2008年5月号
SOLE
SOLE
業務プロセスの革新と新たなIT活用大手コンビニS社の事例に学ぶ
SOLE 日本支部フォーラムの報告
The International Society of Logistics
MAY 2008 76
業務プロセスの革新と新たなIT活用
大手コンビニS社の事例に学ぶ
SOLE日本支部では毎月「フォ
ーラム」を開催し、ロジスティクス
技術、ロジスティクスマネジメントに
関する活発な意見交換、議論を行い、
会員相互の啓発に努めている。
三月 のフォーラムでは大手コンビニエン スストアの総合情報システムの開発 を経験された、フューチャーアーキ テクトの碓井誠副社長を招き、「業 務プロセスの革新と新たなIT活用」 と題した講演を頂いた。
講演内容を 報告する。
世の中の変化をとらえる まず、大手コンビニの経営環境に フォーカスを当てよう。
小売業の概況を、小売業市場の規 模の推移、従業員規模別事業所数の 変化などで見てみる。
小売業の年間売り上げは一九九七 年をピークに縮小傾向であるのに対 し、売り場面積はコンスタントに拡 大傾向にある。
一方で、従業員数は 九九年をピークに減少している。
ま た、四人以下の小規模店舗数は減少 傾向にあるが、五〇人以上の大型店 は増加の傾向にある。
チェーンストアの販売効率はピー ク時の九一年から半減している。
二 〇〇六年の統計では、店舗面積は六 九年末の二倍の二三〇七万平方メー トルに達した。
これに対して全店ベ ースの売上高は九六年度の一七兆円 が過去最高だったが、ここから二割 近く減少し、一四兆二一六億円とな った。
一平方メートル当たりの年間 売上高は約六〇万円。
ピークとなっ た九一年度の約一二〇万円に比べ半 分に落ち込んでいる。
こうした数字 でも見て取れるように、小売業は非 常に厳しい環境にある。
このような経営環境の中で、大手 コンビニS社では、一店当たり平均 一日販売高は九三年をピークにやや 減少してきているものの、一平方メ ートル当たりの売り上げは二二〇万 円、全社粗利益率は上昇基調を維持 し三〇%を超えており、健闘してい るといえる。
ここから、S社の成長を支えた戦 略と取り組みを紹介する。
企業戦略は「世の中の変化」をど うとらえるかが重要である。
過去を 振り返ると、バブル終焉の九三年ま でに、「売り手社会」は「買い手社 会」へ変化した。
これからは、「買 い手社会」が「価値社会」へ進展す るものととらえている。
こうした「世の中の変化」を、? 質・価値、?チャネル・プロセス、? リソース配分、の三つの領域で整理 してみると、 ?質・価値:十人一色→十人十色→ 一人十色 ?チャネル・プロセス:供給者のイ ニシアチブ→市場原理・消費者の イニシアチブ→生活者主権 ?リソース配分:規制と保護管理→ 規制緩和・競争原理の拡大→価値 指向のイノベーション という変化が起こっている。
また、GDP(国内総生産)の七 〇%、就業者数全体の六七%を占め る「サービス産業」の「来たるべき 価値社会」を?サービスイノベーショ ン、?ビジネス社会のイノベーション、 ?サービスイノベーションを支える技 術革新、の三つの視点でとらえると、 図1 戦略の組み立てと組織機能の全体像 部門機能を横ぐしの業務プロセスでくくり、機能連携を強める 経営理念 価値提案 基本戦略と テーマ 戦略を支える イノベーション ■購買代理型の利便性を提供する 小売業 ■商品、サービス開発。
潜在需要 の顕在化 ■小売店のネットワーク化と活性化 ■顧客の立場での品揃えと提案〈店 舗〉 ■商品開発、サービス開発〈商品〉 ■市場・顧客とサプライチェーンの 連動〈インフラ〉 ■業務プロセス革新、情報共有 ■システム革新プロセスの組み立てとシステム化 重要な横ぐし機能を整理し、部門横断型のプロセスとして組み立てる 管理出店生産物流商品営業店舗運営 部門戦略(組織体制) 部門機能と機能連携 経営戦略・全社戦略 機能と組織に落とす 経営理念・価値提案 経営戦略に具体化 技術開発プロセス 商品開発プロセス 情報共有プロセス ・・・ 商品部の機能 ■マーケティング ■商品改廃 ■安定供給 ■販売促進 ■商品開発 ■情報発信 ■取引先管理 ■利益管理 資料:フューチャーアーキテクトより 77 MAY 2008 に具体的に落とし込んでいくことが 重要である。
次に基本戦略とテーマ を明確にし、経営戦略・全社戦略 として、機能と組織に落としていく。
さらに部門戦略(組織体制)に展開 する際に、部門機能と機能連携を明 確にする必要がある。
ここで重要なことは、これら戦 略の展開を支えるイノベーションが、 業務プロセス、情報共有、システム の領域に個別に存在するのではなく、 “横ぐし”でまたがって必要だという ことである。
部門間の横ぐし機能を 整理し、部門横断型のプロセスとし て組み立てて、システム化する。
つ まり、商品本部、営業本部、店舗、 物流本部など部門間のあるべき機能 を整理するとともに、部門横断で業 務プロセスを設計する必要がある。
原材料メーカー、製造メーカー/ ベンダー、物流センター、商品部、営 業部、加盟店間を、 ?情報共有・意思決定プロセス ?マーケティング・販売支援プロセ ス ?商品開発・調達管理プロセス ?技術開発・システム開発プロセス ?品質管理・サービス管理プロセス ?マネジメント・ガバナンスプロセス などに部門機能を横ぐしの業務プロ ?サービスイノベーション:価値訴 求、多様な価値充足、顧客参加の コラボ型・提案型サービス、コト・ モノ・TPOに応じた複合サービ スと品質の差別化 ?ビジネス社会のイノベーション: 参加交流型サービスと国際的・社 会的共生と共創、顧客接点のマル チチャネル化と連携、産業・行政・ 社会の枠組みの革新とプロセス・サ ービスの複合化と連携、労働生産 性+品質・サービス・満足度、共 生社会とワークライフバランス ?サービスイノベーションを支える 技術革新:リアルとネットのチャ ネル・サービス・プロセスの連携 とチープ革命、Web X . O・ユ ビキタス化、IT革命による経営 改革・社会改革、サービス革新へ の科学的・工学的アプローチ と進展していくととらえている。
このように「世の中の変化」をと らえた上で、「業務プロセスの革新と ITの活用」をどのように進めてき たか、また、どのように進めていく べきかをS社を例に述べる。
業務プロセスの横ぐし化が重要 戦略の組み立てと組織機能の全体 像は図1の通りである。
まず第一に、 「経営理念・価値提案」を経営戦略 図2 バリューチェーンの組み立て。
本部は各プロセスにおける 支援活動(全般管理、技術開発、購買・調達活動)を担う サプライチェーンの効率化と支援 アウトソーシングの活用・パートナーシップの組立て購買代行型小売業としての支援 メーカーコスト・ベンダーコストの低減 品質管理 メーカー・ベンダーの協業 取引先総合システム 生産管理・在庫管理 情報共有 発注・物流システム 取引先の管理・支援 本部情報システム 情報発信 情報共有 会計システム POS 情報システム 商品開発、ビジネスモデル開発、情報システム開発 商品共同開発 製法・製造技術開発 物流技術開発 FCシステム開発 新規事業開発 店舗設備開発 ハードウェア・ソフトウェア・ミドルウェア開発 店舗情報システム 情報共有 発注システム 店舗会計システム POS 情報システム 本部フランチャイズシステム 情報共有・ダイレクトコミュニケーション粗利分配方式 オープンアカウント フランチャイズシステム 加盟店情報システム・ 販売設備の貸与 本部 マーケティング 商品取引先選定と推奨 最低保証制度 物流設備・車両の共同購入 原材料・設備・資材(什器、 包装材等)の共同購入 システム機器・設備機器の共同購入 原材料メーカー 原材料調達開発・製造物流マーチャンダイジング加盟店支援販売サービス 製造メーカー・ ベンダー物流センター商品本部 ■情報収集・分析 とマーケティング ■商品開発 ■商品政策と品揃 え ■安定供給・品質 管理 ■情報発信 ■取引先管理 ■販売促進 ■売上高・利益管 理 オペレーション本部 ■マーケティングと 情報共有 ■本部政策の指示 と指導 ■発注支援 ■品揃えと売場作 り支援 ■商品管理と在庫 管理 ■数値管理(売上 高・利益・経費) ■教育支援、人材 育成 ■店舗管理とルー ル管理 ■接客・サービス ■情報共有・マー ケティング ■発注 ■品揃えと売場作 り ■顧客管理 ■商品管理と在庫 管理 ■従業員管理 ■数値管理(売上 高・利益・経費) ■店舗管理・作業 割り当て 加盟店 全般管理 技術開発 購買・調達活動 業務連携・ 情報共有 情報システム 支援活動 主活動 本部企業の役割 マージン 資料:フューチャーアーキテクトより MAY 2008 78 セスでくくり、機能連携を強める。
従来はMD(マーチャンダイジング) プロセスを商品部の業務プロセスの ように考えていたが、商品部を中心 とした横ぐしでの、チームとしての デザインとなっている。
プロセスを 横ぐしで考えるとシステムは全体最 適化し、業務とシステムの相乗効果 が得られる。
これらの業務プロセスをバリュー チェーンとしてとらえると、本部は 各プロセスにおける支援活動を担っ ているといえる。
支援活動は全般管 理、技術開発、購買・調達活動であ る。
具体的には、 ■全般管理:業務連携・情報共有。
?サプライチェーンの効率化と支 援、?アウトソーシングの活用・ パートナーシップの組み立て、? 取引情報システム・本部情報シス テム・店舗情報システムの運用 ■技術開発:?商品開発、?ビジネ スモデル開発、?情報システム開 発 ■購買・調達活動:?取引先の管 理・支援、?本部での商品取引先 選定と推奨など となる(図2)。
さらに、これらを経営プラットフォ ームへと構築する。
その構造は、プ ラットフォーム機能の上に ■商品販売などのMDプロセス ■サービス:?収納代行など決済サ ービス、?プリントサービス、? チケット販売代行サービスなど ■パートナー連携:?メーカー・問 屋連携、?金融サービス・カード・ 会員連携、?チャネル連携 ■事業インフラ:?購買代理型小 売業、?物流システムなど ■システム基盤:?店舗ネットワー ク、?店舗システム、?POSレ ジ、?ATM、?チケットプリン ター、?光ブロードバンド+IS DNバックアップ などが並ぶかたちになっている。
チームMDでPBが大ヒット これまで業務プロセスの横ぐし化 が重要と述べてきたが、チームMD プロセスの例で紹介しよう。
まず、大手コンビニのフランチャイ ズ方式(役割分担)を説明する。
コ ンビニ事業は加盟店と本部の共同事 業である。
加盟店は店舗経営・販売 に専念し、本部は加盟店経営をバッ クアップするという役割分担で粗利 を分配し、共存共栄を目指して事業 を行っている。
「売り手市場」から 「買い手市場」、さらに「価値社会」 と情報活用のためのソリューション として、「業務プロセスの革新を実現 する情報システムの考え方」(図4) を参照されたい。
ポイントは、IT の提案型活用とオープンリアルタイ ム技術の採用だ。
つまり、?ワーク フロー、リコメンデーション、コミュ ニケーションで行為をサポートする 総合ソリューション、?ユーザー特 性、組織階層に柔軟に対応する統合 情報システム、?複合的かつシナリ オ化された情報分析を実現するコン ポーネント群の採用、である。
大きな効果を挙げている新たなI へ世の中が変化しているのに合わせ て、現在、コンビニ事業ではオリジ ナル商品の開発が重要な戦略となっ ている。
S社では、オリジナル商品の売り 上げが全商品売り上げの五二%を占 める。
例えばラーメンの商品開発で は、ラーメン有名店、具材メーカー、 スープメーカー、容器メーカー、販売 促進部門、問屋・物流会社、製造メ ーカー、消費者モニターでのチーム MDにより、製造技術の向上と在庫 管理・品質管理の強化に成功。
製造 から販売までの日数を短縮すること で、生麺タイプの味の良いオリジナ ル商品を開発することができた。
同 商品は二四八円(通常のNB商品は 一四三円)という価格設定にもかか わらず、一〇〇〇万個の販売を実現 した。
これは「マーチャンダイジングプロ セスと仮説─検証」(図3)のプロ セスの通り、横ぐしの業務プロセス 設計と情報共有が重要である良い例 である。
ここでは人間系とシステム 系の両輪で情報共有できるよう総合 情報システムが構築されている。
立ち会い検品廃止し物流費削減 コンビニ事業においては、スピー ディーな商品改廃・品揃えが重要で ある。
このMDサイクルの組み立て 図3 マーチャンダイジングプロセスと仮説─検証 ヒット商品はここから生まれた 商品本部 営業本部 店 舗 仮説 検証 取引先管理 商品開発安定供給 商品改廃・品揃え販売促進 販売促進 販売品揃え 商品管理発注 検品・陳列納品 情報発信 (商品案内など) 情報分析 マーケティング 販売検証 (会議・POS 情報) 資料:フューチャーアーキテクトより 79 MAY 2008 T活用事例として「発注、仕入れ検 品、販売のワークフローシステム化」 がある。
具体的には店舗での検品や 会計の省力化、自動化、本部での 会計処理の省力化、物流での店舗納 入時の立ち会い検品の廃止を行った。
これらはリアルタイム単品在庫管理 と総合情報システムの構築にもつな げている。
業務システムでは、発注↓仕入れ 検品↓販売・入出金(POSレジ) ↓廃棄・返品↓在庫変更・棚卸し に至るプロセスをバーコードの活用 などによりワークフローシステム化 した。
そのワークフローに同期して 会計システムへつなげ、伝票データ、 仕入れ計上、売り上げ・経費・在庫 変更処理、会計月次処理の自動化を 行った。
一方、これらの業務から発生する 情報を情報・在庫システムにつなげ、 発注データ、納品データ、販売デー タ、単品在庫(リアルタイム)、会 計・商品情報の収集の自動化を実現 した。
発注データは、その仕入れ検品の ために店舗に送られ、商品納入時に 商品のバーコードを読むとシステム は検品開始と理解し、自動的に発注 数を画面に表示する。
実納入数をチ ェックすることで、仕入れ検品をペ ーパーレスで処理することが可能と なる。
同時に納品データとして在庫 ファイルを更新し、仕入れ計上の会 計処理を行う仕組みだ。
検品終了ボタンを押した時に未検 品商品があれば、システムからアラ ートが出るなど作業は簡単でミスが 起きにくい。
このためデータ精度は 高くなっている。
誰でも正確に行え る方式とすることで、店頭での立ち 会い検品を廃止し、配送効率を上げ て物流費を大幅に削減している。
S社はこのIT活用のワークフロ ーシステム化で省力化と情報化を同 時実現し、効率性と効果性を同時に 向上させている。
さらにリアルタイ ムの情報化は、行為の支援情報/行 為そのものの分析/行為の結果の分 析という新情報システムへと進展し ていく。
新たなIT活用という視点では、 オープンシステムへの全面的な移行 とマルチメディアのビジネス領域で の本格活用という点も挙げられる。
先進技術の活用を通じ、大幅なサー ビスレベルの向上とコストセービン グを実現している。
店舗ではオーナー夫婦を中心に総 勢二〇万人のパート・アルバイトが おり、大半が売り場の責任者として 発注を分担している。
発注作業を行 う機器「GOT(グラフィック・オ ーダー・ターミナル)」は、POS情 報、商品情報、天気情報、地域の催 事カレンダー、商品単品分析など発 注に必要な各種情報を一つの画面に 統合した、マルチメディアを駆使し たシームレスな情報システムとなっ ている。
徹底した機能連携分析と業 務プロセス設計にIT活用を融合す ることが、業務プロセスの革新を実 現する。
次回フォーラムのお知らせ 次回フォーラムは5月15日(木)「ウエアハウス マネジメントシステム:見える化事例」(講師:實 藤政子ロジスティクス経営士/フロンティア・テク ノウェア取締役ソリューション統括本部部長)を 予定している。
このフォーラムは年間計画に基 づいて運営しているが、単月のみの参加も可能。
一回の参加費は6,000円。
ご希望の方は事務 局(sole-j-offi ce@cpost.plala.or.jp)までお 問い合わせください。
図4 業務プロセスの革新を実現する情報システムの考え方 スピーディーな商品改廃・品揃えに生かしている 時代の変化マーチャンダイジングの課題システムの問題 業務プロセスの革新 情報分析ソリューションの方法論 ■情報収集、情報分析と 商品開発力 ■スピーディーな商品改廃・ 品揃え ■部門間の情報共有と提 案型売場づくり ■業務に必要なデータが 揃っていない ■部門間に見ているデータ がバラバラ ■業務の流れと情報活用 が分断 ■売り手市場から買い手市 場へ ■商品ライフサイクルの短 縮化 ■人材、スタッフ不足の深 刻化 発想の転換、 ビジネス方法論の導入 マーチャンダイジング プロセスの見直し IT の提案型活用 オープンリアルタイム技術の採用 部門機能の整理と 業務と情報の連動 ■商品部の商品選定・開 発から営業部の店舗支 援、店舗での品揃え・ 販売までの流れを整理 ■人間系とシステム系の 組み合せによる情報共 有と業務品質の向上 ■ベストプラクティスを参考 に、各部門の「あるべき 機能」(役割)を実務的 に整理しシステム化 ■MD 業務の流れにそった 提案型情報システムと ワークフロー化 ■結果管理型、プッシュ型 マネジメントから、仮説─ 検証型、プロセス支援 型マネジメントへ ■業務改善手法とシステム 構築手法に基づくビジネ ス方法論の導入 ?ワークフロー、リコメンデーション、コミュニケーションで行為をサポートする総合ソリューション ?ユーザー特性、組織階層に柔軟に対応する統合情報システム ?複合的かつシナリオ化された情報分析を実現するコンポーネント群の採用 流通業を取り巻く課題 資料:フューチャーアーキテクトより
三月 のフォーラムでは大手コンビニエン スストアの総合情報システムの開発 を経験された、フューチャーアーキ テクトの碓井誠副社長を招き、「業 務プロセスの革新と新たなIT活用」 と題した講演を頂いた。
講演内容を 報告する。
世の中の変化をとらえる まず、大手コンビニの経営環境に フォーカスを当てよう。
小売業の概況を、小売業市場の規 模の推移、従業員規模別事業所数の 変化などで見てみる。
小売業の年間売り上げは一九九七 年をピークに縮小傾向であるのに対 し、売り場面積はコンスタントに拡 大傾向にある。
一方で、従業員数は 九九年をピークに減少している。
ま た、四人以下の小規模店舗数は減少 傾向にあるが、五〇人以上の大型店 は増加の傾向にある。
チェーンストアの販売効率はピー ク時の九一年から半減している。
二 〇〇六年の統計では、店舗面積は六 九年末の二倍の二三〇七万平方メー トルに達した。
これに対して全店ベ ースの売上高は九六年度の一七兆円 が過去最高だったが、ここから二割 近く減少し、一四兆二一六億円とな った。
一平方メートル当たりの年間 売上高は約六〇万円。
ピークとなっ た九一年度の約一二〇万円に比べ半 分に落ち込んでいる。
こうした数字 でも見て取れるように、小売業は非 常に厳しい環境にある。
このような経営環境の中で、大手 コンビニS社では、一店当たり平均 一日販売高は九三年をピークにやや 減少してきているものの、一平方メ ートル当たりの売り上げは二二〇万 円、全社粗利益率は上昇基調を維持 し三〇%を超えており、健闘してい るといえる。
ここから、S社の成長を支えた戦 略と取り組みを紹介する。
企業戦略は「世の中の変化」をど うとらえるかが重要である。
過去を 振り返ると、バブル終焉の九三年ま でに、「売り手社会」は「買い手社 会」へ変化した。
これからは、「買 い手社会」が「価値社会」へ進展す るものととらえている。
こうした「世の中の変化」を、? 質・価値、?チャネル・プロセス、? リソース配分、の三つの領域で整理 してみると、 ?質・価値:十人一色→十人十色→ 一人十色 ?チャネル・プロセス:供給者のイ ニシアチブ→市場原理・消費者の イニシアチブ→生活者主権 ?リソース配分:規制と保護管理→ 規制緩和・競争原理の拡大→価値 指向のイノベーション という変化が起こっている。
また、GDP(国内総生産)の七 〇%、就業者数全体の六七%を占め る「サービス産業」の「来たるべき 価値社会」を?サービスイノベーショ ン、?ビジネス社会のイノベーション、 ?サービスイノベーションを支える技 術革新、の三つの視点でとらえると、 図1 戦略の組み立てと組織機能の全体像 部門機能を横ぐしの業務プロセスでくくり、機能連携を強める 経営理念 価値提案 基本戦略と テーマ 戦略を支える イノベーション ■購買代理型の利便性を提供する 小売業 ■商品、サービス開発。
潜在需要 の顕在化 ■小売店のネットワーク化と活性化 ■顧客の立場での品揃えと提案〈店 舗〉 ■商品開発、サービス開発〈商品〉 ■市場・顧客とサプライチェーンの 連動〈インフラ〉 ■業務プロセス革新、情報共有 ■システム革新プロセスの組み立てとシステム化 重要な横ぐし機能を整理し、部門横断型のプロセスとして組み立てる 管理出店生産物流商品営業店舗運営 部門戦略(組織体制) 部門機能と機能連携 経営戦略・全社戦略 機能と組織に落とす 経営理念・価値提案 経営戦略に具体化 技術開発プロセス 商品開発プロセス 情報共有プロセス ・・・ 商品部の機能 ■マーケティング ■商品改廃 ■安定供給 ■販売促進 ■商品開発 ■情報発信 ■取引先管理 ■利益管理 資料:フューチャーアーキテクトより 77 MAY 2008 に具体的に落とし込んでいくことが 重要である。
次に基本戦略とテーマ を明確にし、経営戦略・全社戦略 として、機能と組織に落としていく。
さらに部門戦略(組織体制)に展開 する際に、部門機能と機能連携を明 確にする必要がある。
ここで重要なことは、これら戦 略の展開を支えるイノベーションが、 業務プロセス、情報共有、システム の領域に個別に存在するのではなく、 “横ぐし”でまたがって必要だという ことである。
部門間の横ぐし機能を 整理し、部門横断型のプロセスとし て組み立てて、システム化する。
つ まり、商品本部、営業本部、店舗、 物流本部など部門間のあるべき機能 を整理するとともに、部門横断で業 務プロセスを設計する必要がある。
原材料メーカー、製造メーカー/ ベンダー、物流センター、商品部、営 業部、加盟店間を、 ?情報共有・意思決定プロセス ?マーケティング・販売支援プロセ ス ?商品開発・調達管理プロセス ?技術開発・システム開発プロセス ?品質管理・サービス管理プロセス ?マネジメント・ガバナンスプロセス などに部門機能を横ぐしの業務プロ ?サービスイノベーション:価値訴 求、多様な価値充足、顧客参加の コラボ型・提案型サービス、コト・ モノ・TPOに応じた複合サービ スと品質の差別化 ?ビジネス社会のイノベーション: 参加交流型サービスと国際的・社 会的共生と共創、顧客接点のマル チチャネル化と連携、産業・行政・ 社会の枠組みの革新とプロセス・サ ービスの複合化と連携、労働生産 性+品質・サービス・満足度、共 生社会とワークライフバランス ?サービスイノベーションを支える 技術革新:リアルとネットのチャ ネル・サービス・プロセスの連携 とチープ革命、Web X . O・ユ ビキタス化、IT革命による経営 改革・社会改革、サービス革新へ の科学的・工学的アプローチ と進展していくととらえている。
このように「世の中の変化」をと らえた上で、「業務プロセスの革新と ITの活用」をどのように進めてき たか、また、どのように進めていく べきかをS社を例に述べる。
業務プロセスの横ぐし化が重要 戦略の組み立てと組織機能の全体 像は図1の通りである。
まず第一に、 「経営理念・価値提案」を経営戦略 図2 バリューチェーンの組み立て。
本部は各プロセスにおける 支援活動(全般管理、技術開発、購買・調達活動)を担う サプライチェーンの効率化と支援 アウトソーシングの活用・パートナーシップの組立て購買代行型小売業としての支援 メーカーコスト・ベンダーコストの低減 品質管理 メーカー・ベンダーの協業 取引先総合システム 生産管理・在庫管理 情報共有 発注・物流システム 取引先の管理・支援 本部情報システム 情報発信 情報共有 会計システム POS 情報システム 商品開発、ビジネスモデル開発、情報システム開発 商品共同開発 製法・製造技術開発 物流技術開発 FCシステム開発 新規事業開発 店舗設備開発 ハードウェア・ソフトウェア・ミドルウェア開発 店舗情報システム 情報共有 発注システム 店舗会計システム POS 情報システム 本部フランチャイズシステム 情報共有・ダイレクトコミュニケーション粗利分配方式 オープンアカウント フランチャイズシステム 加盟店情報システム・ 販売設備の貸与 本部 マーケティング 商品取引先選定と推奨 最低保証制度 物流設備・車両の共同購入 原材料・設備・資材(什器、 包装材等)の共同購入 システム機器・設備機器の共同購入 原材料メーカー 原材料調達開発・製造物流マーチャンダイジング加盟店支援販売サービス 製造メーカー・ ベンダー物流センター商品本部 ■情報収集・分析 とマーケティング ■商品開発 ■商品政策と品揃 え ■安定供給・品質 管理 ■情報発信 ■取引先管理 ■販売促進 ■売上高・利益管 理 オペレーション本部 ■マーケティングと 情報共有 ■本部政策の指示 と指導 ■発注支援 ■品揃えと売場作 り支援 ■商品管理と在庫 管理 ■数値管理(売上 高・利益・経費) ■教育支援、人材 育成 ■店舗管理とルー ル管理 ■接客・サービス ■情報共有・マー ケティング ■発注 ■品揃えと売場作 り ■顧客管理 ■商品管理と在庫 管理 ■従業員管理 ■数値管理(売上 高・利益・経費) ■店舗管理・作業 割り当て 加盟店 全般管理 技術開発 購買・調達活動 業務連携・ 情報共有 情報システム 支援活動 主活動 本部企業の役割 マージン 資料:フューチャーアーキテクトより MAY 2008 78 セスでくくり、機能連携を強める。
従来はMD(マーチャンダイジング) プロセスを商品部の業務プロセスの ように考えていたが、商品部を中心 とした横ぐしでの、チームとしての デザインとなっている。
プロセスを 横ぐしで考えるとシステムは全体最 適化し、業務とシステムの相乗効果 が得られる。
これらの業務プロセスをバリュー チェーンとしてとらえると、本部は 各プロセスにおける支援活動を担っ ているといえる。
支援活動は全般管 理、技術開発、購買・調達活動であ る。
具体的には、 ■全般管理:業務連携・情報共有。
?サプライチェーンの効率化と支 援、?アウトソーシングの活用・ パートナーシップの組み立て、? 取引情報システム・本部情報シス テム・店舗情報システムの運用 ■技術開発:?商品開発、?ビジネ スモデル開発、?情報システム開 発 ■購買・調達活動:?取引先の管 理・支援、?本部での商品取引先 選定と推奨など となる(図2)。
さらに、これらを経営プラットフォ ームへと構築する。
その構造は、プ ラットフォーム機能の上に ■商品販売などのMDプロセス ■サービス:?収納代行など決済サ ービス、?プリントサービス、? チケット販売代行サービスなど ■パートナー連携:?メーカー・問 屋連携、?金融サービス・カード・ 会員連携、?チャネル連携 ■事業インフラ:?購買代理型小 売業、?物流システムなど ■システム基盤:?店舗ネットワー ク、?店舗システム、?POSレ ジ、?ATM、?チケットプリン ター、?光ブロードバンド+IS DNバックアップ などが並ぶかたちになっている。
チームMDでPBが大ヒット これまで業務プロセスの横ぐし化 が重要と述べてきたが、チームMD プロセスの例で紹介しよう。
まず、大手コンビニのフランチャイ ズ方式(役割分担)を説明する。
コ ンビニ事業は加盟店と本部の共同事 業である。
加盟店は店舗経営・販売 に専念し、本部は加盟店経営をバッ クアップするという役割分担で粗利 を分配し、共存共栄を目指して事業 を行っている。
「売り手市場」から 「買い手市場」、さらに「価値社会」 と情報活用のためのソリューション として、「業務プロセスの革新を実現 する情報システムの考え方」(図4) を参照されたい。
ポイントは、IT の提案型活用とオープンリアルタイ ム技術の採用だ。
つまり、?ワーク フロー、リコメンデーション、コミュ ニケーションで行為をサポートする 総合ソリューション、?ユーザー特 性、組織階層に柔軟に対応する統合 情報システム、?複合的かつシナリ オ化された情報分析を実現するコン ポーネント群の採用、である。
大きな効果を挙げている新たなI へ世の中が変化しているのに合わせ て、現在、コンビニ事業ではオリジ ナル商品の開発が重要な戦略となっ ている。
S社では、オリジナル商品の売り 上げが全商品売り上げの五二%を占 める。
例えばラーメンの商品開発で は、ラーメン有名店、具材メーカー、 スープメーカー、容器メーカー、販売 促進部門、問屋・物流会社、製造メ ーカー、消費者モニターでのチーム MDにより、製造技術の向上と在庫 管理・品質管理の強化に成功。
製造 から販売までの日数を短縮すること で、生麺タイプの味の良いオリジナ ル商品を開発することができた。
同 商品は二四八円(通常のNB商品は 一四三円)という価格設定にもかか わらず、一〇〇〇万個の販売を実現 した。
これは「マーチャンダイジングプロ セスと仮説─検証」(図3)のプロ セスの通り、横ぐしの業務プロセス 設計と情報共有が重要である良い例 である。
ここでは人間系とシステム 系の両輪で情報共有できるよう総合 情報システムが構築されている。
立ち会い検品廃止し物流費削減 コンビニ事業においては、スピー ディーな商品改廃・品揃えが重要で ある。
このMDサイクルの組み立て 図3 マーチャンダイジングプロセスと仮説─検証 ヒット商品はここから生まれた 商品本部 営業本部 店 舗 仮説 検証 取引先管理 商品開発安定供給 商品改廃・品揃え販売促進 販売促進 販売品揃え 商品管理発注 検品・陳列納品 情報発信 (商品案内など) 情報分析 マーケティング 販売検証 (会議・POS 情報) 資料:フューチャーアーキテクトより 79 MAY 2008 T活用事例として「発注、仕入れ検 品、販売のワークフローシステム化」 がある。
具体的には店舗での検品や 会計の省力化、自動化、本部での 会計処理の省力化、物流での店舗納 入時の立ち会い検品の廃止を行った。
これらはリアルタイム単品在庫管理 と総合情報システムの構築にもつな げている。
業務システムでは、発注↓仕入れ 検品↓販売・入出金(POSレジ) ↓廃棄・返品↓在庫変更・棚卸し に至るプロセスをバーコードの活用 などによりワークフローシステム化 した。
そのワークフローに同期して 会計システムへつなげ、伝票データ、 仕入れ計上、売り上げ・経費・在庫 変更処理、会計月次処理の自動化を 行った。
一方、これらの業務から発生する 情報を情報・在庫システムにつなげ、 発注データ、納品データ、販売デー タ、単品在庫(リアルタイム)、会 計・商品情報の収集の自動化を実現 した。
発注データは、その仕入れ検品の ために店舗に送られ、商品納入時に 商品のバーコードを読むとシステム は検品開始と理解し、自動的に発注 数を画面に表示する。
実納入数をチ ェックすることで、仕入れ検品をペ ーパーレスで処理することが可能と なる。
同時に納品データとして在庫 ファイルを更新し、仕入れ計上の会 計処理を行う仕組みだ。
検品終了ボタンを押した時に未検 品商品があれば、システムからアラ ートが出るなど作業は簡単でミスが 起きにくい。
このためデータ精度は 高くなっている。
誰でも正確に行え る方式とすることで、店頭での立ち 会い検品を廃止し、配送効率を上げ て物流費を大幅に削減している。
S社はこのIT活用のワークフロ ーシステム化で省力化と情報化を同 時実現し、効率性と効果性を同時に 向上させている。
さらにリアルタイ ムの情報化は、行為の支援情報/行 為そのものの分析/行為の結果の分 析という新情報システムへと進展し ていく。
新たなIT活用という視点では、 オープンシステムへの全面的な移行 とマルチメディアのビジネス領域で の本格活用という点も挙げられる。
先進技術の活用を通じ、大幅なサー ビスレベルの向上とコストセービン グを実現している。
店舗ではオーナー夫婦を中心に総 勢二〇万人のパート・アルバイトが おり、大半が売り場の責任者として 発注を分担している。
発注作業を行 う機器「GOT(グラフィック・オ ーダー・ターミナル)」は、POS情 報、商品情報、天気情報、地域の催 事カレンダー、商品単品分析など発 注に必要な各種情報を一つの画面に 統合した、マルチメディアを駆使し たシームレスな情報システムとなっ ている。
徹底した機能連携分析と業 務プロセス設計にIT活用を融合す ることが、業務プロセスの革新を実 現する。
次回フォーラムのお知らせ 次回フォーラムは5月15日(木)「ウエアハウス マネジメントシステム:見える化事例」(講師:實 藤政子ロジスティクス経営士/フロンティア・テク ノウェア取締役ソリューション統括本部部長)を 予定している。
このフォーラムは年間計画に基 づいて運営しているが、単月のみの参加も可能。
一回の参加費は6,000円。
ご希望の方は事務 局(sole-j-offi ce@cpost.plala.or.jp)までお 問い合わせください。
図4 業務プロセスの革新を実現する情報システムの考え方 スピーディーな商品改廃・品揃えに生かしている 時代の変化マーチャンダイジングの課題システムの問題 業務プロセスの革新 情報分析ソリューションの方法論 ■情報収集、情報分析と 商品開発力 ■スピーディーな商品改廃・ 品揃え ■部門間の情報共有と提 案型売場づくり ■業務に必要なデータが 揃っていない ■部門間に見ているデータ がバラバラ ■業務の流れと情報活用 が分断 ■売り手市場から買い手市 場へ ■商品ライフサイクルの短 縮化 ■人材、スタッフ不足の深 刻化 発想の転換、 ビジネス方法論の導入 マーチャンダイジング プロセスの見直し IT の提案型活用 オープンリアルタイム技術の採用 部門機能の整理と 業務と情報の連動 ■商品部の商品選定・開 発から営業部の店舗支 援、店舗での品揃え・ 販売までの流れを整理 ■人間系とシステム系の 組み合せによる情報共 有と業務品質の向上 ■ベストプラクティスを参考 に、各部門の「あるべき 機能」(役割)を実務的 に整理しシステム化 ■MD 業務の流れにそった 提案型情報システムと ワークフロー化 ■結果管理型、プッシュ型 マネジメントから、仮説─ 検証型、プロセス支援 型マネジメントへ ■業務改善手法とシステム 構築手法に基づくビジネ ス方法論の導入 ?ワークフロー、リコメンデーション、コミュニケーションで行為をサポートする総合ソリューション ?ユーザー特性、組織階層に柔軟に対応する統合情報システム ?複合的かつシナリオ化された情報分析を実現するコンポーネント群の採用 流通業を取り巻く課題 資料:フューチャーアーキテクトより
