2008年7月号
物流IT解剖
物流IT解剖
センコー
JULY 2008 66
第16 回
統合システムの稼働が IT戦略の転換点
センコーは二〇〇〇年に「ベスト
パートナーシステム」(BPS)と呼
ぶ統合システムを稼働させた。
それ 以前は、ホストコンピュータを中核に 据えたシステムと、案件ごとに開発 するオープン系のシステムを個別に運 用していた。
しかし、このやり方が 機能の重複や開発効率の悪化を招い ていた。
そこで改めてシステムを機 能ごとに整理し、約六〇億円を投じ てBPSを構築した。
BPSを開発した意義を、センコ ーの室崎行雄IT推進室長は次のよ うに説明する。
「システムを標準化す ることで開発コストを抑え、これを 活用しながらノウハウを内部に留保 していく狙いがあった。
BPSを開 発して社内外に水平展開していった ことが、当社のIT活用のターニン グポイントになっている」 センコーは自社のシステムを、事 業活動のためのソリューション関連 と、自らの経営管理を高度化するマ ネジメント関連の二系統に大別して いる。
ソリューション関連のシステム のうち、インターネットを使った受発 注機能や、GPSによる配送管理機 能、さらに物流センターの管理機能 などを備えた約二五のシステム群を BPSと総称している。
二〇〇〇年の段階で「住宅物流 事業」、「石油化学・樹脂物流事業」、 「流通ロジスティクス事業」という三 つの主力事業に対応したBPSをそ れぞれに構築した。
その後、医療・ 医薬系、アパレル系などにも適用範 囲を拡大。
いずれのケースでも、原 材料の仕入れから販売物流にまで至 るサプライチェーン全域をカバーする ことを目指している。
第二次大戦後の財閥解体まで日 窒コンツェルンの一員だったセンコ ーは、今でも旭化成や積水化学工業、 積水ハウスといった旧グループ企業と の関係が深い。
このため過去には石 化・樹脂工場の物流などサプライチ ェーンの川上領域での活動が目立っ た。
だが積水ハウスの物流業務を手 掛けるうちに、複数メーカーの住宅 資材を施工現場へ一括納入するなど 徐々に活動領域を拡大。
近年はチェ ーンストアを対象とする一括物流事 業に注力している。
主力三事業の過去五年間の売上高 の伸びは、「住宅物流事業」が四一 四億円(〇四年三月期)から五四三 億円(〇八年三月期)へと三一%増、 同じく「石化・樹脂事業」は三五五 億円から三八〇億円に七%増。
「流通 ロジスティクス事業」については、二 五八億円から三七〇億円に四三%増 という急成長を果たしている。
大型案件の受託が続いた「流通ロ ジスティクス事業」はさておき、「住 流通分野での業務受託の急拡大に伴い ITを駆使した現場サポートを全面展開 センコー 荷主のサプライチェーン全域をカバーする「流通情報企業」への脱 皮を2000年に宣言した。
そのツールとして「ベストパートナーシステ ム」(BPS)と呼ぶ標準化された独自の情報システムを運用している。
先端的な案件で蓄積したノウハウを他の業種に横展開することで事業 拡大を図っている。
IT推進室長と生産管理部長を 兼務する室崎行雄氏 戦略 《概要》1999年に開発した「ベストパートナーシステム」(BPS)を2000年から全国各地 に導入。
主力3事業(住宅、石化・樹脂、流通)それぞれの事業に対応したシステムを構築 している。
その後、医療・医薬系、アパレル系などにも適用範囲を拡大した。
本社のIT推進室は総勢5人の小所帯。
システム開発・運用の実務は、IT子会社の「セン コー情報システム」が元請けとして担っている。
年間ITコストはセンコーの連結売上高 2043億円(08年3月期) の1%強。
ほぼIT子会社を経由して支払っている。
3年前から「ITマン教育」と称した社員のスキルアップに取り組んでいる。
6シリーズ・ 39科目からなるカリキュラムは、「営業サポート」「BPS-WMSシステム」「会計」「管理シ ステム」「新システム」などで構成。
今年度からはネット経由で映像マニュアルを配信すると いう選択肢も加える。
◆本社組織 本社・生産管理本部のIT推進室 に5人。
他にソリューション営業部門などに「物流 SE(システム・エンジニア)」と呼ばれる社員が約 100人いる ◆情報子会社 センコー情報システム、資本金: 6000万円(センコー100%)、売上高:約30億円、 外販比率:4割強、従業員:194人(うち約150 人がSE) 67 JULY 2008 淘汰と上位集中が進んでいる。
それに対してセンコーは、単に荷主 から指示された通りに物流を手掛け るだけでなく、独自のITを使って 荷主のサプライチェーン全体の合理 化をサポートしてきた。
これが改革 を急ぐ勝ち組企業のニーズに合致し、 「住宅物流事業」と「流通ロジスティ クス事業」が急成長する一因となっ ている。
総合物流業の旗を降ろし 「流通情報企業」に照準 BPSを開発する契機の一つとな った「流通ロジスティクス事業」の 歴史は既に二〇年を超える。
一九八 五年にホームセンターのケーヨーから 物流センターの運営を受託したのが 最初だ。
以後、小売りチェーン向け の物流事業を本格化し、大手スーパ ーやドラッグストアの物流センターを 数多く運営してきた。
流通系の荷主のなかでもイオンは、 近年のセンコーにとりわけ大きな影 響を及ぼしている。
イオンは九八年 から「戦略物流構想」に着手し、複 数の3PLパートナーと組んで全国 の物流ネットワークを整備した。
パー トナーの一社であるセンコーは、同構 想の第一号案件として〇一年六月に 「イオン仙台RDC」(延べ床面積約 二・三万平米)を稼働させた。
〇五年七月には「イオン北海道R DC」(約五・二万平米)を稼働し、 北海道内のイオングループの常温品 の物流を手掛けはじめた。
さらに〇 六年八月からは、狭隘化した「仙台 RDC」を引き継ぐ「イオン東北R DC」(約七万平米)を新設。
東北 六県の物流もまかなうようになった。
これに伴ってセンコーの「流通ロジス ティクス事業」は急成長し、流通版 BPSも高度化してきた。
センコーは〇一年度に策定した三 カ年の中期経営計画の中で、それま で標榜してきた「総合物流企業」と いう旗を降ろし、新たに「流通情報 企業を目指す」という戦略転換を行 っている。
同社いわく「流通情報企 業」とは「ITを駆使して最適な流 通を実現する企業」である。
このときの戦略転換は、センコー が事業の軸足を、メーカーが主導す るプッシュ型の川上物流から、買い 手が主導するプル型の川下物流に移 すことを意味していた。
有力チェー ンストアへの寡占化の流れと、九〇 年代の一括物流ブームによって「流 通ロジスティクス事業」にはまだ成長 の余地が感じられた。
もっとも、勝ち組の小売業は協力 物流事業者に過酷なサービスレベル を要求する。
物流上のミス率を一〇〇 万分の一以下にするといった納品精 度にはじまり、九〇年代末になると もはや高い納品精度は当たり前。
そ のうえで徹底したローコスト化を実現 できることが受託のための必須条件 になっていた。
なかでもイオンの要求レベルは厳し い。
イオンはセンコーや日立物流など 複数の3PLパートナーの仕事ぶり を常に比較できる立場にある。
特定 のセンターで達成された成果はベスト プラクティスとしてどんどん横展開 される。
3PLパートナーは息をつ く暇がない。
必然的に合理化競争ともいうべき 状況が生まれる。
そこではITを駆 使した効率化が不可欠で、センコー も自らの経験を踏まえた現場オペレ ーションの高度化を迫られた。
こう した経験の積み重ねが、BPSにノ ウハウを蓄積しながら、荷主のサプ ライチェーンの合理化を後押しして いくという現在の姿勢につながって いる。
モニターで情報を共有し 配車管理を大幅に近代化 二〇〇〇年の稼働時からBPS は、「多様化するチェーンストア物流 への対応(バーコードを活用したロ 宅物流事業」がこれほど拡大すると は実はセンコー自身も考えてはいな かった。
五年間で一割程度の伸びを 見込んでいたにすぎない。
「住宅物流事業」と「流通ロジステ ィクス事業」の急成長には共通点が ある。
いずれも国内市場はすでに成 熟している。
そして市場全体の成長 が鈍化する一方、より効率的なビジ ネスモデルを目指す業界内の競争や 構造改革は激化している。
俗にいう “勝ち組”と“負け組”の選別が進み、 一括物流 可視化 SCEM(イベントマネジメント) 環境マネジメント 物流コストマネジメント 拠点配置最適化 受注センターシステム 成果指標 需要予測 WMS (物流倉庫管理システム) TMS (輸送管理システム) G&MS (国際物流・海運システム) 3PL ソリューションシステム 顧客の視線でロジスティクスを 代行するシステム群 IT を駆使した多彩な物流を 提供するシステム群 ロジスティクス・ ソリューションシステム BPS 「ベストパートナー・システム」(BPS)の概要 JULY 2008 68 ジスティクス・システム)」や「無線 ハンディターミナルの導入」、さらに 「配車支援システムの導入」といった 流通向けの機能を強く意識していた。
〇五年に稼働した新たな配車支援シ ステム「BPS─Tvss」も、大手 量販店の要求に応えるために開発さ れた。
このシステムの最大の特徴は、管理 部門の壁面に並ぶ数十台の大画面モ ニターからなる「電子配車板」だ。
配 車済み車両の動向は従来、ホワイト ボードを使って管理していた。
しか し、刻々と変わる運行状況を手書き のホワイトボードで追いかけるのは簡 単ではない。
結局は配車マンのスキ ルに頼らざるを得なかった。
これに対し、大型ディスプレイに 情報を一覧表示できる新システムに は多くのメリットがある。
まず小売 りチェーンの店舗を巡るドライバーが 報告してくる到着時刻を、即座に反 映させられる。
到着が遅れている店 舗を赤く点滅させてアラームを出す などして、関係者は全体の進捗を一 目で把握できる。
荷主の求める「指 定時間通りの店着」を実施するうえ で有効に機能する。
新システムの効果は配送業務だけ にとどまらない。
「配車済みの配送車 両の動向を『電子配車板』で確認し ながら作業を指示すれば、配車する 前段の荷さばき作業を効率化したり、 配送車両への積載効率の向上を図る ことが可能だ」とIT推進室の田中 成幸ITソリューション担当課長は 強調する。
店舗側の受け入れ体制と 連動させれば、小売りチェーンが望 む店舗配送コストの圧縮にもつなが る。
つまりこの仕組みは、配車オペレ ーションの実務を高度化するだけの システムとは発想が異なる。
情報を ビジュアル化して配送業務の精度を 高めると同時に、関係者が情報を共 有することで配送業務全体を合理化 することを狙っている。
同じように 多くの訪問先をもつ配送業務であれ ば他業種のサプライチェーンにも応 用できるため、住宅物流への導入も 進めているのだという。
生産性の向上を狙って 指標管理で現場力強化 このようにBPSは、実務の負担 をITで軽減するだけでなく、業務 の生産性を高めることを目的として いる。
こうした姿勢はセンコーのIT 部門の組織体制にも表れている。
セ ンコーのIT推進部は「生産管理本 部」の中にあり、IT推進室長の室 崎氏は生産管理部長を兼務している。
ちなみに同社にとって “生産管理”と は、モノづくりのことではなく、物 流現場における生産性の管理を指し ている。
かつてIT推進室は「経営計画部」 という事業戦略の策定から経理業務 までを担う本社部門の傘下に置かれ ていた。
〇四年の組織の見直しによっ てここから経理部門が分離され、経 営企画部は発展的に解消。
IT推進 室は、グループ全体の生産性を高め ていく目的で新たに発足した「生産 管理部」の中に移された。
現在、IT推進室には五人の社員 が所属している。
グループ全体のI T担当者としては他に、ソリューショ ン営業などに携わる人材がセンコーの 社内に約一〇〇人、情報子会社のセ ンコー情報システムにも約一五〇人 のSE(システムエンジニア)がいる。
IT推進室の役割は、企画立案や大 型案件の管理などに限定され、シス テム開発や運用の実務は子会社と協 力ITベンダーが担っている。
センコー情報システムはグループの IT活用の元請けと位置付けられて おり、ほぼ全てのシステム案件に関与 している。
売上高は約三〇億円。
う ち四割強は自治体のシステム開発な どグループ外の仕事だ。
「連結売上高 の一・五%まではいかないが一%強」 (室崎氏)というセンコーの年間IT コストのほとんどが、情報子会社を 経由して支払われている。
こうした体制を組んでいることも あり、センコーはデータに基づく業務 管理を強く意識している。
指標によ る管理は、改善の成果を荷主とシェ オペレーション IT推進室の田中成幸ITソリュ ーション担当課長 配車支援 ?指定時間通り配送 精度の高い到着時間管理 ?指定時間通り集荷・積込 作業時間の削減 ?配送効率の向上 車輌の回転率・積載率の向上 情報の可視化を徹底した配車支援システム「BPS-Tvss」 実現できること 電子配車板 69 JULY 2008 は、あくまでも費用対効果に基づいて いる。
しかしIT投資の効果は、シ ステムを使う人材によっても大きく異 なってくる。
いかに最先端の機能を 備えたITインフラを整えても、使 いこなせる人材がいなければ宝の持 ち腐れでしかない。
〇六年四月から導入している「S CEM」(サプライチェーン・イベン ト・マネジメント)のようなシステム は、とりわけこうした面が強い。
この システムは、荷主のサプライチェーン 全域にわたる注文情報や在庫管理な どを支援する。
すでに国内五社、海 外一五社への導入実績がある。
「流 通情報企業」を標榜するセンコー自 慢のシステムだ。
ただし、SCEMシステムは、特 定の機能をまかなうBPSに比べて 理解が難しく、高度な運用スキルが 求められる。
その有効活用には、営 業マンや利用者がITに関する適切 な知識を身につけることが欠かせな い。
こうしたIT資産を使いこなし て生産性の向上を実現していくため にも、関係者のシステムに関する理 解を深める必要がある。
そこでIT推進室は、〇六年に「I Tマン教育」と呼ぶ活動をスタートし た。
「営業サポート系」や「BPS系」、 「オフィス系」など六シリーズ・二四 科目からなる教育体系を整備。
IT への社員の理解度を深め、3PLソ リューションの手法などを修得して もらうための取り組みをスタートし た。
これによってIT投資の効率を 向上させ、同時に社員の情報リテラ シーも高めようというわけだ。
本社のある大阪や東京で実施する 講習を、テレビ会議システムで全国の 拠点に中継するというスタイルをと った。
参加者は自分が携わっている 業務に応じて三科目から四科目を受 講する。
初年度には計一二五人が参 加し、二年目となる〇七年度は一三 六人が受講した。
エクセルを使った データ分析の講習では、参加者がパ ソコンを持ち込んで実習形式で受講 するといった工夫も施した。
その後、科目数は三九に増え、一 定の成果を残した。
ところが現場の実 務者を対象とした科目などでは、参 加したくても時間的に難しいといっ た声が上がってくるようになった。
そ こで今年度からは、新たにインター ネット経由で映像マニュアルを配信 する試みをスタートさせる。
「今年の上期にまず、実験をかねて 二つぐらい映像マニュアルをリリース する。
一つはドライバー向けにデジタ コの基本操作を解説するもの。
もう 一つは、新入社員や新人のパートさ んに仕事内容を覚えてもらうための 映像だ。
こうした手法で社員の習熟 度を高められるようであれば、次年 度からさらに拡大していきたい」と 室崎氏の期待は大きい。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) アすることにもつながる。
生産性へ のこだわりは近年、ますます強まっ ている。
今年度は全社生産性向上活動」と 名づけた運動を展開しようとしてい る。
生産管理部長を兼ねる室崎氏と しては、まずはITで現場の生産性 向上をサポートできる仕組みを整え たい考えだ。
既にセンコーには、〇三年一月に 稼働した「就業情報ネットワークシ ステム」がある。
従業員の勤怠管理 や作業内容をタッチパネル方式でシ ステムに入力し、ABC(活動基準 原価計算)に近い考え方で現場を管 理するための仕組みだ。
今年度はここからさらに一歩進め て、関東地方のあるアパレル関係の 物流拠点で試験的な取り組みを行う。
ハンディターミナルで作業者ごとの詳 細な生産性データを取り、これを活 用して収益性の向上策につなげよう としている。
室崎氏としては「ここ での成果を見ながら、次年度以降さ らに現場の生産性向上のためにIT に投資していくのかどうかを判断し ていきたい」という。
IT教育体系を整備 ネットで映像を配信 センコーにおけるIT投資の判断 人材教育 「SCEM」(サプライチェーン・イベント・マネジメント)システム サプライチェーン上での調達・製造・輸送・在庫・配送・販売の各プロセスを監視し、「調達や製造工程の遅れ」「 不良 品の発生や補修の状況」、「輸送・通関・配送の遅れ」、「長期滞留や不回転の在庫発生」などをいち早く把握するこ とで、「SCM で求めている全体最適」を実現することができます。
調達生産不良の把握 納期遅れの察知 不回転在庫・デッド ストックの検出 製造 輸送 販売 配送 在庫過少・過大 在庫の検出 SCEM システム(サプライチェーン・イベント・マネジメント システム) インターネット 調達先メーカー製造部門担当者SCM 管理部門担当者センコー問屋・卸 2006年4 月から提供開始(現在…国内:5 社、海外:15 社、 計…20 社利用)
それ 以前は、ホストコンピュータを中核に 据えたシステムと、案件ごとに開発 するオープン系のシステムを個別に運 用していた。
しかし、このやり方が 機能の重複や開発効率の悪化を招い ていた。
そこで改めてシステムを機 能ごとに整理し、約六〇億円を投じ てBPSを構築した。
BPSを開発した意義を、センコ ーの室崎行雄IT推進室長は次のよ うに説明する。
「システムを標準化す ることで開発コストを抑え、これを 活用しながらノウハウを内部に留保 していく狙いがあった。
BPSを開 発して社内外に水平展開していった ことが、当社のIT活用のターニン グポイントになっている」 センコーは自社のシステムを、事 業活動のためのソリューション関連 と、自らの経営管理を高度化するマ ネジメント関連の二系統に大別して いる。
ソリューション関連のシステム のうち、インターネットを使った受発 注機能や、GPSによる配送管理機 能、さらに物流センターの管理機能 などを備えた約二五のシステム群を BPSと総称している。
二〇〇〇年の段階で「住宅物流 事業」、「石油化学・樹脂物流事業」、 「流通ロジスティクス事業」という三 つの主力事業に対応したBPSをそ れぞれに構築した。
その後、医療・ 医薬系、アパレル系などにも適用範 囲を拡大。
いずれのケースでも、原 材料の仕入れから販売物流にまで至 るサプライチェーン全域をカバーする ことを目指している。
第二次大戦後の財閥解体まで日 窒コンツェルンの一員だったセンコ ーは、今でも旭化成や積水化学工業、 積水ハウスといった旧グループ企業と の関係が深い。
このため過去には石 化・樹脂工場の物流などサプライチ ェーンの川上領域での活動が目立っ た。
だが積水ハウスの物流業務を手 掛けるうちに、複数メーカーの住宅 資材を施工現場へ一括納入するなど 徐々に活動領域を拡大。
近年はチェ ーンストアを対象とする一括物流事 業に注力している。
主力三事業の過去五年間の売上高 の伸びは、「住宅物流事業」が四一 四億円(〇四年三月期)から五四三 億円(〇八年三月期)へと三一%増、 同じく「石化・樹脂事業」は三五五 億円から三八〇億円に七%増。
「流通 ロジスティクス事業」については、二 五八億円から三七〇億円に四三%増 という急成長を果たしている。
大型案件の受託が続いた「流通ロ ジスティクス事業」はさておき、「住 流通分野での業務受託の急拡大に伴い ITを駆使した現場サポートを全面展開 センコー 荷主のサプライチェーン全域をカバーする「流通情報企業」への脱 皮を2000年に宣言した。
そのツールとして「ベストパートナーシステ ム」(BPS)と呼ぶ標準化された独自の情報システムを運用している。
先端的な案件で蓄積したノウハウを他の業種に横展開することで事業 拡大を図っている。
IT推進室長と生産管理部長を 兼務する室崎行雄氏 戦略 《概要》1999年に開発した「ベストパートナーシステム」(BPS)を2000年から全国各地 に導入。
主力3事業(住宅、石化・樹脂、流通)それぞれの事業に対応したシステムを構築 している。
その後、医療・医薬系、アパレル系などにも適用範囲を拡大した。
本社のIT推進室は総勢5人の小所帯。
システム開発・運用の実務は、IT子会社の「セン コー情報システム」が元請けとして担っている。
年間ITコストはセンコーの連結売上高 2043億円(08年3月期) の1%強。
ほぼIT子会社を経由して支払っている。
3年前から「ITマン教育」と称した社員のスキルアップに取り組んでいる。
6シリーズ・ 39科目からなるカリキュラムは、「営業サポート」「BPS-WMSシステム」「会計」「管理シ ステム」「新システム」などで構成。
今年度からはネット経由で映像マニュアルを配信すると いう選択肢も加える。
◆本社組織 本社・生産管理本部のIT推進室 に5人。
他にソリューション営業部門などに「物流 SE(システム・エンジニア)」と呼ばれる社員が約 100人いる ◆情報子会社 センコー情報システム、資本金: 6000万円(センコー100%)、売上高:約30億円、 外販比率:4割強、従業員:194人(うち約150 人がSE) 67 JULY 2008 淘汰と上位集中が進んでいる。
それに対してセンコーは、単に荷主 から指示された通りに物流を手掛け るだけでなく、独自のITを使って 荷主のサプライチェーン全体の合理 化をサポートしてきた。
これが改革 を急ぐ勝ち組企業のニーズに合致し、 「住宅物流事業」と「流通ロジスティ クス事業」が急成長する一因となっ ている。
総合物流業の旗を降ろし 「流通情報企業」に照準 BPSを開発する契機の一つとな った「流通ロジスティクス事業」の 歴史は既に二〇年を超える。
一九八 五年にホームセンターのケーヨーから 物流センターの運営を受託したのが 最初だ。
以後、小売りチェーン向け の物流事業を本格化し、大手スーパ ーやドラッグストアの物流センターを 数多く運営してきた。
流通系の荷主のなかでもイオンは、 近年のセンコーにとりわけ大きな影 響を及ぼしている。
イオンは九八年 から「戦略物流構想」に着手し、複 数の3PLパートナーと組んで全国 の物流ネットワークを整備した。
パー トナーの一社であるセンコーは、同構 想の第一号案件として〇一年六月に 「イオン仙台RDC」(延べ床面積約 二・三万平米)を稼働させた。
〇五年七月には「イオン北海道R DC」(約五・二万平米)を稼働し、 北海道内のイオングループの常温品 の物流を手掛けはじめた。
さらに〇 六年八月からは、狭隘化した「仙台 RDC」を引き継ぐ「イオン東北R DC」(約七万平米)を新設。
東北 六県の物流もまかなうようになった。
これに伴ってセンコーの「流通ロジス ティクス事業」は急成長し、流通版 BPSも高度化してきた。
センコーは〇一年度に策定した三 カ年の中期経営計画の中で、それま で標榜してきた「総合物流企業」と いう旗を降ろし、新たに「流通情報 企業を目指す」という戦略転換を行 っている。
同社いわく「流通情報企 業」とは「ITを駆使して最適な流 通を実現する企業」である。
このときの戦略転換は、センコー が事業の軸足を、メーカーが主導す るプッシュ型の川上物流から、買い 手が主導するプル型の川下物流に移 すことを意味していた。
有力チェー ンストアへの寡占化の流れと、九〇 年代の一括物流ブームによって「流 通ロジスティクス事業」にはまだ成長 の余地が感じられた。
もっとも、勝ち組の小売業は協力 物流事業者に過酷なサービスレベル を要求する。
物流上のミス率を一〇〇 万分の一以下にするといった納品精 度にはじまり、九〇年代末になると もはや高い納品精度は当たり前。
そ のうえで徹底したローコスト化を実現 できることが受託のための必須条件 になっていた。
なかでもイオンの要求レベルは厳し い。
イオンはセンコーや日立物流など 複数の3PLパートナーの仕事ぶり を常に比較できる立場にある。
特定 のセンターで達成された成果はベスト プラクティスとしてどんどん横展開 される。
3PLパートナーは息をつ く暇がない。
必然的に合理化競争ともいうべき 状況が生まれる。
そこではITを駆 使した効率化が不可欠で、センコー も自らの経験を踏まえた現場オペレ ーションの高度化を迫られた。
こう した経験の積み重ねが、BPSにノ ウハウを蓄積しながら、荷主のサプ ライチェーンの合理化を後押しして いくという現在の姿勢につながって いる。
モニターで情報を共有し 配車管理を大幅に近代化 二〇〇〇年の稼働時からBPS は、「多様化するチェーンストア物流 への対応(バーコードを活用したロ 宅物流事業」がこれほど拡大すると は実はセンコー自身も考えてはいな かった。
五年間で一割程度の伸びを 見込んでいたにすぎない。
「住宅物流事業」と「流通ロジステ ィクス事業」の急成長には共通点が ある。
いずれも国内市場はすでに成 熟している。
そして市場全体の成長 が鈍化する一方、より効率的なビジ ネスモデルを目指す業界内の競争や 構造改革は激化している。
俗にいう “勝ち組”と“負け組”の選別が進み、 一括物流 可視化 SCEM(イベントマネジメント) 環境マネジメント 物流コストマネジメント 拠点配置最適化 受注センターシステム 成果指標 需要予測 WMS (物流倉庫管理システム) TMS (輸送管理システム) G&MS (国際物流・海運システム) 3PL ソリューションシステム 顧客の視線でロジスティクスを 代行するシステム群 IT を駆使した多彩な物流を 提供するシステム群 ロジスティクス・ ソリューションシステム BPS 「ベストパートナー・システム」(BPS)の概要 JULY 2008 68 ジスティクス・システム)」や「無線 ハンディターミナルの導入」、さらに 「配車支援システムの導入」といった 流通向けの機能を強く意識していた。
〇五年に稼働した新たな配車支援シ ステム「BPS─Tvss」も、大手 量販店の要求に応えるために開発さ れた。
このシステムの最大の特徴は、管理 部門の壁面に並ぶ数十台の大画面モ ニターからなる「電子配車板」だ。
配 車済み車両の動向は従来、ホワイト ボードを使って管理していた。
しか し、刻々と変わる運行状況を手書き のホワイトボードで追いかけるのは簡 単ではない。
結局は配車マンのスキ ルに頼らざるを得なかった。
これに対し、大型ディスプレイに 情報を一覧表示できる新システムに は多くのメリットがある。
まず小売 りチェーンの店舗を巡るドライバーが 報告してくる到着時刻を、即座に反 映させられる。
到着が遅れている店 舗を赤く点滅させてアラームを出す などして、関係者は全体の進捗を一 目で把握できる。
荷主の求める「指 定時間通りの店着」を実施するうえ で有効に機能する。
新システムの効果は配送業務だけ にとどまらない。
「配車済みの配送車 両の動向を『電子配車板』で確認し ながら作業を指示すれば、配車する 前段の荷さばき作業を効率化したり、 配送車両への積載効率の向上を図る ことが可能だ」とIT推進室の田中 成幸ITソリューション担当課長は 強調する。
店舗側の受け入れ体制と 連動させれば、小売りチェーンが望 む店舗配送コストの圧縮にもつなが る。
つまりこの仕組みは、配車オペレ ーションの実務を高度化するだけの システムとは発想が異なる。
情報を ビジュアル化して配送業務の精度を 高めると同時に、関係者が情報を共 有することで配送業務全体を合理化 することを狙っている。
同じように 多くの訪問先をもつ配送業務であれ ば他業種のサプライチェーンにも応 用できるため、住宅物流への導入も 進めているのだという。
生産性の向上を狙って 指標管理で現場力強化 このようにBPSは、実務の負担 をITで軽減するだけでなく、業務 の生産性を高めることを目的として いる。
こうした姿勢はセンコーのIT 部門の組織体制にも表れている。
セ ンコーのIT推進部は「生産管理本 部」の中にあり、IT推進室長の室 崎氏は生産管理部長を兼務している。
ちなみに同社にとって “生産管理”と は、モノづくりのことではなく、物 流現場における生産性の管理を指し ている。
かつてIT推進室は「経営計画部」 という事業戦略の策定から経理業務 までを担う本社部門の傘下に置かれ ていた。
〇四年の組織の見直しによっ てここから経理部門が分離され、経 営企画部は発展的に解消。
IT推進 室は、グループ全体の生産性を高め ていく目的で新たに発足した「生産 管理部」の中に移された。
現在、IT推進室には五人の社員 が所属している。
グループ全体のI T担当者としては他に、ソリューショ ン営業などに携わる人材がセンコーの 社内に約一〇〇人、情報子会社のセ ンコー情報システムにも約一五〇人 のSE(システムエンジニア)がいる。
IT推進室の役割は、企画立案や大 型案件の管理などに限定され、シス テム開発や運用の実務は子会社と協 力ITベンダーが担っている。
センコー情報システムはグループの IT活用の元請けと位置付けられて おり、ほぼ全てのシステム案件に関与 している。
売上高は約三〇億円。
う ち四割強は自治体のシステム開発な どグループ外の仕事だ。
「連結売上高 の一・五%まではいかないが一%強」 (室崎氏)というセンコーの年間IT コストのほとんどが、情報子会社を 経由して支払われている。
こうした体制を組んでいることも あり、センコーはデータに基づく業務 管理を強く意識している。
指標によ る管理は、改善の成果を荷主とシェ オペレーション IT推進室の田中成幸ITソリュ ーション担当課長 配車支援 ?指定時間通り配送 精度の高い到着時間管理 ?指定時間通り集荷・積込 作業時間の削減 ?配送効率の向上 車輌の回転率・積載率の向上 情報の可視化を徹底した配車支援システム「BPS-Tvss」 実現できること 電子配車板 69 JULY 2008 は、あくまでも費用対効果に基づいて いる。
しかしIT投資の効果は、シ ステムを使う人材によっても大きく異 なってくる。
いかに最先端の機能を 備えたITインフラを整えても、使 いこなせる人材がいなければ宝の持 ち腐れでしかない。
〇六年四月から導入している「S CEM」(サプライチェーン・イベン ト・マネジメント)のようなシステム は、とりわけこうした面が強い。
この システムは、荷主のサプライチェーン 全域にわたる注文情報や在庫管理な どを支援する。
すでに国内五社、海 外一五社への導入実績がある。
「流 通情報企業」を標榜するセンコー自 慢のシステムだ。
ただし、SCEMシステムは、特 定の機能をまかなうBPSに比べて 理解が難しく、高度な運用スキルが 求められる。
その有効活用には、営 業マンや利用者がITに関する適切 な知識を身につけることが欠かせな い。
こうしたIT資産を使いこなし て生産性の向上を実現していくため にも、関係者のシステムに関する理 解を深める必要がある。
そこでIT推進室は、〇六年に「I Tマン教育」と呼ぶ活動をスタートし た。
「営業サポート系」や「BPS系」、 「オフィス系」など六シリーズ・二四 科目からなる教育体系を整備。
IT への社員の理解度を深め、3PLソ リューションの手法などを修得して もらうための取り組みをスタートし た。
これによってIT投資の効率を 向上させ、同時に社員の情報リテラ シーも高めようというわけだ。
本社のある大阪や東京で実施する 講習を、テレビ会議システムで全国の 拠点に中継するというスタイルをと った。
参加者は自分が携わっている 業務に応じて三科目から四科目を受 講する。
初年度には計一二五人が参 加し、二年目となる〇七年度は一三 六人が受講した。
エクセルを使った データ分析の講習では、参加者がパ ソコンを持ち込んで実習形式で受講 するといった工夫も施した。
その後、科目数は三九に増え、一 定の成果を残した。
ところが現場の実 務者を対象とした科目などでは、参 加したくても時間的に難しいといっ た声が上がってくるようになった。
そ こで今年度からは、新たにインター ネット経由で映像マニュアルを配信 する試みをスタートさせる。
「今年の上期にまず、実験をかねて 二つぐらい映像マニュアルをリリース する。
一つはドライバー向けにデジタ コの基本操作を解説するもの。
もう 一つは、新入社員や新人のパートさ んに仕事内容を覚えてもらうための 映像だ。
こうした手法で社員の習熟 度を高められるようであれば、次年 度からさらに拡大していきたい」と 室崎氏の期待は大きい。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) アすることにもつながる。
生産性へ のこだわりは近年、ますます強まっ ている。
今年度は全社生産性向上活動」と 名づけた運動を展開しようとしてい る。
生産管理部長を兼ねる室崎氏と しては、まずはITで現場の生産性 向上をサポートできる仕組みを整え たい考えだ。
既にセンコーには、〇三年一月に 稼働した「就業情報ネットワークシ ステム」がある。
従業員の勤怠管理 や作業内容をタッチパネル方式でシ ステムに入力し、ABC(活動基準 原価計算)に近い考え方で現場を管 理するための仕組みだ。
今年度はここからさらに一歩進め て、関東地方のあるアパレル関係の 物流拠点で試験的な取り組みを行う。
ハンディターミナルで作業者ごとの詳 細な生産性データを取り、これを活 用して収益性の向上策につなげよう としている。
室崎氏としては「ここ での成果を見ながら、次年度以降さ らに現場の生産性向上のためにIT に投資していくのかどうかを判断し ていきたい」という。
IT教育体系を整備 ネットで映像を配信 センコーにおけるIT投資の判断 人材教育 「SCEM」(サプライチェーン・イベント・マネジメント)システム サプライチェーン上での調達・製造・輸送・在庫・配送・販売の各プロセスを監視し、「調達や製造工程の遅れ」「 不良 品の発生や補修の状況」、「輸送・通関・配送の遅れ」、「長期滞留や不回転の在庫発生」などをいち早く把握するこ とで、「SCM で求めている全体最適」を実現することができます。
調達生産不良の把握 納期遅れの察知 不回転在庫・デッド ストックの検出 製造 輸送 販売 配送 在庫過少・過大 在庫の検出 SCEM システム(サプライチェーン・イベント・マネジメント システム) インターネット 調達先メーカー製造部門担当者SCM 管理部門担当者センコー問屋・卸 2006年4 月から提供開始(現在…国内:5 社、海外:15 社、 計…20 社利用)
