2008年5月号
物流IT解剖

日本貨物鉄道

MAY 2008  60 第14 回 勘と経験に頼る作業を ITを駆使し標準化   日本貨物鉄道(JR貨物)の業務 改革が静かに前進している。
鉄道コ ンテナの現場オペレーションは長らく、 作業員の勘と経験に基づく“職人芸” に依存していた。
ITを使ってこれ を標準化する取り組みに、同社は二 〇〇〇年に着手した。
稼働時期が一 年半近く遅れ、開発コストも約一・八 倍に膨らんだものの、新システムは〇 五年八月に完全稼働にこぎつけた。
 ICタグ(RFID)やGPS(全 地球測位システム)を駆使するこの新 システム「IT─FRENS&TRA CE」が、大きな成果を生んでいる。
象徴的なのは〇六年一月に実施した 「コンテナ荷票」の廃止だ。
JR貨物 にとって、これは一大事件だった。
わ ざわざ「コンテナ荷票の廃止につい て」と題したニュースリリースを出し、 経営トップが「国鉄一三〇年の歴史 が変わった」と強調したほどだ。
 行き先や列車番号を示す帳票とし て輸送する全コンテナに付けられて いた「荷票」は、鉄道コンテナが始 まった一九五九年から使われてきた。
ロケーション管理が当たり前の倉庫内 とは違い、コンテナを扱う駅の構内 は広い。
全体を一元的にコントロール するのが難しく、荷票で現物に常に 情報を付けておくことが有効だった。
 そうした現場オペレーションを支え てきたのがベテランの作業者だ。
I Tで荷票はなくせても、それに代わ る作業方法を普及させようとしたら 労務管理など厄介な領域に踏み込ま ざるをえない。
荷票の廃止は、同社 の実態を熟知している者ほど尻込み するテーマだった。
実際、多くの関 係者は二〇〇〇年の時点でも、「荷票 はなくならない」と信じていた。
 新システムの開発プロジェクトを主 導したのはIT改革推進室の花岡俊 樹室長だ。
実は花岡氏はITの専門 家でもなければ、生え抜きの鉄道マ ンでもない。
大学を卒業してから九 年間は銀行で外国為替のディーリン グなどに従事し、一九九六年にJR 貨物に転職したという変わり種だ。
 「何の計画もなく銀行を辞めてか ら三カ月ほどたったとき、電車に乗 っていてたまたま転職雑誌の広告を みてJR貨物が中途採用を募集して いることを知った。
面白そうだと思 って応募してみたら通ってしまった」 と花岡室長は笑う。
 JR貨物に入社してからも、IT とはほとんど接点がなかった。
半年程 度の実習期間のあと現場に配属され、 しばらくすると本社の「業務刷新部」 に異動。
鉄道事業のリストラ策の立案 と実践を担当することになり、駅の 要員削減などを三年ほど担当した。
 二〇〇〇年に経営トップの指示で 異色のリーダーが牽引するIT改革 鉄道コンテナ50年の歴史が変わる 日本貨物鉄道  ITの素人集団が開発したコンテナ管理システムが、JR貨物の歴史を変えよう としている。
勘と経験に頼っていた現場業務を近代化し、長年の懸案だった列 車へのコンテナ積載率を向上させた。
最近では、システムに蓄積されたデータを 使った業務改革も進む。
一時は“お荷物プロジェクト”とまで言われた取り組み が、革新の原動力として機能しはじめた。
IT 改革推進室長とI-TEM セン ター所長を兼ねる花岡俊樹氏 コンテナ管理システム ◆本社組織  本社・IT推進本部の中に情報システム部とIT 改革推進室がある。
情報システム部には社員24人(常駐の外 部ベンダーを含めると約100人)、IT改革推進室には社員9人 (同約30人)が所属   ◆情報子会社  同じJRグループに属する情報会社に鉄道情報 システム(JRシステム)がある。
全国の旅客鉄道会社とともにJR 貨物も出資しており協力関係にあるが、JR貨物からみるとあくま でも協力ITベンダーの1社という位置付け 《概要》JR貨物は国鉄の分割民営化に伴い1987年に発足した。
発足当時の取扱輸送量は重 量ベースで「車扱」が75%、鉄道コンテナが25%だった。
これが現在では車扱37%、コンテ ナ63%と逆転している。
 そのコンテナ輸送を管理する主な仕組みは2つある。
ホスト系の貨物情報ネットワークシス テム「 FRENS」と、本稿で紹介している「IT-FRENS&TRACE」だ。
前者は「情報システム 部」が開発・運用している。
一方、後者は2000年に新設された「IT改革推進室」が開発し、稼 働後は両セクションで役割を分担しながら運用している。
 JR貨物全体では30数種類のシステムがあるが、IT改革推進室が関係しているのは 「IT-FRENS&TRACE」だけで、残りはすべて情報システム部の担当。
現在のIT改革推進室 は、ユーザーの視点からITを使った業務改革や商品企画を手掛けるという立場にある。
61  MAY 2008 た花岡氏は、IT改革推進室が新設 された狙いや、そこに参加する若手 社員が社内で募られていたことをま ったく知らなかった。
新たな役割に 戸惑いながらリーダー役を引き受けた。
システム部門ではなく 新設部門が開発を担当   最初にやるべき 仕事は、すでに一五 人程度まで絞り込ま れていた若手社員の 中から新設部門のメ ンバーを選ぶことだ った。
抱負が書かれ た候補者の論文を読 み、面接を重ねて二 人を選定した。
この 二人もITの専門家 ではない。
選考時に 問われていたのは、 むしろ改革を進める 熱意だった。
 こうして二〇〇〇 年六月、業務刷新部 の兼務社員三人と社 内応募で加わった専 任社員二人からなる IT改革推進室が 発足した。
今でこそ 同部は「IT推進本 部」の中で「情報システム部」と並ぶ 組織になっているが、当時は違った。
 IT改革推進室は「ロジスティクス 総本部」内の一部門であり、それ以 前からシステム関連の業務を一手に引 き受けていた情報システム部は「総 合企画本部」の傘下にあった。
つま り既存のIT部門とはまったく別の 組織として、ITを使った業務改革 を推進することが求められていた。
 業務内容は一切白紙だった。
動き だしてからも上層部の指示はない。
何 をすべきかから自分たちで考えろとい うわけだ。
連日、本社の会議室にこ もって、業務上の問題点などをホワイ トボードに書きだし議論を重ねた。
自 分たちの経験や知識だけを頼りにブレ ーン・ストーミングのような会議に明 け暮れて約半年がすぎた。
 特に指示されたわけではなかった が、会社に何か提言しなければとは 考えていた。
そこで経営陣も巻き込ん だ「社内会議」を発足。
〇一年の年 明けから提案をまとめる準備に入り、 約三カ月後に「IT─FRENS&T RACE」の基本構想を提示した。
 システム開発の技術的な制約には 縛られずに、ユーザーの視点からベス トと思えた計画を策定した。
柱とな るコンセプトは二つ。
列車へのコンテ ナ積載率の向上と、コンテナを取り 扱う作業のITによる標準化と透明 化である。
いずれもJR貨物が解決 すべき長年の懸案事項だった。
 計画は承認され、実地で実験を行 う許可も下りた。
早速JR貨物と付 き合いのあったITベンダーに声をか けて技術的な提案を募った。
システ ムの試作に着手し、一台のフォーク リフトを改造してICタグの読み取 り機やGPSなどを装備。
このフォ ークでタグ付きコンテナを取り扱うサ ーバーシステムも構築した。
 同年八月、東京貨物ターミナルで 実験を行った。
駅構内の一部エリアで 無線LANを使えるようにして、基 本構想の実現性を検討した。
約二五 〇〇万円を投じ、一カ月間続けた実 験の結果は上々だった。
確かな手応 えをつかんだIT改革推進室は、〇 一年が暮れるまでに「IT─FREN S&TRACE」全体の投資計画を 一気に作り上げてしまった。
徹底した現場回りで 机上のプランを補強   システムは主に三つの機能からな る。
?通運事業者がインターネット経 由で輸送枠を予約できる「IT─FR ENS」、?駅構内でコンテナのロケ ーションや取り扱い作業を管理する 「TRACE」、?コンテナを積んだ 「IT改革推進室」が発足したとき、 なぜか花岡氏に室長代理という役割 がまわってきた。
室長には当時、業 務刷新部長だった瀬山正氏(現取締 役東海支社長)が兼務で就き、花岡 氏には事実上のチームリーダーとして の役割が求められた。
 業務刷新部での仕事に没頭してい IT改革推進室 システム開発 図1 鉄道コンテナの管理を近代化した「IT-FRENS&TRACE(フレンズ&トレース)システム」 「FRENSシステム」 鉄道コンテナ輸送の列車設定、予約管理、コンテナ所在管理のためのシステム(1994 年より運用) しかし、“人手によるコンテナ取り扱い”が業務のベースとなっているのは旧態依然 ITを活用して、“システムによる自動化”への構造的変革を目指す IT-FRENS&TRACEシステムが2005 年8月より全面稼働開始 ●5 年間を要し、総投資額70 億円を投じて開発 ●国鉄時代を通じ40 年以上にわたる「コンテナ取り扱い業務」の構造的変革を実現 ●これにより年間20 億円の経費節減・増収効果を得る ?貨物輸送枠予約システムのIT 化 『IT-FRENSシステム』 貨物の申込条件に合わせ最適な輸送ル ートを自動選択。
不急貨物を空いている 列車に自動振り分けすることが可能に ?駅構内のロケーション管理を行う 『TRACEシステム』 「無線ICタグ」と「高精度GPS」を組 み合わせたシステムにより、駅構内のコ ンテナ位置とそのコンテナに関する輸送 情報をリアルタイムで把握 ?トラックの運行管理を支援する 『ドライバーシステム』 IDカードを利用することで、システムがト ラックドライバーをナビゲート。
コンテナ の積卸作業が必要な場合、フォークリフ ト運転手に作業指示を同時に伝達 貨物列車の輸送ルートに関する知識が なくても最適な輸送枠の確保が可能 売れ筋列車の供給枠が拡大され、閑 散列車の積載率も向上 コンテナの行先情報が記載された荷票 を廃止。
荷票に基づく駅構内作業が 不要 現場のシステム端末でトラックドライバ ーが伝票完了報告を行うことも可能 輸送業務の効率化 輸送の最適化 輸送力の増強 構内作業の効率化 構内作業の安全性向上 通運事業者の業務支援 通運事業所の集約化 MAY 2008  62 トラックの運行を支援する「ドライバ ーシステム」である。
 JR貨物はすでに九四年から、コ ンテナ輸送の予約などを管理する「F RENS」というホスト系のシステム を運用していた。
ただし、このシステ ムでは、通運事業者がわざわざ貨物 の発駅に出向き、専用端末に列車番 号などを入力する必要があった。
これ が使い勝手の悪さや、キャンセル発生 時の調整の硬直性につながっていた。
 一方、新たに開発するネット対応 の?「IT─FRENS」ではパソコ ンから予約できる。
しかも列車番号 ではなく、希望する着駅での到着指 定日時を入力すればコンピュータが 勝手に最適な輸送ルートを選ぶ。
「F RENS」と連動していてJR貨物 の裁量で輸送ルートを変更 できるため、輸送枠の柔軟 な調整も可能だ。
 ?「TRACE」は荷 票をICタグに置き換える ことでコンテナの一元的な ロケーション管理を実現す る。
?「ドライバーシステ ム」では、コンテナの搬出 搬入作業の際にトラックド ライバーが使う専用端末か ら情報を吸い上げ、「TR ACE」によるロケーショ ン管理を効率化する。
 計画時の投資総額は約 四〇億円。
荷票の廃止など を伴うだけに、冒頭で述べ たような“現実の壁”も予 想された。
しかし実現でき れば、JR貨物のコンテナ 管理は抜本的に変わる。
半 ば当たって砕けるつもり で、〇二年一月に開催された社内会 議で新システムの投資計画を経営陣 に説明した。
 そのときの様子を花岡氏は、次の ように振り返る。
「理想的なシステム ではあったが、既存の仕組みをあま りにも大きく変えてしまう。
簡単に は受け入れられないと思っていた。
と ころが『いいんじゃないか』とあっ さり承認されてしまった。
あまりに も簡単だったため、同席していたI T改革推進室のメンバーと思わず顔 を見合わせたことを覚えている」  事態はとんとん拍子で進みはじめ た。
正式にゴーサインが出る一方で、 新システムを〇四年一月に稼働させ ることも規定方針となった。
花岡氏 はIT改革推進室のメンバーを二分 し、基本構想をシステムの設計書レ ベルに落とし込んでいくチームと、現 場回りをするチームに分けた。
 このとき現場回りを本格化しよう と考えたのは、実際にシステムを導 入するときの難しさを理解していた からだ。
荷票すら否定する新システ ムへの反発は計り知れない。
これを ソフトランディングさせるための道筋 を見つけておく必要があった。
 現場チームは手分けをして全国の 駅を回り、約二年かけて一四〇余り の駅をほぼすべて訪れた。
花岡氏自 身も約八〇カ所に行き、現場の実情 を見極めようとした。
訪問先ではま ず、その駅のキーマンを見極めた。
そ して、その人の二四時間勤務につい て歩き、どんな情報を見て、どのよ うな意思決定をしているのかをつぶ さに観察した。
ときには邪魔者扱い されながらも、ひたすら現場担当者 の目線を追い続けた。
 予想していた以上の実態を目の当 たりにした。
「同じ仕事をやる手順が 駅によってまったく違っていた。
し かも、よそのやり方を知らないから、 自分たちが正しいと信じている。
『こ りゃダメだ』と自信を失いかけた。
業 務の標準化というのは、ほかでやっ ている正しいやり方を教えることだ とつくづく思った」(花岡室長) 苦肉の策で置いた部署が システムの浸透に貢献   そうこうしている間にもシステム 開発は進められた。
だが「IT─FR ENS」と「TRACE」という異 質のシステムを、限られた人員で同 時に開発する計画には無理があった。
システムを作っては修正するといっ た紆余曲折を余儀なくされ、予定し ていた〇四年一月の全面稼働は難し い状況に追い込まれてしまった。
 とはいえ、公表したスケジュールを ヘルプデスク B-1 IT-FRENS 利用運送事業者JR貨物 ドライバーズステーション トラックドライバー 伝票出力d b c a a c b d A-1 A-2 A-3 A-4 ?駅サーバー  設置 GPS ?貨車にRFIDタグ装着 連携 ?ドライバーシステム設置  (トラックドライバーが取り扱うシステム) ?ドライバーシステムで伝票出力 ?ドライバーシステムで伝票作業終了入力 ?ホーム上を区分け ?リフト内に小型パソコン、ディ スプレイ、GPS測位アンテナ ?リフトにRFIDタグ読取装置 ?駅との相互データ通信可能 ?リフトの位置管理 ?コンテナにRFIDタグ装着 ?トラックにRFIDタグ装着 図2 ICタグとGPSでコンテナを管理する仕組み ?積載時、  自動積載報告 無線LANアンテナ 駅本屋作業指示伝達?ドライバーには  IDカード 63  MAY 2008 いた。
マニュアルの更新だけでも膨大 な労力が予想された。
こうした事態 を避けるため、基本的な項目以外は あえてマニュアルを作らなかった。
 代わりに苦肉の策で設置したのが 「ヘルプデスク」と呼ぶ二四時間対応 のコールセンターだった。
IT改革推 進室の中に電話を一〇回線ほど引き、 ユーザーからの問い合わせに答える体 制を整えた。
もっともこれは社内で 正式に認められた組織ではなく、独 断で設置したものだった。
人材は補 充されず、システム開発の担当者が 兼務で対応するしかなかった。
 大量の問い合わせが寄せられた。
ピ ークは、〇五年八月にドライバーシス テムを稼働したときだった。
一日に 二万コールもの電話が押し寄せ、朝 から晩まで電話が鳴り続けた。
シス テムのバグ取りに追われていたIT 改革推進室のメンバーは大車輪で対 応した。
連日、夜の一〇時から「障 害管理会議」を催し、システムの問 題点を改善していった。
 現場に及ぼす影響を最小限に抑え るため、ときには実務に合わせてデ ータベースの内容を書き換えるといっ た“裏技”も使った。
「ヘルプデスク では、とにかく丁寧に対応すること を心がけた。
苦情やクレームでは頭 にくることも少なくなかったが、相 手の思っていることをすべて聞こう とした。
その一方で、そもそも正し い手順とは何かを認識してもらえる ようなサポートに徹した」と花岡室 長はいう。
  IT駆使し輸送ルートを 四〇万から一〇万に統合   苦労のかいあって新システムの評価 は徐々に高まっていった。
特に影響 が大きかったのは外部からの好評価 だ。
同システムが評価されてJR貨 物は、〇六年一〇月に国土交通大臣 から表彰され、翌年も再び表彰され た。
システムが安定してきたことも あって、蓄積されるデータを欲すると いった前向きな要望も増えてきた。
 IT改革推進室の業務内容も様変 わりした。
もともとプロジェクト的に 発足した部署だけに、システムが軌 道に乗った時点で解散してもおかし くない組織だった。
それが今も存続 しているばかりか、過去三年半にわ たって非公式な組織だったヘルプデス クが、今年四月から正式に「I─TE Mセンター」として再出発した。
 現在のIT改革推進室の役割は、 もはや情報システムの枠からはみ出 している。
システムに蓄積されるデ ータを分析することで業務改革を推 進したり、商品企画を支援するマー ケティング部門として機能している。
 昨年一〇月には、それまで四〇万 パターンあった輸送ルートを一〇万パ ターンに統廃合するという離れ業を やってのけた。
例えば札幌から鹿児 島にコンテナを運ぶ輸送ルートは、東 京経由や大阪経由など中継駅や利用 列車によって複数のパターンが組め る。
これを全国一四〇余りの駅でみ ると四〇万ルートにも上っていた。
 かつての常識では、ユーザーの選 択肢が増えるため、輸送ルートは多 いほどいいと考えられていた。
しか し、積載率が向上しない原因を調べ ていくうちに、ルートが増えるほど 積載率が落ちることに気づいた。
各 地の駅があらかじめ列車の枠を押さ える“共食い現象”によって、ムダ が玉突きのように伝播して全体の効 率を落としていた。
 IT改革推進室はシステムに残さ れているデータを徹底的に分析し、本 当に必要な輸送ルートをあぶりだし 一〇万ルートに集約した。
最近では この一〇万ルートを精査して、供給 力を増強すべきルートや、さらに統 廃合すべきルートなどを見極めようと している。
これを次回のダイヤ改正 にどこまで反映させられるかが、当 面の最大の課題になっている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 撤回することもできない。
結局、〇 四年一月からシステムを逐次稼働さ せるように方針を改めた。
まず「T RACE」を動かし、〇五年一月に 「IT─FRENS」を稼働。
同年八 月に「ドライバーシステム」を導入し て、ようやく全面稼働に至った。
 開発期間が長引けばコストも増え る。
計画では四〇億円としていた投 資額は最終的に約七〇億円に膨らん だ。
〇四年から〇五年にかけてIT 改革推進室は社内で厳しい立場に置 かれることになった。
経営陣から問 題を指摘され続け、一部では“JR 貨物最大のお荷物プロジェクト”と 揶揄する声まで聞こえてきた。
 その一方で業務は多忙を極めた。
負 担増に拍車を掛けたのは、システム を現場に導入するための支援だった。
「TRACE」が稼働すると、全国 に五〇〇台余りあるフォークリフト すべてにICタグリーダーやGPS が装備され、作業者の業務は一変し た。
「ドライバーシステム」ではコン テナを運ぶ約一万台のトラックの運 転手を指導する必要があった。
 普通ならマニュアルを整備して対応 するところだ。
しかし現場回りの経 験から、分厚い書類を用意しても読 まれないと思った。
また当時は、シ ステムを動かしながら改善し続けて 業務改革

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