2008年4月号
値段
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日本航空
APRIL 2008 38
新計画は迫力不足の印象も
日本航空は二月二九日、〇八年度を初年度
とする三年間の中期経営計画「JALグルー
プ再生中期プラン」を発表した。
一〇年以降 に計画されている羽田空港、成田空港の能力 拡張後に予想される大競争時代を勝ち残るた めに、経営基盤を強固にすることが最大の目 的である。
つまり、旅客収入が伸び悩み、原 油価格が高騰する中でも、安定した利益を確 保するための収益構造を構築することだ。
具体的なアクションプランは、?コスト削 減、 ?機材更新、 ?高収益路線へのシフトと 商品競争力の強化、?本業への経営資源の集 中の四点である。
目標とする一〇年度の経営指標は、連結売 上高二兆二六〇〇億円(〇七年度業績予想二 兆二三八〇億円)、連結営業利益九六〇億円 (同四八〇億円)、連結営業利益率四・二% (同二・一%)、連結経常利益七四〇億円(同 四四〇億円)、連結当期利益五三〇億円(同 七〇億円)、ROE(自己資本利益率)九・ 八%(同一・八%)。
リース債務や未認識債務を含めた有利子負 債残高を、〇七年度の一兆五五二〇億円から 一〇年度には九六五〇億円にまで低減する計 画であり、D/Eレシオ(負債資本比率)は 〇七年度の二・〇倍から一〇年度には一・一 倍に低下するとしている。
〇八年度以降の為 替前提は一ドル一一〇円、燃油価格は代表的 な指標であるシンガポールケロシン市況価格 で一バレル一一〇ドルを想定している。
今回のプランは〇七年二月に発表した前再 生中期プランとほぼ同様の骨子を踏襲してお り、基本的な経営方針や具体的な施策に目新 しさはなかった。
また、羽田空港、成田空港 の能力拡張後の影響がフルに寄与する十一年 度を最終年度としなかったのは、迫力不足と いう印象である。
前回の内容と比較して新しいメニューは、? 新たな人件費削減として、所定内賃金や諸手 当に関する賃金制度を変更することで、約一 〇〇億円の削減効果を期待していること、? 国際貨物事業の基本方針を従来の「拡大増収 モデル」から「収益性重視モデル」に転換し たこと(詳細は後述)、?優先株による第三 者割当増資の実施で約一五〇〇億円の資本増 強を行ったこと、の三点である。
航空運送事業で三五〇〇人削減 第三者割当増資での優先株の割当先は、み ずほコーポレート銀行、日本政策投資銀行な ど大手銀行、三井物産などの大手商社、出光 興産などの大手石油会社など合計一四社であ 日本航空 貨物事業モデルを収益性重視に転換 輸送需給の適合進め収益性を向上 二〇〇八年度〜一〇年度の新中期経営計 画で、国際貨物事業の基本方針を「拡大増収 モデル」から変更し、「収益性重視モデル」を 打ち出した。
〇九年度には同事業を黒字化す る計画だ。
しかし、競合他社の規模拡大戦略 による競争激化や日本発着の航空貨物需要の 鈍化など、業績下振れリスクがある。
尾坂拓也 モルガン・スタンレー証券 株式調査部 第38回 39 APRIL 2008 る。
割当先には年間総額で約六〇億円の配当 を支払う。
このため日本航空にとっての資金 調達コストは約四%と試算され、相対的に高 い資金コストになったといえる。
また、増資による調達資金は機材更新など の設備投資に充てるが、航空機機材のフリー ト体制に大きな変化はなく、結果として借入 金の返済に充当されるとモルガン・スタンレー 証券では判断している。
なお、優先株には発 行後三年間の転換請求制限がついており、今 回の再生中期プランの実行中は普通株式への 転換ができないスキームを採用している。
コスト削減による収益力の改善については、 連結人件費五〇〇億円の削減が顕在化するか 否かが最も重要な点であろう。
具体的な削減 施策は、?〇八年度末までにグループ従業員 数を、特別早期退職措置の実施を含めて〇六 年度比で四三〇〇人削減し四万八八〇〇人 にすること、?退職給付関連制度の改定で退 職給付費用を圧縮すること、?臨時手当水準 を大幅に抑制すること、?基本給の一〇%削 減を継続すること、などである。
連結従業員四三〇〇人の削減には、連結子 会社だったJALUXやホテル事業の売却に 伴う人員削減の一五〇〇人を含んでいる。
こ のため実質的な削減数は二八〇〇人と推測さ れ、大半は航空運送事業に集中すると思われ る。
一方では、低コスト運航体制の強化の一 環として、JAL本体よりも運航コストが約 一〇%低いJALウェイズやJALエクスプ レスの運航便数を増やすため、両社の従業員 を七〇〇人程度増強する見込みである。
故に、 航空運送事業全体としては、前述の特別早期 退職措置も加味して、〇六年度比で約三五〇 〇人の削減を計画していることになる。
モル ガン・スタンレー証券では、この人件費抑制 シナリオは、ほぼ実現するとみている。
ただ し、今回新たに追加発表された人件費削減策 に関しては詳細が明らかになっておらず、業 績予想に織り込むのは時期尚早であろう。
旅客では路線リストラ効果 機材更新に関する基本的な考え方は、機齢 の高い大型機の退役を促進し、中小型機材を 積極的に導入する計画である。
機材のダウン サイジングの効果は、燃費効率の改善による 燃料費の抑制や運航施設利用費の削減、需給 適合に伴う座席利用率の改善などにつながる と思われる。
モルガン・スタンレー証券では、 機材更新の戦略は妥当であり、計画実現の可 能性は高いと判断している。
日本航空は、〇六〜一〇年度の五年間で導 入機材八五機、退役機材六四機を予定して いる。
保有機材数(リース含む)は〇六年度 末の二七四機から一〇年度には二九一機に増 加する計画である。
特に大型機では、〇九年 度上期末までにB747SR/LR型機の退 役を完了させる計画であり、大型機の構成比 は、国際線では〇七年度末の五二%から一〇 年度末には三八%へ、国内線では〇七年度末 の九%から一〇年度末には七%に低下すると 予想される。
旅客事業では、〇五年一〇月から採算性 をより重視して、国際線の合理化に着手した。
ホノルルやサイパン、グアムなどのリゾート路 線の運休・減便、ロンドン線の減便などを実施 し、旅客イールド(有償旅客キロ当りの旅客収 入)の改善、座席利用率の向上を実現してき た。
〇七年度第3四半期決算でも、国際線の 座席キロ(供給量)は前年同期比三・四%減 にもかかわらず、旅客イールドは同五・一% 増、座席利用率も二・九%ポイント増、結果 として座席当たりの旅客収入は九・四%増と なり、路線リストラの効果が顕在化している ことが確認できた。
高収益路線へのシフトという観点では、旅 図1 07 年度連結業績予想と新再生中期プランの連結業績目標 07 年度 08 年度 09 年度 10 年度 売上高 22380 21840 22050 22600 (国際旅客) 7485 8070 8150 8530 (国内旅客) 6850 7040 7300 7360 (国際貨物) 1885 1930 1850 1890 (その他) 6160 4810 4750 4830 営業利益 480 500 750 960 経常利益 440 300 530 740 当期利益 70 130 260 530 営業利益率 2.1% 2.3% 3.4% 4.2% ROE 1.8% 2.8% 5.1% 9.8% 有利子負債 15520 13210 11220 9650 D/E レシオ(倍) 2.0 1.7 1.4 1.1 単位:億円 APRIL 2008 40 客イールドが国際線の中で最も高い中国路線 を強化する方針である。
国内線では〇七年度 に不採算路線の聖域なき見直しを実施し、過 去最大規模の路線便数削減を実施した。
ま た、商品開発力の強化という面では、高単価 のビジネス顧客にフォーカスした「プレミアム 戦略」を実施する。
国内線ではファーストク ラス、国際線ではプレミアムエコノミーをそれ ぞれ導入し、旅客イールドの底上げを図る計 画である。
フレーターを十一機に減少 国際貨物事業に関しては、前述のとおり 基本方針を「拡大増収モデル」から「収益性 重視モデル」に変更した。
羽田空港が国際化 する一〇年度までの具体的なプランとしては、 在来型B747─200型フレーター(貨物 専用機)の退役加速と規模縮小による需給適 合を実施する計画である。
〇六年度末のフレーター保有は十四機体制 だったが、一年前の前再生中期プランでは、一 〇年度末でB747─400型機十一機、B 767型機四機の合計一五機体制と計画して いた。
しかし今回の計画では、〇八年度中に 在来型B747─200型機三機を退役させ るとともに、一〇年度末の保有数を、B74 7─400型機八機とB767型機三機の合 計十一機体制に縮小・変更した。
加えて、太 平洋線の寄港地点・供給を調整、東南アジア 線を全便B767型フレーターに置き換えダ ウンサイジングを図るなど、収益性の向上を 図る方針である。
日本航空は、国際貨物事業の供給量(有効 トンキロ)を〇八年度は前年度比九・四%減、 〇九年度は九・五%減と予想している。
その 結果、〇七年度で一〇〇億円近い営業赤字に ある国際貨物事業の営業損益(ベリーを除く フレーター事業のみの損益。
社内管理会計上 の数値であり、制度会計上の数値とは異なる) を、〇九年度には黒字転換させる見込みであ る。
それでも、一〇年度の収益改善見込み後 の営業利益は数十億円と想定されるため、さ らなる利益拡大のために、事業の再編を含む あらゆる可能性を検討しているもようである。
ここで国際貨物事業の業績下振れリスクを みておきたい。
日本航空は供給量の減少ほど 需要(貨物搭載重量)は落ち込まないと想定 している。
計画では、〇八年度の貨物搭載 重量は前年度比一・七%減、〇九年度は三・ 四%減。
この点、下振れ要因として?競合の 全日本空輸や日本貨物航空は、同社とは対照 的に国際貨物事業に関して規模拡大戦略を前 面に出しており、一層の競争激化が予想され る、?そもそも、日本発着ベースの航空貨物 需要は製造メーカーの海外拠点シフト、現地 調達比率の上昇、原油高で高騰する航空運賃 などから、かつてような年率一〇%を超える 高い成長率は期待できない──の二点が挙げ られよう。
〇七年度の連結業績は、国際旅客線の需 要好調、人件費抑制、原油価格ヘッジ戦略の 奏功などから、期初予想三五〇億円を上回 る営業利益四八〇億円を確保する見通しであ る。
しかし、足元のシンガポールケロシン価格 は会社前提の一バレル一一〇ドルを上回る同 一二六ドル(三月十一日時点)で推移してお り、〇八年度の営業利益予想五〇〇億円を達 成するのは、現時点では困難といえよう。
運 賃値上げに対する需要の価格弾力性にも留意 すべきであり、短期業績は楽観視できる状況 にはないだろう。
おさか たくや 一九九三年 慶應義塾大学経済学部卒業、 著者プロフィール 日本航空の過去5年間の株価推移 (円) 《出来高》
一〇年以降 に計画されている羽田空港、成田空港の能力 拡張後に予想される大競争時代を勝ち残るた めに、経営基盤を強固にすることが最大の目 的である。
つまり、旅客収入が伸び悩み、原 油価格が高騰する中でも、安定した利益を確 保するための収益構造を構築することだ。
具体的なアクションプランは、?コスト削 減、 ?機材更新、 ?高収益路線へのシフトと 商品競争力の強化、?本業への経営資源の集 中の四点である。
目標とする一〇年度の経営指標は、連結売 上高二兆二六〇〇億円(〇七年度業績予想二 兆二三八〇億円)、連結営業利益九六〇億円 (同四八〇億円)、連結営業利益率四・二% (同二・一%)、連結経常利益七四〇億円(同 四四〇億円)、連結当期利益五三〇億円(同 七〇億円)、ROE(自己資本利益率)九・ 八%(同一・八%)。
リース債務や未認識債務を含めた有利子負 債残高を、〇七年度の一兆五五二〇億円から 一〇年度には九六五〇億円にまで低減する計 画であり、D/Eレシオ(負債資本比率)は 〇七年度の二・〇倍から一〇年度には一・一 倍に低下するとしている。
〇八年度以降の為 替前提は一ドル一一〇円、燃油価格は代表的 な指標であるシンガポールケロシン市況価格 で一バレル一一〇ドルを想定している。
今回のプランは〇七年二月に発表した前再 生中期プランとほぼ同様の骨子を踏襲してお り、基本的な経営方針や具体的な施策に目新 しさはなかった。
また、羽田空港、成田空港 の能力拡張後の影響がフルに寄与する十一年 度を最終年度としなかったのは、迫力不足と いう印象である。
前回の内容と比較して新しいメニューは、? 新たな人件費削減として、所定内賃金や諸手 当に関する賃金制度を変更することで、約一 〇〇億円の削減効果を期待していること、? 国際貨物事業の基本方針を従来の「拡大増収 モデル」から「収益性重視モデル」に転換し たこと(詳細は後述)、?優先株による第三 者割当増資の実施で約一五〇〇億円の資本増 強を行ったこと、の三点である。
航空運送事業で三五〇〇人削減 第三者割当増資での優先株の割当先は、み ずほコーポレート銀行、日本政策投資銀行な ど大手銀行、三井物産などの大手商社、出光 興産などの大手石油会社など合計一四社であ 日本航空 貨物事業モデルを収益性重視に転換 輸送需給の適合進め収益性を向上 二〇〇八年度〜一〇年度の新中期経営計 画で、国際貨物事業の基本方針を「拡大増収 モデル」から変更し、「収益性重視モデル」を 打ち出した。
〇九年度には同事業を黒字化す る計画だ。
しかし、競合他社の規模拡大戦略 による競争激化や日本発着の航空貨物需要の 鈍化など、業績下振れリスクがある。
尾坂拓也 モルガン・スタンレー証券 株式調査部 第38回 39 APRIL 2008 る。
割当先には年間総額で約六〇億円の配当 を支払う。
このため日本航空にとっての資金 調達コストは約四%と試算され、相対的に高 い資金コストになったといえる。
また、増資による調達資金は機材更新など の設備投資に充てるが、航空機機材のフリー ト体制に大きな変化はなく、結果として借入 金の返済に充当されるとモルガン・スタンレー 証券では判断している。
なお、優先株には発 行後三年間の転換請求制限がついており、今 回の再生中期プランの実行中は普通株式への 転換ができないスキームを採用している。
コスト削減による収益力の改善については、 連結人件費五〇〇億円の削減が顕在化するか 否かが最も重要な点であろう。
具体的な削減 施策は、?〇八年度末までにグループ従業員 数を、特別早期退職措置の実施を含めて〇六 年度比で四三〇〇人削減し四万八八〇〇人 にすること、?退職給付関連制度の改定で退 職給付費用を圧縮すること、?臨時手当水準 を大幅に抑制すること、?基本給の一〇%削 減を継続すること、などである。
連結従業員四三〇〇人の削減には、連結子 会社だったJALUXやホテル事業の売却に 伴う人員削減の一五〇〇人を含んでいる。
こ のため実質的な削減数は二八〇〇人と推測さ れ、大半は航空運送事業に集中すると思われ る。
一方では、低コスト運航体制の強化の一 環として、JAL本体よりも運航コストが約 一〇%低いJALウェイズやJALエクスプ レスの運航便数を増やすため、両社の従業員 を七〇〇人程度増強する見込みである。
故に、 航空運送事業全体としては、前述の特別早期 退職措置も加味して、〇六年度比で約三五〇 〇人の削減を計画していることになる。
モル ガン・スタンレー証券では、この人件費抑制 シナリオは、ほぼ実現するとみている。
ただ し、今回新たに追加発表された人件費削減策 に関しては詳細が明らかになっておらず、業 績予想に織り込むのは時期尚早であろう。
旅客では路線リストラ効果 機材更新に関する基本的な考え方は、機齢 の高い大型機の退役を促進し、中小型機材を 積極的に導入する計画である。
機材のダウン サイジングの効果は、燃費効率の改善による 燃料費の抑制や運航施設利用費の削減、需給 適合に伴う座席利用率の改善などにつながる と思われる。
モルガン・スタンレー証券では、 機材更新の戦略は妥当であり、計画実現の可 能性は高いと判断している。
日本航空は、〇六〜一〇年度の五年間で導 入機材八五機、退役機材六四機を予定して いる。
保有機材数(リース含む)は〇六年度 末の二七四機から一〇年度には二九一機に増 加する計画である。
特に大型機では、〇九年 度上期末までにB747SR/LR型機の退 役を完了させる計画であり、大型機の構成比 は、国際線では〇七年度末の五二%から一〇 年度末には三八%へ、国内線では〇七年度末 の九%から一〇年度末には七%に低下すると 予想される。
旅客事業では、〇五年一〇月から採算性 をより重視して、国際線の合理化に着手した。
ホノルルやサイパン、グアムなどのリゾート路 線の運休・減便、ロンドン線の減便などを実施 し、旅客イールド(有償旅客キロ当りの旅客収 入)の改善、座席利用率の向上を実現してき た。
〇七年度第3四半期決算でも、国際線の 座席キロ(供給量)は前年同期比三・四%減 にもかかわらず、旅客イールドは同五・一% 増、座席利用率も二・九%ポイント増、結果 として座席当たりの旅客収入は九・四%増と なり、路線リストラの効果が顕在化している ことが確認できた。
高収益路線へのシフトという観点では、旅 図1 07 年度連結業績予想と新再生中期プランの連結業績目標 07 年度 08 年度 09 年度 10 年度 売上高 22380 21840 22050 22600 (国際旅客) 7485 8070 8150 8530 (国内旅客) 6850 7040 7300 7360 (国際貨物) 1885 1930 1850 1890 (その他) 6160 4810 4750 4830 営業利益 480 500 750 960 経常利益 440 300 530 740 当期利益 70 130 260 530 営業利益率 2.1% 2.3% 3.4% 4.2% ROE 1.8% 2.8% 5.1% 9.8% 有利子負債 15520 13210 11220 9650 D/E レシオ(倍) 2.0 1.7 1.4 1.1 単位:億円 APRIL 2008 40 客イールドが国際線の中で最も高い中国路線 を強化する方針である。
国内線では〇七年度 に不採算路線の聖域なき見直しを実施し、過 去最大規模の路線便数削減を実施した。
ま た、商品開発力の強化という面では、高単価 のビジネス顧客にフォーカスした「プレミアム 戦略」を実施する。
国内線ではファーストク ラス、国際線ではプレミアムエコノミーをそれ ぞれ導入し、旅客イールドの底上げを図る計 画である。
フレーターを十一機に減少 国際貨物事業に関しては、前述のとおり 基本方針を「拡大増収モデル」から「収益性 重視モデル」に変更した。
羽田空港が国際化 する一〇年度までの具体的なプランとしては、 在来型B747─200型フレーター(貨物 専用機)の退役加速と規模縮小による需給適 合を実施する計画である。
〇六年度末のフレーター保有は十四機体制 だったが、一年前の前再生中期プランでは、一 〇年度末でB747─400型機十一機、B 767型機四機の合計一五機体制と計画して いた。
しかし今回の計画では、〇八年度中に 在来型B747─200型機三機を退役させ るとともに、一〇年度末の保有数を、B74 7─400型機八機とB767型機三機の合 計十一機体制に縮小・変更した。
加えて、太 平洋線の寄港地点・供給を調整、東南アジア 線を全便B767型フレーターに置き換えダ ウンサイジングを図るなど、収益性の向上を 図る方針である。
日本航空は、国際貨物事業の供給量(有効 トンキロ)を〇八年度は前年度比九・四%減、 〇九年度は九・五%減と予想している。
その 結果、〇七年度で一〇〇億円近い営業赤字に ある国際貨物事業の営業損益(ベリーを除く フレーター事業のみの損益。
社内管理会計上 の数値であり、制度会計上の数値とは異なる) を、〇九年度には黒字転換させる見込みであ る。
それでも、一〇年度の収益改善見込み後 の営業利益は数十億円と想定されるため、さ らなる利益拡大のために、事業の再編を含む あらゆる可能性を検討しているもようである。
ここで国際貨物事業の業績下振れリスクを みておきたい。
日本航空は供給量の減少ほど 需要(貨物搭載重量)は落ち込まないと想定 している。
計画では、〇八年度の貨物搭載 重量は前年度比一・七%減、〇九年度は三・ 四%減。
この点、下振れ要因として?競合の 全日本空輸や日本貨物航空は、同社とは対照 的に国際貨物事業に関して規模拡大戦略を前 面に出しており、一層の競争激化が予想され る、?そもそも、日本発着ベースの航空貨物 需要は製造メーカーの海外拠点シフト、現地 調達比率の上昇、原油高で高騰する航空運賃 などから、かつてような年率一〇%を超える 高い成長率は期待できない──の二点が挙げ られよう。
〇七年度の連結業績は、国際旅客線の需 要好調、人件費抑制、原油価格ヘッジ戦略の 奏功などから、期初予想三五〇億円を上回 る営業利益四八〇億円を確保する見通しであ る。
しかし、足元のシンガポールケロシン価格 は会社前提の一バレル一一〇ドルを上回る同 一二六ドル(三月十一日時点)で推移してお り、〇八年度の営業利益予想五〇〇億円を達 成するのは、現時点では困難といえよう。
運 賃値上げに対する需要の価格弾力性にも留意 すべきであり、短期業績は楽観視できる状況 にはないだろう。
おさか たくや 一九九三年 慶應義塾大学経済学部卒業、 著者プロフィール 日本航空の過去5年間の株価推移 (円) 《出来高》
