2008年7月号
現場改善

路線会社?営業所留め?の思わぬ効果

JULY 2008  84 路線便営業所に自社便で引き取り  在庫を持たない、持ちたくない場合には、リー ドタイム短縮が有効な手段になる。
モノが?止 まっている時?に着目することで、それを実 現できる。
物流といっても、実際にはモノが?流 れている時?ばかりではない。
ムダな滞留時 間は必ず見つかる。
それをなくす、あるいは 短くする方法を考えるわけである。
 そのテクニックの一つとして、路線便(特 別積み合わせ便)の?営業所留め?を利用し た改善事例を二つほど紹介しよう。
地味だが 思いのほか納品リードタイム短縮に効果の上 がる施策である。
 一つ目の事例は、年商約一〇〇億円の印刷 会社P社。
関東にある本社兼自社工場で印刷・ 加工を行い、完成した印刷物を全国七カ所の 営業所に送っている。
各営業所では営業担当 者や、現場作業をサポートするフィールドサー ビス会社のスタッフが、工場から納品された 完成品を検品し、それぞれの得意先へ配達す るというフローである。
 P社では、得意先からの物流に関するクレー ムが絶えなかった。
「今日納品されるはずの 商品が届いていない」という問い合わせであ る。
P社の営業担当者やフィールドサービス が、工場からの入荷を処理して営業所を出発 するのは毎日正午頃。
どんなに急いでも午後 一番の納品が精一杯であった。
クレームが来 るのは当然と言えた。
 営業所を出発するのが正午になってしまう 理由は、大きく二つあった。
一つは自社工場 から送られてくる完成品の納品に間違いが多 かった。
数量違いや、出荷処理のミスで他の 営業所に商品が送られてしまうことなどが多 かった。
そのため営業所では、到着した完成 品を入念に時間をかけてチェックしなければ ならなかった。
 納品を急ぐのであれば、工場から得意先へ の直送を検討するところだが、商品の特性上 それは無理だった。
営業所では得意先の要請 に応じて、商品に台紙をセットしたり、折り 目を付けたりといった、付帯作業や加工処理 を行う場合が多く、その詳細はそれぞれの得 意先の担当者にしかわからなかった。
 出発が正午になってしまうもう一つの理由 は、路線便の営業所への配達が毎日九時三〇 分から一〇時頃になってしまうためであった。
それから検品作業を行うことになるので、午 前中に出発することができなかった。
 我々は工場で利用している路線会社に打診 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 第66 回  毎朝の路線便の入荷時間が一時間〜二時間繰り上がれば、 得意先への納品時間を午後から午前中に前倒しできる。
しか し路線会社に特別扱いを要請しても簡単には対応してもらえ ない。
そんな場合には、荷物を路線会社の所轄営業所留め にして、自分で引き取りに行く自社便の導入を検討してみよう。
路線会社?営業所留め?の思わぬ効果 85  JULY 2008 して、その会社の所轄の営業所の所在地と、 P社商品の積載時間、配送ルートなどの確認 を行った。
さすがに配送ルートまでは回答し てもらえなかったが、一つはっきりしたこと があった。
P社の配送は二便目、すなわち路 線便のドライバーが朝一番の配達を終えて営 業所に戻った後の二回目の配達にP社の商品 が載せられていたのであった。
それだけ配達 時間は遅くなる。
 P社は最近、営業所を移転している。
実 はそれによって路線会社の管轄営業所も変更 となっていたのであった。
このように荷主の 移転などによって管轄営業所が変わった場合、 路線会社の営業所は荷主から何らかの連絡や 通知がない限り、その荷主から安定した物量 が出始めるまで?スポット?と見なし、それ 以外の午前中必着の荷主を優先するものである。
 また路線会社の一便は、限られた時間で多 くの件数を回らなければならないが、P社の 物量は一日平均〇・七トン強あった。
このこ ともP社の荷物が一便に載せられない理由に なっていた。
我々は路線便の納品時間の前倒 しはムリだと判断し、それに代えて路線会社 の管轄営業所まで自分で荷物を取りに行くこ とを検討した。
 一般に路線便の幹線輸送は夜間に行われ、 渋滞に巻き込まれない朝方六〜七時頃までに は基幹店または近隣営業所に到着している(図 1)。
そこで工場には路線会社の?営業所留め? 扱いで商品を出荷させて、自社便で引取るの だ。
路線会社の管轄営業所で八時に荷物をピッ クアップすれば、八時三〇分には自社営業所 に到着する。
 P社の就業時間は九時からなので、八時三 〇分から九時までは協力会社のフィールドサー ビスのスタッフが数量検品、簡単な品質検品 を行い、九時からそこに自社営業担当者が合 流するかたちでスケジュールを組んだ。
これ によって一〇時には得意先に出荷できるよう になり、午前中納品が実現した。
約一時間 五〇分のリードタイム短縮である。
 同時に営業担当者の残業時間が一人当た り月平均五〇時間から二五時間に半減した。
フィールドサービス会社に対する早出料金が 若干発生したが、それを十分吸収できた。
そ して得意先からのクレームを解消することが できたのであった。
業者指定で路線便を集約  二つ目の事例は、約二〇〇〇アイテムを病 院や研究施設に納品している年商約七〇億円 の医療器械販売L社の取り組みである。
同社 は在庫を持たない方針を堅持している。
新し い在庫が社長や会長に見つかろうものなら、「こ JULY 2008  86 れは何だ!」と居合わせた社員たちが叱りつ けられるという徹底ぶりであった。
商品保管 面積は約二〇坪に過ぎず、デッドストックや 特殊商品を在庫しているだけであった。
 これまでL社では営業マンが自分で商品を 納品していた。
これを物流会社にアウトソー シングして商物分離を実施することにした。
その課程で大きなムダが発覚した。
一つ目の 事例として紹介したP社と同様、L社でも路 線便の納品時間が遅いために毎日二時間のロ スが発生していたのである。
 仕入先から調達した商品の大半は路線便で 納品されていた。
調べてみると仕入先ごとに 計五つの路線会社が利用されていた。
まずは 路線会社をA社一社に集約することにした。
各仕入れ先に申し入れて、L社に納品する路 線会社をA社に指定することにしたのである。
いわゆる?業者指定?である。
 仕入先の約七割が、この要請に応じてくれ た。
しかし残りの三割の大手仕入先が首を縦 に振らない。
L社は仕入先にとって客の立場 にはあるものの、ここでは取引の力関係が大 きく影響した。
結局、指定業者にもう一社、 B社を加えることでクリアするしかなかった。
 次のステップとして、L社の商物分離のパー トナーとなるアウトソーシング先の物流会社 C社に対し、路線会社A社、B社の管轄営 業所二カ所への引取りを依頼した。
C社との 運賃形態は月極のチャーターにした。
引き取 り便や配送便の運行を工夫して稼働率の高い 配送計画を組むことでコスト効率を上げよう という狙いだ。
 もともとL社は在庫を持たないため、受注 から納品までのリードタイムが二日と比較的 余裕があり、納品時間の指定にもほとんど制 約がなかった。
この条件を活かして調達物流 の内製化を図った。
配送便と同一方面に仕入 先の物流拠点がある場合などは、そこに寄っ て商品を調達して帰ってくるというアイデアだ。
 しかし、ここでも取引の力関係が働き、大 手仕入先は引取りを拒んだ。
その大手仕入先 がアウトソーシングを行っている物流会社で は計画的に庫内業務を行っており、そこにL 社のような一部引取り対応というイレギュラー が発生することで、現場の段取りが狂ってし まうという理由である。
 このように全てが計画通りに進んだわけで はないが、路線会社の?営業所留め?によ る引取り輸送を含めた商物分離が実施に移さ れた。
これによって営業担当者は物流作業の 負担から解放された。
毎日九時過ぎの朝一番 に各担当者は得意先に出発することができる ようになり、得意先への訪問頻度アップ、イ ンストアシェアの拡大につながった。
 物流面でも注文(受注)時間の前倒しが可 能になった。
それまでは営業担当者による午 後納品が中心であったため、注文時間もそれ にならっていた。
午前中に得意先に訪問でき るようになったことで、注文時間が自然と早 まった。
その結果、仕入先への発注のタイミ ングも前倒しになり、従来の翌々日納品が一 部翌日納品に改善されたのである。
あおき・しょういち  1964年生まれ。
京都産 業大学経済学部卒業。
大手 運送業者のセールスドライ バーを経て、89 年に船井 総合研究所入社。
物流開発 チーム・トラックチームチー フを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設 立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp 大 阪 (基幹店) 東 京 (基幹店) 地場物流会社による直納と違い、路 線便会社はハブ展開を行っているた め店別仕分けや得意先別仕分けに時 間を要する 渋滞時間の前に各営 業所へ到着させなけ ればならない 主に幹線輸送は夜間に 行われる 営業所 (店舗) 営業所 (店舗) 営業所 (店舗) 営業所 (店舗) 営業所 (店舗) 営業所 (店舗) 営業所 (店舗) 営業所 (店舗) 営業所 (店舗) 営業所 (店舗) 図1 路線会社の配送ネットワーク

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