2008年2月号
特集
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物流企業番付平成20年版 ハマキョウレックス
ハマキョウレックス
──路線業を呑み込み3PL事業を革新
それでも3PL事業は儲かる
──3PL事業が順調に伸びています。
利益率も 毎年向上し〇七年三月期は約九%に達している。
「事業規模の拡大は今後も続きます。
今年も既に 大型の新規案件が六つ決まっている。
他にも常時一 五程度のプロジェクトが進行していて、そこから案 件がどんどん加わる」 ──このところ市場では3PL事業の収益性が低 下する傾向にあると言われています。
「どんな商売でも儲かるか儲からないかはやり方 次第です。
3PLの基本は、物流の“詰まり”を見 つけて合理化し、流れをよくしてムダをなくすこと。
ムダがなくなるので、それまでより安くなる。
丸受 けするだけで儲かるなら苦労しません。
その基本を 押さえないで、儲からないと嘆いている会社が多い」 ──それでも競争は確実に激化しています。
「確かにデタラメな料金を出してくる会社はあり ます。
そうした仕事は赤字になることが目に見えて いるからウチは手を出さない。
またコンペで荷主か ら提出されるデータもうのみにはしない。
荷主の多 くは現状のデータを持っていません。
平気で二年前、 三年前のデータを出してくる。
当社はそのデータを 徹底して検証します。
本当にそれだけの物量が発生 しているのか。
単価もその通りか。
現場を見せても らって、一つひとつ確認する。
それをもとに厳密に 計算した料金でダメと言われるなら仕方がない」 ──それでは新規受託が難しくなりませんか。
「そんなことはない。
正確なデータを元に、お客 さんの納得のいくように説明して、長続きしない料 金では受託できないことを伝えれば、荷主も『ちょ っと待て』ということになる。
それから話を詰めて いく。
荷主は基本的に物流の素人。
安くしたいと いっても、どこがどれだけ安くなるのか分からない。
それに対してウチが、ここをこう変えると何%下がる、 ここでは何%と説明する。
さらに、ここを変えると これだけ安くなるけれど、サービスレベルもこれだ け下がります。
どうしますかと、いくつも選択肢を 挙げて判断する材料を示す」 ──コンペの案件でも最後は事実上の相対になる。
「そういうこと。
検証作業が何より重要なんです」 ──3PLの収益性に関しては、受託して一年目 は利益が出ない。
二年目以降に運用がこなれてき て、ようやく利益が出るともいわれています。
「それもウチは違います。
設備投資の分は別にし ても、運営費は立ち上げ時点で黒字にすることをセ ンター長たちに義務付けています。
最初の一カ月ぐ らいは大目に見ても三カ月は許さない。
それだけ見 積もりの段階で準備を徹底します。
立ち上げ時に現 場が混乱しないように細部に至るまでマニュアルも 詰める。
他のセンターから応援を頼むにしても、そ れが烏合の衆にならないように、誰が何の指示を出 すのかルールをハッキリさせておく」 ──そうした管理ノウハウを持った人材がハマキ ョウにどれだけいますか。
「センター長の数だけいます。
ウチのセンター長は 営業提案もできなければ務まらない。
例えば専用セ ンターのお客さんの売上自体が下がって荷物が減る とする。
センターの空きを埋めるには、ほかに荷主 を獲得しなければならない。
その活動をセンター長 の下でパートも含めた全員参加で行っています。
そ のため当社には空いているセンターがどこにもない」 ──3PL事業の規模が拡大し、契約が長期化し てくると既存の体制を見直す必要も出てきます。
一人親方のドライバーから身を起こし、効率的な流通セ ンター運営を武器に、一代で一部上場企業にのし上がった。
2004年には近鉄物流を買収し、路線便事業にも進出した。
3PL事業で磨いた収益管理手法を路線事業に適用。
採算 を改善すると共に、路線便のアセットを3PL事業にも活か す相乗効果を狙っている。
(聞き手・大矢昌浩) ハマキョウレックス 大須賀正孝 会長兼CEO 注目企業トップが語る強さの秘訣総合4位 FEBRUARY 2008 16 17 FEBRUARY 2008 特 集《平成20 年版》 「お客さんの荷物は減る場合もあるし、増えて既 存のセンターに収まらなくなる場合もある。
そのた めに二社、三社を合わせて新センターを作ることも ある。
そうやって専用センターが、だんだん複合セ ンターになっていく。
本社横のセンターには今や二 五社ほどのお客さんが入居しています」 ──ハマキョウの荷主には従来から小売り・流通 系が多い。
その理由は。
「荷主のターゲットを絞っているわけではありませ ん。
しかし、合理化余地という点で、やはり川下が 多くなる。
川上の工場の物流は波動が小さい。
計画 も立てやすい。
荷姿も整っている。
管理は簡単で効 率も良い。
そこに3PLが入っても、できることは 限られています。
川下は違います。
今日どれだけ発 注があるのか、誰にも分からない。
その波動に対応 するところに3PLの付加価値がある」 路線のアセットを3PLに活用 ──3PLと並ぶもう一つの柱である路線便事業 (特別積み合わせ運送事業)の「近物レックス」は、 今のところ連結業績の足を引っ張っています。
「買収時の近鉄側の要望は、絶対に赤字にしない ので買収後二年間は既存の体制でやらせてほしい、 というものでした。
確かに初年度の〇六年三月期は 利益が出た。
ところが二年目、ハマキョウの連結会 計に合わせるため監査法人を変えたところ、巨額の 赤字を計上することになってしまった」 「急遽、ハマキョウから五人の経営陣を派遣しま した。
案の定、管理がデタラメでした。
それから半 年間かけて、すべて見直しました。
経費管理を見直 して日々決算を導入し、不採算運賃は改定した。
そ の結果、昨年九月から月次収益が黒字に転じました。
今期前半の赤字はありますが、収益改善のメドは立 った。
今年四月からの来期は黒字を見込めます」 ──そもそも、なぜ本業の3PLとは大きく業態 の違う路線会社を買収しようと考えたのですか。
「一つの狙いはターミナルです。
路線のターミナル は一階しか使っていません。
上が空いている。
そこ に高層階の物流センターを建設することで、物流セ ンターの土地代がタダになる。
近物レックスの小牧、 名古屋、焼津などの営業所で、ようやくそうしたか たちのセンター事業が始まりました。
今後、ほかの ターミナルも同じように活用していきます。
建物の 改造が一段落する二年後には、その効果がはっきり と収益に現れてくるはずです」 ──しかし路線事業自体はサービスの陳腐化が指 摘されています。
「それもやり方次第です。
路線が儲からないのは、 空いたスペースをタダよりはマシだと、捨て値で売 ってしまうから。
そのため通常の貨物まで、その値 段に引っ張られてしまう。
そんなことをせずに、荷 台が空いているのなら路線の運行本数を減らしても、 積載率を上げた方がいい。
実際、それで近物レック スは黒字化しました」 ──それにしては近物レックスの再生には手間取 った感があります。
「理屈は簡単でも現状を変えることは簡単ではあ りません。
外部から我々が乗り込んでいって急にそ れまでのやり方を変えようとしても、組織の和が乱 れてしまうだけです。
最初の約束通り二年間任せた 結果、ひどい数字になってしまったことで、はじめ て改革を受け入れる土壌ができた。
改革が必要だと 皆が理解した。
ここからの改革のスピードは一気に 上がっていきます」 3PL市場の競争激化を他所に成長続ける 2007年3月期の連結決算は04年10月に買収した近物レッ クス(旧・近鉄物流)が巨額の赤字に陥り、9期連続の増 収増益が途絶えた。
しかし、個別決算では15期連続増収、 11期連続増益と、拡大基調が依然として続いている。
懸 案の近物レックスの再生も今期後半にはメドが立った模様だ。
ドメインとする3PL市場は新規参入の増加で競争が激し くなっているものの、同社は約9%という経常利益率を誇っ ている。
パートの有効活用と収益管理のノウハウが強力な 差別化手段になっている。
今後は路線便ターミナルを3PL に活用するというユニークなアセット戦略の成否が業績を 大きく左右することになりそう。
本誌解説 図1 ハマキョウレックスの事業分野別業績推移(連結) 0 100 200 300 400 500 600 (単位:億円) 0 5 10 15 20 25 30 35 04 年 05 年 06 年 見込み 08 年 07 年 物流センター事業営業利益 物流センター事業売上高 運送事業売上高 運送事業営業利益
利益率も 毎年向上し〇七年三月期は約九%に達している。
「事業規模の拡大は今後も続きます。
今年も既に 大型の新規案件が六つ決まっている。
他にも常時一 五程度のプロジェクトが進行していて、そこから案 件がどんどん加わる」 ──このところ市場では3PL事業の収益性が低 下する傾向にあると言われています。
「どんな商売でも儲かるか儲からないかはやり方 次第です。
3PLの基本は、物流の“詰まり”を見 つけて合理化し、流れをよくしてムダをなくすこと。
ムダがなくなるので、それまでより安くなる。
丸受 けするだけで儲かるなら苦労しません。
その基本を 押さえないで、儲からないと嘆いている会社が多い」 ──それでも競争は確実に激化しています。
「確かにデタラメな料金を出してくる会社はあり ます。
そうした仕事は赤字になることが目に見えて いるからウチは手を出さない。
またコンペで荷主か ら提出されるデータもうのみにはしない。
荷主の多 くは現状のデータを持っていません。
平気で二年前、 三年前のデータを出してくる。
当社はそのデータを 徹底して検証します。
本当にそれだけの物量が発生 しているのか。
単価もその通りか。
現場を見せても らって、一つひとつ確認する。
それをもとに厳密に 計算した料金でダメと言われるなら仕方がない」 ──それでは新規受託が難しくなりませんか。
「そんなことはない。
正確なデータを元に、お客 さんの納得のいくように説明して、長続きしない料 金では受託できないことを伝えれば、荷主も『ちょ っと待て』ということになる。
それから話を詰めて いく。
荷主は基本的に物流の素人。
安くしたいと いっても、どこがどれだけ安くなるのか分からない。
それに対してウチが、ここをこう変えると何%下がる、 ここでは何%と説明する。
さらに、ここを変えると これだけ安くなるけれど、サービスレベルもこれだ け下がります。
どうしますかと、いくつも選択肢を 挙げて判断する材料を示す」 ──コンペの案件でも最後は事実上の相対になる。
「そういうこと。
検証作業が何より重要なんです」 ──3PLの収益性に関しては、受託して一年目 は利益が出ない。
二年目以降に運用がこなれてき て、ようやく利益が出るともいわれています。
「それもウチは違います。
設備投資の分は別にし ても、運営費は立ち上げ時点で黒字にすることをセ ンター長たちに義務付けています。
最初の一カ月ぐ らいは大目に見ても三カ月は許さない。
それだけ見 積もりの段階で準備を徹底します。
立ち上げ時に現 場が混乱しないように細部に至るまでマニュアルも 詰める。
他のセンターから応援を頼むにしても、そ れが烏合の衆にならないように、誰が何の指示を出 すのかルールをハッキリさせておく」 ──そうした管理ノウハウを持った人材がハマキ ョウにどれだけいますか。
「センター長の数だけいます。
ウチのセンター長は 営業提案もできなければ務まらない。
例えば専用セ ンターのお客さんの売上自体が下がって荷物が減る とする。
センターの空きを埋めるには、ほかに荷主 を獲得しなければならない。
その活動をセンター長 の下でパートも含めた全員参加で行っています。
そ のため当社には空いているセンターがどこにもない」 ──3PL事業の規模が拡大し、契約が長期化し てくると既存の体制を見直す必要も出てきます。
一人親方のドライバーから身を起こし、効率的な流通セ ンター運営を武器に、一代で一部上場企業にのし上がった。
2004年には近鉄物流を買収し、路線便事業にも進出した。
3PL事業で磨いた収益管理手法を路線事業に適用。
採算 を改善すると共に、路線便のアセットを3PL事業にも活か す相乗効果を狙っている。
(聞き手・大矢昌浩) ハマキョウレックス 大須賀正孝 会長兼CEO 注目企業トップが語る強さの秘訣総合4位 FEBRUARY 2008 16 17 FEBRUARY 2008 特 集《平成20 年版》 「お客さんの荷物は減る場合もあるし、増えて既 存のセンターに収まらなくなる場合もある。
そのた めに二社、三社を合わせて新センターを作ることも ある。
そうやって専用センターが、だんだん複合セ ンターになっていく。
本社横のセンターには今や二 五社ほどのお客さんが入居しています」 ──ハマキョウの荷主には従来から小売り・流通 系が多い。
その理由は。
「荷主のターゲットを絞っているわけではありませ ん。
しかし、合理化余地という点で、やはり川下が 多くなる。
川上の工場の物流は波動が小さい。
計画 も立てやすい。
荷姿も整っている。
管理は簡単で効 率も良い。
そこに3PLが入っても、できることは 限られています。
川下は違います。
今日どれだけ発 注があるのか、誰にも分からない。
その波動に対応 するところに3PLの付加価値がある」 路線のアセットを3PLに活用 ──3PLと並ぶもう一つの柱である路線便事業 (特別積み合わせ運送事業)の「近物レックス」は、 今のところ連結業績の足を引っ張っています。
「買収時の近鉄側の要望は、絶対に赤字にしない ので買収後二年間は既存の体制でやらせてほしい、 というものでした。
確かに初年度の〇六年三月期は 利益が出た。
ところが二年目、ハマキョウの連結会 計に合わせるため監査法人を変えたところ、巨額の 赤字を計上することになってしまった」 「急遽、ハマキョウから五人の経営陣を派遣しま した。
案の定、管理がデタラメでした。
それから半 年間かけて、すべて見直しました。
経費管理を見直 して日々決算を導入し、不採算運賃は改定した。
そ の結果、昨年九月から月次収益が黒字に転じました。
今期前半の赤字はありますが、収益改善のメドは立 った。
今年四月からの来期は黒字を見込めます」 ──そもそも、なぜ本業の3PLとは大きく業態 の違う路線会社を買収しようと考えたのですか。
「一つの狙いはターミナルです。
路線のターミナル は一階しか使っていません。
上が空いている。
そこ に高層階の物流センターを建設することで、物流セ ンターの土地代がタダになる。
近物レックスの小牧、 名古屋、焼津などの営業所で、ようやくそうしたか たちのセンター事業が始まりました。
今後、ほかの ターミナルも同じように活用していきます。
建物の 改造が一段落する二年後には、その効果がはっきり と収益に現れてくるはずです」 ──しかし路線事業自体はサービスの陳腐化が指 摘されています。
「それもやり方次第です。
路線が儲からないのは、 空いたスペースをタダよりはマシだと、捨て値で売 ってしまうから。
そのため通常の貨物まで、その値 段に引っ張られてしまう。
そんなことをせずに、荷 台が空いているのなら路線の運行本数を減らしても、 積載率を上げた方がいい。
実際、それで近物レック スは黒字化しました」 ──それにしては近物レックスの再生には手間取 った感があります。
「理屈は簡単でも現状を変えることは簡単ではあ りません。
外部から我々が乗り込んでいって急にそ れまでのやり方を変えようとしても、組織の和が乱 れてしまうだけです。
最初の約束通り二年間任せた 結果、ひどい数字になってしまったことで、はじめ て改革を受け入れる土壌ができた。
改革が必要だと 皆が理解した。
ここからの改革のスピードは一気に 上がっていきます」 3PL市場の競争激化を他所に成長続ける 2007年3月期の連結決算は04年10月に買収した近物レッ クス(旧・近鉄物流)が巨額の赤字に陥り、9期連続の増 収増益が途絶えた。
しかし、個別決算では15期連続増収、 11期連続増益と、拡大基調が依然として続いている。
懸 案の近物レックスの再生も今期後半にはメドが立った模様だ。
ドメインとする3PL市場は新規参入の増加で競争が激し くなっているものの、同社は約9%という経常利益率を誇っ ている。
パートの有効活用と収益管理のノウハウが強力な 差別化手段になっている。
今後は路線便ターミナルを3PL に活用するというユニークなアセット戦略の成否が業績を 大きく左右することになりそう。
本誌解説 図1 ハマキョウレックスの事業分野別業績推移(連結) 0 100 200 300 400 500 600 (単位:億円) 0 5 10 15 20 25 30 35 04 年 05 年 06 年 見込み 08 年 07 年 物流センター事業営業利益 物流センター事業売上高 運送事業売上高 運送事業営業利益
