2007年12月号
海外Report
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ボルボ・パワートレインのVMI戦略ベンダーへの権限委譲で在庫を1 ─3に
DECEMBER 2007 44
スウェーデンの大手トラックメーカー、ボルボのディーゼルエンジン部門であるボルボ・パワートレイン
は、その在庫精度の低さゆえ、過剰在庫を抱えながらも欠品のために生産スケジュールに支障をきたす
ことがあった。
解決策として、それまでボルボ中心で進めてきた在庫管理を一八〇度改め、主要サプラ イヤーに在庫の決定権を移管した。
サプライヤーが適切な決定を行えるように、同社の生産スケジュール や工場内の在庫をインターネット上で共有できるようにした。
JIT(ジャスト・イン・タイム)配送に 近い状態を作り上げることで、リードタイムを三分の一に短縮し、工場の在庫についても三分の一に圧 縮しながら、生産スケジュールを安定化することができた。
(取材・編集 本誌欧州特派員 横田増生) 欧州サプライチェーン&ロジスティクス会議? ボルボ・パワートレインのVMI戦略 ベンダーへの権限委譲で在庫を1 ─3に リアナ・パルム ボルボ・パワートレイン 国際物流部門マネジャー 工場に八日以上の在庫を抱える 創業八〇年の歴史を持つボルボは、トラッ クやバスなどの大型商業車とディーゼルエン ジンのメーカーです。
グループ内には主要部 門であるボルボ・トラックや日産ディーゼルな ど四つのトラックブランドに加え、バスや建設 機械、金融サービスといった九つの事業部門 を持っています。
その事業部門を支えるのが 五つの事業ユニットで、そのうちのディーゼル エンジンを作るボルボ・パワートレインは七つ の事業部門へエンジンを供給しています(図 1)。
八万人を超す全従業員のうち、八〇〇 〇人以上がパワートレインで働いています。
当社は以前、乗用車部門も持っていました が、九九年にフォードに売却して以来、商業 車部門に特化してきました。
その後、二〇〇 一年にルノーから商業車部門を買収し、〇六 年には日産から日産ディーゼルを買収して子 会社としました(その後、一〇〇%子会社化 するのは〇七年のこと)。
現在、ボルボはトラ ックの販売台数では世界第三位、バスでは世 界第二位、ディーゼルエンジンでは世界一位 となります。
アメリカのマック・トラックを傘下に持つル ノーのトラック部門を買収したとき、ボルボ・ パワートレインの工場は、それまでのスウェー デンとブラジルにあった二カ所から、フランス とアメリカの二カ所を加えた合計四カ所にな りました。
ルノーの買収と相前後して、私たちは二つ の問題を抱えていました。
一つは、在庫管理 がうまくいっていなかったため、工場におけ る部品の在庫水準が高すぎるにもかかわらず、 欠品による生産の中断が起こっていたことで した。
もう一つは、買収により同じ事業ユニ ットの中に、三つの異なるシステムが存在す るようになったということでした(図2)。
主力であったスウェーデンのシェーブデ工場 を例にとると、平均して操業日数の八・五日 分の部品在庫を抱えていました。
過剰な在庫 を抱えるということは、ROI(投資利益率) 45 DECEMBER 2007 の観点からみても、早急に何らかの手を打た なければならない課題でした。
私たちが立てた目標は、「工場の在庫を三 日分に減らしながらも、同時にサプライヤー からのリードタイムを短縮することでサービス レベルを落とさない」というものでした。
こ の目標を立てた当初、社内からはターゲット が高すぎるのではと疑問視する声がありまし た。
その実行手段としては、サプライヤーを巻 き込んだ在庫管理、いわゆるVMI(ベンダ ー主導型在庫管理)の手法をとることにしま した。
モデルケースとしてスウェーデンの工場 でプロジェクトを立ち上げ、それが成功すれ ば、ほかの三つの工場に広げていこうと考え ました。
これまでボルボの生産計画立案作業は、毎 月、事業部門からあがってきた売上目標数字 を本社で検討し、各国の販売部門と事業ユニ ットに打診して調整、最終的に決定するとい う手順で行っていました。
一連のプロセスの ほとんどがボルボの社内で完結していました。
サプライヤーに対しては、年度の初めに十 二カ月分の予測数字を渡し、四半期ごとに数 字をアップデートしていましたが、実際に注文 が確定するのは三日前という状態でした。
サ プライヤーからはボルボの生産現場の実需が ほとんどみえなかったために、欠品を恐れて 必要以上に部品を納入する傾向がありました。
それが工場内の高い在庫レベルの原因となっ ていたのです。
主要五〇サプライヤーを対象に ウェブ対応のVMIソフトを導入し、在庫 管理の責任と権限をサプライヤーに大幅に移 管することにしました。
それによって“Wi n─Win(互恵的な)”関係を築き上げるこ とを狙ったのです。
いくつかの複数のパッケージソフトを検討し た結果、同じスウェーデンに本社を置くパイプ チェーン(PipeChain)社のソフトを購入する ことにしました。
ソフトを選択する決め手に なったのは、EDI(電子データ交換)に対 応できるソフトであり、操作もサプライヤーの 負担にならないような簡便なものであった点 でした。
初期投資額が少なかったことも理由 のひとつです。
投資額は、スウェーデンのプ ロジェクトが終わった時点で回収できる範囲 のものでした。
マック トラック 《事業ユニット》 《事業部門》 図1 ボルボの組織図 ルノー トラック ボルボ トラック 日産 ディーゼル ボルボ バス ボルボ社 ボルボ 建設機械 ボルボ ペンタ ボルボ アエロ ボルボ 金融サービス ボルボ3P ボルボ・パワートレイン ボルボ・パーツ ボルボ・ロジスティクス ボルボIT 等 図2 3 つの産業システムを統一 米国ヘイガーズタウン工場 (マックス・トラック) スウェーデン・シェーブデ工場 ブラジル・クリチバ工場 (ボルボ・トラック) フランス・ベニシュー工場 (ルノー・トラック) 2001年 4 工場に3 つのシステム 2007年 1 つのシステムに ●統一した業務プロセス とシステムの導入 ●キャスティングと主要 機械を一つの工場に集 中する ●地域ごとのエンジンの 組立 ●共通のサプライヤー ベースを作る ●ボリュームディスカウ ント ヘイガーズタウン工場 シェーブデ工場 クリチバ工場 ベニシュー工場 DECEMBER 2007 46 このソフトを導入したことで、一番大きく 変化したのは、私たちの考え方でした。
「生 産に関することは、すべてボルボが決めるの だ」という考えから、サプライヤーと情報を 共有することで、これまでボルボに集中して いた権限を、サプライヤーに委譲するという 考え方に変わったのです。
それまでの物の見 方を一八〇度転換するにも等しい大きな変化 でした。
それだけに、実際の業務の移行は段階を踏 んで万全を期しました。
まずは二〇〇〇年に、 スウェーデンの工場の主要サプライヤーの一社 と試験的にVMIを始めました。
それをサプ ライヤー四社の参加する実験に移行したとき に先のVMIソフトを使うようになったので す。
当社はサプライヤー六〇〇社と取引があり、 そのうち上位五〇社との取引が全体の八〇% を占めています。
〇二年十二月からは、この 五〇社に対象を拡大しました。
この在庫削減のプロジェクトに取り組むに あたって、私たちはまず五〇社のサプライヤ ーと話し合いを持ち、彼らにプロジェクトの 内容を説明して、参加の意向があるかどうか を尋ねました。
すべてのサプライヤーからプロ ジェクトに参加したいという答えが返ってき ました。
プロジェクトによって得られるメリッ トを、サプライヤーは即座に把握することが できたからです。
当社がサプライヤーに説明したのは、次の ような内容です。
●サプライヤーはインターネット上で当社の生 産計画や部品ごとの在庫数を知ることがで きる。
●サプライヤーはすべての部品に関して当社 の確定した需要を知ることができる。
●サプライヤーは、当社と合意した範囲にお いて、在庫の水準を決定する権限と維持す る責任を持つ。
●サプライヤーが在庫の注文を確定すること ができる。
プロジェクトに参加の意思を表明したサプ ライヤー五〇社の下には、当社のスタッフが 訪問して、二日間のトレーニングを行いまし た。
サプライヤーへの説明やトレーニングには 大きな労力を必要としましたが、このプロジ ェクトを成功させるにはサプライヤーの協力が 何よりも重要だと考えました。
権限の委譲に伴い、新しいKPI(重要業 績評価指標)を設定しました。
KPIの主 要な部分は、工場が持つ部品ごとの在庫日数 の上限と下限です。
大部分の部品は、上限六 日・下限二日としました。
いくつかの例外を 除いて、ほとんどのサプライヤーがこの数字 を達成することができました。
パイプラインのVMIソフトは、部品ごと に、在庫が適正水準にあるのか、不足してい るのか、オーバーしているのかを表示します。
これまでサプライヤーが工場の正確な在庫や 製造計画を知ろうと思えば、電話やメールで 問い合わせる必要がありました。
しかしソフ トを導入してからは、サプライヤーは何の労 力もかけず、知りたい情報をコンピュータの 画面上でいつでも知ることができるようにな ったのです。
ボルボとサプライヤー双方にメリット 工場における生産過程の可視性を高めるこ とで、サプライヤーとパワートレイン双方が工 場の生産を止めることを恐れることなく、在 庫の削減に取り組むことができました。
当社の最新の製造計画をリアルタイムで知 ることでサプライヤーは、当社が本当に必要 な部品だけを届けることができるようになり ました。
以前は、当社から「サプライヤーは 何日までに部品Aを一〇個持ってくるように」 という指示を出していましたが、今ではサプ ライヤー自身が何個持っていくかを決める権 限を持っています。
例えば、もしわれわれが部品Bを一〇〇個 持ってくるように提案しても、サプライヤー が九〇個でいいと判断すれば、九〇個でもか まいませんし、生産スケジュールに合わせて配 送のタイミングをずらすこともできます。
こ うした取り組みの結果、リードタイムは従来 の平均六日から二日に短縮することができま した(図3)。
今のところ部品の配送については、大きな 変化はありません。
部品の集荷は、従来から 当社が仕立てたトラックによって、週二回、ル ートを決めた“ミルクラン方式”で集荷して います。
VMIプロジェクト後も、この方法 47 DECEMBER 2007 工場の在庫については、プロジェクト前に は、平均で八〇〇〇個あった部品ごとの在庫 を四〇〇〇個以下に減らすことができました。
工場全体の在庫でみると、プロジェクト後一 年強で、それまで平均八・五日分あった在庫 を三日以下に減らすことができました(図4)。
サプライヤー五〇社と始めたVMIをすべ てのサプライヤーに広げるかどうかは、社内 でも議論を重ねましたが、主要五〇社だけで も目標を達成できたことから、すべてに広げ る必要はないと判断しました。
スウェーデンにおけるVMIのプロジェクト は、〇四年三月で終了しました。
その後、フ ランスとアメリカで同様のプロジェクトに取り 組んできました。
〇七年に一〇〇%子会社と した日産ディーゼルでどのような取り組みを するのかは、今後の決定事項となります。
は変わっていません。
しかし、VMIを今後 も進めていくことで、将来的には、サプライ ヤーに部品の配送まで委託することもありえ ると考えています。
サプライヤーが自らトラッ クを仕立てることで、サプライヤーの柔軟性 も増すし、在庫の精度も上がると考えるから です。
POS(販売時点情報)を手にすることに よって、サプライヤーの享受したメリットは、 次のようになります。
●需要予測や生産計画の変更が容易になった。
●組み立てにかかる時間を一〇〜二〇%短縮 することができた。
●生産現場に柔軟性を持たせることができた。
●ボルボの生産計画が簡単に分かるようにな ったことで経費を削減することができた。
●サプライヤー自身の在庫を削減することが できた。
当社は、在庫をコントロールする権限を手 放すことで、逆に欠品と過剰在庫を減らすこ とができました。
当社のメリットは次のよう になります。
●JIT配送に近づくことにより工場の生産 性を向上することができた。
●欠品による生産中止の可能性を減らすこと で安定した生産スケジュールを確保するこ とできた。
●調達部門の人員を本業に回すことで経費を 削減することができた。
●工場の在庫を大幅に減らすことができた。
図3 リードタイムを大幅に短縮 月 火 水 木 金月 火 水 木 金 第1 週第2 週 VMIだと2 日 従来6 日 ルノーの場合 発注 第1週 第4週 第7週 第1 0週 第 13 週 第 16 週 第 19 週 第 22 週 第 25 週 第 28 週 第 34 週 第 37 週 第 40 週 第 43 週 第 46 週 第 49 週 第 52 週 第3週 第6週 第9週 図4 工場の在庫レベルを大幅に改善(シェーブデ工場) 1年目2年目 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 日数(日分) パイプチェーン利用 パイプチェーン利用せず 平均 目標 本 社 スウェーデン ヨーテボリ 創 業 1928年 主 業 大型商用車およびディーゼル・ エンジンメーカー 売上高 2588億3500万スウェーデン・ クローナ (4兆6590億3000万円) 純利益 163億3800万スウェーデン・ クローナ (2940億8400万円) 従業員数 8万3000人 (いずれも2006年決算時の数字) 1スウェーデン・クローナ=18円 ボルボ 企業概要
解決策として、それまでボルボ中心で進めてきた在庫管理を一八〇度改め、主要サプラ イヤーに在庫の決定権を移管した。
サプライヤーが適切な決定を行えるように、同社の生産スケジュール や工場内の在庫をインターネット上で共有できるようにした。
JIT(ジャスト・イン・タイム)配送に 近い状態を作り上げることで、リードタイムを三分の一に短縮し、工場の在庫についても三分の一に圧 縮しながら、生産スケジュールを安定化することができた。
(取材・編集 本誌欧州特派員 横田増生) 欧州サプライチェーン&ロジスティクス会議? ボルボ・パワートレインのVMI戦略 ベンダーへの権限委譲で在庫を1 ─3に リアナ・パルム ボルボ・パワートレイン 国際物流部門マネジャー 工場に八日以上の在庫を抱える 創業八〇年の歴史を持つボルボは、トラッ クやバスなどの大型商業車とディーゼルエン ジンのメーカーです。
グループ内には主要部 門であるボルボ・トラックや日産ディーゼルな ど四つのトラックブランドに加え、バスや建設 機械、金融サービスといった九つの事業部門 を持っています。
その事業部門を支えるのが 五つの事業ユニットで、そのうちのディーゼル エンジンを作るボルボ・パワートレインは七つ の事業部門へエンジンを供給しています(図 1)。
八万人を超す全従業員のうち、八〇〇 〇人以上がパワートレインで働いています。
当社は以前、乗用車部門も持っていました が、九九年にフォードに売却して以来、商業 車部門に特化してきました。
その後、二〇〇 一年にルノーから商業車部門を買収し、〇六 年には日産から日産ディーゼルを買収して子 会社としました(その後、一〇〇%子会社化 するのは〇七年のこと)。
現在、ボルボはトラ ックの販売台数では世界第三位、バスでは世 界第二位、ディーゼルエンジンでは世界一位 となります。
アメリカのマック・トラックを傘下に持つル ノーのトラック部門を買収したとき、ボルボ・ パワートレインの工場は、それまでのスウェー デンとブラジルにあった二カ所から、フランス とアメリカの二カ所を加えた合計四カ所にな りました。
ルノーの買収と相前後して、私たちは二つ の問題を抱えていました。
一つは、在庫管理 がうまくいっていなかったため、工場におけ る部品の在庫水準が高すぎるにもかかわらず、 欠品による生産の中断が起こっていたことで した。
もう一つは、買収により同じ事業ユニ ットの中に、三つの異なるシステムが存在す るようになったということでした(図2)。
主力であったスウェーデンのシェーブデ工場 を例にとると、平均して操業日数の八・五日 分の部品在庫を抱えていました。
過剰な在庫 を抱えるということは、ROI(投資利益率) 45 DECEMBER 2007 の観点からみても、早急に何らかの手を打た なければならない課題でした。
私たちが立てた目標は、「工場の在庫を三 日分に減らしながらも、同時にサプライヤー からのリードタイムを短縮することでサービス レベルを落とさない」というものでした。
こ の目標を立てた当初、社内からはターゲット が高すぎるのではと疑問視する声がありまし た。
その実行手段としては、サプライヤーを巻 き込んだ在庫管理、いわゆるVMI(ベンダ ー主導型在庫管理)の手法をとることにしま した。
モデルケースとしてスウェーデンの工場 でプロジェクトを立ち上げ、それが成功すれ ば、ほかの三つの工場に広げていこうと考え ました。
これまでボルボの生産計画立案作業は、毎 月、事業部門からあがってきた売上目標数字 を本社で検討し、各国の販売部門と事業ユニ ットに打診して調整、最終的に決定するとい う手順で行っていました。
一連のプロセスの ほとんどがボルボの社内で完結していました。
サプライヤーに対しては、年度の初めに十 二カ月分の予測数字を渡し、四半期ごとに数 字をアップデートしていましたが、実際に注文 が確定するのは三日前という状態でした。
サ プライヤーからはボルボの生産現場の実需が ほとんどみえなかったために、欠品を恐れて 必要以上に部品を納入する傾向がありました。
それが工場内の高い在庫レベルの原因となっ ていたのです。
主要五〇サプライヤーを対象に ウェブ対応のVMIソフトを導入し、在庫 管理の責任と権限をサプライヤーに大幅に移 管することにしました。
それによって“Wi n─Win(互恵的な)”関係を築き上げるこ とを狙ったのです。
いくつかの複数のパッケージソフトを検討し た結果、同じスウェーデンに本社を置くパイプ チェーン(PipeChain)社のソフトを購入する ことにしました。
ソフトを選択する決め手に なったのは、EDI(電子データ交換)に対 応できるソフトであり、操作もサプライヤーの 負担にならないような簡便なものであった点 でした。
初期投資額が少なかったことも理由 のひとつです。
投資額は、スウェーデンのプ ロジェクトが終わった時点で回収できる範囲 のものでした。
マック トラック 《事業ユニット》 《事業部門》 図1 ボルボの組織図 ルノー トラック ボルボ トラック 日産 ディーゼル ボルボ バス ボルボ社 ボルボ 建設機械 ボルボ ペンタ ボルボ アエロ ボルボ 金融サービス ボルボ3P ボルボ・パワートレイン ボルボ・パーツ ボルボ・ロジスティクス ボルボIT 等 図2 3 つの産業システムを統一 米国ヘイガーズタウン工場 (マックス・トラック) スウェーデン・シェーブデ工場 ブラジル・クリチバ工場 (ボルボ・トラック) フランス・ベニシュー工場 (ルノー・トラック) 2001年 4 工場に3 つのシステム 2007年 1 つのシステムに ●統一した業務プロセス とシステムの導入 ●キャスティングと主要 機械を一つの工場に集 中する ●地域ごとのエンジンの 組立 ●共通のサプライヤー ベースを作る ●ボリュームディスカウ ント ヘイガーズタウン工場 シェーブデ工場 クリチバ工場 ベニシュー工場 DECEMBER 2007 46 このソフトを導入したことで、一番大きく 変化したのは、私たちの考え方でした。
「生 産に関することは、すべてボルボが決めるの だ」という考えから、サプライヤーと情報を 共有することで、これまでボルボに集中して いた権限を、サプライヤーに委譲するという 考え方に変わったのです。
それまでの物の見 方を一八〇度転換するにも等しい大きな変化 でした。
それだけに、実際の業務の移行は段階を踏 んで万全を期しました。
まずは二〇〇〇年に、 スウェーデンの工場の主要サプライヤーの一社 と試験的にVMIを始めました。
それをサプ ライヤー四社の参加する実験に移行したとき に先のVMIソフトを使うようになったので す。
当社はサプライヤー六〇〇社と取引があり、 そのうち上位五〇社との取引が全体の八〇% を占めています。
〇二年十二月からは、この 五〇社に対象を拡大しました。
この在庫削減のプロジェクトに取り組むに あたって、私たちはまず五〇社のサプライヤ ーと話し合いを持ち、彼らにプロジェクトの 内容を説明して、参加の意向があるかどうか を尋ねました。
すべてのサプライヤーからプロ ジェクトに参加したいという答えが返ってき ました。
プロジェクトによって得られるメリッ トを、サプライヤーは即座に把握することが できたからです。
当社がサプライヤーに説明したのは、次の ような内容です。
●サプライヤーはインターネット上で当社の生 産計画や部品ごとの在庫数を知ることがで きる。
●サプライヤーはすべての部品に関して当社 の確定した需要を知ることができる。
●サプライヤーは、当社と合意した範囲にお いて、在庫の水準を決定する権限と維持す る責任を持つ。
●サプライヤーが在庫の注文を確定すること ができる。
プロジェクトに参加の意思を表明したサプ ライヤー五〇社の下には、当社のスタッフが 訪問して、二日間のトレーニングを行いまし た。
サプライヤーへの説明やトレーニングには 大きな労力を必要としましたが、このプロジ ェクトを成功させるにはサプライヤーの協力が 何よりも重要だと考えました。
権限の委譲に伴い、新しいKPI(重要業 績評価指標)を設定しました。
KPIの主 要な部分は、工場が持つ部品ごとの在庫日数 の上限と下限です。
大部分の部品は、上限六 日・下限二日としました。
いくつかの例外を 除いて、ほとんどのサプライヤーがこの数字 を達成することができました。
パイプラインのVMIソフトは、部品ごと に、在庫が適正水準にあるのか、不足してい るのか、オーバーしているのかを表示します。
これまでサプライヤーが工場の正確な在庫や 製造計画を知ろうと思えば、電話やメールで 問い合わせる必要がありました。
しかしソフ トを導入してからは、サプライヤーは何の労 力もかけず、知りたい情報をコンピュータの 画面上でいつでも知ることができるようにな ったのです。
ボルボとサプライヤー双方にメリット 工場における生産過程の可視性を高めるこ とで、サプライヤーとパワートレイン双方が工 場の生産を止めることを恐れることなく、在 庫の削減に取り組むことができました。
当社の最新の製造計画をリアルタイムで知 ることでサプライヤーは、当社が本当に必要 な部品だけを届けることができるようになり ました。
以前は、当社から「サプライヤーは 何日までに部品Aを一〇個持ってくるように」 という指示を出していましたが、今ではサプ ライヤー自身が何個持っていくかを決める権 限を持っています。
例えば、もしわれわれが部品Bを一〇〇個 持ってくるように提案しても、サプライヤー が九〇個でいいと判断すれば、九〇個でもか まいませんし、生産スケジュールに合わせて配 送のタイミングをずらすこともできます。
こ うした取り組みの結果、リードタイムは従来 の平均六日から二日に短縮することができま した(図3)。
今のところ部品の配送については、大きな 変化はありません。
部品の集荷は、従来から 当社が仕立てたトラックによって、週二回、ル ートを決めた“ミルクラン方式”で集荷して います。
VMIプロジェクト後も、この方法 47 DECEMBER 2007 工場の在庫については、プロジェクト前に は、平均で八〇〇〇個あった部品ごとの在庫 を四〇〇〇個以下に減らすことができました。
工場全体の在庫でみると、プロジェクト後一 年強で、それまで平均八・五日分あった在庫 を三日以下に減らすことができました(図4)。
サプライヤー五〇社と始めたVMIをすべ てのサプライヤーに広げるかどうかは、社内 でも議論を重ねましたが、主要五〇社だけで も目標を達成できたことから、すべてに広げ る必要はないと判断しました。
スウェーデンにおけるVMIのプロジェクト は、〇四年三月で終了しました。
その後、フ ランスとアメリカで同様のプロジェクトに取り 組んできました。
〇七年に一〇〇%子会社と した日産ディーゼルでどのような取り組みを するのかは、今後の決定事項となります。
は変わっていません。
しかし、VMIを今後 も進めていくことで、将来的には、サプライ ヤーに部品の配送まで委託することもありえ ると考えています。
サプライヤーが自らトラッ クを仕立てることで、サプライヤーの柔軟性 も増すし、在庫の精度も上がると考えるから です。
POS(販売時点情報)を手にすることに よって、サプライヤーの享受したメリットは、 次のようになります。
●需要予測や生産計画の変更が容易になった。
●組み立てにかかる時間を一〇〜二〇%短縮 することができた。
●生産現場に柔軟性を持たせることができた。
●ボルボの生産計画が簡単に分かるようにな ったことで経費を削減することができた。
●サプライヤー自身の在庫を削減することが できた。
当社は、在庫をコントロールする権限を手 放すことで、逆に欠品と過剰在庫を減らすこ とができました。
当社のメリットは次のよう になります。
●JIT配送に近づくことにより工場の生産 性を向上することができた。
●欠品による生産中止の可能性を減らすこと で安定した生産スケジュールを確保するこ とできた。
●調達部門の人員を本業に回すことで経費を 削減することができた。
●工場の在庫を大幅に減らすことができた。
図3 リードタイムを大幅に短縮 月 火 水 木 金月 火 水 木 金 第1 週第2 週 VMIだと2 日 従来6 日 ルノーの場合 発注 第1週 第4週 第7週 第1 0週 第 13 週 第 16 週 第 19 週 第 22 週 第 25 週 第 28 週 第 34 週 第 37 週 第 40 週 第 43 週 第 46 週 第 49 週 第 52 週 第3週 第6週 第9週 図4 工場の在庫レベルを大幅に改善(シェーブデ工場) 1年目2年目 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 日数(日分) パイプチェーン利用 パイプチェーン利用せず 平均 目標 本 社 スウェーデン ヨーテボリ 創 業 1928年 主 業 大型商用車およびディーゼル・ エンジンメーカー 売上高 2588億3500万スウェーデン・ クローナ (4兆6590億3000万円) 純利益 163億3800万スウェーデン・ クローナ (2940億8400万円) 従業員数 8万3000人 (いずれも2006年決算時の数字) 1スウェーデン・クローナ=18円 ボルボ 企業概要
