2008年2月号
物流不動産市場レポート

中 国上海など沿海部中心に新規供給増加五輪開幕目前の北京は大型投資続く

物流不動産市場レポート 第8回 取扱量は二二○○万TEUが計画され、東ア ジアのハブ拠点となることを目指している。
 この港を囲む島内では、二四キロ平米にわ たり物流施設と工業施設の新規開発が進んで いる。
さらに、この離島から上海までの通過 点である半島末端三○○キロ平米に広がる臨 港新都市でも、川崎汽船グループ、マースクグ ループ、日本郵船グループ、DHLなど多くの 大手外資系物流企業が拠点を構え、ここでも、 プロロジス、メープルツリーなど外資系ファン ドの投資が盛んに行われている。
 このように、外資系企業に対する進出地域 制限は軽減されつつも、引き続き政府は工業 用地全体の供給自体を規制しているため、伸 びつづける需要に供給が追いついていない。
昨 年第3四半期、用地売買平均価格は一○三九 元/平米となり、前年同期比一五・六%と高 騰した。
これにより、賃貸物件に戦略転換し た企業が相次ぎ、高水準な物件の賃料をも跳  国土面積と人口が膨大な中国では、省や都 市によって工業や物流不動産市場の開発計画 が大きく異なってくる。
そこで今回は上海、北 京、広州、成都に焦点を絞り、二〇〇七年第 3四半期における、各地の物流不動産市場の 最新の動向をレポートする。
上 海   洋山港中心に開発加速  経済発展の中心である上海は、立地上、複 数の港を有し、物流拠点として最も重要な役 割を担っている。
昨年は、外資系企業の中国 への新規参入のみならず、早くから参入して いた企業のさらなる事業拡張を受けるかたち で倉庫・物流施設の需要が増加し、新規開発 も引き続き活発だった。
 上海港の〇七年のコンテナ取扱量は香港地 区を追い越し、シンガポールに次ぐ世界第二位 となる見込みだ。
隣接する浦東地区には、○ 四年、中国最大の自由貿易区である「上海外 中 国 上海など沿海部中心に新規供給増加 五輪開幕目前の北京は大型投資続く シービー・リチャードエリス グローバル・コーポレイトサービス本部 ジャパンデスク上海 鶴岡智史 グローバル・コーポレイトサービス本部 三宅昌子 高橋保税物流園区」が開設され、外国からの 独資企業の進出先として、外資系大手物流企 業がこぞって入居した。
 昨年二月には、日本のニューシティコーポ レーションが約二五万平米、計二八ユニットか らなる同地区最大のハイテク物流施設への投資 を始めるなど、外資系ファンドからの注目は依 然高い。
また、プロロジスは虹橋国際空港近 隣に昨年八月、五つの倉庫を備えた上海では 第六番目となる物流センター「プロロジスパー ク虹橋西(延床面積約一八万平米)」の設立を 発表した。
同施設は、今年九月に第一フェー ズが完成予定だ。
 〇五年十二月には、上海中心部から南東、大 陸沖三二キロメートルの離島に、「洋山国際深 水港」が開港した。
水深一五・五メートルの コンテナバースが整備され、欧州・米国航路な どの大型コンテナ船が寄港を開始した。
同港は、 一五年までに五二バースを設置し、年間貨物 FEBRUARY 2008  88 保護地域内に食品・飲料製造販売世界最大手 のネスレが、R&D施設を建設した。
 北京周辺地域の施設需要は、?仏スーパー 大手カルフールや中国家電量販店大手、蘇寧電 器など小売り・流通業向け大型倉庫か、?3 PL向けと、ニーズが大きく二つに分かれてい るようだ。
 3PLは、香港市場に上場する中国外運股 份有限公司(シノトランス)と、広州を拠点 とする宝供物流(P・G ロジスティクスグルー プ)などの中国系大手企業がリードしていた。
しかし、北京市場がオープンになった〇五年後 半から日本通運、DHL、UPS、TNTな ど外資系大手物流企業の参入により競争が激 化。
通州区には、パキスタンの物流企業・クラ ウンムーバーズワールドワイドが約二万三〇〇 〇平米の総合物流施設を建設中で、今年早々 の竣工を予定している。
北京オリンピック開催 を目前に、今後さらに大規模な投資の増加が 予想されている。
 この五年間、工業物件の賃料は安定した上 昇を続けている。
北京でも上海同様、賃料動 向上昇の原因は急速な需要の伸びに用地供給 が追いついていないことがあげられる。
昨年 第3四半期の工業物件全体(工場、物流倉庫、 R&D施設を含む)の一カ月の平均賃料は、五 三元/平米(管理費除く)で、前年同期比一・ 九%の増加となった。
用地価格は一二一三元/ 平米と同一・〇%増。
倉庫・物流施設の一カ 月の平均賃料は、二九・三元/平米(管理費 除く)となった。
広 州 工業化進むも賃料水準は横ばい  中国南部の中心都市である広州でも、国内 ね上げる結果となった。
 工業物件全体(工場、物流倉庫、R&D 〈Research & Development :研究開発〉施設を 含む)の一カ月の平均賃料は、三三・七元/ 平米(管理費除く)で前年同期比六・七%増。
倉庫・物流施設の一カ月平均賃料に関しては、 二五・三元/平米(同)で同九・二%の増加 となった。
北 京 五輪開幕を控え大型開発続く  ○三年からR&D施設の拠点として注目さ れている北京では、同地域の急増する消費を 支えるだけでなく、今後のアジア地域全体の市 場を視野に入れた研究開発・生産の拠点とし て、I/O ( Industrial/Office :倉庫兼事務 所)施設の開発が中心となっている。
中でも、 中関村地区の動向は活発で、昨年七月、環境 89  FEBRUARY 2008  物流現場改善を専門とするコンサルティング会社、 日本ロジファクトリーが具体的な事例を披露。
手法の説 明だけでなく、クライアントとのやりとりやコンサルタント の心の動きまで、改善プロジェクトの経過をリアルに描 写。
 本誌2003年1月号から連載の「事例で学ぶ現場改 善」を加筆修正。
「経営のテコ入れは物流改善から」 青木正一 著 (明日香出版社) \1,890(税込) 2005年3月発行  白トラの一人親方からスタートして、一代で会社を 一部上場企業にまで成長させたオーナー創業者の 一代記。
笑えます!泣けます!   本誌2003年4月号〜2004年11月号に掲載した 「やらまいか̶̶ハマキョウレックスの運送屋繁盛 記」を加筆修正。
「やらまいか!」 大須賀正孝 著(ダイヤモンド社) \1,575(税込) 2005年5月発行 「物流コストを半減せよ!̶Mission」  湯浅和夫 著 (かんき出版) \1,575(税込)  2005年2月発行  物流コンサルティング業界のカリスマが小説形式 のノウハウ本に挑戦。
「大先生」と「美人弟子」「体力 弟子」の3人組が、常識破りの物流理論で、クライア ントの課題を次々に解決。
 本誌2002年4月号から連載の「物流コンサル道 場」を単行本化。
FEBRUARY 2008  90 物流不動産市場レポート 外の企業の参入が増加しているが、土地供給 は厳しく規制され、開発区およびサイエンス パーク等の工業団地への入居競争が激化して いる。
 その対策として、政府は外資系大手製造業 とハイテク産業を、優先的に同地域へ誘致し ている。
現在はホンダと自動車部品関連企業、 米国の3M、日立エレベータなどの企業が集 積し、国際的な工業都市へと発展している。
 この動きを受け、工業用地の取引は制度化 され、透明性・公平性が徐々に高まり、工業・ 物流施設はあらゆる投資家の関心を呼んでい る。
住宅物件開発専門であったミッシェルクラ イフォードグループは、〇四年に移転した白雲 国際空港に近い花都地区に、同社初となる物 流園区を開発した。
広州にはほかにも、三つ の国外向け、五つの国内向け物流園区が整備 されている。
また、白雲空港内には、フェデッ クスが約四〇〇億円を投資し、アジア・太平 洋地区三〇カ国のハブとなる施設を建設中で、 今年末までに同施設のオペレーションを開始す る予定だ。
 同地域の国際化が進展する一方、政府の国 内や外資系中小企業に対する厳しい受け入れ 制限もあり、昨年第3四半期の平均賃料、用 地売買価格はほぼ横ばいだった。
工業物件全 体(工場、物流倉庫、R&Dを含む)の一カ 月の平均賃料は、二五・三元/平米(管理費 除く)で前年同期比〇・三%の増加となった。
 倉庫・物流施設の一カ月の平均賃料は、二 六・三元/平米(管理費除く)で同〇・二% の増加となった。
用地売買価格は四四五・三 元/平米で、前年同期と変わらなかった。
成 都 「Go West」政策で外資系誘致  中国西部に位置する成都は、中国政府の外 資系企業に中国西部にも進出してもらうこと を狙った「Go West」政策の恩恵を受ける かたちで発展している工業都市だ。
工業都市 への投資インセンティブと積極的なインフラ整 備で開発を促した結果、携帯電話やビデオゲー ムの大型R&D施設等の入居もあり、工業品 生産量は〇六年頃より年率二ケタの成長を遂 げている。
 昨年第3四半期の用地売買平均価格は三一 〇元/平米と、前年同期比十二・八%の増加 となった。
同様にハイテク産業開発区において は同十三・八%増、経済技術開発区において は同一〇三%増と、それぞれ驚異的な上昇と なった。
 今後、同地区はトラックと鉄道の双方を利用 できる、アジア最大の物流拠点となることが 期待されている。
プロロジスは、「プロロジス パーク成化(約四〇万平米)」の建設を計画し ている。
また、武候地区政府と中国糧油食品 (集団)有限公司(チャイナ・ナショナル・シ リアルズ)は共同で物流施設(約八二万七〇 〇〇平米)を建設中だ。
その他、香港ユダロ ジスティクスは、中国西部最大の国際航空エク スプレスセンターを、シンガポールリッチランド グループは、大規模な冷蔵物流施設の開発を 計画中である。
お問い合わせ先 シービー・リチャードエリス グローバル・コーポレイトサービス本部 ジャパンデスク上海マネージャー 鶴岡智史 住所:上海世邦魏理仕物業管理服務有限公司上海市 淮海中路一〇一〇号上海嘉華中心三二〇一室 電話番号:八六─二一─二四〇一─一二二三 グローバル・コーポレイトサービス本部  三宅昌子 住所:東京都港区浜松町二─二─一二 秀和第一浜松 町ビル 電話番号:〇三(五四七〇)八五七三  輸出一辺倒の状況を見直し、内需拡大 重視の政策を強めている中国では、環境 対策を念頭に置きつつも、持続的な経済 発展に寄与する国内物流インフラの構築 が急務となってきており、高速道路、中 〜長距離鉄道、航路(長江航路など)等 の早急な整備が急速に進行している。
ま た、今年から施行された新労働契約法の 影響で、国内販売を強化したい荷主企業 は、倉庫・工場の運用コストを削減する ため、3PL業者への外注をより積極的 に検討するとみられている。
今後も外資 系・中国系物流企業が入り乱れた、熾烈 な競争になることが予想されている。
課題は国内物流インフラの整備

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