2008年5月号
ケース

物流拠点 ジュピターショップチャンネル

MAY 2008  44 物流拠点 ジュピターショップチャンネル 拠点の新設に伴い管理を自社化 テレビ通販のインフラ作り進める 創業以来一〇年連続で増収  テレビ通販国内最大手のジュピターショップ チャンネル(以下、JSC)は昨年四月、物流 拠点の本稼働を機に拠点の管理を自社化した。
「現場のオペレーションは3PLに委託するとし ても、設備投資までは任せられない。
拠点管 理に当社が関与して設備に直接投資すること で、テレビ通販に合った物流を実現できた。
投 資額に見合った効果は十分に得られた」と、同 社の川俣良隆執行役員ロジスティクスオペレー ション部長は胸を張る。
 同社は一九九六年の創業以来、一〇年連続 で増収を記録している(図1)。
九七年度に一 七億円だった売上高はその後順調に増え続け、 〇七年度はついに一〇〇〇億円を超えた。
主 な要因として、同社の番組を放送しているCS 放送やケーブルテレビの普及に伴い、視聴可能 世帯数が急増していることが挙げられる。
同 社の番組視聴可能世帯数は、創業当初の二三 四万世帯から、〇七年度には二二一二万世帯 へと、一〇倍近くに増加した。
 商品はアパレル、ジュエリー、化粧品を中心 に扱っている。
メーンユーザーは三〇〜五〇代 の女性だ。
番組は自社スタジオで制作しており、 〇四年九月から日本のテレビ通販初となる二四 時間生放送を実施している。
 テレビ通販にとって番組は売り場だ。
生放送 にすることで、視聴者の反応次第で放送時間 を調整し、売り場を自在に作り替えることがで きる。
また、同社はコールセンターの運営も自 社で行っている。
このため、商品の在庫状況 を番組内でリアルタイムに告知することが可能 になっている。
 例えば、放送中に商品の注文が殺到すると、 画面左上に「注文が殺到しています」というサ イドスーパーが表示される。
そして商品が売り 切れると、画面左の商品情報掲載欄に大きく 「Sold out」と表示、視聴者に在庫がなくなった ことを告知する。
これに合わせて放送時間を 縮小して、次の商品を紹介する準備、調整を 行う。
 従来は一日当たりの生放送時間が八〜一〇 時間で、残りは録画を放送していた。
商品の 在庫がなくなった後にも録画テープを流さざる を得ないこともあった。
完全に生放送にするこ とで、販売機会の損失防止につながった。
 番組放送から拠点運営までの流れは以下の通 り。
番組で紹介した商品の問い合わせに、コー ルセンターのオペレーターが対応する。
一日分 の受注データを翌日深夜二時にまとめ、コール センターから物流拠点にデータを送信する。
こ のデータをWMSで処理して、物流拠点のオペ  テレビ通販国内最大手のジュピターショップチャンネル は2006年8月に物流拠点を新設し、従来の4拠点を1拠点 に集約した。
これに伴い管理方法も刷新。
それまで3PL に委託していた拠点の管理を自社化した。
各種のマテハ ン機器を駆使してテレビ通販の物流特性に適応したインフ ラ作りを進めている。
川俣良隆執行役員ロジステ ィクスオペレーション部長 45  MAY 2008 レーションに必要な情報を出力している。
 商品は受注翌日に全て出荷している。
リー ドタイムは四日前後になる。
川俣執行役員は 「早く商品を届けることを目標にしていた時期 もあった。
しかし、消費者の配送ニーズは、ス ピードよりも日付指定や時間指定といった確実 に届けることの方が大きい」という。
 これまで物流拠点は千葉県舞浜市の四カ所 に分散していた。
スペースが足りなくなったら 継ぎ足すといったように、場当たり的に拡張し てきた。
しかし、それも限界に来た。
事業の 急拡大に物流の整備が追いつかない。
「みるみ るうちにモノで溢れてしまい、毎日が戦争状態 だった」と川俣執行役員は当時を振り返る。
 テレビ通販特有の出荷波動も課題だった。
同 社の一日のセンター出荷量の平均は約三万六〇 〇〇個。
週末など在宅率の高い日に放送する特 番や、ヒット商品の生まれた日は出荷量が多く、 最大で平均出荷量の三倍にもなる。
一方少な い日は、平均出荷量の三分の一にまで落ち込む。
物量の増減に、柔軟に対応する必要がある。
 新たな販売チャネルとして台頭しているネッ ト通販への対応にも迫られていた。
規模的に はまだまだテレビ通販に劣るものの、ネット通 販の売り上げも徐々に拡大してきている。
 テレビ通販とネット通販は特徴が異なる。
テ レビ通販は少品種多量型で、注文は放送後数日 以内に集中する。
アイテム数は週当たり七〇〇 品程度。
そのうち半数が新商品だ。
一方、ネ ット通販は多品種少量型で、アイテム数が一万 品以上と多い。
注文は掲載期間にわたって断続 的に入り続けるため、テレビ通販のような出荷 波動はなく、比較的安定している。
物流改革部隊?七人の侍?結成  物流上の課題は山積していた。
その担当組 織として「オペレーション本部」が設置されて いたが、物流のプロと呼べる人材はいなかった。
物流体制を抜本的に改めなければならないこ とはわかっていたが、具体的なアイデアもリー ダーもいなかった。
そこで〇五年四月、これま でメーカーで物流業務に従事してきた川俣執行 役員が同社に招聘された。
 川俣執行役員の陣頭指揮の下、物流改革が 始まった。
まずはプロジェクトチームの結成だ。
川俣執行役員の入社当初、オペレーション本部 にはたった二人しかいなかった。
新たに外部か ら物流のエキスパート五人を採用した。
こうし て後に社内で“七人の侍”と呼ばれる、物流 改革部隊が出来上がった。
彼らが組織から方針 まで、同社の物流のほとんどを変えた。
 同年五月、オペレーション本部を、「ロジス ティクスオペレーション部」に名称変更。
これ を機に正式に組織を再編した。
搬入や配送の管 理を行う「物流計画グループ」、出荷量の予測 や工数管理、TQC(Total Quality Control: 統合的品質管理)を推進する「物流企画グル ープ」、物流センターを管理する「物流センタ ーグループ」と、機能別に三つに分けた。
 同年七月、新たな物流ビジョンとして「ハイ 97 年度 98 年度 99 年度 00 年度 01 年度 02 年度 03 年度 04 年度 05 年度 06 年度 07 年度 1,200 1,000 800 600 400 200 0 (単位:億円) (単位:万世帯) 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 図1 売上高と番組視聴可能世帯の推移 売上高(左軸) 番組視聴可能世帯数 (右軸) JSCではアパレル、かばん、靴、ジュエリー、化粧 品、コスメティック、健康食品をファッション系と括 り、売上高の7割を占める。
ほかにはキッチン用品、 家電、食品などを扱っている。
顧客の男女比率は女 性が87 %、男性が13%と、圧倒的に女性が多い MAY 2008  46 ブリッドロジスティクス戦略」を発表した。
投 資を極力抑え、今後の売上高増加に伴う出荷 量の拡大や、将来の環境変化に柔軟に対応す ることで、テレビ通販に適応した物流インフラ を構築していくという方針だ。
 〇六年八月には、千葉県習志野市に物流拠 点を新設した。
それまで近隣の舞浜市に分散 していた四拠点を順次集約していき、〇七年 四月に本稼働した。
ハイブリッドロジスティク ス戦略に基づき、拠点には始め必要最低限の 設備投資のみを行った。
その後の出荷数量の 伸びに従い、能力を段階的に高めていけるよう に設計した。
 戦略の策定から本稼働までには二年近くの 時間を要した。
川俣執行役員は「そこまで時 間をかけなくてもいいのではないかと言われた こともあった。
だが、物流拠点の立ち上げは慎 重すぎるくらいがちょうどいい。
仮に失敗した 時のフォローを考えると、そっちの方が大変だ。
拠点は設備、システム、オペレーションの三つ が揃って初めて完成する」と説明する。
 新拠点の土地や建物は賃借し、投資額を抑 えるという方針は維持しながらも、マテハン機 器には自社で投資した。
少量在庫商品を保管 するための自動倉庫、小物商品の複合オーダー に対応するピッキングカート、一時間に八〇〇 〇個の荷物を処理し、「これ以上速いものは日 本にない」と川俣執行役員が自慢する出荷ソ ーターなどが導入された。
 拠点立ち上げの際には出荷を二日止めた。
し がってしまう」と川俣執行役員。
固定費を極 力抑えて、将来の変化対応力を確保すること が可能になった。
 拠点の集約に伴い、管理方法にもメスを入れ た。
以前は住商グローバルロジスティクス(以 下、SGL)に委託していた拠点管理を自社 化した。
「これまで当社は物流に関して、注文 に合わせて出荷する程度の認識しか持っていな かった。
物流に関しては素人の集まりで、その ために外注していたのが実情だった」と川俣執 行役員は説明する。
かし、止めた分は立ち上げ後 二日でキャッチアップするこ とができた。
「物流拠点の立 ち上げというと、夜中までや る突貫作業になるのが一般 的だ。
しかし、今回は定時 の一七時に出荷作業を終了 することができた。
しかも トラブルは全くなかった。
私 はこれまで二、三度拠点の 立ち上げを指揮したことが あるが、こんなに成功した のは初めてだ」と川俣執行 役員は顔をほころばせる。
 拠点を新設した効果はて きめんだった。
何より出荷能 力が拡大した。
同社は毎年 十一月の創業記念日に、一 日で一〇億円もの売上高を 記録する特別番組「アニバーサリー」を放送し ている。
〇六年の一日当たりの出荷量は八万 八〇〇〇個。
これが当時の物流機能の限界だ った。
それが昨年のアニバーサリーでは一日に 一〇万二〇〇〇個を出荷することができた。
 売り上げの伸長にも柔軟に対応できるように なった。
これから追加投資をすることで、現 在の売上高の倍にあたる、二〇〇〇億円まで 対応できる設計だ。
「最初に能力だけを確保し てしまうと、先行投資になってしまい、それ がフル活用されるまでは、固定費の増加につな 下段をピッキング棚として用い、上段を 保管に使うことでスペース効率を上げた カート付属のPC がピッキングを指示し、 間違いは音声で指摘する。
車体は非常に 軽く、女性でも楽々扱える スピードと安全性を兼ね備える。
コーヒー カップとソーサーを段ボールで梱包せずに 流しても割れなかったという ソーターから流れてきた商品を、リーダー で高速検品する 自動倉庫ハイテクピッキングカート 出荷ソーター自動検品 習志野市の新拠点に導入したマテハン 47  MAY 2008  新拠点では、倉庫内の実務作業は引き続き SGLに委託しているものの、管理は自ら主体 的に行っている。
「一配送当たりのコスト」な どのKPI(Key Performance Indicator:業 績評価指標)を設定、毎月SGLと合同会議 を開催し、生産性向上を実現するためのアイデ アを練っている。
 SGLとは物流に関する全ての情報を共有 している。
荷主であるJSCが、番組編成を もとに出荷量を予測。
それを受けてSGLが 作業量を予測して適正な人員配置を行う。
毎 月の設備の稼働率もとるようになり、目標の 算定方式まで共有している。
川俣執行役員は 「当社とSGLが互いのいいところを組み合わ せることで、より効率の良い拠点運営を行うこ とができる」という。
出荷作業の平準化に挑戦  配送業務を委託している佐川急便と共同で、 誤配の削減プロジェクトも進めた。
通販業にお いて誤配は致命的だ。
JSCは自ら配送現場 に足を運び、改善を行った。
そこで、現場か ら送り状の文字が見えにくいという指摘を受け、 文字を大きくして送付先等の視認性を向上さ せた。
これにより、誤配を八割も削減した。
 「プロジェクト開始当初はなかなか誤配が減 らなかったが、執念深く取り組み続けた。
おか げで、当社の配送品質は世間水準よりもはるか に良くなった。
当たり前のようなことかもしれ ないが、継続することは非凡なことだと思う」 と川俣執行役員はいう。
 佐川とは出荷作業の平準化にも取り組んで いる(図2)。
消費者の配送ニーズとして、配 送日付指定分の荷物がたくさんある。
JSC では三週先までの配送日付指定を受け付けて いる。
日付指定分の荷物の出荷作業を繰り上 げて行い、佐川に配送日程を調整してもらう ことで、毎日変わる出荷作業を一定化する仕 組みだ。
これによって、アルバイトの手配が格 段に容易になる。
現在トライアル中だ。
 組織の再編もようやく一段落着いた昨年七月 に、ロジスティクスオペレーション部が担当して いた品質管理機能を、「品質管理室」として独 立させた。
そして今年一月、川俣執行役員の 品質管理室部長の兼務を解消することで、ロ ジスティクスオペレーション部は物流専門の部 署として確立された。
発足当時は七人だったメ ンバーも、現在は二〇人に増えた。
 近年、放送環境の変化が著しい。
現在放送 している地上アナログテレビ放送は十一年七月 に終了予定だ。
今後は電話回線などを利用し た通信と融合する、地上デジタル放送に移行す る。
これはテレビ通販業界にさらなる追い風と なることが予想されている。
 例えば、以前は番組を見た視聴者が商品を 購入するためには、電話をかけるかインター ネットを立ち上げるといった作業が必要だった。
しかし、これからはテレビのリモコンひとつで、 即座に注文が可能になる。
テレビ通販は今まで 以上に身近な存在になるだろう。
 しかし、「視聴環境のデジタル化が進んでも、 視聴者に商品を届ける物流が今後もアナログで あることは変わらない。
販売の平準化はできな いので、どんなに出荷波動が生まれても、何 事もなかったように普通に出荷するのが我々の 使命だ」と、川俣部長は気を引き締める。
 現在は搬入の効率化に取り組んでいる。
同 社の商品は、日本製以外のものが半数を占め る。
特にアパレルは中国から輸入することが多 い。
そこで昨年、上海に検品センターを稼働さ せた。
また、タイにはジュエリーの検品センタ ーを設け、グローバルレベルでのサプライチェ ーンの効率化を目指している。
日本のテレビ通 販のトップを走るJSCの物流改革は続いてい る。
             (柴山高宏) 図2 出荷作業の平準化にも取り組んでいる 平均出荷量 3万6000個 4 月27日4 月28日4 月29日 4/29 日付 指定分 4/28 日付 指定分 4/29 日付 指定分 ?日付指定分の出荷作業を  前倒しして行う ?平均出荷量との  誤差を縮める 例 ?作業量の平準化に伴い、  アルバイトの人数も一定になる

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