2008年3月号
SOLE

利益アップの第一歩は物流品質改革センター業務改善へのアプローチ

SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics MARCH 2008  78 利益アップの第一歩は物流品質改革 センター業務改善へのアプローチ  SOLE日本支部では毎月「フォ ーラム」を開催し、ロジスティクス 技術、ロジスティクスマネジメントに 関する活発な意見交換、議論を行い、 会員相互の啓発に努めている。
新年 度第一回目となる一月度のフォーラ ムは、ロジスティクスの原点「物流 品質」に戻り、ロジスティクス現場 のコンサルティングの経験豊かな、平 居義徳経営コンサルタント・技術士 (生産管理部門)に「物流品質改革 のアプローチ」をテーマとしてご講 演いただいた。
講演内容を報告する。
生産品の品質維持も重要  物流センター業務は、調達品の受 け入れ、入荷処理、保管、受注、製 品引き当て、ピッキング、流通加工、 配送先別仕分け、トラック積み込み と、多種多様で複雑な業務からなる。
「必要なものを、必要な場所、必要な 時に、必要な量をお届けする」こと から、製品の破損・汚損・変形の防 止(内装・外装ともに)、誤品、誤 量、誤配送、指定日時遅れ、緊急品 の納品遅れの防止、ドライバーの配 送マナー等のデリバリー品質を、セ ンター業務を遂行する上では維持し なければならない。
 物流センターの品質向上は、一見 これらの業務の品質の改革と捉えが ちであるが、忘れてはならない視点 がある。
それは、「生産品自体の品 質維持」である。
取り扱う製品群の 物性と特徴により、物流品質項目を 明確にし、維持管理することが求め られる。
例としては、製品群ごとの 温度管理、外気の侵入防止、賞味 期限・消費期限・有効年月内出荷 等の鮮度管理、異臭や汚染のチェッ ク、荷扱いや、製品液体成分の分離、 変形、変質の防止等の輸配送中の品 質維持などがある。
これらのことか ら、「物流品質」の重点項目は、消 費者(エンドユーザー)の目線で決 まる。
重点は、消費者の立場オンリ ーで判定する。
 一方、「必要なものを、必要な場 所、必要な時に、必要な量をお届け する」業務だけでなく、荷主へのサ ポート品質も重要となっている。
そ れらは、リアルタイムの出荷・配送・ 納品レポートと入荷・実在庫報告・欠 品アラーム報告、必要な管理資料報 告などである。
また、消費者、得意 先、荷主からの「今のクレーム」だ けではなく、「声なき声の潜在項目」、 表に現れない潜在クレームも取り上 げることが不可欠だ。
 なお、物流品質の改革に当たって は、物流基本品質と戦略品質を明確 にしなければならない。
物流基本品 質とは、正しく(誤品・誤量・誤 配なく)、早く(遅れなく)、丁寧に (汚損・破損なく)ということであ る。
戦略品質とは、圧倒的な信頼 確保による他事業・他業務への拡大、 さらなる物流リードタイム短縮によ る売り上げ増、物流品質向上・維持 のハード・ソフト開発と販売である (図1)。
物流品質の自己分析・評価法  まずは、自社の今のレベルを自己 評価する分析法を確立しなければな らない。
 その事例を紹介する。
分析過程は いろいろ複雑になるが、その結果を 分かりやすくするために、結果をレ ベル1〜5で評価表現するスコアカ ード方式の導入を薦める。
分析1 クレーム実績レベル  消費者・荷主からのクレーム実態・ 実績を把握する。
 ドライ食品センターの事例:自社 チェーン店への出荷、自動ソーター 使用のケース。
 カゴ車積み込みミス(二次仕分 け)、ピッキングでの誤品・誤量、汚 損・破損などの評価式は、月間クレ ーム件数が四一件の場合、月間クレ ーム件数(四一)÷月間出荷総件数 (十二万五〇〇〇件)×一〇〇=〇・ 〇三三%となる。
〇・〇三三%を三 三〇PPM(パーツ・パー・ミリオ ン、百万分率)とし、スコアガード 図1 物流基本品質と戦略品質 戦略品質 基本品質 決められたことを守る ●圧倒的な信頼確保による他 事業、他業務への拡大 ●さらなる物流リードタイム 短縮による売上増 ●物流品質向上・維持のハー ド、ソフト開発と販売 ●正しく(誤品、誤量、誤配 なく) ●早く(遅れなく) ●丁寧に(汚損、破損なく) 79  MARCH 2008 準備、トラック積み込み完了までの リードタイム実績を把握し分析改善 する。
 分析内容事例は、センター内業 務・現場作業の範囲内でリードタイ ム短縮のネック要因を明らかにする。
商品が場内で滞留している要因・原 因を徹底究明する。
出荷ピーク日を 対象に実績調査を行う、など。
 センター業務では、ピーク日の入 出庫を円滑に行える事が重要である。
このための調査は、「オーダー別」ま たは「出荷先別」に行う必要がある。
調査時の申告表は、オーダー別また は出荷先別の作業開始と終了時刻を 記入とし、作業時間と滞留時間の実 績を正確に把握する。
分析6 輸配送 リードタイム実績  「生産工場から各物流センター」 や「物流センターからストックポイン ト」、「物流センターから各デポ」へ の製品転送リードタイムが、全体の 納品リードタイムの中で大きなウエ イトを占める場合には、この現状分 析が必要である。
 「生産地から物流センター」や「物 流センターからストックポイント」へ の移送は、事前に在庫補充として行 われることが多いため、リードタイ [クレーム件数レベル(年間ミス件数 ÷年間総出荷件数)]は、 で評価する。
分析2 在庫棚卸し差異  入出荷チェックならびに現品管理 のレベルを代表する指標。
「在庫あ り」というシステム上の理論在庫数 で出荷指示をしたにもかかわらず、 実際には現品の一部が不足している ことがある。
これはユーザーからの 信頼感を失うことになる。
また、逆 に実在庫があるのに「在庫なし」の 回答では、売り損じが発生する。
分析3 入荷品処理 リードタイム実績  発注品の荷受けから検収(検品・ 検査)を経た後、保管とリードタイ ムは短時間でなければならない。
サ おいては、受注から出荷までのリー ドタイムの短縮が求められる。
リー ドタイムの基準値を設定し、基準値 以内かどうかの実績を把握し、問題 を分析し改善する。
 分析例は、?受注からオーダー処 理(ピッキング指示)までの時間帯 と在庫引き当て、売上伝票・送り 状発行業務の流れを現状分析し、問 題点を抽出する、?物流現場への出 荷指示や専用伝票・送り状発行など のオーダー処理が、センターの出荷 終了時刻にどの程度支障を与えてい るのか見極める、?オーダー処理が 「バッチ処理タイプ」か「さみだれ処 理タイプ」かは、センターの時間帯 別業務量や要員数、作業分担方式な どに大きな影響を及ぼすため、オー ダー処理方法のこれらの特徴も明記 しておく。
 スコアカードでは、 ・レベル1:毎日発生 ・レベル2:週間で数回 ・レベル3:月間数回あり ・レベル4:年間で数回あり ・レベル5:物流現場に悪影響なし などと実績評価する。
分析5 センター業務 リードタイム実績  ピッキングリストの発行から出荷 プライチェーン・マネジメントの導入 から、検収即出荷もあり、「生産工 場での組立計画と同期化した、部品 入荷当日の部品払い出し」などの場 合である。
 このリードタイムが長くなる要因 は次のように複雑にあるので、組立 部品の受け入れ業務の時系列処理分 析を綿密にし、リードタイム実績を 把握しなければならない。
 考えられる要因は、?入荷時間帯 にピークがある、?受け入れ業務の 中に仮置き時間(受け付け、検品・ 検収、検査、入荷計上、運搬などと 分担しているため)がある、?個数 (ピース数)検収だけでなく、内容 品の外観・機能・サイズチェックな どの検査時間がかかる、?緊急品優 先処理のため、通常品のリードタイ ムが長くなる、?受け入れ場スペー スの制約や受け入れ場内フローがシ ンプルでないための混乱でリードタ イムが長くなる、?関連部門への問 い合せが多い。
入荷伝票(納品伝票、 送り状)と現品数量の不一致のため の再調査や問い合せが必要、などで ある。
分析4 オーダー処理 リードタイム実績  サプライチェーン・マネジメントに レベル1 0.05%(500PPM)以上 レベル2 0.02%(200PPM)〜 0.04%(400PPM)以上 レベル3 0.01%(100PPM)以下 レベル4 0.005%(50PPM)以下 レベル5 0% MARCH 2008  80 ム面では通常、大きなネックとはな らない。
しかし、ギフト品の場合に は、受注品(配送品)を「物流セン ターから配送デポ」へ移送すること が多いので、リードタイム面からは 主要な課題となることが通例である。
分析7 納品指定日時順守率  ユーザーへの売り損じをなくした り、荷受けゾーンでのピーク混乱を 防ぐ意味から、納品の「時間帯」や 「時刻指定」も要求され、これらの 順守は重要である。
やむを得ない事 情以外でこれらの指定が守られない 時には「クレーム」になったり、「ペ ナルティ」が課せられることもある。
“やむを得ない事情”も含め、一旦 すべての理由、要因を挙げて分析す ることが大切である。
 例として、?道路交通事情による もの、?配送車トラブル、?前のル ート配送先で手間取る(待ちや返品、 空容器受け取り)、?ルート車での 混載品探し、?センターでの積み込 み検品、積み込みに時間がかかった、 ?ピッキングとピッキング内容検品 の遅れ、?オーダー処理に手間取る、 ?オーダー自体が基準締め切り時間 より遅い、?追加受注、緊急受注品 のため、?特殊事情によるルート配 送順変更、などがある。
分析8 物流品質による機会損失 (物流品質コスト)  「物流品質レベル」をコスト(¥) で定量化すると、働く人全員が課題 の重要度を認識しやすい利点がある。
物流品質の損失費用を「物流品質コ スト」とし、「本来、得られるべき利 益額」に対し、不都合な物流ミスに よる「減少利益」の大きさとして把 握、評価する。
 クレーム処理費用(調査費、再発送 費、返品負担費用)は実績を把握し やすいが、「ミスによる利益減少額」 は各種前提の設定評価に工夫が必要 である。
例えば、「ミスによる不買比 率」、つまりユーザーの立場で「こん なことがあると、もうこれは買わな い」という「不買%」を設定し定量 化する。
 このほか講演では「納期遅れ」に よる損失費用、ギフト品の「品質コ スト」事例などを学んだ。
物流品質改善の実践法  前段では物流品質の分析・評価法 の事例を述べた。
では、物流品質を 良くするにはどうすればよいのだろ うか。
物流品質改善ポイントの実務、 物流品質を向上するための改善着眼 点を述べる。
枚ずつのラベル検品やピッキング、小 バッチごとのトータルピッキングと配 送先仕分けなど、作業を単純化する。
また、ミスのもとを絶つ、各種工夫 でミスを起さない工夫をする。
ポイント3  大きなおカネがかからない対策 はすぐ実施する。
 重点品質項目の設定。
つまり、「今 期は、特にこの項目は重視する」な どの方針を決める。
その重点項目の 「要因列挙分析」を行い、分類した 「要因」ごとに「対策案」を検討、策 定する。
例えば正確な棚入れ、保管 方法、入荷品の保管ロケ指定方式の 改善などである。
 試行・実施による効果を確認して いくが、大きなおカネがかからない 対策はすぐ実施することが重要であ る。
ポイント4  上流でのミス要因から根絶する。
 物流品質は、最終工程の「納品」 や「配送車積み込み」、「ピッキング 後の出荷検品工程」だけで保証・対 応するものではない。
それらの前工 程である「仕分け」や「ピッキング」、 「入荷品保管」、「入荷検収」「入荷 ポイント1  センター内のインフラ整備を完 全にする。
 やはり、 「整理」、 「整頓」か らが重要である。
「整理」:期間限定で“必要なも ののみ”を庫内に置く。
 手順1  「今週」必要な商品アイ テムと見込み量、梱包材、パレット、 容器、備品、台車数を限定する。
 手順2 この「限定」に漏れた “当面の不要品”、つまり「出荷予定 のない品群」や「見込みを越えた過 剰在庫量」を使い勝手の悪いゾーン に集約・隔離保管する。
 手順3  毎日の出荷最優先のもと で、毎週、事前に実施内容と分担を 決めて置く。
「整頓」:“誰でも、すぐわかる よう”にする。
“誰でも”とは「三 日前入社の新人さん」が、「一人で 仕事ができること」などと定義する。
ポイント2  “ポカヨケ”の工夫  ミスがあれば、すぐわかる仕組み 作りをする。
例えばバーコードスキ ャンによる確認である。
一ケース一 81  MARCH 2008 品移動」などの完全品質を目指す。
物流品質と効率化の大きな改革は、 上流側の徹底対策に負うところが 多い。
ポイント5  後ですることを先に済ます。
 物流現場はどこも、その日その日 の入出荷・配送業務に追われている。
アイテム数が多く、小口・短納期で、 スペースと要員にも制約がある。
特 に、受注から出荷までのリードタイ ムが短いため、“急ぎ、あせり”で各 種のミスを誘発する。
このため、ピ ーク時間帯前に可能な「外段取り」 を実施する。
例えば、入出荷場(前 室)、保管場のスペース作りとロケー ション配分。
また、ピッキング見込 み量に対応した商品の補充、などで ある。
ポイント6  業務内容や手順についてのルー ル設定と訓練。
 重点業務についてのマニュアル作 りとその訓練を実施する。
ポイント7  少しの手間が増えても、ミスゼ ロが結局トク。
 いくらかの手間はかかっても、ミ スの無いことがベストソリューショ ンである。
品質改善でソンをするこ とはない。
ごく身近な具体例として は、入荷品検収で、必要アイテムに ついては商品コードと数量検収だけ でなく、ケース外装のへしゃげ、汚 れもチェックすることが挙げられる。
また、多段平棚への棚入れでは、棚 間口ごとのロケコードをスキャンし、 指示されたロケコードと照合する、な どもある。
物流品質は会社業績に直結する  「物流品質」と会社業績のつなが りを明確にする(図2)。
利益向上 のもととなる「品質」については、 分析評価の項で述べた。
完全品質 とするためには「業務改善」の重 要性がある。
  物流業務全般についての改革・ 改善:?現状業務の方法改善、?今 の方式の下でのパフォーマンスアッ プ、?前提改革の提案、を推進し、  そのために必要な工数・スペー ス:?品質向上・完全品質とするた めの必要工数、?同じく必要スペー スの判定、?必要なハード・ソフト の投資計画、などを見極め、  ₃完全品質と維持:?消費者の 目線でみた「物流品質」の認識、? これから重要視される「潜在品質」 の先取り、?絶対値基準からみた品 質レベルの達成と維持、を推進する ことが重要である。
   結論的には、「正しく」(物流品質) と「早く」(短いリードタイム)、「効 率的」(低コスト)は実務では一体で ある。
物流品質レベルが高いところ は、結果として「リードタイム」も 図2 会社業績と直結する「物流品質」 利益 アップ 売上高 アップ コスト 引き下げ 効率的に ●誤品、誤重、誤配をなくす ●商品の汚破損なし ●流通加工ミスゼロ ●フレッシュ度アップ ●受注品の欠品減 ●調達リードタイム短縮 ●納品リードタイムの短縮 ●指定日時順守 ○輸配送費の低減 ○物流人件費の低減 ○包装・梱包費の低減 ○保管料(スペースコスト)減 ○間接費用減 正しく はやく 「コスト」実績もすべて高成績である。
逆に、品質の低い事業所は、「安全」 も含め、すべてのインデックス(指標) が課題のある水準になっている。
 この意味で、利益アップの第一歩は “確実な品質改善”ということができ る。
 最後に、重点課題の要因分析につ いて、課題ごとの要因分析サンプルの 解説があった。
要因の“裏返し”、つ まりその要因をつぶすことが「対策 群」となるため、要因列挙では見落 としがないようにする。
そのために は、頭の中だけで考えるのではなく、 実務体験、現場実習を経て列挙する ことが、ロジスティクスの原点である 「物流品質改革」に重要である。
次回フォーラムのお知らせ  次回フォーラムは3月12 日(水)「サプライチェー ン・マネジメント先進事例」(講師: 碓井誠フューチ ャーアーキテクト取締役副社長〈元セブン- イレブ ン・ジャパン常務取締役〉)を予定している。
この フォーラムは年間計画に基づいて運営しているが、 単月のみの参加も可能。
1回の参加費は6,000 円。
ご希望の方は事務局(sole-j-offi ce@cpost. plala.or.jp)までお問い合わせください。

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