは構造、計画、車輌と荷台など、いくつかのレベル でおこなわれる。
オペレーション/戦術レベルでの統合 には、環境に対するストレスを抑える効果がみとめられ た。
構造的な統合(ここでは倉庫の集約)も環境負荷 を減らすが、それには輸送モードの転換をともなう。
逆 にいえば、輸送モードの転換と統合は倉庫の集約によっ て可能になったわけである。
もう一つは車輌や荷台と いったロジスティクス・リソースの標準化である。
すで にみたように、標準化は高度な統合につながるが、関 連するリソース全体量の削減をも意味する。
したがって 標準化は、間接的に環境ストレスを軽減することになる。
こうした特徴は物理的構造についての改革に由来する。
コントロールと計画の能力向上をもたらす情報の可視性 は、管理の構造に関連する項目である。
管理構造でも う一つ重要なのが、荷物が保管状態かあるいは輸送中 なのかを把握することである。
ロジスティクスに関する意志決定と その環境にあたえる影響 ■■効率性の改善(統合)  事例全体をとおして指摘すべき重要なポイントは、リ ソースの利用効率をいかに高めていくかということだ。
どの事例でも、効率を向上させることは環境ストレス を軽減することにつながっている。
戦略レベルにおいて、 効率性を高めるということは倉庫の規模拡大・集約・ 立地の見直し、配送システムの一本化などを意味して おり、これらはすべてロジスティクス・インフラストラ クチャーの改革ということができる。
構造的統合の具体 的な例としてもう一つ挙げられるのは、生産地から消費 地の中心へのフローを一本化すること、つまりはメイン フローへの統合である。
これは家具メーカーの場合はト ラックから鉄道、製紙メーカーの場合では鉄道から船へ というように、輸送モードの転換をともなうことが多い。
 そのほか効率を上げる方法には、運送計画の抜本的 見直しや保管戦略の変更、輸送頻度の低減などがあるが、 なかにはリードタイムが長くなるケースもある。
こうし た戦術的な改革は車輌の利用効率を向上させ、したがっ 29  OCTOBER 2007 特集環境物流の進め方 て総走行距離と消費燃料を減らすことに貢献する。
また、 車輌の利用効率を向上させるもう一つの戦術的解決策 は、同地域の同じような顧客に納品している他社との 共同配送である。
 戦略・戦術レベルとともにオペレーショナルレベルに も、輸送効率を高める方法がある。
構造的統合により 全体としての輸送頻度は減るが、統合されたルートだけ をとってみれば輸送頻度は増えるため、積載効率が高 まるようにこまかく配送計画を変更することが可能とな る。
最終顧客に対するデリバリーサービスの質の低下を まねくことなく、たとえばある品物の出荷をつぎの便が 出るまで待つことができるようになるわけである。
また、 製品のサイズを小さくするなどして最終的な梱包形態を 変えるといったような、他とは別個に実施できる改善策 もある。
こうした改革によって輸送効率を高める一方で 作業量を減らし、そして環境負荷は減るがサービスレベ ルは維持できるということが可能となるのである。
 家具メーカーの場合、膨大な物量を集積させること で輸送モードの転換が可能になった。
最初に整備され たのはヨーロッパにある二つの主力工場間のルートだっ た。
鉄道への変更にはいくつか理由がある。
コストと 環境への配慮はもちろんだが、店舗数が増加したため 物量が増えたことも大きい。
もう一つ大きな理由はヨー ロッパ主要幹線道路の混雑が悪化する一方であることで、 製紙メーカーが輸送モードを転換したのも同様の理由に よる。
しかしこの製紙メーカーの場合、フローを陸上の 鉄道から北海海上のフェリーへ移すという、地理的に はるかに大きな転換である。
この改革では、基本的に モーダルシフトと物量の集約によって環境負荷を減らし、 さらにはコスト削減とデリバリーサービスの向上を実現 している。
 鉄道を代替輸送モードとして利用するには、列車が 目的地間をノンストップで運行することが前提条件とな る。
とりわけ目的地が国をまたがる場合、これはむずか しい条件である。
この面で製紙メーカーと家具メーカー はおなじ問題をかかえていた。
家具メーカーの新システ ムで鉄道輸送は、主力工場間の距離約一〇〇〇 km を平 均速度六五 km 、約一四時間で結んでいるが、これまで は平均速度一七 km にすぎなかった。
列車を借りる時間 単位の固定費が高いため、運行速度はきわめて重要な 要素なのである。
■■標準化(物理的)  物理的システムの標準化は、われわれの取り上げてい るケースでは、おもに車輌と荷台の二つのレベルがある。
荷台は車輌に合わせなければならないため、この二つは 当然切りはなすことができない。
しかし異なった次元で 論ずることは可能だ。
 製紙メーカーの例では、荷台は鉄道とフェリーの両方 に合うよう標準化されなければならない。
荷台を車輌に さまざまなやり方で載せることができれば、積載に無駄 がなくなる。
荷台が標準化されると、荷の積み卸しに 使用する機器も標準化できるようになる。
これは改革前 には不可能なことだった。
さらに重要な点は、もどって きた荷台をそのままつぎの出荷に使うといった使い回し ができるようになることで、必要な荷台の総数を減らせ る。
それはシステムが管理しやすくなることを意味する。
 システムそのものはサードパーティーが運営するにせ よ、新しいシステムの立ち上げには、荷主である製紙メー カーと家具メーカー自身が積極的に関与した。
この関 与には戦略レベルの意志決定がふくまれている。
いった んシステムの標準化が決定されれば、計画が容易になる ため戦術レベルにも影響をあたえる。
さらにはオペレー ションレベルでも、標準化によってコストとデリバリー の回数が減るため、ハンドリングが簡単になる。
また、 オペレーションレベルの作業合理化につながるこの改革 は、客先へのデリバリーの確実性が向上するなど、不 確実性を低減することにもなる。
 標準化の推進は、すでにみてきたように効率性の改 善にむすびつく。
効率性が高まれば輸送の無駄、つま り車輌ごとの走行距離が減り、結果として環境にあた えるインパクトを減らすことができるのである。
■■サプライチェーン管理における   情報の重要性(可視性)  三社の実施した変革のうちには、情報の収集と利用 に関するものがいくつかある。
その目的は事前の計画と 管理をしやすくすることにある。
これがうまくいけば配 送システムはより効率化される。
 一九九八年、食品メーカーは物流システムを見直す ことにして倉庫の集約をおこない、新しい管理手法が導 入された。
統合のスケールメリット、とくに冷凍設備に 使用するエネルギーの大幅削減により、環境負荷が大 きく減ったと同時に、物流にともなう労力も減らすこと ができた。
新システムで、ロジスティクスセンターは四 つの機能を果たすことになった。
荷受けセンター、中央 倉庫、ローカル倉庫、配送センター、である。
製品ご との中央倉庫は、地域的な需要パターンに応じて、あ る倉庫から別の倉庫へと移動させることができる。
製品 群のうち約八割の品目は中央倉庫に保管されるが、量 的には全体の約二割にあたる。
バーベキュー関連など季 節性の高い製品は、オフシーズンには一カ所で保管し、 ハイシーズンには各地のローカル倉庫に移す。
 倉庫にこうしたいくつかの機能を兼帯させることが 可能になったのは、あたらしいITシステムのおかげだ。
季節や時系列に応じて製品ごとの最適なロケーションを みきわめ、移動させる。
 そのゴールは、可能な場合には直送して個々の製品 の輸送距離を短くすることだ。
そのよい例がスウェーデ OCTOBER 2007  30 ン南部で生産される製品である。
その製品は毎年およ そ七〇〇パレット分販売されるが、ストックホルムから 一〇〇 km ほどはなれた中央倉庫に保管されている。
ス ウェーデン南部から中部の町にある中央倉庫にいった ん運びこまれ、そこから各地のローカル倉庫に供給され、 さらにそれぞれの地域の小売店にデリバリーされる。
 ところがよくしらべてみたところ、製品の約三割は南 部のローカル倉庫(生産者と中央倉庫のあいだに位置 する)に供給されていたのである。
そこで生産者のとこ ろから中央倉庫への輸送途上でローカル倉庫に三割を おろし、のこりを中央倉庫へおくることとした。
それぞ れの製品の輸送距離がみじかくなれば、ロジスティクス・ システムに起因する排出ガスを直接減らすことになる。
 製紙メーカーの新物流システムでは、ITシステムに よる管理の一元化と、システム全体を一望するコント ロールタワーの導入がはかられた。
こうした全体像の把 握により、荷台を標準化するとともに全体の数も減ら すことにも成功したのである。
ほかにも、以前にくらべ はるかにはやい段階で製紙工場からの供給をコントロー ルできるようになり、安定的なフローを実現した。
■■ヴァーチャル倉庫  最後に、システムの各部分をどのようにとらえていく かをみてみよう。
ある特定の機能はさまざまな特性とメ カニズムに関係している。
したがって、ロジスティクス の機能を厳密に分類する(保管、輸送、ハンドリング等々) ことは、あくまで便宜的なものにすぎない。
この問題を 解決するには、明確な区分や機能別グループ分けではな く、ロジスティクスの諸機能を全体論的にとらえる視点 が必要となる。
つぎの例は配送ではなくて調達、それも 海外から調達する場合である。
だが逆に海外に輸出す る場合にも、まったくおなじロジックが通用する。
 家具メーカーの目的は、品物がサプライヤーの手から はなれて仕向地へむかっている段階でコントロールする ことにある。
荷物の状況は品目別、コンテナ別にトレー スすることができる。
この例ではアジアからの輸入だが、 輸送中にルートを変更するなどのコントロールが可能に なった。
現在、調達物資の四割はアジアからの輸入であり、 船でヨーロッパに運ばれている。
これはつねに五〇万㎥ 分の在庫が海上にある計算となる。
 製紙メーカーではこれまでヨーロッパ各地にそれぞれ 直送していたものを一括して大陸に運び、荷揚げの場 所から配送する体制にあらためた。
そのため各便の最終 目的地の決定は、出航ぎりぎりまで保留にしておくこと ができる。
製紙メーカーではいまのところこうしたオペ レーションはおこなっていないが、輸送システムの柔軟 性を向上させるオプションとなるだろう。
数日遅れで急 にオーダーがはいったときなど、目的地を変更してしの ぐことができるようになり、急ぎのデリバリーの必要性 が減少する。
急ぎのデリバリーはふつう、通常より環境 負荷の大きい輸送モードが選択されるため、これは環境 に対するインパクトをかなり軽減することになる。
 海上輸送のリードタイムは比較的長いため、おおまか な地域のみ決定し、最終仕向地は保留にして荷物をの せることができる。
このアイデアはなにもあたらしいも のではなく、多くの企業がこの保留戦略を採用している。
四つのまとめ  ここで取りあげた改革事例は、ロジスティクス・シス テムが環境にあたえるインパクトに、それぞれちがった かたちで貢献している。
はっきりしているのは、これら がいろいろな面で関係し合い、おたがいに影響をあたえ 合っているということだ。
また、それぞれレベルの異な る決定に、改革がどのように関係し合うかを図3に示 した。
 どの改革もそれだけでシステムの環境パフォーマンス を向上させることは論を俟たない。
しかしそれらが分か ちがたく関係し合っていることを強調することも重要で あり、おそらくは指摘しきれていない関係性もあるだろう。
改革の課程でおこなわれるさまざまな意志決定が、たが いを強化し合い効果を強め合うことになる。
もう一つ重 要なことは、せっかくの効果をうち消すような決定やファ クターの存在を指摘することだが、ここではこのように 広範かつ複雑、重要な分野に関するさらなる研究の必 要性を指摘するにとどめておこう。
結 論  ここまでわれわれはいくつかのタイプの改革と、それ 図3 事例で取り上げた改革が、レベルの異なる決定と環境に どのような影響を与えるか 標準化 モーダル シフト 輸配送合理化(配送便の削減→走行距離の減少) 環境へ与えるインパクトの軽減 統合柔軟な‘倉庫’ の捉え方 可視性 プランニングと 統合コントロールの改善 戦略的決定 戦略的決定 日々のオペレーション 上の決定 31  OCTOBER 2007 特集環境物流の進め方 らが意志決定と環境にあたえる影響についてみてきた。
どの改革も環境にプラスになるとともにコスト削減をも 実現している。
輸配送についてインタビューした人びと は口をそろえて、コストと環境に対するインパクトはお なじ方向をむいているという。
というのもコスト削減策 は、かならず環境汚染の減少にむすびつくからだ。
 またそれぞれの事例には、デリバリーサービスの質や フレキシビリティーの向上など、それ以外のさまざまな 効果もみとめられる。
 物理的システムを変えることでリードタイムがいくぶ ん長くなるケースもあるが、逆にそれが顧客にとっての デリバリーサービスの質の向上につながっている。
デリ バリーサービスで大事なのは、たとえば品物が決められ た時間どおりにとどくといった確実性にある。
配送手配 が物理的に統合されたため、この面でも改善がみられる。
顧客にとってデリバリーの確実性が向上したのは、シス テムそのものの確実性が増したからである。
ITの発達 により、可視性および輸送途上の品物をも“在庫”と してとらえるフレキシビリティーが実現し、需要の不確 実性に柔軟に対処しうるようになったのである。
 倉庫に関しては、スケールメリットがでてくるため、 ちいさな倉庫二つよりもおおきな倉庫を一つもつほうが エネルギー消費は少なくなると食品メーカーの担当者は いう。
食品メーカーの製品は温度帯のちがういくつかの ゾーンで保管されるため、ゾーン間のエネルギーロスが 問題となる。
例外もあるが多くの場合、エネルギーロス を減らすことがコスト削減になる。
 三つのケースのすべてで、環境に対するインパクトを 減らすだけでなく、コスト削減にも成功している。
環境 に対するインパクトとコストの双方で高いパフォーマン スを達成する共通のカギは、リソースの有効利用である。
 われわれは集約化にむかう構造改革例をいくつかみて きた。
それはかならずしも排出ガス削減を意味するわけ ではないが、効果のみられた例もある。
集約化はトラッ クから鉄道へ、鉄道から船へというモーダルシフトをと もなう。
物流のフローが統合されることによって積載効 率が上がる。
輸送量はトンキロがふえるにつれて増大す る。
ところがガスの排出量はなによりもまずトラックの 走行距離に比例し、荷物の重量は二次的なものにすぎ ない。
したがって積載効率が向上すれば、トンキロはそ のままでも全体としての走行距離は減る。
 物流とサプライチェーンシステムの再構築を目的とす るさまざまな改革そのものを、分類したり分析したりす ることはできる。
しかし、ある一つの改革が環境へどの ように影響するかを特定することは不可能だ。
なぜな らそうした改革は一つ一つ順をおって実施されるのでは なく、複数同時になされるのがふつうだからである。
改 革の効果は構造レベル全体で評価されなければならない。
たとえば倉庫の集約は環境パフォーマンスにプラスの影 響をあたえる。
しかしそれは、輸送モードの転換、荷物 の統合、ロジス ティクス・シス テム管理の標準 化と集約化など、 それぞれ程度の ことなる改革を もともなう。
ま た逆に、こうし た改革は倉庫集 約、つまり構造 改革があってこ そ可能になるの である。
 意志決定とそ れが環境にあた える影響に焦点 をあてることはむだではない。
さまざまな意志決定がお たがいどのように関係し合っているか、戦略的決定が階 層構造のはるか下層の意志決定にどのような可能性と 限界をあたえているか、図4を参照されたい。
 国と技術は可能性を創出するが、その可能性は企業 が実現していかなければならない。
この研究においてわ れわれは、排出ガスとコストがともに削減されるような 四つの戦略を指摘してきた。
すなわち ?標準化 ?統合 ?計画性向上のための可視性サポートシステム ?輸配送と倉庫保管に対する柔軟なとらえかた  (ヴァーチャル倉庫など)  はじめの二つは物理的なものであとの二つは管理手法 であるが、これら四つの戦略は戦略・戦術・オペレーショ ン、すべてのレベルにかかわる。
そして三つすべてのレ ベルにかかわるとき、その効果は最大となるのである。
 この研究の目的はつまり、階層の異なるロジスティク スの意志決定どうしがおたがいどのようにかかわりあう か、またその環境にあたえるインパクトはどのようなも のであるか、ということに関する理論とモデルの不在を 指摘することにある。
 企業のロジスティクス・システムはきわめて複雑であ る。
戦略的/戦術的意志決定がオペレーション上の指 標にどう影響するかについての認識は、概してあまりな いといってよい。
N・ウェイリーとB・ホワイトヘッド は、Win─Winという考えかたはサクセスストーリー のいいとこ取りにすぎず、持続可能なものではないと示 唆している。
それゆえに、われわれの結論が妥当かどう か、多くの事例研究で検証される必要がある。
今後の 研究の進展を待ちたい。
図4 マクロ・ パースペクティブ ミクロ・ パースペクティブ 鉄道路線網の整備 ──可視性の向上 ──標準化 ──統合 コストと環境負荷を減ら す方法としてのバーチャ ル倉庫 標準化 ──荷台 ──車両 企業に可能性を与える 標準化 ──荷台 ──車両 プランニングの可能性向上 技術 構造

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