2008年7月号
keyperson

フレームワークス 渡辺重光 社長

JULY 2008  4 費など販管費を絞り、また上場維持 費用も不用になったことで、実務的 な部隊には影響を与えずに収益性を 改善できました」 ──上場廃止になっても顧客は逃げ なかったということですか?  「上場廃止によって当社は多くの関 係者の方々にご迷惑をおかけしてし まいました。
当社の社会的な信用も 当然、大きく傷つきました。
しかし、 それにも関わらず多くのお客様が当社 を支持し続けて下さった。
またピーク 時には一四〇人余りいた社員が現在 は九二人にまで減りましたが、現場 の社員たちは多くが当社にとどまって くれました。
本当に感謝の言葉もあ りません」 ──しかしWMSベンダーの業績悪化 はフレームワークスだけではありませ ん。
昨年十一月にはフロンティア・ド メイン、今年五月にはフロンティア・ テクノウェア(旧フルノ・テクノワー クス)が、いずれも民事再生法の適 用を申請しています。
日本に参入し ている欧米系ベンダーの業績も振るわ ないようです。
WMS市場自体が変 調をきたしているのでは?  「WMSは既にビジネスの必需品に なっています。
パッケージを買うにし ろオリジナルを開発するにしろ、ビジ ネスの道具としてなくてはならない 継続的提案が実行系のカギ ──フレームワークスは日本のWMS 市場のマーケットリーダー的な存在で した。
無借金経営で財務基盤もしっ かりしていた。
それだけに二〇〇六 年五月期以降の業績の急落と昨年の 上場廃止は、大きなショックを市場に 与えました。
 「〇四年にマザーズに上場してから 手を広げ過ぎました。
企業買収や新 規営業部隊の増員など、事業領域の 拡大を急ぐあまりに、すぐにはリター ンの得られない投資に走り過ぎまし た。
そのことが財務的な問題を招い たのは明らかです。
過去を真摯に反 省し、新生フレームワークスでは、永 続的にビジネスをしていくために、コ ア事業に立ち戻って、システム開発に リソースを集中していきます」 ──上場廃止は〇七年五月期決算を 当時の監査法人が監査意見不表明と したことが直接の引き金でした。
そ の株主総会が昨年の八月三〇日。
そ の後、九月十二日には上場廃止が決 定されています。
異例のことであり、 突然でした。
 「債務超過を解消するための第三者 割当増資が株主総会までに完了して いないということから、事業の継続性 に疑義があるとして、監査を差し控え るという判断を受ける結果になってし まいました。
その後の上場廃止も東証 の判断ですので、我々がコントロール できることではありませんでした」 ──現在、財務は健全化したのでし ょうか。
 「はい。
第三者割当増資は予定通り 実施されて債務超過は解消されまし た。
債権放棄はしていませんし、金 融機関とも良好な協力関係を築くこ とができました。
新たな投資のでき る体制が整いました。
実は〇七年五 月期の決算も上場廃止後に監査法人 が変わり、有価証券報告書の訂正報 告と翌期の半期報告書を、適正意見 付きで財務局に出したわけで、結果 的には適正であったことが認められて います」 ──一連のトラブルによる事業上のダ メージは?  「幸いにして売上高は全く減りませ んでした。
〇七年五月期と、その後 今年五月末までの一年分の売上高は、 ほぼ横ばいです。
収益的にも、新生 フレームワークスの第一期となる今年 五月期は四カ月しかないのですが、黒 字転換しました。
売上規模は横ばい でも、先ほど申したように事業拡大 を急ぐあまり膨れあがっていた営業経 フレームワークス 渡辺重光 社長 「先駆的WMSを提供し続ける」  倉庫管理システム(WMS)国内最大手のフレームワーク スが再出発を切った。
昨年一〇月の東証マザーズ上場廃止後、 今年二月に第三者割当増資を実施して債務超過を解消、会 社分割で新会社に事業をすべて継承した。
今後は継続性を重 視してコア事業に資源を集中し、先駆的な物流システムを提 供し続けていくという。
       (聞き手・大矢昌浩) 5  JULY 2008 ものになっています。
ユーザー層も広 がっています。
実際、調査会社のレ ポートなどを見ても市場は成長し続け ています。
海外から日本市場に参入 するベンダーも、まだまだ出てくるは ずです」  「しかし、当社を含め、これまでは ベンダー側にプロダクトアウト、もの 売り的な意識が強過ぎた面があった。
ソリューションベンダーを謳いながら、 顧客に価値を提供し続けていくことよ りも、パッケージを販売することのほ うに比重の置かれるきらいがあった」  「WMSは販売して終わり、稼働し て終わり、であってはならない。
実 行系のソリューションは継続性が何よ り大切です。
ユーザーのビジネス、ユ ーザーのロジスティクスは常に変化し ています。
それに合わせて継続的に ソリューションを提案し続けていくこ ーゲットと位置付けています」 ──今回の一件の責任をとるかたち で、創業者の田中純夫現会長は社長 を退きました。
新たな求心力を、ど こに求めますか。
 「当社は既に個人にブランドを依存 するのではなく、会社としてソリュー ションでブランドを確立しなければな らない時期を迎えています。
当社の 強みはマーケットをリードする先進的 な取り組みに常にチャレンジし、なお かつそれを実際に稼働させてきたと ころにあると考えています。
当社の システムは断然動く。
当たり前のよう に聞こえるかもしれませんが、実際 にはそれが差別化の武器になってい る。
その強みを堅持していくことが、 これからの当社のブランド力、求心力 の核となるはずです」  とができないと意味がない」  「そこは我々が再出発を図るうえで 最も重視した点の一つです。
そして価 値を提供するというのは、顧客の収 益に貢献するということであり、そ れ以外にはありません。
そこで我々 は財務の視点も加えてロジスティクス の課題を定量化して診断し、継続し て提案していくスタイルに仕事のやり 方をはっきりと改めました」 ASPでは差別化できない ──具体的には?  「例えば今年四月に棚卸資産の評価 基準が大きく変わっているんです。
こ れまでの取得原価ではなく、固定資 産の減損と同様に、売価が下がった場 合には簿価を切り下げなければならな い。
つまり損失が発生してしまうわ けです。
それを前提にして物流効率 と在庫水準とのトレードオフを改めて 評価しなくてはならない。
それが見 える仕組みを新たに開発しています。
そこが我々のビジネスにとっての新た な入口になります。
パッケージを買っ てください、何でもできますという 話ではなく、お客様の収益にどう貢 献できるのかをキチンと説明して、そ のために何が必要なのかを提案して いく。
それが我々の考えるソリューシ ョンベンダーの姿です」 ──WMSのパッケージ販売という ビジネスモデル自体が陳腐化し、I T機能を従量制で課金するASP (Application Service Provider)にシ フトする可能性は?  「顧客層によってベンダーに求めら れるビジネスモデルも違ってくると考 えています。
ロジスティクスで差別化 しようと考えているリーダー的なユー ザーのニーズは、ASPでは満たせま せん。
当社は従来通り、そうしたユ ーザーに先駆的な技術を提供する役割 を果たしていきたい」  「そこで培ったノウハウはリーダー 的企業と競合するフォロワー層にも活 かせます。
我々のビジネスのボリュー ムとしては、フォロワー層が最も大き な顧客層になります。
ただし、先駆的 な技術に対するニーズはあっても、投 資金額の制約は厳しくなりますので、 できるだけカスタマイズを抑え、短期 間で導入できるソリューションを用意 しなければならない」  「ASPのユーザーとなるのは、フ ォロワー層よりも事業規模が小さく、 数の多い中小企業が中心だと考えて います。
他社と同じ機能でいいから、 初期投資なしで、できるだけ安価なW MSを使いたいというニーズです。
当 社も技術的にはすぐにでも対応でき ますが、当面はフォロワー層以上をタ  二〇〇八年二月、WMSベンダーの旧 フレームワークスを会社分割し、事業を継 承するかたちで新設された。
再建ファン ドのMIT Corporate Advisory Services を メーンとして、大和ハウス工業グループ、 富士通ビジネスシステムに総額約一〇億円 ほどの第三者割当増資を実施し、債務超 過を解消した。
 旧フレームワークスは一九九一年に静岡 で創業。
〇四年六月に東証マザーズ上場。
〇五年、コンサルティング会社の日本ビジ ネスクリエイトと、医療系システム開発会 社のシーエスシステムズを買収。
〇六年五 月期から2期連続で赤字を計上し債務超 過に。
〇七年一〇月に上場廃止となった。
フレームワークス 30 25 20 15 10 5 0 -5 -10 03年04年05年06年07年 5月期 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0 -0.5 -1.0 旧フレームワークスの単独決算推移 (単位・億円) 《売上高》《経常利益》 経常利益 (右軸) 売上高 (左軸)

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