2008年1月号
SOLE
SOLE
RFID 実証実験施設を見学リアルタイムの可視化を体験
SOLE 日本支部フォーラムの報告
The International Society of Logistics
JANUARY 2008 90
RFID 実証実験施設を見学
リアルタイムの可視化を体験
十一月度のフォーラムでは、RF
IDの実証実験施設「HP RFI
D Noisyラボ・ジャパン」を見
学した。
同施設は流通現場をリアル に再現し、「RFIDの導入企画」 と「現場での実証実験」の間の「事 前検証の場」を提供。
工場から配送 センター、店舗向け出荷までのプロ セス全体を検証できる。
最新のシミ ュレーション環境で、RFID活用 の最前線をみた。
Noisy─現場に限りなく近く 今回見学した「HP RFID N oisyラボ・ジャパン」は千葉県木 更津市、JR木更津駅から東京湾に 向かって、送迎バスで所要時間一〇 分。
トーヨーカネツソリューションズ 千葉事業所内に所在する。
当日は快 晴で広大な埋め立て地内を、東京湾 越しに富士山を見ながらの訪問であ った。
HP RFID Noisyラボ・ジ ャパンは、トーヨーカネツソリューシ ョンズとアイデックコントロールズ、 ワールド・ロジ、そして日本ヒュー レット・パッカードの四社が共同で 設立したRFID(無線自動識別) 導入の事前検証施設である。
各社はそれぞれ次のような特徴を 持っている。
トーヨーカネツソリュー ションズは、マテリアルハンドリング (搬送設備)の実装や、WMS(庫 内管理システム)および庫内運用シ ステムの構築、空港手荷物用RFI Dタグの実証実験で実績を持つ物流 ソリューション企業。
アイデックコ ントロールズは、FA(ファクトリ ー・オートメーション)分野でのR FID設置に高い実績を持つ、ID ECのグループ企業。
RFIDタグ の実装や読取装置の実装・運用に関 して、豊富な経験とノウハウを持っ ている。
ワールド・ロジは、3PL 事業を展開し、RFID等を用いて 物流センター、倉庫、商業施設等の ロジスティクスサポート機能を提供 する。
日本ヒューレット・パッカードは、 自社サプライチェーンにおけるグロ ーバルなRFID実装経験を持つ、 世界的なITソリューションプロバ イダー。
米国ウォルマートがテキサ ス州ダラスの物流センターと店舗で 実施しているRFID実証実験に、 サプライヤーとして参加した八社の うちの一社として知られている。
ま たRFIDソリューションの研究・ 開発に積極的な投資を行っており、 RFIDの国際標準化団体「EP Cグローバル」にも加盟、国際標準 の策定でも大きな貢献を果たして いる。
この訪問にあたりHP RFID Noisyラボ・ジャパンの施設名の 「Noisy」が何を示すかが気にな っていたが、説明会が始まると、こ の疑問は解けた。
RFIDは無線電 波を使用する技術であり、実際に使 用される物流現場では非常に多くの 電磁波ノイズが飛び交っている。
実 証実験をするにあたっては、これ らノイズが飛び交う実際の物流現場 に、限りなく近い環境にする必要か ら施設環境が作られているため「N oisy」が付けられている。
この施設は流通の現場を再現し た、UHF帯RFIDの実証実験 施設である。
二〇〇五年十二月の開 設以来、見学会を定期的に開催して おり、見学者は海外からも含めて一 八〇〇人に達している。
見学会では施設の由来に引き続 き、RFID活用の市場、技術的 基礎、国際標準化、RFID利活 用の業務範囲の動向について講義が あった。
また実際の利活用事例とし て、ヒューレット・パッカード(H P)の米国リッチモンド、メンフィ ス、ブラジル・サンパウロ工場での 導入経緯と状況、改善効果などにつ いて解説を受けた。
RFID導入に よって得られる情報により、生産工 程などの物の流れを“見える化”し た分析手法、それに基づくサイクル タイムの改善事例の解説は大変分か りやすく良かった。
事前検証で“ためらい”を解消 RFID導入の必要は分かってい ても、いろいろな問題で“ためら い”がある。
?IT技術は理解できるが無線技 術は理解できない。
RFIDを活用 するには、ITだけでなく無線装置 技術のノウハウが必要である。
しか し、ほとんどの企業のIT部門には そのノウハウがない。
?利用現場でのRFID通信障 害が心配。
物流現場にはモーターや ソレノイド(電磁駆動部品)を利用 した機器、トラックの車載無線、携 帯電話機、水銀灯などの環境機器が 91 JANUARY 2008 取り方やタグの貼り付け方法をその 場で試行・改善・検証できる(写真 1)。
RFIDは「水」の影響を受 けるが、飲料の入ったペットボトル に貼り付けたタグの場所とアンテナ の関係や、その場で可視化ツールを 活用して試行改善がすぐ行えること を体験した。
また、「凍った水」は 読み取りに対する影響が少ないこと が、すぐ検証できることには驚いた。
?ICタグ仕分け認識テスト。
物 流倉庫内の自動仕分け処理のシミュ レーションが行える。
コンベヤ上(あ るいは下)のアンテナによって貨物 のタグ情報を読み取り、書き込まれ た情報に応じてコンベヤの経路を制 御。
これにより、貨物が仕分けされ る。
コンベヤを制御しているPLC (プログラマブル・ロジック・コント ローラ)とRFIDのRead/Write をコントロールするソフトウエアと の連携処理もできる。
?ICタグ高速認識テスト(ベル トコンベヤ)(写真2)。
工場の製造 ラインや配送センターの搬送ライン などで、高速で稼働する対象につい たタグの読み取り処理をシミュレー ションできる。
コンベヤの速度は最 高で分速一五〇メートル。
三段階の 速度設定が可能で、各速度は任意に 調整可能となっている。
シミュレー ションは実際の製品プリンターが入 数多く存在するため、非常に多くの 電磁波ノイズが飛び交っている。
そ のため、電波環境がクリーンな実験 室ではうまくいったRFID通信 が、利用現場では障害にみまわれる 危険がある。
?実際の利用現場では実証実験 ができない。
物流や製造の現場に おいては日々の通常業務が動いてお り、どうしても通常業務を優先せざ るを得ないため、RFIDタグ利用 の実証実験を行う時間や場所、人員 を確保することが困難である。
?最適なRFID機器やタグの採 用に不安がある。
RFID用の機器 やタグはすでに複数ベンダーから提 供されているが、どれが最適なのか は利用環境やシステム環境によって 異なる。
しかし現時点ではまだ、機 器やタグの選定に関する情報が十分 ではない。
また、技術発展もめまぐ るしく、最新の情報や機材の中から 最適な選択をしなければならない。
?RFID導入のメリットが実感 できない。
既にRFIDを導入した 企業では物流の効率化に大きな効果 がみられているが、机上の計画だけ では導入効果を明確に示すことは簡 単ではない。
バーコードを利用して いる企業では、バーコードのままで も十分という意見も聞かれる。
このような“ためらい”の解消を 目的として、この設備は「RFID 導入企画」と「現場での実証実験」 の間で実施すべき「事前検証」の場 と位置付けられて、次のような事前 テストが行えるようになっている。
?自前の荷物でICタグの読み取り テストを実施。
本物の工場・倉庫 に準じた環境に設備が用意されて おり、自前の荷物を持ち込み、現 場をリアルに再現した環境でテス トが行える。
?異なる種類のICタグやリーダー を実際に使用して動作を検証。
メ ーカーや生産国を問わず、さま ざまな種類のタグと読み取り装 置、プリンター等が設置されてお り、これらの機能や性能が自由に 比較検討できる。
?ICタグから読み取ったデータと システムとの連携を確認。
EPC グローバルの標準に準拠したRF ID用ミドルウェアを備えたシス テムが設置されており、データの 読み取り状況を確認しながら、シ ステムとの連携を検証できる。
これらの事前検証の要望に応えら れるようHP RFID Noisy ラボ・ジャパンは設立された。
実証 実験設備・環境を活用して、豊富 なノウハウを持つ設立参加四社のコ ンサルタントが、機器やタグのメー カーから中立な立場でRFID導入 について助言することが、この実証 実験施設の目的となっている。
概ね一時間の講義、解説の後に、 実証実験設備の見学へ移動した。
自社貨物での検証可能 「事前検証ができる設備・環境」 の主なものは、?電波の状況を可視 化するツールの活用。
ICタグ読み 取り時に受信した電波の強さを、グ ラフなどで可視化するツールが用意 されている。
リーダーと読み取り対 象の位置関係や角度によって変化 する電波の状態を把握し、そのグラ フをリアルタイムに見ながら、読み 写真1 電波の状態はリーダーと読み取り対象の位置・角度に よって変化するが、状態を確認しながら試行・改善・検証 JANUARY 2008 92 ったケースで行われ、まさに実証実 験の体験である。
?パレタイジング時のタグの認識 環境。
出荷時に製品をパレタイジン グする際、同時にICタグを読み込 む設備が用意されている。
可動式の 台に乗せられたパレットが、ストレ ッチラップを巻くために回転しなが ら上下に動く時に、その横の支柱に 取り付けられたアンテナによってケ ースのタグ情報が読み込めるか検証 でき、ICタグの個品積み付け認識 向上テストができる。
?配送センターの大型バースを想 定した入荷一括ICタグ読み取りテ スト(写真3)。
配送センターや倉 庫における商品受け取り時の一括読 み取り処理をシミュレーションでき る。
実際の配送センターにある大型 バースを想定し、十分に幅を備えた ICタグ読取ゲートが設置されてお り、パレタイジングされた多数の商 品をフォークリフトで運び、ゲート を通過する際の一括読み取り精度を リアルに検証できる。
タグの貼り付 け位置、ケースの積み方、アンテナ からの読み取り距離、アンテナ位置 などが、リアルタイムに検証できる。
?WMSなどのアプリケーション と連携した検証。
HPのプラットホ ーム上に構築されたRFIDシステ ムと、代表的なWMSのパッケージ システムが用意されており、実際に 読み込んだRFIDデータをWMS へ渡し、擬似的に在庫品や通過品の 管理をシミュレーションすることが できる。
物流の各センターにおける 入出庫情報および在庫情報をリアル タイムで可視化でき、物流業務の効 率化への検証ができる。
?環境を自在にカスタマイズ可能。
ベルトコンベヤやフォークリフトな ど、搬送ラインのスピードを自在に 調節でき、また、検証対象となる荷 物の持ち込みも行えるので、自社の 対象製品・荷姿に合わせた検証が可 能である。
?リライタブルラベルシステム。
ラ ベルをはがすことなく、何度も書き 換えができるシステム。
ICタグと ラベルの組み合わせでタグの内容の 可視化を実現し、完全リユースを可 能にしている。
以上のRFID最前線のシミュ レーションをそれぞれ体験した後に、 休憩に入った。
活用シナリオに基づき業務再現 メーカーから配送センター、小売 店をつなぐ製品の流れの中には、い くつか事前テストが必要なシーンが ある。
これらをおさえるとともに、 実際の配送センターにおける庫内業 務を施設内で再現したデモが行われ た。
各工程のイベント情報をWMS で一括管理しながら、センター運営 に必要となる重要情報をリアルタイ ムで可視化したデモンストレーショ ンである。
この中でのRFID活用 シナリオは、メーカー(荷物を出す 側)の工場の出荷:?タグ付け、? 出荷チェック、?パレタイジング(パ レットとタグの紐付け)、?出荷(一 括タグ認識)。
運送後、配送センター(荷物を受 ける側)の入出庫:?入荷(一括タ グ認識)、デパレタイジング(在庫)、 ?ピッキング、?コンベヤ投入・方面 別仕分け(タグ仕分け認識・高速認 識)、?パレタイジング(パレットと タグの紐付け)、?店舗向け出荷(一 括タグ認識)までの流れである。
各ステップでイベント情報をWM Sで一括管理しながら、EPCグロ ーバルネットワークへ実際にリアル タイムにデータを送る。
必要に応じ て、所在確認、履歴照会で実際に EPCグローバルネットワークにア クセスするデモである。
このリアルタイムで可視化された デモンストレーションでは、?の出荷 の工程で、一括タグ認識で読み取ら れたタグデータが出荷情報として一 覧表で表示されると同時に、トラッ ク側面図を表示し、その荷台の上に 写真3 一括読み取り精度をリアルに検証 ※ HP RFID Noisy ラボ・ジャパン資料より抜粋 写真2 ICタグ高速認識テスト(ケースには実商品〈プリンター〉 が入っている) 93 JANUARY 2008 読み取られた貨物が順次表示されて いく。
このようなリアルタイムでの 可視化は、次のような業務遂行上で のニーズに対する処置の迅速化、効 率向上を実現するものである。
業務上ニーズ ?現在位置の追跡、経路確認 ■リコール対象の商品Xがどこにあ るのかを追跡したい ■消費期限が三日後の商品Yの所 在・数量を把握、警告したい ■キャンペーン商品が店舗まで届い ているか把握したい ■商品Zがどの経路をたどってきた か確認したい。
?リターナブル資産の追跡、経路確 認 ■リターナブル資産の現在位置・数 量・経路を確認したい。
?経過時間追跡 ■ある商品が各拠点でどれくらい滞 留していたか確認したい。
?流通在庫把握・販売管理 ■生産計画を立案するために、流 通・市場在庫がどれだけあるか把 握したい。
標準化が進められているEPCグ ローバルネットワークを実際に使用 して、工場から配送センター、店舗 向け出荷まで、プロセス順に全体を 一気に事前検証できることは、RF ID導入を強力に支援するものであ る、ということを体験できた。
また、 見学会の最初の説明にあった“Start Small! But, Start Now!”│“最初は 小さく、ただし、今すぐ始めよう” の主旨も実感するものであった。
物流現場改善を専門とするコンサルティング会社、 日本ロジファクトリーが具体的な事例を披露。
手法の説 明だけでなく、クライアントとのやりとりやコンサルタント の心の動きまで、改善プロジェクトの経過をリアルに描 写。
本誌2003年1月号から連載の「事例で学ぶ現場改 善」を加筆修正。
「経営のテコ入れは物流改善から」 青木正一 著 (明日香出版社) \1,890(税込) 2005年3月発行 白トラの一人親方からスタートして、一代で会社を 一部上場企業にまで成長させたオーナー創業者の 一代記。
笑えます!泣けます! 本誌2003年4月号〜2004年11月号に掲載した 「やらまいか̶̶ハマキョウレックスの運送屋繁盛 記」を加筆修正。
「やらまいか!」 大須賀正孝 著(ダイヤモンド社) \1,575(税込) 2005年5月発行 「物流コストを半減せよ!̶Mission」 湯浅和夫 著 (かんき出版) \1,575(税込) 2005年2月発行 物流コンサルティング業界のカリスマが小説形式 のノウハウ本に挑戦。
「大先生」と「美人弟子」「体力 弟子」の3人組が、常識破りの物流理論で、クライア ントの課題を次々に解決。
本誌2002年4月号から連載の「物流コンサル道 場」を単行本化。
次回フォーラムのお知らせ 1月度フォーラムは1月16 日(水) 「物流品質の改革」(講師:平居義憲氏) を予定している。
このフォーラムは年間 計画に基づいて運営しているが、単月の みの参加も可能。
1回の参加費は6,000 円。
ご希望の方は事務局(sole-j-offi ce@ cpost.plala.or.jp)までお問い合わせく ださい。
同施設は流通現場をリアル に再現し、「RFIDの導入企画」 と「現場での実証実験」の間の「事 前検証の場」を提供。
工場から配送 センター、店舗向け出荷までのプロ セス全体を検証できる。
最新のシミ ュレーション環境で、RFID活用 の最前線をみた。
Noisy─現場に限りなく近く 今回見学した「HP RFID N oisyラボ・ジャパン」は千葉県木 更津市、JR木更津駅から東京湾に 向かって、送迎バスで所要時間一〇 分。
トーヨーカネツソリューションズ 千葉事業所内に所在する。
当日は快 晴で広大な埋め立て地内を、東京湾 越しに富士山を見ながらの訪問であ った。
HP RFID Noisyラボ・ジ ャパンは、トーヨーカネツソリューシ ョンズとアイデックコントロールズ、 ワールド・ロジ、そして日本ヒュー レット・パッカードの四社が共同で 設立したRFID(無線自動識別) 導入の事前検証施設である。
各社はそれぞれ次のような特徴を 持っている。
トーヨーカネツソリュー ションズは、マテリアルハンドリング (搬送設備)の実装や、WMS(庫 内管理システム)および庫内運用シ ステムの構築、空港手荷物用RFI Dタグの実証実験で実績を持つ物流 ソリューション企業。
アイデックコ ントロールズは、FA(ファクトリ ー・オートメーション)分野でのR FID設置に高い実績を持つ、ID ECのグループ企業。
RFIDタグ の実装や読取装置の実装・運用に関 して、豊富な経験とノウハウを持っ ている。
ワールド・ロジは、3PL 事業を展開し、RFID等を用いて 物流センター、倉庫、商業施設等の ロジスティクスサポート機能を提供 する。
日本ヒューレット・パッカードは、 自社サプライチェーンにおけるグロ ーバルなRFID実装経験を持つ、 世界的なITソリューションプロバ イダー。
米国ウォルマートがテキサ ス州ダラスの物流センターと店舗で 実施しているRFID実証実験に、 サプライヤーとして参加した八社の うちの一社として知られている。
ま たRFIDソリューションの研究・ 開発に積極的な投資を行っており、 RFIDの国際標準化団体「EP Cグローバル」にも加盟、国際標準 の策定でも大きな貢献を果たして いる。
この訪問にあたりHP RFID Noisyラボ・ジャパンの施設名の 「Noisy」が何を示すかが気にな っていたが、説明会が始まると、こ の疑問は解けた。
RFIDは無線電 波を使用する技術であり、実際に使 用される物流現場では非常に多くの 電磁波ノイズが飛び交っている。
実 証実験をするにあたっては、これ らノイズが飛び交う実際の物流現場 に、限りなく近い環境にする必要か ら施設環境が作られているため「N oisy」が付けられている。
この施設は流通の現場を再現し た、UHF帯RFIDの実証実験 施設である。
二〇〇五年十二月の開 設以来、見学会を定期的に開催して おり、見学者は海外からも含めて一 八〇〇人に達している。
見学会では施設の由来に引き続 き、RFID活用の市場、技術的 基礎、国際標準化、RFID利活 用の業務範囲の動向について講義が あった。
また実際の利活用事例とし て、ヒューレット・パッカード(H P)の米国リッチモンド、メンフィ ス、ブラジル・サンパウロ工場での 導入経緯と状況、改善効果などにつ いて解説を受けた。
RFID導入に よって得られる情報により、生産工 程などの物の流れを“見える化”し た分析手法、それに基づくサイクル タイムの改善事例の解説は大変分か りやすく良かった。
事前検証で“ためらい”を解消 RFID導入の必要は分かってい ても、いろいろな問題で“ためら い”がある。
?IT技術は理解できるが無線技 術は理解できない。
RFIDを活用 するには、ITだけでなく無線装置 技術のノウハウが必要である。
しか し、ほとんどの企業のIT部門には そのノウハウがない。
?利用現場でのRFID通信障 害が心配。
物流現場にはモーターや ソレノイド(電磁駆動部品)を利用 した機器、トラックの車載無線、携 帯電話機、水銀灯などの環境機器が 91 JANUARY 2008 取り方やタグの貼り付け方法をその 場で試行・改善・検証できる(写真 1)。
RFIDは「水」の影響を受 けるが、飲料の入ったペットボトル に貼り付けたタグの場所とアンテナ の関係や、その場で可視化ツールを 活用して試行改善がすぐ行えること を体験した。
また、「凍った水」は 読み取りに対する影響が少ないこと が、すぐ検証できることには驚いた。
?ICタグ仕分け認識テスト。
物 流倉庫内の自動仕分け処理のシミュ レーションが行える。
コンベヤ上(あ るいは下)のアンテナによって貨物 のタグ情報を読み取り、書き込まれ た情報に応じてコンベヤの経路を制 御。
これにより、貨物が仕分けされ る。
コンベヤを制御しているPLC (プログラマブル・ロジック・コント ローラ)とRFIDのRead/Write をコントロールするソフトウエアと の連携処理もできる。
?ICタグ高速認識テスト(ベル トコンベヤ)(写真2)。
工場の製造 ラインや配送センターの搬送ライン などで、高速で稼働する対象につい たタグの読み取り処理をシミュレー ションできる。
コンベヤの速度は最 高で分速一五〇メートル。
三段階の 速度設定が可能で、各速度は任意に 調整可能となっている。
シミュレー ションは実際の製品プリンターが入 数多く存在するため、非常に多くの 電磁波ノイズが飛び交っている。
そ のため、電波環境がクリーンな実験 室ではうまくいったRFID通信 が、利用現場では障害にみまわれる 危険がある。
?実際の利用現場では実証実験 ができない。
物流や製造の現場に おいては日々の通常業務が動いてお り、どうしても通常業務を優先せざ るを得ないため、RFIDタグ利用 の実証実験を行う時間や場所、人員 を確保することが困難である。
?最適なRFID機器やタグの採 用に不安がある。
RFID用の機器 やタグはすでに複数ベンダーから提 供されているが、どれが最適なのか は利用環境やシステム環境によって 異なる。
しかし現時点ではまだ、機 器やタグの選定に関する情報が十分 ではない。
また、技術発展もめまぐ るしく、最新の情報や機材の中から 最適な選択をしなければならない。
?RFID導入のメリットが実感 できない。
既にRFIDを導入した 企業では物流の効率化に大きな効果 がみられているが、机上の計画だけ では導入効果を明確に示すことは簡 単ではない。
バーコードを利用して いる企業では、バーコードのままで も十分という意見も聞かれる。
このような“ためらい”の解消を 目的として、この設備は「RFID 導入企画」と「現場での実証実験」 の間で実施すべき「事前検証」の場 と位置付けられて、次のような事前 テストが行えるようになっている。
?自前の荷物でICタグの読み取り テストを実施。
本物の工場・倉庫 に準じた環境に設備が用意されて おり、自前の荷物を持ち込み、現 場をリアルに再現した環境でテス トが行える。
?異なる種類のICタグやリーダー を実際に使用して動作を検証。
メ ーカーや生産国を問わず、さま ざまな種類のタグと読み取り装 置、プリンター等が設置されてお り、これらの機能や性能が自由に 比較検討できる。
?ICタグから読み取ったデータと システムとの連携を確認。
EPC グローバルの標準に準拠したRF ID用ミドルウェアを備えたシス テムが設置されており、データの 読み取り状況を確認しながら、シ ステムとの連携を検証できる。
これらの事前検証の要望に応えら れるようHP RFID Noisy ラボ・ジャパンは設立された。
実証 実験設備・環境を活用して、豊富 なノウハウを持つ設立参加四社のコ ンサルタントが、機器やタグのメー カーから中立な立場でRFID導入 について助言することが、この実証 実験施設の目的となっている。
概ね一時間の講義、解説の後に、 実証実験設備の見学へ移動した。
自社貨物での検証可能 「事前検証ができる設備・環境」 の主なものは、?電波の状況を可視 化するツールの活用。
ICタグ読み 取り時に受信した電波の強さを、グ ラフなどで可視化するツールが用意 されている。
リーダーと読み取り対 象の位置関係や角度によって変化 する電波の状態を把握し、そのグラ フをリアルタイムに見ながら、読み 写真1 電波の状態はリーダーと読み取り対象の位置・角度に よって変化するが、状態を確認しながら試行・改善・検証 JANUARY 2008 92 ったケースで行われ、まさに実証実 験の体験である。
?パレタイジング時のタグの認識 環境。
出荷時に製品をパレタイジン グする際、同時にICタグを読み込 む設備が用意されている。
可動式の 台に乗せられたパレットが、ストレ ッチラップを巻くために回転しなが ら上下に動く時に、その横の支柱に 取り付けられたアンテナによってケ ースのタグ情報が読み込めるか検証 でき、ICタグの個品積み付け認識 向上テストができる。
?配送センターの大型バースを想 定した入荷一括ICタグ読み取りテ スト(写真3)。
配送センターや倉 庫における商品受け取り時の一括読 み取り処理をシミュレーションでき る。
実際の配送センターにある大型 バースを想定し、十分に幅を備えた ICタグ読取ゲートが設置されてお り、パレタイジングされた多数の商 品をフォークリフトで運び、ゲート を通過する際の一括読み取り精度を リアルに検証できる。
タグの貼り付 け位置、ケースの積み方、アンテナ からの読み取り距離、アンテナ位置 などが、リアルタイムに検証できる。
?WMSなどのアプリケーション と連携した検証。
HPのプラットホ ーム上に構築されたRFIDシステ ムと、代表的なWMSのパッケージ システムが用意されており、実際に 読み込んだRFIDデータをWMS へ渡し、擬似的に在庫品や通過品の 管理をシミュレーションすることが できる。
物流の各センターにおける 入出庫情報および在庫情報をリアル タイムで可視化でき、物流業務の効 率化への検証ができる。
?環境を自在にカスタマイズ可能。
ベルトコンベヤやフォークリフトな ど、搬送ラインのスピードを自在に 調節でき、また、検証対象となる荷 物の持ち込みも行えるので、自社の 対象製品・荷姿に合わせた検証が可 能である。
?リライタブルラベルシステム。
ラ ベルをはがすことなく、何度も書き 換えができるシステム。
ICタグと ラベルの組み合わせでタグの内容の 可視化を実現し、完全リユースを可 能にしている。
以上のRFID最前線のシミュ レーションをそれぞれ体験した後に、 休憩に入った。
活用シナリオに基づき業務再現 メーカーから配送センター、小売 店をつなぐ製品の流れの中には、い くつか事前テストが必要なシーンが ある。
これらをおさえるとともに、 実際の配送センターにおける庫内業 務を施設内で再現したデモが行われ た。
各工程のイベント情報をWMS で一括管理しながら、センター運営 に必要となる重要情報をリアルタイ ムで可視化したデモンストレーショ ンである。
この中でのRFID活用 シナリオは、メーカー(荷物を出す 側)の工場の出荷:?タグ付け、? 出荷チェック、?パレタイジング(パ レットとタグの紐付け)、?出荷(一 括タグ認識)。
運送後、配送センター(荷物を受 ける側)の入出庫:?入荷(一括タ グ認識)、デパレタイジング(在庫)、 ?ピッキング、?コンベヤ投入・方面 別仕分け(タグ仕分け認識・高速認 識)、?パレタイジング(パレットと タグの紐付け)、?店舗向け出荷(一 括タグ認識)までの流れである。
各ステップでイベント情報をWM Sで一括管理しながら、EPCグロ ーバルネットワークへ実際にリアル タイムにデータを送る。
必要に応じ て、所在確認、履歴照会で実際に EPCグローバルネットワークにア クセスするデモである。
このリアルタイムで可視化された デモンストレーションでは、?の出荷 の工程で、一括タグ認識で読み取ら れたタグデータが出荷情報として一 覧表で表示されると同時に、トラッ ク側面図を表示し、その荷台の上に 写真3 一括読み取り精度をリアルに検証 ※ HP RFID Noisy ラボ・ジャパン資料より抜粋 写真2 ICタグ高速認識テスト(ケースには実商品〈プリンター〉 が入っている) 93 JANUARY 2008 読み取られた貨物が順次表示されて いく。
このようなリアルタイムでの 可視化は、次のような業務遂行上で のニーズに対する処置の迅速化、効 率向上を実現するものである。
業務上ニーズ ?現在位置の追跡、経路確認 ■リコール対象の商品Xがどこにあ るのかを追跡したい ■消費期限が三日後の商品Yの所 在・数量を把握、警告したい ■キャンペーン商品が店舗まで届い ているか把握したい ■商品Zがどの経路をたどってきた か確認したい。
?リターナブル資産の追跡、経路確 認 ■リターナブル資産の現在位置・数 量・経路を確認したい。
?経過時間追跡 ■ある商品が各拠点でどれくらい滞 留していたか確認したい。
?流通在庫把握・販売管理 ■生産計画を立案するために、流 通・市場在庫がどれだけあるか把 握したい。
標準化が進められているEPCグ ローバルネットワークを実際に使用 して、工場から配送センター、店舗 向け出荷まで、プロセス順に全体を 一気に事前検証できることは、RF ID導入を強力に支援するものであ る、ということを体験できた。
また、 見学会の最初の説明にあった“Start Small! But, Start Now!”│“最初は 小さく、ただし、今すぐ始めよう” の主旨も実感するものであった。
物流現場改善を専門とするコンサルティング会社、 日本ロジファクトリーが具体的な事例を披露。
手法の説 明だけでなく、クライアントとのやりとりやコンサルタント の心の動きまで、改善プロジェクトの経過をリアルに描 写。
本誌2003年1月号から連載の「事例で学ぶ現場改 善」を加筆修正。
「経営のテコ入れは物流改善から」 青木正一 著 (明日香出版社) \1,890(税込) 2005年3月発行 白トラの一人親方からスタートして、一代で会社を 一部上場企業にまで成長させたオーナー創業者の 一代記。
笑えます!泣けます! 本誌2003年4月号〜2004年11月号に掲載した 「やらまいか̶̶ハマキョウレックスの運送屋繁盛 記」を加筆修正。
「やらまいか!」 大須賀正孝 著(ダイヤモンド社) \1,575(税込) 2005年5月発行 「物流コストを半減せよ!̶Mission」 湯浅和夫 著 (かんき出版) \1,575(税込) 2005年2月発行 物流コンサルティング業界のカリスマが小説形式 のノウハウ本に挑戦。
「大先生」と「美人弟子」「体力 弟子」の3人組が、常識破りの物流理論で、クライア ントの課題を次々に解決。
本誌2002年4月号から連載の「物流コンサル道 場」を単行本化。
次回フォーラムのお知らせ 1月度フォーラムは1月16 日(水) 「物流品質の改革」(講師:平居義憲氏) を予定している。
このフォーラムは年間 計画に基づいて運営しているが、単月の みの参加も可能。
1回の参加費は6,000 円。
ご希望の方は事務局(sole-j-offi ce@ cpost.plala.or.jp)までお問い合わせく ださい。
