2008年5月号
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鈴木震 物流技術研究所 代表

MAY 2008  4 です。
物流とはモノを動かすだけのシ ンプルな機能です。
モノを生産するに はハイテクが必要でも、物流はローテ クでいい。
ただし、複雑なローテクな んです」 ──どういう意味でしょうか。
 「生産活動においては、何をいつど れだけ作るか、そのために部品は何 が何個必要になるのかを全て事前に 計画することができます。
そのため 単純に生産性を管理の基準にできる。
それに対して物流は、誰が何をいつ 買うのか分からない。
常に予測が伴 います。
しかも物流の本質はカスタマ ーサービスです。
生産性はもちろん無 視できませんが、それ以前にカスタマ ーサービスに軸足を置いて活動を管理 しなければならない」  「ジャストインタイム(JIT)もカ スタマーサービスを考慮する必要のな い調達物流であれば通用します。
指 定した時間にサプライヤーにモノを持 って来させれば済む。
実際、トヨタの 工場はJIT物流です。
しかしトヨ タの自動車を買う顧客はJITでは 購入できない。
注文してから商品が 届くまで一定の期間、待たなくては なりません。
普通の商売では、そん なことはできません。
普通の会社の 販売物流は顧客の注文に合わせて動 かなければならない」 物流は複雑なローテク ──そもそも良いセンターとは、どの ようなセンターを指すのでしょうか。
 「その質問に答えはありません。
何 をもって優れたセンターと言うのか。
その条件の取り方次第で、センターの 評価は全く変わってしまう。
例えば自 動化を条件にするのであれば重装備 のマテハン機器を備えたセンターが良 いセンターということになるが、設備 金額を抑えるという条件からは不合 格になってしまう」 ──一般的には効率の良いセンターが 優れたセンターなのでは。
 「センターの本来の使命は効率では なく、客先から注文があった品物を 欠品なく、間違いなく、指定された 日時に、指定された場所へ納入する ことです。
これが達成できるのであ ればどんなシステムであっても構わな い。
反対にどんなに高機能のセンター であっても、それができなければ落 第です。
能率や自動化などは二の次 の問題なのです」 ──それでは、センターが本来の使命 を果たしているという前提で、優れ たセンターを定義するとすれば?  「最低の設備と最低の維持費で使命 を達成しているセンターこそ、優れた センターだと言えるでしょう。
問題は そのようなセンターが、実際には作れ ないということです。
活動条件が事 例に定まらないからです。
ご存じの ように注文量は毎日変動します。
普 通は毎月月末になれば月平均の二倍 から三倍の注文が入る。
そうなると、 いつの日の注文量に合わせてセンター を設計すれば良いのか。
現在の理論 では答えが出せません」  「世の中にはこれだけたくさんのセ ンターがありますが、実はセンターの 設計法をきちんと説明できている本 がないのをご存じですか。
そんなこ とはない。
多くの本や論文が出てい るだろうと反論されるかもしれませ んが、それらの言っていることはデー タを分析して計画しろ、ということ だけです。
どのデータを、どうやって 分析すれば良いのかはどこにも示さ れていない」  「センターの設計法として書かれた ものがあったとしても、それらは全 てIE(インダストリアル・エンジニ アリング)などの生産管理の技術を適 用したものです。
物流、少なくとも 販売物流には使えません。
生産が少 数制約条件下の単純系のシステムで あるのに対し、物流は多数制約条件 下のシステムです。
物流は複雑系なの 鈴木震 物流技術研究所 代表 「ほんの一日で現場の効率は三割上がる」  販売物流は事前に計画を立てたり、平準化して労働力のムダ を省いたりすることができない。
販売物流とは顧客サービスだ。
生産管理の技術はそこでは通用しない。
生産性ではなく顧客 サービスに軸足を置いて、需要の波動に柔軟に対応する新たな エンジニアリングに挑め。
       (聞き手・大矢昌浩) 5  MAY 2008 ──確かに生産物流と販売物流は全 く特性が違う。
 「そのためにいくら工程を細かく分 解してストップウオッチで作業時間を 精緻に計っても、手間がかかるだけ で全く使いものにならない。
これは 私だけが言っていることではありま せん。
米国のアンケートでも、半数以 上が物流ABC(活動基準原価計算) は使えなかったと答えている」  「作業がスケジュール化されていて 平準化が可能な生産物流であれば、I EやABCもある程度は機能するで しょう。
しかし波動に対応しなけれ ばならず、平準化のできない販売物 流では機能しない。
販売物流は平均 値をとっても何も分かりません。
平均 値に意味があるのは、小学校五年生 の男子の身長など、ドングリの背比べ の集団を把握する時だけです。
大人 や子供、赤ん坊など、もともと条件 の違う集団の平均をとっても、その数 字は意味を持たない。
そのため販売 物流ではデータそのものではなく、な ぜそうした数値になったのか、データ の裏を読む必要がある」 ──どうすれば裏が読めますか?  「その方法が、私の提唱する『EI Q分析』であり、『EIQ法』なので す。
保管ロケーションの設計などでは、 売れ筋の商品を把握する『ABC分 ──EIQのデータを、どうやってそ うしたアイデアに落とし込むのですか。
 「数学のように初期条件を与えれ ば、そのまま答えを出せるというわ けにはいきません。
まずは大局をつ かむ。
その際には細部には目をつむ る。
私は『良い加減法』と呼んでい ます。
そこから原案を作って他の条件 を検討し、問題に突き当たれば原案 に戻って修正する。
その繰り返しで完 成度を高めていく」 ──しかし、その“加減”が我々の ような素人には分からない。
 「そこは医者が患者を診る時のよう に、ある程度の訓練と経験が必要にな ります。
しかし訓練すれば誰にでもで きるようになります。
私が主催するE IQ研究会では、EIQ分析の講習 テキストをホームページ( http://eiq. jp/)で無料公開しています。
そこに ある例題を解いていくことで、スキル を習得できます」 析』がよく使われていますよね。
注 文量の多いアイテムをA商品、注文量 の少ない商品をC商品と分類してレイ アウトを決めるわけですが、これは必 ずしも正しくない」  「仮にAというアイテムに一〇〇〇 ケースの注文があったとする。
しかし、 それだけでは一ケースの注文が一〇〇 〇件あったのか、一〇〇ケースの注文 が一〇件あったのかまでは分からな い。
一〇〇〇回のピッキングが必要な のか一〇回で済むのか判断できないわ けです。
このように一般的なIEで データとして使用するアイテム数と物 量だけでは必要な作業量は読めない。
そこにオーダーエントリーという三つ 目のファクターを加えることで、見え なかったものが見えてくる」 ──EIQ法とは注文情報を起点に して物流を分析する手法だと理解し ています。
 「その通りです。
EIQのEがオー ダーエントリー、顧客からの注文です。
Iはアイテム、Qは量(Quantity)で す。
誰が何をどれだけ注文したのか。
それが販売物流の基本です。
そのデー タを使って物流の複雑な全体像をマク ロに把握しようという手法がEIQ 法です。
多数制約条件の一つひとつ を分析していっても解は出ない。
それ ぞれの条件がトレードオフの関係にな っているため最適値など求めようが ない。
それよりもシンプルなデータを 使って複雑系を一点突破しようとい うアプローチです」 マテハン投資は半分で済む ──話を整理する必要がありそうで す。
まず、少なくとも販売物流に関 しては、カスタマーサービスの良いセ ンターが優れたセンターということに なりますね。
 「その上で安くて効率の良いセンタ ーが優れたセンターということになり ます。
自動化や機械化は基本的に関 係ありません。
実はそうしたセンター を作ることが難しいわけでもないん です。
EIQ法を使えば一日あれば 設計できます。
しかも先進的と呼ば れるセンターと同じ機能を半分の投資 で実現できる」  「既に稼働中のセンターについても EIQ法を使うことで、すぐに一〇% 〜三〇%は能率を上げることができ ます。
例えば、各地の営業所からセ ンターに寄せられる発注単位を物流の ロットに合わせる、あるいは毎日出荷 している納品先であれば、次の日の 発注分まで考慮に入れて出荷量を調 整して輸送の積載率を高める。
そん なちょっとした工夫で生産性は格段に 上がります」 すずき・しん 一九四六年、東北大学機械工学科卒。
四七 年、物流機器メーカーに入社。
同社取締役 開発部長を経て八〇年に物流システム・コン サルタントとして独立。
九〇年、物流技術研 究所所長。
二〇〇〇年、EIQ研究会設立。
〇一年、工業標準化への貢献により通産大 臣賞を受賞。
著書に「オーダーピッキングハ ンドブック」(流通研究社)、「配送センター システム」(成山堂)などがある。

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