2007年11月号
ケース

共同化富士通

NOVEMBER 2007  36 共同化 富士通 調達から製品配送まで配車管理を統合 グループ内共配でCO2 を大幅に削減  住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築 施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達 成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
共同配送めざし仕様を統一  富士通は今年二月に首都圏で、「集中配車 コントロール支援システム」を稼働させた。
パソコンやサーバー、半導体などさまざまな 製品の配送情報や部品調達に伴う輸送情報を 集中管理することによって、物流業務の委託 先が効率よく配車を行えるよう支援する仕組 みだ。
グループ内で共同配送を実現し、物流 効率化やCO2の排出量削減を図っていくこ とに狙いがある。
物流本部を中心に主な製品 の事業本部や販社、部品のサプライヤーおよ び物流業務の委託先であるDHLサプライチ ェーンが参加してこのシステムを構築した。
 富士通の物流形態は製品の事業形態によっ て異なり、従来は物流拠点も製品の事業部 門ごとに設けられていた。
例えば首都圏には、 ?パソコンとサーバー、?半導体、?販促 品、?保守部品、?海外からの輸入部材をそ れぞれ主に扱う五カ所の物流センターがあっ た。
それぞれのセンターに各事業本部やグル ープ会社、販社などからバラバラに出荷指示 が出され、これらの出荷指示をもとに、配送 業務を担当する物流会社がセンターごとに配 車計画を立てていた。
このため配送効率は必 ずしもよくなかった。
 そこでまず、物流センターの統廃合を進め、 昨年六月までに首都圏のセンターを三カ所に 集約した。
そのうえで、工場での部品調達や 物流センターへの製品の輸送、ユーザーへの 配送まで、輸配送に係わるすべての情報を集 中管理することにした。
それによって物流会 社は効率のいい配車計画を立てることが可能 になり、共同配送を実現できると考えたのだ。
 集中管理を実施するには、事業本部やグル ープ会社、販社などが各社各様に行っている 輸配送指示のタイミングや情報の仕様を一律 にする必要があった。
このために、指示を 出すタイミングについて一定のルールを設け、 指示内容については、各社が固有の仕様で作 成した情報を共通のフォーマットに置き換え るという方法で一本化することにした。
 このフォーマット変換を行う仕組みが「集 中配車コントロール支援システム」だ。
各社 の荷物・出荷情報を集約し、配車を行うため に必要な荷主・発地・発日・納入先・納品日・ 品名・数量・重量・容積・搬入条件などの 情報をシステムによって共通のフォーマット に整理してから、物流会社に提供する。
 物流会社はこの情報を配車コントロールセ ンターで受けて配車を行う。
納品日や納品先 のエリアが共通し、さらに時間指定などの搬 入条件も一致するものを組み合わせて、最大 の積載率になるよう配車組みや輸送モードの 選択を行う。
 このシステムでは、製品の共同配送だけで なく、工場から物流センターへ製品を輸送し た帰り便で工場へ部品を調達するといった共 同輸送も対象にしている。
例えば、同社はハ ードディスクなどの部材を海外のサプライヤ 富士通はグループ内の共同配送を進るため、 複数の事業部門の製品配送や部品調達に関する情 報を集中管理するシステムを開発、今年2 月に首都 圏で稼働させた。
CO2排出量の削減に成果を上げ ている。
今後も、工場の生産革新運動と連動して ミルクランによる調達方式を拡大するなど、全社的 な輸配送の見直しに取り組む考えだ。
37  NOVEMBER 2007 ーから調達している。
従来はサプライヤーが 独自に車両を仕立て、成田地区にある倉庫か ら部材を富士通の工場へ搬入していた。
これ を改めて、サプライヤーの出荷情報を集中配 車システムに取り込み、その情報をもとに帰 り便が成田の倉庫に寄って部材を積み工場へ 輸送するかたちに切り替えた。
CO2算定システムも導入  富士通では「集中配車コントロール支援シ ステム」を導入したことによって実際に車両 台数が何台減り、CO2排出量の削減にどれ だけ効果があったかを検証するために、車載 端末を使ったCO2排出量算定システムも合 わせて導入した。
車載端末は自社製品で、走 行データなどの車両情報を実測する装置。
速 度違反や急加減速、アイドリングなどが発生 すると音声で警告してドライバーに安全運転 や省燃費運転を促す機能が付いている。
 昨年十一月から、同社が配送を委託してい る車両(二トン車)一〇台 に車載端末を搭載して継続 的に効果を測定したところ、 これまでに従来に比べて平 均で四%の燃費向上が見ら れたという。
 CO2排出量算定システム は、車載装置が実測した走 行距離や燃費、配達完了情 報などを基礎データに使い、 CO2排出量を算定するシス テムだ。
これも富士通が開 発して昨秋から一般に販売 している。
 このシステムは、複数の 荷主の共同配送を実施する 際に、荷主ごとに排出量を 自動的に按分して算定でき る点に特徴がある。
按分を 行うには、荷主別に荷物の 輸送距離と重量・容積のデータが必要だ。
こ のうち輸送距離は、車載端末の実測データと 配送先の住所をもとに割り出す。
 重量・容積についても、大半の製品がマス ター登録されている。
ただし、なかには保守 部品や組み立て用部品などデータのないもの もある。
そこでこうしたケースでも重量・容 積データをシステムに取得できるように、工 場または物流センターで出荷する際に、重量・ 容積を測定する装置を新たに導入した。
 測定したデータは二通りに活用される。
ま ず「集中配車コントロール支援システム」に 吸い上げられて、配車コントロールセンター で配車の基礎データとして使われる。
さらに 荷主別の排出量算定にも活用される。
 これらのシステムを運用してCO2排出量 を算定した結果、「集中配車コントロール支 援システム」を導入することによって、製品 配送車両の排出量は従来よりも平均で二割減 少することがわかった。
またサプライヤーか らの部材調達では、帰り便の利用によって車 両台数が減り、CO2排出量を平均四割も削 減することができた。
 今回の共同配送のように、同社が物流のさ まざまな課題に対し、事業本部の枠を越えて 横断的に取り組むようになったのは、二〇〇 五年六月に物流本部が発足してからだ。
 富士通には各事業本部にサプライチェーン (SC)を統括する部門があり、二年前まで は事業本部ごとにそれぞれのSC統括部門が 重量、容積、納地、納期、搬入条件、輸送モード等 荷物・出荷情報 ■集中配車コントロールによる共同配送を実施  従来、分散して提供していた複数荷主の荷物・出荷情報を集約し、 各社異なっていたデータ形式を変換、統一化することで、一元的な参 照を可能にし、物流事業者による集中配車コントロールを実現する。
実施前 部品サプライヤー 荷物・ 出荷情報 荷物・ 出荷情報 荷物・ 出荷情報 荷物・ 出荷情報 配車 富士通 配車 グループ会社 配車 販 社 実施後 部品サプライヤー 荷物・ 出荷情報 荷物・ 出荷情報 荷物・ 出荷情報 荷物・ 出荷情報 富士通グループ会社販 社 配車 物流事業者 集中配車 コントロール 支援システム 配車コントロールセンター 物流事業者 集中配車● 共同輸配送 (部品、製品) ● 返り便活用 ● JR 輸送 NOVEMBER 2007  38 部品調達から生産さらに物流まで含めたトー タルなサプライチェーンマネジメントを行っ てきた。
だがこの体制ではともすると、事業 本部ごとの部分最適を追求するあまり、全社 的に見て非効率な物流に陥りやすかった。
 そこでこれを改め、物流管理機能だけを新 設の物流本部に集約した。
各事業本部ではそ れまで通りSC統括部門が、市場動向にあっ た最適な商品供給体制の構築に力を注ぐ。
た だし物流については、物流本部が各事業本部 のSC統括部門と連携をとりながら、拠点の 統廃合や輸送ルートの見直しなど全体最適の 視点で施策を立案・実行し、物流コストの低 減に責任を負う。
同時に環境負荷軽減のため 物流分野のCO2排出量削減にも、全社的な 立場で取り組むことにした。
 「SC統括部がそれぞれの事業本部で川上 から川下までを束ねるのに対して、物流本部 は各事業本部の物流を横串で束ねるようなも の」と物流本部の本宮章本部長は説明する。
 だが横串で束ねるのは決して容易なことで はない。
各事業本部ではSC統括部門がこれ まで、市場へ柔軟に対応できる体制作りをめ の業務を一手に引き受けていた。
富士通側で は出荷指示を出しさえすればよかった。
しか も、子会社ならどんな要望も受け入れてくれ るという甘えから、受け手側のことを考えず に一方的に指示を流す傾向があった。
その結 果、出荷指示のパターンだけで七〇〇通りに も膨れ上がってしまった。
 ところが〇四年に富士通は、子会社の富士 通ロジスティクスを英国系3PL会社の日本 法人だったエクセル・ジャパン(現在のDH Lサプライチェーン)に売却し、親子関係を 解消した。
これとともに従来の甘えは許され なくなった。
「ムリやムダをなくして効率の いい取引システムを確立するために、双方の 役割分担を明確にし、われわれも荷主として の役割をきちんと果たさなければならなくな った」と本宮本部長は話す。
 ここで言う荷主としての役割とは、「業務 の流れを見直してプロセスの標準化を行った 上で、標準的な出荷指示システムを開発する こと」(本宮本部長)にほかならない。
荷主 側のシステムをできる限り標準化することで、 業務の受託側が倉庫管理システムなどの開発 を効率よくできるようにする。
これは「集中 配車コントロール支援システム」構築の考え 方と共通するものだ。
 手始めに富士通では、主力商品の一つであ るサーバーシステムから、業務プロセスの見 直しと標準化に着手した。
物流本部のスタッ フが中心となり、SC統括部門やシステム開 ざしてきた。
計画の短サイクル化を進め、部 品調達から生産・物流までのリードタイム短 縮を図り、そのために最適と考える物流拠点 の配置や輸送手段の選択をそれぞれ行ってき た。
そこへ物流本部が拠点や輸送ルートの共 同化を提案しても、簡単には受け入れてもら えない。
七〇〇通りの出荷指示  物流本部がSC統括部門に提案を行うため には、まず「事業本部と同じ目線で実態を見 る必要がある」(本宮本部長)と考えた。
物 流本部は総勢六〇人からなるスタッフ部門だ が、これらのスタッフが手分けして事業本部 の管轄する工場や物流センターなどの現場に 入り、製品や情報の流れ、業務プロセスなど の実態を把握することから始めた。
そのうえ で事業本部と一体になって物流改革を進める ことにした。
 現場の調査によって改めて、事業本部ごと に物流のシステムが全く異なるという実態が 明らかになった。
富士通では、工場で製品 がラインアウトしたあと物流業務の大半をD HLサプライチェーン一社に委託しているが、 そもそも同社に対する出荷指示の出し方が製 品によって千差万別だった。
 富士通は三年前まで一〇〇パーセント子会 社の富士通ロジスティクスに物流業務を委託 していた。
子会社は富士通の工場で製品の 引き渡しを受けてからユーザーへ届けるまで 物流本部の本宮章本部長 39  NOVEMBER 2007 発部門、物流会社とともにワーキンググルー プを設けて取り組んだ。
 サーバーシステムは、顧客からのオーダー をもとに、商品を構成する本体、ディスプレー、 ハードディスクドライブなどについて、型名 や色、製造番号まで細かく指定して出荷指示 が出される。
ただしこの出荷指示情報は富士 通側が管理を行うためのもので、物流会社が 出荷作業を行う際にはこの情報を梱包単位に 置き換える必要がある。
同社の子会社は長年 の経験から自分達で情報を置き換えて管理し ていた。
だが、荷主側で情報を物流会社の作 業単位に加工してから提供するほうが、はる かに効率がいいはずだ。
そこでこの置き換え るシステムを富士通側で開発することにした。
 富士通では、これを標準化のモデルシステ ムとして開発し、ほかの商品にも展開してい くことを狙っている。
できるだけ作業指示の 項目を共通化したうえで、必要に応じて最小 限のカスタマイズを行うという方法によって 開発コストを抑える。
「標準化することで物 流会社の業務が格段に効率化し、われわれも コスト面で恩恵を受けることができる」と本 宮本部長は期待する。
システム開発はすでに 昨年秋からスタートしており、〇九年上期ま でには各事業本部への展開を終える計画だ。
生産革新運動と連動  富士通では現在、トヨタ方式の導入による 生産革新運動を全社的に展開している。
これ と連動した物流改革の実行が物流本部に与え られた重要な使命の一つになっている。
その 一環として物流本部では、工場でつくる製品 の出荷場所の見直しを検討している。
 これまでは製品をわざわざ工場の外にある 物流会社の拠点まで横持ち輸送してから出荷 していた。
この無駄を省くため工場の敷地内 に出荷拠点を移そうと考えている。
生産革新 運動が根付くことによって、生産現場のさま ざまな無駄が排除され構内に空きスペースが 生まれる。
そこを物流会社に出荷拠点として 利用してもらおうというのだ。
 さらに今後は、生産革新に伴う調達物流 システムの構築にも本格的に取り組む考えだ。
物流本部では製品輸送と組み合わせたミルク ラン方式の導入を検討している。
製品を輸送 した帰り便が複数のサプライヤーを巡回して 部品や部材を集め、再び工場へ戻るという方 法だ。
 もっとも、ミルクラン方式を導入しても毎 回の輸送量の変動幅が大きいとかえってコス ト増になってしまう恐れもある。
「変動幅を いかに抑えることができるかは、生産革新で ものづくりの平準化をどれだけ進められ るかにかかっている」と本宮本部長は見てい る。
 生産プロセスの見直しには時間がかかる。
このため物流本部では、生産管理部門に対し、 部品の所要数に応じて変動幅を決めるなどの アイディアを出しながら、ミルクランの拡大 を図っていきたい考えだ。
ミルクランは「集 中配車コントロール支援システム」で運用す ることを想定、すでに一部の部材調達で試験 的に運用を開始している。
 物流本部では今後、ミルクランを含めた「集 中配車コントロール支援システム」の運用を 拡大するとともに、鉄道へのモーダルシフト を進め、輸送体制を再構築する。
それによっ て期待される具体的な成果として、二〇一〇 年度のCO2排出量を二〇〇〇年度の推定値 に対して、絶対量で三〇%削減するという高 い目標値の達成を掲げている。
(フリージャーナリスト・内田三知代) ■グリーン物流活動の位置づけ ・トラック積載率向上 ・配送ルート見直し ・共同配送 ・ミルクラン ・物流拠点統廃合 ・CO2 削減(モーダルシフト他) ・環境に優しい梱包材の採用 ・製品サービスの価値向上 従来現在〜 グリーン物流活動により新しい企業価値の創造を目指す 物流効率化 物流最適化 グリーン物流活動 新しい企業価値創造

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