2008年1月号
ケース

コスト削減川 辺

JANUARY 2008  52 コスト削減 川 辺 送り状・値札作成を自動化しパート活用 西日本拠点は大都市を避け今治に集約 複数の運送会社と送り状レスに  アパレル業界では業界標準の物流EDIシ ステム「JAICS─L」が運用されている。
運送会社への配送依頼から送り状・荷札作成 までの出荷業務を効率化するために、日本ア パレル産業協会が二〇〇〇年に開発したシス テムだ。
 アパレルメーカー各社は古くから、出荷業 務に係わる共通の悩みを抱えてきた。
その一 つが煩雑な送り状・荷札の作成だった。
運送 会社ごとに送り状や荷札の仕様が異なるため 別々に作成しなければならず、手間もコスト もかかる。
この問題を「JAICS─L」が 解決した。
 「JAICS─L」では、荷主が送り状を作 成するのではなく、送り状に記入していた情 報をEDIで運送会社に送信して運送会社側 で送り状を発行する。
荷主側が作成するのは 荷札だけ。
荷札には荷送り人や届け先などの ほかに運送会社の送り状番号のバーコードと 荷主の管理番号を印字する。
集荷にきたドラ イバーが荷札のバーコードを携帯端末でスキ ャン入力することにより、現品と情報の照合 が行われ、受け渡しが完了する。
 このような荷札を使った受け渡しシステム はとりたてて目新しいものではない。
だが通 常は運送会社の固有のシステムとして運用さ れている。
取引先の運送会社が一社なら問題 はないが、複数の運送会社とこの方法で受け 渡しを行おうとすると、荷主は運送会社ごと に別々のシステムを導入しなければならない。
運送会社はそれぞれ独自のコード体系による 送り状番号で輸送管理を行っているからだ。
 この事態を憂慮して、荷主から送り状番号 の標準化を求める声が上がることもしばしば あった。
だが運送会社にとって送り状による 輸送管理システムは基幹システムにあたり、安 易に変更することはできない。
このため受け 渡しシステムの一本化はこれまで不可能と見 られてきた。
 ところが「JAICS─L」はこれを可能 にした。
「JAICS─L」には複数の運送会 社のコード体系に合わせて荷札を作成できる というユニークな機能がある。
各運送会社の 送り状番号のけた数・コード体系がバラバラ でも、一つのシステムによって受け渡しを行 うことができるのだ。
 「JAICS─L」のメッセージにはアパレ ル業界固有の項目が含まれるものの、物流E DI標準(JTRN)に準拠しており、運 送会社との間の標準的なEDIが可能。
アパ レルメーカーとの取引が多い路線業者と納品 代行業者を想定して、荷札の仕様は二つのパ ターンに分けている。
ただし運用は全く同じ。
一台のプリンターでどちらも発行できる。
無 地のロール紙に罫線から印字していく方法で、 取引先ごとに用紙の交換もいらない。
 これまでに大手を始め一〇社以上のメーカ ーが「JAICS─L」を導入している。
ハン ハンカチなど服飾雑貨メーカーの川辺は、複数の 運送会社との間で送り状を使わずに荷物の受け渡し ができるシステムを早くから導入し、出荷業務を効 率化してきた。
煩雑な値札発行の自動化も実現。
さ らには百貨店の専用値札廃止に対応して産地との 連携による値札のソースマーキングを模索している。
53  JANUARY 2008 カチやマフラーなど服飾雑貨メーカーの川辺 もその一社だ。
同社は「JAICS─L」が 開発される以前から、開発のベースとなった パッケージソフトを導入し、「JAICS─L」 と同じ仕組みの運用を開始していた。
今から 一〇年ほど前のことだ。
 システムを導入する前、同社の物流センタ ーでは男性社員が一〇人がかりで送り状の手 書き作成や納品書と商品のチェックなどを行 っていた。
出荷がピークとなる時期には、送 り状の作成が間に合わず社内で応援を頼むこ ともあった。
だが複雑な業務内容に対応でき ず充分な戦力にならなかった。
 当時、同社の運送委託先は路線 業者が二社、納品代行業者が七社、 合わせて九社あり、送り状や荷札 の仕様はバラバラだった。
どの運送 会社に委託するかは営業担当者が 決め、同じ納品先でも商品によっ て運送会社が異なるケースもあっ た。
しかも出荷指示書に業者名を 明記していなかったため、商品と 納品先から運送会社名が直ちに思 い浮かぶようなベテラン社員でなけ ればとても業務をスムーズにこなせ ない状況だった。
ミスも起こりや すかった。
 改善策を模索していた折、アパレ ルメーカー向けのセミナーでパッケ ージソフトを紹介された。
それがシ ステム導入のきっかけだった。
「送 り状の手書きが要らないだけでな く、一台のプリンターで九社分の荷 札ラベルを発行できるようになる。
出荷の最大のネックが解消されメ リットはずいぶん大きいと思った」。
物流本部の浜野裕副本部長は当時をそう振り 返る。
業界標準システムに変更  不足する機能を追加するなど、パッケージソ フトを自社仕様にカスタマイズして導入した。
新しい受け渡し方法などについて同意を得る ために、九社の運送会社を集めて説明会も催 した。
パソコンの扱いに不慣れな社員が多く 導入当初は戸惑いもあったが、根気よく現場 への浸透を図った。
サーバーに送り先や運送 会社の情報をマスター登録しておけば、出荷 指示情報から自動的に荷札が発行される仕組 みで、パートタイマーにも作業ができるよう になり出荷業務は大幅に効率化された。
 受け渡しシステム導入のメリットはそれだけ ではなかった。
導入前は物流センターに、営業 担当者を介して客注品などの出荷に関する取 引先からの問い合わせがしばしばあった。
そ の都度、送り状を一枚一枚チェックして確認 しなければならなかった。
 システムを導入してからはこうした業務は 一切なくなった。
受け渡しシステムには同社 物流本部の浜野裕副本部長 図1 出荷積込機能の概要荷渡しデータのEDI 化による送り状レス アパレル企業 Host-Computer アパレル企業 物流センター 出荷指示 データ 統一荷札発行 (出荷確定) ? 出荷・ 集荷検品 出荷データ 荷渡確認情報 (JTRN) ポットマッチング& データアップロード ?出荷問合せ ? ? 統一受渡票 ?統一受渡票発行 当日の運送企業別出 荷明細として発行 ※スキャンが全て完 了しなければ発行 されない 富士通エフ・アイ・ピー EDIセンター ロジスティック ゲートウェイサーバー路線・納品代行共に対応 貨物追跡 基礎情報 受託情報 運賃請求 情報 ? JAICS-L 運送企業小売企業 配送送り状 JANUARY 2008  54 の出荷管理番号と運送会社の送り状番号を一 対で管理する機能がある。
そこで、出荷のた びにシステムのサーバー上で紐付けされる情報 を同社のホストコンピューターへ送っておき、 顧客から問い合わせのあった商品の出荷状況 を、営業担当者が出荷管理番号から送り状番 号を検索して運送会社の貨物追跡システムな どで直接確認できるようにした。
これだけで も物流センターにとっては、大幅な業務負荷 の軽減になった。
 同社はその数年後、同じソフトをベースに して「JAICS─L」が開発されたことを 知った。
汎用性のあるシステムのほうがメー カーのサポートを受けやすいことから、〇二 年にシステムを更新する際、自社仕様のもの から「JAICS─L」のサーバーに変えた。
またこれを機にフロッピーを介して行ってい た運送会社とのデータ交換をEDIに切り替 えた。
 それまで運送会社と新規に取引を始める場 合には、受け渡しシステムについての交渉を 個別に行わなければならなかったが、業界標 準システムを採用したことでその必要はなく なった。
「JAICS─Lに対応できる運送会 社も増えており、取引先の選択肢が事実上広 がったことになる」と浜野副本部長は説明す る。
通念を打ち破り地方に拠点集約  これに続いて同社が取り組んだのは物流拠 すべて支店内か周辺の大都市圏にあり、営業 担当者が頻繁に訪れては商品のチェックなど を行っていた。
地方へ移るとそれができなく なってしまう。
 リードタイムの面でも懸念があった。
近年、 主要チャネルである百貨店が、納品車両によ る店舗周辺の交通渋滞を緩和してスムーズに 納品を行えるよう、指定納品代行業者による 一括納品を採用するようになっている。
首都 圏、大阪、名古屋の百貨店では既に大半がこ の形態に切り替わった。
点の集約と地方への移転だった。
同社 は売り上げ構成比の六割を占める百貨 店をメーンに、量販店、専門店、イン ターネット通販などの販売チャネルをも つ。
このうち量販店以外の販売先につ いては入荷からピッキング、出荷までの 業務をすべて自社の物流センターで行っ ている。
 静岡以東の東日本地区へは埼玉県川 口市のセンターから出荷している。
名古 屋以西の西日本地区は従来、大阪(二 カ所)と福岡にある支店で出荷業務を 行っていた。
三カ所に分散していたた め、拠点間で商品の横持ち輸送が発生 するなど効率が悪かった。
在庫を有効 活用して販売ロスを防ぐために、東日 本と同様に一カ所に物流管理を集約す ることにした。
 ただし大阪のような地価の高い場所 に物流センターを設ければコストアップになっ てしまい、集約のメリットが損なわれる。
こ れを避けるために同社は集約拠点を地方へ移 すことを検討した。
候補に挙がったのは愛媛 県の今治市だった。
今治地区はタオルの一大 産地だが、中国への生産移転が進み昨今では 空き倉庫が目立って増えている。
このため賃 貸料金が大阪などと比べてはるかに安く、パ ートの賃金相場も低い。
 だが営業部門からは地方への移転を懸念す る声が上がった。
それまで同社の物流拠点は 図2 川辺JAICS-L 業務フロー 川辺本社物流センター コンピュータ 出荷済みデータ更新 抽出 ※納品伝No. セットされたもの タイプ伝票:自動抽出 1 時間単位 ※専門店専用伝票は営業出荷指示後に 抽出:自動抽出 1 時間単位 夕方更新 進捗検索 JAICS-Lサーバー クライアント1 クライアント2 ■ホスト側の出荷指示データの有り 無しを常にチェックしている。
出荷指示書のバーコード(ピッキ ングNo.)をスキャン+個数入力 ラベル発行 送り状データ送信 出荷済みデータ抽出 出荷指示データサーバー取り込み 55  JANUARY 2008  同社も大都市圏の百貨店への納品はすべて 指定納品代行業者に委託している。
ただし納 品代行業者が集荷できるエリアは限られてお り、地方へ拠点を移転すると納品代行業者の 集荷範囲を超えてしまう可能性がある。
その 場合には、集荷を路線業者に委託して納品代 行業者のセンターまで運んでもらうという方 法をとらざるを得なくなり、納品に遅れが出 る心配もあった。
 だがこれは杞憂に終わった。
同社は〇六年 七月、今治市内に西日本物流センターをオー プンした。
新規に取引を開始した納品代行業 者が、今治のセンターで集荷した商品を大阪 や名古屋の店舗へも従来と同じリードタイム で、翌日の朝までに一括納品できる仕組みを 構築してくれたのだ。
地方への移転により低 コストでのセンター運営が可能になった。
 アパレルの物流拠点は商物一体で大都市に 設けるという常識はここ数年、納品代行業者 の集荷力強化などによって崩れつつある。
浜 野副本部長は「今治の成功で自信がついた。
ほかの地域でもコスト削減の切り札として地 方移転を検討したい」とする。
 西日本センターの稼働に合わせて、同社は 百貨店値札作成の完全自動化も実現した。
百 貨店値札は商品のアイテムコードを始め売り 場コード、ブランドコードなど、売り場での商 品管理に必要なさまざまな情報を入力して作 成する。
コード体系やフォーマットが百貨店 ごとにまちまちなため、値札の作成は送り状 の作成と並んで煩雑な業務だった。
 移転前の三カ所の拠点では、業務に精通し たベテラン社員が値札作成に携わっていた。
だ が今治のセンターを新規にオープンするにあた り、コスト削減を重視してパート主体のオペ レーション体制をめざした。
そのために値札 作成の自動化は欠かせない要件だった。
 同社はこれ以前にも一度、値札の自動化を 試みたことがある。
シーズン前にアイテムコー ドなどの情報を営業担当者がマスター登録し ておき、マスター情報をもとに値札を自動作 成する方法だ。
ところが商品のサイクルが短 いため、半期ごと、なかには三カ月ごとにマ スター更新が必要なケースもでてくる。
営業 担当者がうっかり更新するのを忘れてしまい、 出荷指示が出てもシステム上でエラーになって しまうことがしばしばあった。
 新センターの稼働時にこうした混乱が起こ るのを避けるため、方法を見直すことにした。
事前にマスターを登録しておくのではなく、営 業担当者がセンターへ出荷指示を出す際にア イテムコードなどの値札情報をいっしょに入 力し、この情報から物流センターで値札を作 成する方法に切り替えた。
毎回のことで入力 ミスが発生するリスクもある。
だが、完全に 自動化できれば物流の作業効率が著しく向上 することを訴えて営業部門に協力を求めた。
 実際、新センターでは値札作成業務をパー ト二名でできるようになった。
「煩雑なアパ レル物流ではパートをどれだけ戦力化できる かが物流コスト削減の大きな要素。
そのため には誰でもすぐに作業をこなせるシステムを つくることと同時に、なるべく物流側に責任 SN/SCM)を導入するなど、業務の効率 化を図っている。
 その一方で川上側では、肝心のソースマー キングの普及が捗らないでいる。
大半は従来 通りセンターで値札付けを行っている。
この ため百貨店のASN/SCMシステムへの対 応が、そのまま負担増になっているケースも 多い。
 例えば、ASNを作成するため出荷時に商 品のJANをいちいちスキャン入力しなけれ ばならない。
この手間がばかにならない。
ま たJANの導入で管理がSKU単位まで細か くなったため、以前は同じ柄なら値札も共通 していたのが、色・サイズごとに値札を区分 しなければならず作業に時間がかかるように なった。
 ハンカチは生産工程が細かく分かれていて、 事業者の規模も小さい。
産地でソースマーキ ングの担い手を探すのは容易でない。
だが浜 野副本部長は「コスト削減にはソースマーキ ングが最も有効」として、今後、実現に向け て産地との話し合いを進める考えだ。
 産地からは全国に向けて商品が出荷される ため、ミスが起きた場合のリスクも拡散する。
「ミスが絶対に起こらないよう、値札作成を 生産に同期化させてインターネット経由で産 地に指示を出すような仕組みを構築する必要 がある」と見て、産地に何らかのシステムサ ポートを行うことも視野に入れている。
(フリージャーナリスト・内田三知代) がかからない仕組みにすることを心がけてき た」と浜野副本部長は強調する。
ソースマーキングを模索  さらに浜野副本部長は、センターの値札付 け業務そのものが不要となる産地でのソース マーキングに、次のコスト削減策として期待 をかけている。
近年、百貨店が専用の値札を 廃止するようになりソースマーキングの条件 が整ってきたからだ。
 百貨店の専用値札をなくす代わりに、メー カーがブランドタグに共通の商品識別コード であるJANを印字する。
百貨店はJANを キーに商品マスターと照合してSKU(Stock Keeping Unit)単位で商品管理を行う。
川辺 と取引のある百貨店のうちすでに六割がこの “値札レス”を採用している。
 値札レスならば製造時にJANをソースマ ーキングできる。
メーカーの物流センターで値 札付けをしなくてもよくなり、リードタイム の短縮にもつながる。
ソースマーキングされ たJANを川上から川下まで共同利用し、流 通全体を効率化することが値札レスの本来の 狙いだ。
 実際に値札レスを採用した百貨店では、売 り上げ管理や在庫管理にJANを活用してい る。
さらに、取引先から事前出荷明細(AS N)を送ってもらい、これと紐付けられたS CMコードをスキャンするだけで仕入れ計上 と検品を同時に行うことができる仕組み(A JANUARY 2008  56 出荷指示情報から自動的に荷札が発行されるため、パートで も処理できるようになった。

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