2007年11月号
海外Report
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米ダウケミカルのICタグ活用貨物追跡と在庫管理で実用化
NOVEMBER 2007 52
ダウケミカルは二〇〇五年、経営トップから「ICタグを使ってROIと顧客満足
度を向上させよ」という指示を受け、サプライチェーンを効率化するためICタグの積
極利用に乗り出した。
これまで米ウォルマートや独メトロなどの大手小売り主導で進ん できたICタグの利用に製造業者のダウケミカルが取り組むようになったのは、厳密な 貨物追跡を必要とする危険物への対策のためだった。
今後一〇年をめどに、ICタグ に関する五〇のプロジェクトを推進していく。
同社のICタグ利用の推進役を務めるク レッグ・キャスト氏がその詳細を語る。
(取材・編集 本誌欧州特派員 横田増生) 欧州サプライチェーン&ロジスティクス会議? 米ダウケミカルのICタグ活用 貨物追跡と在庫管理で実用化 ダウケミカル クレッグ・キャスト RFIDグローバル・リーダー 〇六年に実用化をスタート ダウケミカルの企業概要と、サプライチェ ーンの概略から話を始めます。
当社は一八九 七年に創業者のハーバート・ダウが化学をよ りよい生活に役立てる目的で、アメリカのミ シガン州に設立しました。
現在は、農業化学 製品や機械化学製品を製造する機械製品事業 部と、基礎プラスチックや基礎化学品を製造 する基礎製品事業部の二つからなっています。
二〇〇六年の売上高は四九一億ドル(五兆六 四六五億円)で、最終利益は三七億ドル(四 二五五億円)です。
サプライチェーンの起点となる工場は、世 界三八カ国の二〇〇カ所にあります。
工場で 製造される三二〇〇種類の製品を一七五カ国 で販売しています。
一年に輸送する製品数は 二五〇万個、輸送トン数は一〇〇〇億ポンド (四五四億キロ)を超えます。
そのうち二割 が輸出入貨物です。
意外に思われるかもしれ ませんが、輸送総量に占める危険物の割合は 二割に過ぎません。
無事故率は九九・九七% と高い数字を誇っています。
ダウがICタグのプロジェクトに取り組み 始めたのは二〇〇五年五月のことです。
会社 の上層部からの指示は「ICタグを使ってサ プライチェーンを効率化することで、ROI (投資利益率)と顧客満足度を高めよ」という ものでした。
その推進役となったのが、私が 率いる〈RFID・GPS・オートID・ラ ベルエクスパティセンター〉という部門で、二 〇〇七年度は五五〇万ドル(六億三二五〇万 円)の予算を持っています。
われわれの部門 が仕切る形で諮問委員会を作り、ICタグを 利用する際の協力会社であるSAPやシスコ、 インテルやアクセンチュア、それにASPのサ ヴィ・テクノロジーからメンバーを募りました。
ICタグの利用方法を考え出すために、ま ずは当社の主要顧客一〇〇人へのインタビュ ーから始めました。
そこから四五〇のプロジ ェクト案が生まれました。
しかしそれではあ まりに多すぎますので、先の諮問委員会にか 53 NOVEMBER 2007 けて、技術面から見た成功率と、どれだけの 見返りがあるのかの二つの視点から五〇のプ ロジェクトに絞り込みました。
さらに優先順 位をつけて、一〇のプロジェクトから先行し て実践することを決めました。
二〇〇六年を スタート年次として、今後五〜六年で、最初 の一〇のプロジェクトを成功させ、その後、残 りの四〇プロジェクトに取り組む予定となっ ています。
以下が最初に取り組む一〇のプロジェクト です。
?農薬の輸送に使うシリンダーの貨物追跡 ?海上コンテナの貨物追跡 ?タンクローリー車の貨物追跡 ?鉄道における双方向の貨物追跡 ?倉庫内の在庫管理 ?パイプラインで働く作業員の安全管理 ?委託貨物の在庫管理 ?農薬部門の在庫管理 ?危険物の貨物追跡 ?補修部品の在庫管理 これらのプロジェクトから、いくつかを取 り上げて話を進めようと思います。
バーコードと併用 現時点でのダウのやり方は、すべてをIC タグだけで処理するのではコスト高になるの で、これまでの貨物追跡の手法であるバーコ ードを組み合わせながらサプライチェーンの効 率化を図るというものです。
ダウのサプライチェーンにおいて常に頭痛の タネとなってきたのは、全体の二割にあたる 危険物の輸送にかかわる安全性をどのように 確保するかでした。
危険物の輸送は、連邦政 府の規制により厳重な貨物追跡が義務付けら れています。
ダウがICタグの利用に積極的 に取り組んでいるのは、危険物輸送への対策 という側面を強く持っています。
ダウが最初に取り組んだのは、危険物であ る液体の農薬の輸送に使われるシリンダーと、 それを搭載した海上コンテナの貨物追跡でし た。
現在使用している六万個のシリンダーは、 米運輸省の規制により五年に一回、点検を受 けなければなりません。
まず各シリンダーにバーコードをつけて、シ リンダー二〇個を積んだパレットにもバーコー ドを付けます。
さらにパレットをインターモー ダル用のコンテナに積み込むときに、コンテナ のドアの部分にICタグをつけ、GPS(全 地球測位システム)で追跡できるようにしま した。
ダウの工場から出荷され、3PL企業の倉 庫をへて、トラック会社が港まで運び、貨物 船に積み込まれて、海外に輸送される全過程 をGPSによってとらえたデータをXMLと いうマークアップ言語で受け取り、それをウ ェブ上に載せます。
ICタグからは、コンテ ナが開閉したかどうかの情報も読み取れます。
通関の際、コンテナが発地の工場から一度も 開けられていないことが証明できると、迅速 に通関をすることができます。
またシリンダーごとのバーコードには、運輸 省の検査の期限に関する情報も組み込み、検 査が近づいてくると、担当者にメールを送る ようにしました。
これにより、人為的なミス 図1 海上コンテナの貨物追跡 図2 ローリー車の貨物追跡 出発時間6 時間前4 時間前到着時間 ダウの工場顧 客 延着の際に アラートを送信 ─ウェブ上 ─E メール NOVEMBER 2007 54 で検査を受け忘れるといった事態を減らすこ とができました。
ダウは液体輸送に使うタンクローリー車に 関してはすべて3PL企業に外注しています。
ローリー車の貨物追跡には、3PL各社が利 用しているGPSを経由してEDI(電子デ ータ交換)の形式でデータを収集します。
加 えて、出荷地点と客先の輸送経路の何カ所か にGPSに反応する〈ジオフェンス〉という 場所を作っておきます。
例えば、客先の物流センターの入り口のジ オフェンスを通過したときを、貨物の到着時 間として記録します。
到着が予定より三〇分 以上遅れそうなときには、ウェブ上の情報を 更新すると同時に、顧客にメールで知らせる ようにしました。
またローリー車がジオフェン スの経路を外れて走行した場合は、3PL企 業にメールで報告します。
ローリー車の動きを正確に把握することで、 3PL企業に支払う料金を引き下げることに なりました。
現在の契約では、顧客がローリ ー車から荷降ろしする時間によって、料金が 発生するようになっていました。
これまでは ドライバーが報告する時間に従って料金を支 払っていたのですが、GPSにより正確な時 間をおさえることができるようになって、滞 留時間にかかっていた料金を大幅に削減する ことができるようになったのです。
コンテナにアクティブタグ 次は鉄道の貨物追跡です。
北アメリカでは、 一九九〇年代の初めに鉄道輸送用のICタグ の普及が進みました。
貨車に付けたパッシブ 型ICタグ用のリーダーが線路脇に数十マイ ルおきにすえつけられており、貨車の現在地 の確認や到着時間の予測などに使われてきま した。
ダウは自社で二万六〇〇〇両の貨車を所有 しています。
そのうち通常貨物を運ぶ貨車に ついては、パッシブタグでも間に合いますが、 温度管理を必要とする危険物を輸送する八〇 〇両の貨車については、双方向のコミュニケ ーションが可能なアクティブタグを新たに取り 付けることを進めています。
鉄道貨物については、すでにドイツなどで 三年前に一部をアクティブタグに切り替えま した。
しかしそれはまだ一方方向でのコミュ ニケーションしか取れないものでした。
タグ が自ら「私はここにいます」という現在地を 発信するだけのものです。
しかし双方向でのコミュニケーションが可 能なタグを取り付けてからは、こちらが指定し た貨車の居場所を検索しようとすれば、八分 以内に現在地をピンポイントで確認すること ができるようになりました。
この双方向のタ グの開発や設置だけでも、数百万ドル(数億 円)単位の投資が必要な事業となります。
今 年からタグの切り替えをはじめ、年末には八 〇〇両すべての切り替えが終わる予定です。
海上コンテナやローリー車、鉄道貨車から 上がってきたEDIとXMLによるデータは、 サヴィ・テクノロジーが一括で収集してネッ ト上に載せます。
サヴィはカリフォルニア州の マウンテン・ビューに本社を置くアプリケーシ ョン・サービス・プロバイダー(ASP)で、 貨物情報を収集するだけでなく、貨物の位置 情報と配送ルートを照らし合わせて、各種の アラートをメールや携帯電話に発信します。
温度や湿度、貨物の振動に関しても二四時 間体制で監視を続けています。
例えば、危険 物を積んだコンテナが、ダウが指定する安全 な地域以外で開けられたときにも直ちに関係 者に連絡をとります。
また、ダウとSAPに はデータをファイルとしても渡します。
その結 図3 鉄道における双方向の貨物追跡 衛星のゲートウェイ オペレーション センター XML データ顧客のコンピュータ インターネット 55 NOVEMBER 2007 及させるための基礎的な研究や開発には、多 くの参加企業を募ることが不可欠です。
私を はじめとしたダウでICタグにかかわってい る人間が、このような会議でできるだけ講演 を引き受けるのは、ICタグのメリットを一 人でも多くの人に知ってもらい、産業界全体 で取り組む下地を作りたいと思っているから です。
果、顧客はコンピュータで検索すれば、どの 輸送モードを使っているかにかかわらず、自 分の貨物の状況や位置が一目でわかるように なりました。
在庫の二割削減に成功 これから実行に移す「スマート・シェルフ」 と呼んでいる倉庫内の在庫管理方法では、完 成品と部品のすべてにICタグを取り付ける 予定です。
リーダーを棚ごとに取り付け、貨 物の出入りごとに動きを読みとって在庫リス トを更新していきます。
また倉庫内全部にセ ンサーを網の目のように張り巡らせて、移動 中の貨物であっても位置を確認できるように するつもりです。
ICタグ導入による具体的な成果としては、 A・輸送中の貨物の状況や位置を把握するま でにかかる時間が五〇%減った。
B・貨物の可視性が高まったため在庫が二〇 %減った。
C・海上コンテナの本数が二〇%減った。
D・時間指定配送の達成率が九〇%上昇した。
E・貨物の盗難被害が減少した。
F・データの入力ミスなどから発生する人為 的な作業ミスが一〇〜一五%減った。
──などを挙げることができます。
Cに挙げた海上コンテナの削減とは、土壇場 になって顧客から新規の注文が入ったり、注 文の変更がかかったりした場合に臨機応変に 対応することによって 達成することができま した。
例えば、日本の 顧客から納期ぎりぎり に追加注文が入ったと きは、まずその顧客に 送るコンテナを探しま す。
それがシンガポール の港で出航を待ってい るときならば、一度コ ンテナを船から降ろし て、そこに追加の注文 を積み込むのです。
そ うすることで、新たに コンテナを仕立てる必 要がなくなります。
ダウはICタグの社 内プロジェクトを立ち 上げると同時に、「EP Cグローバル」というパ ッシブタグの業界標準 を作ろうとしている非 営利団体に参画しまし た。
どちらかというとICタグはウォルマー トやメトロといった大手小売業者によって進 められているイメージが強いのですが、ダウ のICタグ戦略は製造業者の中では一歩先を 行っているという自負があります。
しかし今後、最初に計画した五〇のプロジ ェクトを推進していくためには、ICタグ自 体のレベルアップが必要です。
ICタグを普 図4 3 つのモードをIC タグでつなぐ 海上コンテナの貨物追跡 鉄道の貨物追跡 ローリー車の貨物追跡 出発時間6 時間前4 時間前到着時間 ダウの工場顧 客 延着の際に アラートを送信 ─ウェブ上 ─E メール 衛星のゲートウェイ オペレーション センター XML データ顧客のコンピュータ インターネット サヴィ・テクノロジー SAP ダウ 顧客 EDI ファイル XML XML
これまで米ウォルマートや独メトロなどの大手小売り主導で進ん できたICタグの利用に製造業者のダウケミカルが取り組むようになったのは、厳密な 貨物追跡を必要とする危険物への対策のためだった。
今後一〇年をめどに、ICタグ に関する五〇のプロジェクトを推進していく。
同社のICタグ利用の推進役を務めるク レッグ・キャスト氏がその詳細を語る。
(取材・編集 本誌欧州特派員 横田増生) 欧州サプライチェーン&ロジスティクス会議? 米ダウケミカルのICタグ活用 貨物追跡と在庫管理で実用化 ダウケミカル クレッグ・キャスト RFIDグローバル・リーダー 〇六年に実用化をスタート ダウケミカルの企業概要と、サプライチェ ーンの概略から話を始めます。
当社は一八九 七年に創業者のハーバート・ダウが化学をよ りよい生活に役立てる目的で、アメリカのミ シガン州に設立しました。
現在は、農業化学 製品や機械化学製品を製造する機械製品事業 部と、基礎プラスチックや基礎化学品を製造 する基礎製品事業部の二つからなっています。
二〇〇六年の売上高は四九一億ドル(五兆六 四六五億円)で、最終利益は三七億ドル(四 二五五億円)です。
サプライチェーンの起点となる工場は、世 界三八カ国の二〇〇カ所にあります。
工場で 製造される三二〇〇種類の製品を一七五カ国 で販売しています。
一年に輸送する製品数は 二五〇万個、輸送トン数は一〇〇〇億ポンド (四五四億キロ)を超えます。
そのうち二割 が輸出入貨物です。
意外に思われるかもしれ ませんが、輸送総量に占める危険物の割合は 二割に過ぎません。
無事故率は九九・九七% と高い数字を誇っています。
ダウがICタグのプロジェクトに取り組み 始めたのは二〇〇五年五月のことです。
会社 の上層部からの指示は「ICタグを使ってサ プライチェーンを効率化することで、ROI (投資利益率)と顧客満足度を高めよ」という ものでした。
その推進役となったのが、私が 率いる〈RFID・GPS・オートID・ラ ベルエクスパティセンター〉という部門で、二 〇〇七年度は五五〇万ドル(六億三二五〇万 円)の予算を持っています。
われわれの部門 が仕切る形で諮問委員会を作り、ICタグを 利用する際の協力会社であるSAPやシスコ、 インテルやアクセンチュア、それにASPのサ ヴィ・テクノロジーからメンバーを募りました。
ICタグの利用方法を考え出すために、ま ずは当社の主要顧客一〇〇人へのインタビュ ーから始めました。
そこから四五〇のプロジ ェクト案が生まれました。
しかしそれではあ まりに多すぎますので、先の諮問委員会にか 53 NOVEMBER 2007 けて、技術面から見た成功率と、どれだけの 見返りがあるのかの二つの視点から五〇のプ ロジェクトに絞り込みました。
さらに優先順 位をつけて、一〇のプロジェクトから先行し て実践することを決めました。
二〇〇六年を スタート年次として、今後五〜六年で、最初 の一〇のプロジェクトを成功させ、その後、残 りの四〇プロジェクトに取り組む予定となっ ています。
以下が最初に取り組む一〇のプロジェクト です。
?農薬の輸送に使うシリンダーの貨物追跡 ?海上コンテナの貨物追跡 ?タンクローリー車の貨物追跡 ?鉄道における双方向の貨物追跡 ?倉庫内の在庫管理 ?パイプラインで働く作業員の安全管理 ?委託貨物の在庫管理 ?農薬部門の在庫管理 ?危険物の貨物追跡 ?補修部品の在庫管理 これらのプロジェクトから、いくつかを取 り上げて話を進めようと思います。
バーコードと併用 現時点でのダウのやり方は、すべてをIC タグだけで処理するのではコスト高になるの で、これまでの貨物追跡の手法であるバーコ ードを組み合わせながらサプライチェーンの効 率化を図るというものです。
ダウのサプライチェーンにおいて常に頭痛の タネとなってきたのは、全体の二割にあたる 危険物の輸送にかかわる安全性をどのように 確保するかでした。
危険物の輸送は、連邦政 府の規制により厳重な貨物追跡が義務付けら れています。
ダウがICタグの利用に積極的 に取り組んでいるのは、危険物輸送への対策 という側面を強く持っています。
ダウが最初に取り組んだのは、危険物であ る液体の農薬の輸送に使われるシリンダーと、 それを搭載した海上コンテナの貨物追跡でし た。
現在使用している六万個のシリンダーは、 米運輸省の規制により五年に一回、点検を受 けなければなりません。
まず各シリンダーにバーコードをつけて、シ リンダー二〇個を積んだパレットにもバーコー ドを付けます。
さらにパレットをインターモー ダル用のコンテナに積み込むときに、コンテナ のドアの部分にICタグをつけ、GPS(全 地球測位システム)で追跡できるようにしま した。
ダウの工場から出荷され、3PL企業の倉 庫をへて、トラック会社が港まで運び、貨物 船に積み込まれて、海外に輸送される全過程 をGPSによってとらえたデータをXMLと いうマークアップ言語で受け取り、それをウ ェブ上に載せます。
ICタグからは、コンテ ナが開閉したかどうかの情報も読み取れます。
通関の際、コンテナが発地の工場から一度も 開けられていないことが証明できると、迅速 に通関をすることができます。
またシリンダーごとのバーコードには、運輸 省の検査の期限に関する情報も組み込み、検 査が近づいてくると、担当者にメールを送る ようにしました。
これにより、人為的なミス 図1 海上コンテナの貨物追跡 図2 ローリー車の貨物追跡 出発時間6 時間前4 時間前到着時間 ダウの工場顧 客 延着の際に アラートを送信 ─ウェブ上 ─E メール NOVEMBER 2007 54 で検査を受け忘れるといった事態を減らすこ とができました。
ダウは液体輸送に使うタンクローリー車に 関してはすべて3PL企業に外注しています。
ローリー車の貨物追跡には、3PL各社が利 用しているGPSを経由してEDI(電子デ ータ交換)の形式でデータを収集します。
加 えて、出荷地点と客先の輸送経路の何カ所か にGPSに反応する〈ジオフェンス〉という 場所を作っておきます。
例えば、客先の物流センターの入り口のジ オフェンスを通過したときを、貨物の到着時 間として記録します。
到着が予定より三〇分 以上遅れそうなときには、ウェブ上の情報を 更新すると同時に、顧客にメールで知らせる ようにしました。
またローリー車がジオフェン スの経路を外れて走行した場合は、3PL企 業にメールで報告します。
ローリー車の動きを正確に把握することで、 3PL企業に支払う料金を引き下げることに なりました。
現在の契約では、顧客がローリ ー車から荷降ろしする時間によって、料金が 発生するようになっていました。
これまでは ドライバーが報告する時間に従って料金を支 払っていたのですが、GPSにより正確な時 間をおさえることができるようになって、滞 留時間にかかっていた料金を大幅に削減する ことができるようになったのです。
コンテナにアクティブタグ 次は鉄道の貨物追跡です。
北アメリカでは、 一九九〇年代の初めに鉄道輸送用のICタグ の普及が進みました。
貨車に付けたパッシブ 型ICタグ用のリーダーが線路脇に数十マイ ルおきにすえつけられており、貨車の現在地 の確認や到着時間の予測などに使われてきま した。
ダウは自社で二万六〇〇〇両の貨車を所有 しています。
そのうち通常貨物を運ぶ貨車に ついては、パッシブタグでも間に合いますが、 温度管理を必要とする危険物を輸送する八〇 〇両の貨車については、双方向のコミュニケ ーションが可能なアクティブタグを新たに取り 付けることを進めています。
鉄道貨物については、すでにドイツなどで 三年前に一部をアクティブタグに切り替えま した。
しかしそれはまだ一方方向でのコミュ ニケーションしか取れないものでした。
タグ が自ら「私はここにいます」という現在地を 発信するだけのものです。
しかし双方向でのコミュニケーションが可 能なタグを取り付けてからは、こちらが指定し た貨車の居場所を検索しようとすれば、八分 以内に現在地をピンポイントで確認すること ができるようになりました。
この双方向のタ グの開発や設置だけでも、数百万ドル(数億 円)単位の投資が必要な事業となります。
今 年からタグの切り替えをはじめ、年末には八 〇〇両すべての切り替えが終わる予定です。
海上コンテナやローリー車、鉄道貨車から 上がってきたEDIとXMLによるデータは、 サヴィ・テクノロジーが一括で収集してネッ ト上に載せます。
サヴィはカリフォルニア州の マウンテン・ビューに本社を置くアプリケーシ ョン・サービス・プロバイダー(ASP)で、 貨物情報を収集するだけでなく、貨物の位置 情報と配送ルートを照らし合わせて、各種の アラートをメールや携帯電話に発信します。
温度や湿度、貨物の振動に関しても二四時 間体制で監視を続けています。
例えば、危険 物を積んだコンテナが、ダウが指定する安全 な地域以外で開けられたときにも直ちに関係 者に連絡をとります。
また、ダウとSAPに はデータをファイルとしても渡します。
その結 図3 鉄道における双方向の貨物追跡 衛星のゲートウェイ オペレーション センター XML データ顧客のコンピュータ インターネット 55 NOVEMBER 2007 及させるための基礎的な研究や開発には、多 くの参加企業を募ることが不可欠です。
私を はじめとしたダウでICタグにかかわってい る人間が、このような会議でできるだけ講演 を引き受けるのは、ICタグのメリットを一 人でも多くの人に知ってもらい、産業界全体 で取り組む下地を作りたいと思っているから です。
果、顧客はコンピュータで検索すれば、どの 輸送モードを使っているかにかかわらず、自 分の貨物の状況や位置が一目でわかるように なりました。
在庫の二割削減に成功 これから実行に移す「スマート・シェルフ」 と呼んでいる倉庫内の在庫管理方法では、完 成品と部品のすべてにICタグを取り付ける 予定です。
リーダーを棚ごとに取り付け、貨 物の出入りごとに動きを読みとって在庫リス トを更新していきます。
また倉庫内全部にセ ンサーを網の目のように張り巡らせて、移動 中の貨物であっても位置を確認できるように するつもりです。
ICタグ導入による具体的な成果としては、 A・輸送中の貨物の状況や位置を把握するま でにかかる時間が五〇%減った。
B・貨物の可視性が高まったため在庫が二〇 %減った。
C・海上コンテナの本数が二〇%減った。
D・時間指定配送の達成率が九〇%上昇した。
E・貨物の盗難被害が減少した。
F・データの入力ミスなどから発生する人為 的な作業ミスが一〇〜一五%減った。
──などを挙げることができます。
Cに挙げた海上コンテナの削減とは、土壇場 になって顧客から新規の注文が入ったり、注 文の変更がかかったりした場合に臨機応変に 対応することによって 達成することができま した。
例えば、日本の 顧客から納期ぎりぎり に追加注文が入ったと きは、まずその顧客に 送るコンテナを探しま す。
それがシンガポール の港で出航を待ってい るときならば、一度コ ンテナを船から降ろし て、そこに追加の注文 を積み込むのです。
そ うすることで、新たに コンテナを仕立てる必 要がなくなります。
ダウはICタグの社 内プロジェクトを立ち 上げると同時に、「EP Cグローバル」というパ ッシブタグの業界標準 を作ろうとしている非 営利団体に参画しまし た。
どちらかというとICタグはウォルマー トやメトロといった大手小売業者によって進 められているイメージが強いのですが、ダウ のICタグ戦略は製造業者の中では一歩先を 行っているという自負があります。
しかし今後、最初に計画した五〇のプロジ ェクトを推進していくためには、ICタグ自 体のレベルアップが必要です。
ICタグを普 図4 3 つのモードをIC タグでつなぐ 海上コンテナの貨物追跡 鉄道の貨物追跡 ローリー車の貨物追跡 出発時間6 時間前4 時間前到着時間 ダウの工場顧 客 延着の際に アラートを送信 ─ウェブ上 ─E メール 衛星のゲートウェイ オペレーション センター XML データ顧客のコンピュータ インターネット サヴィ・テクノロジー SAP ダウ 顧客 EDI ファイル XML XML
