2008年4月号
物流不動産市場レポート
物流不動産市場レポート
米国 アジアとの貿易増加で施設市場拡大賃料水準は西海岸を中心に上昇傾向
物流不動産市場レポート
にあるシアトル港とタコマ港のコンテナ取扱量
が増加している。
パナマ運河を通過してメキシ コ湾に面するテキサス州のヒューストン港も、分 散化による恩恵を受けるかたちで活性化した。
一方、東海岸では、ニューヨーク●ニュージ ャージー港、バージニア州のノーフォーク港、サ ウスカロライナ州のチャールストン港、ジョージ ア州のサバンナ港のコンテナ取扱量が増加して いる。
米国西部を中心に販売網を持つ企業は、 メキシコ西海岸のマンザニーヨ港、ラザロ・カ ルデナスの港などへの分散もみられた。
パナマ運河拡張し通行量倍増見込む アジアから米国東海岸への貨物ルートは、二 〇〇〇年には八二・八%が西海岸、一五・一% がパナマ運河を経由していたが、〇五年には五 八・一%が西海岸、四〇・一%がパナマ運河と、 パナマ運河経由へのシフトが進んだ。
しかし、パナマ運河の急激な需要増大に対し、 西海岸に拠点集中 二〇〇〇年以降、中国、ベトナムをはじめと するアジア各国の急速な産業の発展と米国の好 景気を受け、アジア─米国間の貿易は急速に拡 大した。
このトレンドは、米国各地の港と物流 施設に大きな影響をあたえている。
ロサンゼル ス港やパナマ運河は拡張することで、アジアか らの通行量増加に備える。
コンテナ船が集中す る西海岸の港湾部を中心に施設需要が増加し、 賃料水準も上昇傾向にある。
以下に二〇〇七 年第4四半期における、米国の物流不動産市 況を解説する。
アジアの玄関口となる西海岸には、ロサンゼ ルス港(LA港)とロングビーチ港(LB港) がある。
隣接するこれら二つの港のコンテナ取 扱量は、それぞれ七四〇万TEU、六七〇万 TEUと、全米一、二位を競っている。
しかし、近年は港湾貨物の混雑と遅延に加 え、労使闘争などの問題が発生している。
ま た、両港では計一〇〇エーカー以上のターミナ ル拡張計画があるものの、港外の周辺エリアに おいて物流施設の新規開発用地が残されていな いことから、施設の供給が追い付いていない。
LA港、LB港周辺の〇七年第4四半期に おける物流施設の空室率は一・六%と、実質 満室状態となっている。
そのため大型施設の 新規開発は、カリフォルニア州内陸部のインラ ンド・エンパイア、ネバダ州のラスベガスやア リゾナ州のフェニックスへと広域化した。
これ らの地域の賃料水準は上昇傾向だ(図1)。
全米各地への販売ルートを持つ企業は、前述 の問題を回避するため、LA港、LB港集中 体制から脱却する動きがみられる。
両港に集 中していた貨物の荷揚げ港を数カ所に分散する などの対策をとっている。
この動きを受け、西海岸ではサンフランシス コに隣接するオークランド港、カナダ国境そば 第10回 米 国 アジアとの貿易増加で施設市場拡大 賃料水準は西海岸を中心に上昇傾向 シービー・リチャードエリス グローバル・コーポレイトサービス本部 三宅昌子 APRIL 2008 84 85 APRIL 2008 ク、シカゴ、テネシー州のメンフィス、ケンタ ッキー州のルイビル、テキサス州のダラス、ジ ョージア州のアトランタなどが挙げられる。
こ れらの地域はメンフィス国際空港やルイビル国 際空港など、貨物取扱量において世界的に上 位にランクする空港を有しているのが特徴だ。
また、シカゴは全米最大の鉄道ハブでもある。
ミシガン州のデトロイト、オハイオ州のコロンバ ス、テネシー州のメンフィスなど、自動車関連 の製造業が集まる中西部の都市向けの拠点とし て、重要な機能を果たしている。
賃料水準は上昇基調 このように、アジア各国との貿易が活発化 したことを受け、港湾部周辺と内陸部では〇 三年第2四半期から、高機能な物流施設の需 要が増加した。
プロロジス、AMBプロパティ コーポレーションなどの大手物流施設開発業者 は、この流れに乗って大きく成長した。
全米の物流施設の平均賃料水準は、これま で若干の上昇基調の中でほぼ安定的に推移し ている。
しかし、個々のマーケットを比較する と、産業や交通インフラの変化の中で、新興・ 安定・衰退などそれぞれに違った事情により 様々な傾向がみられる。
空港に隣接するサブマーケットでは、他のエ リアに比べ賃料水準が平均して二〜五割高く なっている。
なかでもニューヨーク近郊のジョ ン・F・ケネディ空港近隣では、最高値で年 間一六ドル〜二五ドル/平方フィートと、他の エリアと比較してかなり高い水準となっている。
これは、税関や貨物へのアクセスを最重視する 航空貨物を扱う企業が空港至近の立地を好む ため、空港至近のサブマーケットが完全に貸主 主導のマーケットとなっているからだ。
シカゴなど内陸都市のマーケットの賃料水準 は安定している。
米国で主流の平屋型施設は 大規模なものでも建築期間が半年程度と短いた め、用地さえ確保できれば増加する需要に対し、 供給を間に合わせるのにさほど時間を要さない。
そのため、用地制限の少ない内陸部では、需 要増加に対して賃料水準が上昇していない。
昨今の経済動向をかんがみても、賃料水準 が大幅に上昇することは考えにくい。
しかし施 設需要が集中するエリアでは、今後も引き続き 賃料水準が上昇すると考えられる。
通航量が許容限度に近づいていた。
そのため、 パナマ運河庁は〇六年に運河拡張計画を発表 し、昨年九月に着工した。
二レーンから三レー ンへ閘門(こうもん)を増やすことで、現在 のおよそ二倍となる年間六億トンの通航量が可 能になる見込みだ。
一四年の竣工を予定して いる。
港で荷揚げされた貨物は、付加価値の高いも のは空路、一般貨物は陸路で地方の消費地まで 運ばれる。
主要な配送拠点として、ニューヨー サブプライム問題を発端とする不安定 な金融情勢に加え、原油高などの影響で 輸送費や原材料が高騰している。
今後、 近年好調だった米国経済全体に大きなイ ンパクトを与え、設備投資の縮小、個人 消費者の購買力の鈍化など、貨物量の動 向に影響を及ぼすと懸念されている。
物流不動産マーケットには今のところ 大きなインパクトは出ていない。
しかし 物流施設の賃借形態が日本と異なり、概 ね三年〜一〇年以上の定期借家契約であ る米国では、荷物の取扱量の減少や不透 明な在庫調整により、拠点戦略が立てに くいため、今後、慎重な対応を迫られる 可能性がある。
サブプライム問題が 拠点戦略に与える影響 10.00 9.00 8.00 7.00 6.00 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 0 ルイビルメンフィス フィラディルフィア シカゴアトランタ フェニックス ラスベガス ロサンゼルス ニュージャージー インランド・エンパイア ダラス オークランド デンバー ($) ヒューストン チャールストン ノーフォーク サバンナ 0 5 10 15 20(%) 図1 米国主要都市における物流施設1 平方フィート当たりの平均賃料と空室率 (07 年第4 四半期) 出典:CB リチャードエリス シアトル- タコマ 空室率 平均賃料 1 ?=10.76 平方フィート
パナマ運河を通過してメキシ コ湾に面するテキサス州のヒューストン港も、分 散化による恩恵を受けるかたちで活性化した。
一方、東海岸では、ニューヨーク●ニュージ ャージー港、バージニア州のノーフォーク港、サ ウスカロライナ州のチャールストン港、ジョージ ア州のサバンナ港のコンテナ取扱量が増加して いる。
米国西部を中心に販売網を持つ企業は、 メキシコ西海岸のマンザニーヨ港、ラザロ・カ ルデナスの港などへの分散もみられた。
パナマ運河拡張し通行量倍増見込む アジアから米国東海岸への貨物ルートは、二 〇〇〇年には八二・八%が西海岸、一五・一% がパナマ運河を経由していたが、〇五年には五 八・一%が西海岸、四〇・一%がパナマ運河と、 パナマ運河経由へのシフトが進んだ。
しかし、パナマ運河の急激な需要増大に対し、 西海岸に拠点集中 二〇〇〇年以降、中国、ベトナムをはじめと するアジア各国の急速な産業の発展と米国の好 景気を受け、アジア─米国間の貿易は急速に拡 大した。
このトレンドは、米国各地の港と物流 施設に大きな影響をあたえている。
ロサンゼル ス港やパナマ運河は拡張することで、アジアか らの通行量増加に備える。
コンテナ船が集中す る西海岸の港湾部を中心に施設需要が増加し、 賃料水準も上昇傾向にある。
以下に二〇〇七 年第4四半期における、米国の物流不動産市 況を解説する。
アジアの玄関口となる西海岸には、ロサンゼ ルス港(LA港)とロングビーチ港(LB港) がある。
隣接するこれら二つの港のコンテナ取 扱量は、それぞれ七四〇万TEU、六七〇万 TEUと、全米一、二位を競っている。
しかし、近年は港湾貨物の混雑と遅延に加 え、労使闘争などの問題が発生している。
ま た、両港では計一〇〇エーカー以上のターミナ ル拡張計画があるものの、港外の周辺エリアに おいて物流施設の新規開発用地が残されていな いことから、施設の供給が追い付いていない。
LA港、LB港周辺の〇七年第4四半期に おける物流施設の空室率は一・六%と、実質 満室状態となっている。
そのため大型施設の 新規開発は、カリフォルニア州内陸部のインラ ンド・エンパイア、ネバダ州のラスベガスやア リゾナ州のフェニックスへと広域化した。
これ らの地域の賃料水準は上昇傾向だ(図1)。
全米各地への販売ルートを持つ企業は、前述 の問題を回避するため、LA港、LB港集中 体制から脱却する動きがみられる。
両港に集 中していた貨物の荷揚げ港を数カ所に分散する などの対策をとっている。
この動きを受け、西海岸ではサンフランシス コに隣接するオークランド港、カナダ国境そば 第10回 米 国 アジアとの貿易増加で施設市場拡大 賃料水準は西海岸を中心に上昇傾向 シービー・リチャードエリス グローバル・コーポレイトサービス本部 三宅昌子 APRIL 2008 84 85 APRIL 2008 ク、シカゴ、テネシー州のメンフィス、ケンタ ッキー州のルイビル、テキサス州のダラス、ジ ョージア州のアトランタなどが挙げられる。
こ れらの地域はメンフィス国際空港やルイビル国 際空港など、貨物取扱量において世界的に上 位にランクする空港を有しているのが特徴だ。
また、シカゴは全米最大の鉄道ハブでもある。
ミシガン州のデトロイト、オハイオ州のコロンバ ス、テネシー州のメンフィスなど、自動車関連 の製造業が集まる中西部の都市向けの拠点とし て、重要な機能を果たしている。
賃料水準は上昇基調 このように、アジア各国との貿易が活発化 したことを受け、港湾部周辺と内陸部では〇 三年第2四半期から、高機能な物流施設の需 要が増加した。
プロロジス、AMBプロパティ コーポレーションなどの大手物流施設開発業者 は、この流れに乗って大きく成長した。
全米の物流施設の平均賃料水準は、これま で若干の上昇基調の中でほぼ安定的に推移し ている。
しかし、個々のマーケットを比較する と、産業や交通インフラの変化の中で、新興・ 安定・衰退などそれぞれに違った事情により 様々な傾向がみられる。
空港に隣接するサブマーケットでは、他のエ リアに比べ賃料水準が平均して二〜五割高く なっている。
なかでもニューヨーク近郊のジョ ン・F・ケネディ空港近隣では、最高値で年 間一六ドル〜二五ドル/平方フィートと、他の エリアと比較してかなり高い水準となっている。
これは、税関や貨物へのアクセスを最重視する 航空貨物を扱う企業が空港至近の立地を好む ため、空港至近のサブマーケットが完全に貸主 主導のマーケットとなっているからだ。
シカゴなど内陸都市のマーケットの賃料水準 は安定している。
米国で主流の平屋型施設は 大規模なものでも建築期間が半年程度と短いた め、用地さえ確保できれば増加する需要に対し、 供給を間に合わせるのにさほど時間を要さない。
そのため、用地制限の少ない内陸部では、需 要増加に対して賃料水準が上昇していない。
昨今の経済動向をかんがみても、賃料水準 が大幅に上昇することは考えにくい。
しかし施 設需要が集中するエリアでは、今後も引き続き 賃料水準が上昇すると考えられる。
通航量が許容限度に近づいていた。
そのため、 パナマ運河庁は〇六年に運河拡張計画を発表 し、昨年九月に着工した。
二レーンから三レー ンへ閘門(こうもん)を増やすことで、現在 のおよそ二倍となる年間六億トンの通航量が可 能になる見込みだ。
一四年の竣工を予定して いる。
港で荷揚げされた貨物は、付加価値の高いも のは空路、一般貨物は陸路で地方の消費地まで 運ばれる。
主要な配送拠点として、ニューヨー サブプライム問題を発端とする不安定 な金融情勢に加え、原油高などの影響で 輸送費や原材料が高騰している。
今後、 近年好調だった米国経済全体に大きなイ ンパクトを与え、設備投資の縮小、個人 消費者の購買力の鈍化など、貨物量の動 向に影響を及ぼすと懸念されている。
物流不動産マーケットには今のところ 大きなインパクトは出ていない。
しかし 物流施設の賃借形態が日本と異なり、概 ね三年〜一〇年以上の定期借家契約であ る米国では、荷物の取扱量の減少や不透 明な在庫調整により、拠点戦略が立てに くいため、今後、慎重な対応を迫られる 可能性がある。
サブプライム問題が 拠点戦略に与える影響 10.00 9.00 8.00 7.00 6.00 5.00 4.00 3.00 2.00 1.00 0 ルイビルメンフィス フィラディルフィア シカゴアトランタ フェニックス ラスベガス ロサンゼルス ニュージャージー インランド・エンパイア ダラス オークランド デンバー ($) ヒューストン チャールストン ノーフォーク サバンナ 0 5 10 15 20(%) 図1 米国主要都市における物流施設1 平方フィート当たりの平均賃料と空室率 (07 年第4 四半期) 出典:CB リチャードエリス シアトル- タコマ 空室率 平均賃料 1 ?=10.76 平方フィート
