2008年7月号
特集
特集
もう派遣には頼れない 直接雇用の現場運営ノウハウ
直接雇用の現場運営ノウハウ
作業量の波動に対応する手法として米国のチェーン
ストア業界では「レイバースケジューリング」が広く
導入されている。
これを日本の物流現場に適用する 動きが活発化している。
カギを握るのは、スタッフの 多能工化だ。
(梶原幸絵) 低温物流最大手の現場運営 ニチレイグループにとって低温物流事業は加工食品 事業と並ぶコア事業だ。
同事業を担うニチレイロジグ ループは、国内だけでも冷蔵倉庫八五拠点(DC)、 通過型の低温物流センター(TC)二三拠点を構え る低温物流業界最大手。
冷蔵倉庫の保管能力は一三 一万トンに達する。
ニチレイロジグループの二〇〇八年三月期の売上 高は一三八七億四五〇〇万円、営業利益は八五億六 〇〇万円。
売上高のうち、グループ向けは十数%に 過ぎない。
一般のメーカーや卸、小売り、外食など を主な荷主として幅広く食品物流業務を展開してい る。
組織としては、?地域密着型の冷蔵倉庫保管を行 う「地域保管事業」、?輸配送や3PLの「ネットワ ーク事業」、?欧州と中国での「海外事業」、?建築 工事・設計、メンテナンスを行う「エンジニアリング 事業」の四事業に区分し、持ち株会社のニチレイロジ グループ本社の傘下に、それぞれ事業会社を設けて いる(図1)。
そのなかでも最大の成長領域として位置付けてい るのが、ネットワーク事業だ。
同分野のうち、輸配 送や小売業の専用センター運営などは主に事業会社 の「ロジスティクス・ネットワーク(ロジネット)」が 行っている。
三六五日二四時間対応のTCで荷物を 店舗別に仕分け、スーパーやGMS(総合スーパー)、 コンビニエンスストアなどに一括納品している。
納品 先店舗数は現在、全国六〇六店舗に上っている。
昨 年度の売上高は前年度比九・四%増の六六九億二九 〇〇万円。
業績は順調だ。
ロジネットの運営するTCは現在、東北、関東、近 畿、四国などに一八カ所ある。
現場で中心となって 働くパート数は登録ベースで五〇〇〇人以上。
現場運 営は主に作業会社に委託している。
他にロジネット全 体では正社員や契約社員などが一〇〇〇人程度所属 している。
センターの作業人員は立ち上げ前に荷主と詰める。
通過する貨物の物量、種類、納品時間・場所などか ら、過去の経験値に照らして必要な人数・配置を割 り出し、収支をはじいて荷主と料金を交渉する。
一般にセンター運営コストは過半を作業員の人件費 が占める。
見込み通りの人数で現場を回すことがで きるかどうかで、その案件の明暗が分かれる。
具体 的には、日々の作業計画の精度で生産性の大枠が決 まる。
特売などによる入荷の集中や、時間通りに入 荷しないなど、イレギュラー情報の扱いが肝だ。
荷主 や作業会社とのコミュニケーションの密度と情報伝達 のスピードが問われる。
「作業計画は全て数値に基づいている。
肝心のデー タが狂うと現場が混乱するばかりか納品時間の遅れ につながり、顧客に迷惑をかけてしまう。
要員確保 や人員配置にムダがあれば当然、我々の収支もおか しくなってくる」とロジネットの秋山真人専務執行役 員物流事業本部長は語る。
データを作業量に落とし込むプロセスにも厳密さが 求められる。
キャベツなど比較的大きく重量のある ものが大量に入荷すると、数量は把握していても容 積が大きいため、想定外のスペースをとることになる。
それだけでセンターの機能はマヒしてしまい、同時に 作業人時も変わってくる。
そこで、これまで予測の ベースにしていた貨物の金額や個数に、容積も加え るように改めた。
適切なスペース配分と人員投入が可 能になる。
予めセンターのキャパシティを超えること JULY 2008 28 第4 部 特集もう派遣には頼れない がわかっていれば、近隣のセンターに分散させること もムリなくできる。
それでも、実際の現場では作業計画と進捗のズレが 生じる。
そこで検品・仕分け作業に使用するハンデ ィターミナルを活用して作業の進捗をシステム上で把 握している。
個人単位の作業量、スピード、ミスまで 管理できる。
計画よりも遅れている工程があれば、早 く作業を終えたところから人員をシフトしていく。
作業終了後は計画とのズレを日々検証し、作業員 の教育や計画策定の精度向上につなげている。
こう した細部の工夫の積み重ねによって、同社のTCで は日雇い派遣などのスポット作業員をほとんど使わず に済んでいるという。
ロジネットで行われているような現場の労働力管 理の手法は「レイバースケジューリング」と呼ばれる。
一九七〇年代から八〇年代の米国で、チェーンスト アの店舗管理を効率化する手法として発達したテク ニックだ。
まず作業の分類・整理を行い、それぞれの手順を 標準化し、標準作業時間を設定する。
その上で個別 の作業を完了するために必要な人時の基準値を設定 し、全体のスケジュールや要員配置を組み立て、人員 配置の最適化を図る。
日本の小売業界でも八〇年代後半から導入が始ま っている。
食品スーパーのサミットは八四年にいち早 く「レイバー・スケジューリング・プログラム(LS P)」を導入し、効率化に成果をあげた。
時給で給与 が決まるパート・アルバイトが主力になる現場であれ ば、小売業だけでなく物流業にも導入が可能だ。
しかし、これまで日本の物流業界ではレイバースケ ジューリングが本格的に省みられることがほとんどな かった。
実は小売業界でも日本の場合、導入に成功 したのはサミットのほか数社に限られるとされる。
そ の必要性が薄かったからだ。
サービス残業が黙認され ている日本の現場では、厳密な人時生産性管理は意 味を持たない。
多少生産性が低くても長時間労働で 穴を埋めれば済むからだ。
時給で働くパート・アルバ イトには通用しない理屈でも、正社員なら無理が通る。
しかし、現場のパート化比率は過去一〇年で急拡 大した。
電話一本で調達できる日雇いの派遣も、も う使えない。
生産性向上の手を抜いて、正社員のサ ービス残業に頼ってきた現場は既に立ち行かなくなっ ている。
正社員に滅私奉公を強いる従来のやり方か ら科学的管理法に、日本企業も現場運営の手法を改 める必要がある。
一分単位管理を開始 日本生協連と会員生協、生協関連のサプライヤー向 けの物流業務を行う日本生活協同組合連合会(日本 生協連)の物流子会社、シーエックスカーゴ(本社・ 埼玉県桶川市)では、従来から現場運営に派遣社員 を使用しない方針をとっている。
同社の伊藤隆志社長は「特別な技能が必要な業務 は別として、定員割れを派遣で間に合わせる考え方 はない。
日本の人口は確実に減っている。
現場運営 を派遣に頼っても会社の力にはならない。
パートナ ー(パート)に力を発揮してもらうと同時に現場の ムリ・ムダを取り、定員の中で業務をこなせるよう な体制作りをしなければならない」と言い切る。
同社は非上場だが内部統制を整備し、詳細な事業 報告書や決算書を公開している。
そこには「格差社 会」、「ワーキングプア」、「偽装請負」など、物流会 社の決算書では普通まず目にしない言葉が並ぶ。
労 働法制の整備への対応にも言及している。
それを反 29 JULY 2008 ロジスティクス・ネット ワークの秋山真人専務執 行役員物流事業本部長 図1 ニチレイロジグループ組織体制 ニチレイ・ロジスティクス北海道 ニチレイ・ロジスティクス東北 ニチレイ・ロジスティクス関東 キョクレイ ニチレイ・ロジスティクス東海 ニチレイ・ロジスティクス関西 ニチレイ・ロジスティクス中国 ニチレイ・ロジスティクス四国 ニチレイ・ロジスティクス九州 ノンアセット型3PL ロジスティクス・プランナー 欧州8社 中国1社 地域保管事業 (冷蔵倉庫保管) ニチレイ 持ち株会社 ニチレイロジグループ本社 (中間持ち株会社) ネットワーク事業 (輸配送、センター運営、3PL) NK トランス 運送・流通・センター運営 ロジスティクス・ネットワーク ニチレイ・ ロジスティクス エンジニアリング 海外事業エンジニアリング事業 映して今年三月からは、労働時間の一分単位管理シ ステムの運用を始めた。
同社の正社員、契約・嘱託社員数は五七三人(今 年三月時点、以下同)、臨時社員(パート・アルバイ ト)数は三四二六人。
このうち、庫内作業に携わる のは正社員と契約・嘱託社員が一三五人、臨時社員 が三二八六人となっている。
パート活用は重要な経 営課題として位置付けている。
パートのモチベーションの向上のため、現場リーダ ーへの登用制度を設けている。
同制度の成果は上が っているが、責任ある立場につきたいと思うパートが 今後も確保できるかが問題だ。
伊藤社長は「価値観 が多様化し、働くことに対する意識が変わっている。
今の時代、働くことよりも楽しいことは多い。
責任 ある立場に就きたくないと考える人も多くなってく るのではないか」と懸念する。
リーダー制でパートの 仕事に深みを持たせるだけではこの問題は解決でき ない。
そこで、庫内の機械化を進め、作業の単純化も進 めている。
埼玉県桶川市の関東流通センター(倉庫 面積四万六〇〇〇平方メートル)では、情報システム、 自動倉庫やケースソーター、ベルトコンベアなどを導 入し、機械化を進めた(写真1)。
個別宅配などの共 同購入商品を扱うラインも機械化した。
ピッキング作 業を従来の「摘み取り式」から、入荷した商品をラ ンダムにラインに流し、JANコードを読み取ってト レーに投入する「ばらまき式」に変更し、省人化を 図った。
生産性の改善を目指して今春、北海道で実験を始 めた。
各作業員が扱う貨物の量や重量を標準化する と同時に、商品の配置などを再検討。
各作業工程に 必要な人時の削減を図るために検証を進めている。
あ る程度めどがついたため、北海道の成果をモデルケー スとして他の拠点にも広げていく考えだ。
そして同社が生産性向上の切り札になると期待し ているのがレイバースケジューリングだ。
労働時間の 一分単位管理もその複線と言える。
導入に向けて現 在、各工程に必要な人時の正確な把握と予測の精度 向上に取り組んでいる。
レイバースケジューリングの導入は〇六年度の報告 書で既にうたっている。
しかし伊藤社長は「なかな か上手くいっていない。
ある程度は派動はよめるが、 作業計画の予測の精度に問題がある。
作業分析も甘 い。
さらには現場の管理者がパートナーに優しい。
現 場責任者とパートナーのコミュニケーションを密にし て意義を共有し、現場全体で取り組んでいきたい」 という。
作業人時と個人のスキルを組み合わせる 既にレイバー・スケジューリング・プログラムを完 成させたとする物流会社もある。
ワールド・ロジだ。
花王出身者を中心に九七年に創業した3PLで、通 販物流を強みとし、通販のバックヤード業務をすべて 引き受ける「フルフィルメント・プロバイダー」を標 榜する。
同社の現場運営は人材派遣子会社の日本アシスト が請け負っている。
日本アシストのネットワークが弱 い地域では他の人材派遣会社から人員の提供を受け るが、現場で働くのはパート・アルバイトや季節労働 者も含めて日本アシストの従業員、という体制になっ ている。
現場にはすべて「LSS(ロジスティクス・サポー ト・システム)」と呼ぶ独自の庫内作業管理システム を導入している。
LSSは各作業員が携わる作業と JULY 2008 30 写真1 シーエックスカーゴの関東流通センターの庫内 シーエックスカーゴの 伊藤隆志社長 特集もう派遣には頼れない 時間と休憩時間を全て把握している。
個人単位、各 工程単位の作業管理が可能で、もともとは花王が二 〇年前にテスト導入したLSPと同様の考え方に基づ いているという。
LSSに蓄積したデータに基づいてセンターに人員 を配置する。
ただし、それだけでは波動に柔軟に対応 することはできない。
庫内作業は、入荷、補充、ピ ッキング、検品、梱包、出荷など多岐にわたる。
そ れぞれにスキルが必要だ。
各作業員のできる仕事が 限られれば、人員配置も苦労することになる。
「カギになるのは作業スタッフの多能工化だ。
各工 程を関連付けて作業員を教育し、?多機能人間?を育 てている」と、ワールド・ロジの風間國義常務取締 役は説明する。
例えば入荷作業やピッキング作業を処理できる作業 員であれば、補充作業を容易に覚えられる。
商品の ロケーションを把握しているからだ。
しかし入荷作業 の担当者に梱包作業を教えるのは容易ではない。
求 められるスキルが全く違う。
そこで庫内作業を、必 要な知識で大まかに分類した。
各作業員には、同じ 分類に区分された作業を教え込んでいる。
作業員個人のスキルと作業人時を組み合わせてシ フトを組む。
午前中の入荷が多く、午後のピッキング が少ない日には、予めピッカーの人数を減らしておく。
午前中に入荷を終えた作業員は入荷の少ない午後か ら補充とピッキングに移れば、センターの総労働時間 を削減することが可能になる。
この「ワーク・シェ アリング」により、各作業員の手待ちの時間をなく し、その日出勤した人員をフルに稼働させることが 可能になる。
ワーク・シェアリングにはパートの定着率を高める 効果もある。
一人が一工程の作業しかできなければ、 午前中に入荷作業についたパートは午後から手が空 いてしまう。
午前中のみのシフトでは短時間勤務に なり、パートの手取りが減る。
結果として離職を招 いてしまうことになりかねない。
風間常務は「既に我々自身で実現できる作業改善 は考え得る限りやり尽くした。
もはやのりしろはほ とんど残っていない。
今後は荷主とともに調達まで 含めた一気通貫の改善に取り組み、予測精度を向上 していくしかない。
それともう一つ、現場スタッフ の定着率向上が課題だ」という。
物流センターに託児所を設置 定着率が低ければ、多能工は育たない。
レイバー スケジューリングも機能しなくなる。
逆に定着率が上 がれば多能工化が進み、生産性も上がる。
業務も安 定する。
そのために、同社は現場スタッフの評価・教 育制度の充実に加えてセンターの職場環境の整備にも 力を入れようとしている。
昨年、大阪市住之江区南港に開設した通販対応の 大型物流センター「ワールド・ロジ大阪フルフィルメ ントセンター( GREEN CUBE)」では、福利厚生設 備の充実を図った。
同センターの周辺には飲食施設が 少ないことから、従業員用にカフェテリアとレストラ ンを併設した。
二四時間営業のコンビニエンスストア もある。
子育て中の女性でもパートに出やすくなるよ う、託児所まで備えている。
資金やスペースに余裕があったわけではない。
現場 スタッフの雇用促進と定着率の向上のために必要な投 資だと判断した。
ワールド・ロジでは今後、一連の福 利厚生設備の投資コストとその効果を厳密に検証する 予定だ。
これが効を奏するか。
風間常務は期待をか けている。
31 JULY 2008 ワールド・ロジの風間 國義常務取締役
これを日本の物流現場に適用する 動きが活発化している。
カギを握るのは、スタッフの 多能工化だ。
(梶原幸絵) 低温物流最大手の現場運営 ニチレイグループにとって低温物流事業は加工食品 事業と並ぶコア事業だ。
同事業を担うニチレイロジグ ループは、国内だけでも冷蔵倉庫八五拠点(DC)、 通過型の低温物流センター(TC)二三拠点を構え る低温物流業界最大手。
冷蔵倉庫の保管能力は一三 一万トンに達する。
ニチレイロジグループの二〇〇八年三月期の売上 高は一三八七億四五〇〇万円、営業利益は八五億六 〇〇万円。
売上高のうち、グループ向けは十数%に 過ぎない。
一般のメーカーや卸、小売り、外食など を主な荷主として幅広く食品物流業務を展開してい る。
組織としては、?地域密着型の冷蔵倉庫保管を行 う「地域保管事業」、?輸配送や3PLの「ネットワ ーク事業」、?欧州と中国での「海外事業」、?建築 工事・設計、メンテナンスを行う「エンジニアリング 事業」の四事業に区分し、持ち株会社のニチレイロジ グループ本社の傘下に、それぞれ事業会社を設けて いる(図1)。
そのなかでも最大の成長領域として位置付けてい るのが、ネットワーク事業だ。
同分野のうち、輸配 送や小売業の専用センター運営などは主に事業会社 の「ロジスティクス・ネットワーク(ロジネット)」が 行っている。
三六五日二四時間対応のTCで荷物を 店舗別に仕分け、スーパーやGMS(総合スーパー)、 コンビニエンスストアなどに一括納品している。
納品 先店舗数は現在、全国六〇六店舗に上っている。
昨 年度の売上高は前年度比九・四%増の六六九億二九 〇〇万円。
業績は順調だ。
ロジネットの運営するTCは現在、東北、関東、近 畿、四国などに一八カ所ある。
現場で中心となって 働くパート数は登録ベースで五〇〇〇人以上。
現場運 営は主に作業会社に委託している。
他にロジネット全 体では正社員や契約社員などが一〇〇〇人程度所属 している。
センターの作業人員は立ち上げ前に荷主と詰める。
通過する貨物の物量、種類、納品時間・場所などか ら、過去の経験値に照らして必要な人数・配置を割 り出し、収支をはじいて荷主と料金を交渉する。
一般にセンター運営コストは過半を作業員の人件費 が占める。
見込み通りの人数で現場を回すことがで きるかどうかで、その案件の明暗が分かれる。
具体 的には、日々の作業計画の精度で生産性の大枠が決 まる。
特売などによる入荷の集中や、時間通りに入 荷しないなど、イレギュラー情報の扱いが肝だ。
荷主 や作業会社とのコミュニケーションの密度と情報伝達 のスピードが問われる。
「作業計画は全て数値に基づいている。
肝心のデー タが狂うと現場が混乱するばかりか納品時間の遅れ につながり、顧客に迷惑をかけてしまう。
要員確保 や人員配置にムダがあれば当然、我々の収支もおか しくなってくる」とロジネットの秋山真人専務執行役 員物流事業本部長は語る。
データを作業量に落とし込むプロセスにも厳密さが 求められる。
キャベツなど比較的大きく重量のある ものが大量に入荷すると、数量は把握していても容 積が大きいため、想定外のスペースをとることになる。
それだけでセンターの機能はマヒしてしまい、同時に 作業人時も変わってくる。
そこで、これまで予測の ベースにしていた貨物の金額や個数に、容積も加え るように改めた。
適切なスペース配分と人員投入が可 能になる。
予めセンターのキャパシティを超えること JULY 2008 28 第4 部 特集もう派遣には頼れない がわかっていれば、近隣のセンターに分散させること もムリなくできる。
それでも、実際の現場では作業計画と進捗のズレが 生じる。
そこで検品・仕分け作業に使用するハンデ ィターミナルを活用して作業の進捗をシステム上で把 握している。
個人単位の作業量、スピード、ミスまで 管理できる。
計画よりも遅れている工程があれば、早 く作業を終えたところから人員をシフトしていく。
作業終了後は計画とのズレを日々検証し、作業員 の教育や計画策定の精度向上につなげている。
こう した細部の工夫の積み重ねによって、同社のTCで は日雇い派遣などのスポット作業員をほとんど使わず に済んでいるという。
ロジネットで行われているような現場の労働力管 理の手法は「レイバースケジューリング」と呼ばれる。
一九七〇年代から八〇年代の米国で、チェーンスト アの店舗管理を効率化する手法として発達したテク ニックだ。
まず作業の分類・整理を行い、それぞれの手順を 標準化し、標準作業時間を設定する。
その上で個別 の作業を完了するために必要な人時の基準値を設定 し、全体のスケジュールや要員配置を組み立て、人員 配置の最適化を図る。
日本の小売業界でも八〇年代後半から導入が始ま っている。
食品スーパーのサミットは八四年にいち早 く「レイバー・スケジューリング・プログラム(LS P)」を導入し、効率化に成果をあげた。
時給で給与 が決まるパート・アルバイトが主力になる現場であれ ば、小売業だけでなく物流業にも導入が可能だ。
しかし、これまで日本の物流業界ではレイバースケ ジューリングが本格的に省みられることがほとんどな かった。
実は小売業界でも日本の場合、導入に成功 したのはサミットのほか数社に限られるとされる。
そ の必要性が薄かったからだ。
サービス残業が黙認され ている日本の現場では、厳密な人時生産性管理は意 味を持たない。
多少生産性が低くても長時間労働で 穴を埋めれば済むからだ。
時給で働くパート・アルバ イトには通用しない理屈でも、正社員なら無理が通る。
しかし、現場のパート化比率は過去一〇年で急拡 大した。
電話一本で調達できる日雇いの派遣も、も う使えない。
生産性向上の手を抜いて、正社員のサ ービス残業に頼ってきた現場は既に立ち行かなくなっ ている。
正社員に滅私奉公を強いる従来のやり方か ら科学的管理法に、日本企業も現場運営の手法を改 める必要がある。
一分単位管理を開始 日本生協連と会員生協、生協関連のサプライヤー向 けの物流業務を行う日本生活協同組合連合会(日本 生協連)の物流子会社、シーエックスカーゴ(本社・ 埼玉県桶川市)では、従来から現場運営に派遣社員 を使用しない方針をとっている。
同社の伊藤隆志社長は「特別な技能が必要な業務 は別として、定員割れを派遣で間に合わせる考え方 はない。
日本の人口は確実に減っている。
現場運営 を派遣に頼っても会社の力にはならない。
パートナ ー(パート)に力を発揮してもらうと同時に現場の ムリ・ムダを取り、定員の中で業務をこなせるよう な体制作りをしなければならない」と言い切る。
同社は非上場だが内部統制を整備し、詳細な事業 報告書や決算書を公開している。
そこには「格差社 会」、「ワーキングプア」、「偽装請負」など、物流会 社の決算書では普通まず目にしない言葉が並ぶ。
労 働法制の整備への対応にも言及している。
それを反 29 JULY 2008 ロジスティクス・ネット ワークの秋山真人専務執 行役員物流事業本部長 図1 ニチレイロジグループ組織体制 ニチレイ・ロジスティクス北海道 ニチレイ・ロジスティクス東北 ニチレイ・ロジスティクス関東 キョクレイ ニチレイ・ロジスティクス東海 ニチレイ・ロジスティクス関西 ニチレイ・ロジスティクス中国 ニチレイ・ロジスティクス四国 ニチレイ・ロジスティクス九州 ノンアセット型3PL ロジスティクス・プランナー 欧州8社 中国1社 地域保管事業 (冷蔵倉庫保管) ニチレイ 持ち株会社 ニチレイロジグループ本社 (中間持ち株会社) ネットワーク事業 (輸配送、センター運営、3PL) NK トランス 運送・流通・センター運営 ロジスティクス・ネットワーク ニチレイ・ ロジスティクス エンジニアリング 海外事業エンジニアリング事業 映して今年三月からは、労働時間の一分単位管理シ ステムの運用を始めた。
同社の正社員、契約・嘱託社員数は五七三人(今 年三月時点、以下同)、臨時社員(パート・アルバイ ト)数は三四二六人。
このうち、庫内作業に携わる のは正社員と契約・嘱託社員が一三五人、臨時社員 が三二八六人となっている。
パート活用は重要な経 営課題として位置付けている。
パートのモチベーションの向上のため、現場リーダ ーへの登用制度を設けている。
同制度の成果は上が っているが、責任ある立場につきたいと思うパートが 今後も確保できるかが問題だ。
伊藤社長は「価値観 が多様化し、働くことに対する意識が変わっている。
今の時代、働くことよりも楽しいことは多い。
責任 ある立場に就きたくないと考える人も多くなってく るのではないか」と懸念する。
リーダー制でパートの 仕事に深みを持たせるだけではこの問題は解決でき ない。
そこで、庫内の機械化を進め、作業の単純化も進 めている。
埼玉県桶川市の関東流通センター(倉庫 面積四万六〇〇〇平方メートル)では、情報システム、 自動倉庫やケースソーター、ベルトコンベアなどを導 入し、機械化を進めた(写真1)。
個別宅配などの共 同購入商品を扱うラインも機械化した。
ピッキング作 業を従来の「摘み取り式」から、入荷した商品をラ ンダムにラインに流し、JANコードを読み取ってト レーに投入する「ばらまき式」に変更し、省人化を 図った。
生産性の改善を目指して今春、北海道で実験を始 めた。
各作業員が扱う貨物の量や重量を標準化する と同時に、商品の配置などを再検討。
各作業工程に 必要な人時の削減を図るために検証を進めている。
あ る程度めどがついたため、北海道の成果をモデルケー スとして他の拠点にも広げていく考えだ。
そして同社が生産性向上の切り札になると期待し ているのがレイバースケジューリングだ。
労働時間の 一分単位管理もその複線と言える。
導入に向けて現 在、各工程に必要な人時の正確な把握と予測の精度 向上に取り組んでいる。
レイバースケジューリングの導入は〇六年度の報告 書で既にうたっている。
しかし伊藤社長は「なかな か上手くいっていない。
ある程度は派動はよめるが、 作業計画の予測の精度に問題がある。
作業分析も甘 い。
さらには現場の管理者がパートナーに優しい。
現 場責任者とパートナーのコミュニケーションを密にし て意義を共有し、現場全体で取り組んでいきたい」 という。
作業人時と個人のスキルを組み合わせる 既にレイバー・スケジューリング・プログラムを完 成させたとする物流会社もある。
ワールド・ロジだ。
花王出身者を中心に九七年に創業した3PLで、通 販物流を強みとし、通販のバックヤード業務をすべて 引き受ける「フルフィルメント・プロバイダー」を標 榜する。
同社の現場運営は人材派遣子会社の日本アシスト が請け負っている。
日本アシストのネットワークが弱 い地域では他の人材派遣会社から人員の提供を受け るが、現場で働くのはパート・アルバイトや季節労働 者も含めて日本アシストの従業員、という体制になっ ている。
現場にはすべて「LSS(ロジスティクス・サポー ト・システム)」と呼ぶ独自の庫内作業管理システム を導入している。
LSSは各作業員が携わる作業と JULY 2008 30 写真1 シーエックスカーゴの関東流通センターの庫内 シーエックスカーゴの 伊藤隆志社長 特集もう派遣には頼れない 時間と休憩時間を全て把握している。
個人単位、各 工程単位の作業管理が可能で、もともとは花王が二 〇年前にテスト導入したLSPと同様の考え方に基づ いているという。
LSSに蓄積したデータに基づいてセンターに人員 を配置する。
ただし、それだけでは波動に柔軟に対応 することはできない。
庫内作業は、入荷、補充、ピ ッキング、検品、梱包、出荷など多岐にわたる。
そ れぞれにスキルが必要だ。
各作業員のできる仕事が 限られれば、人員配置も苦労することになる。
「カギになるのは作業スタッフの多能工化だ。
各工 程を関連付けて作業員を教育し、?多機能人間?を育 てている」と、ワールド・ロジの風間國義常務取締 役は説明する。
例えば入荷作業やピッキング作業を処理できる作業 員であれば、補充作業を容易に覚えられる。
商品の ロケーションを把握しているからだ。
しかし入荷作業 の担当者に梱包作業を教えるのは容易ではない。
求 められるスキルが全く違う。
そこで庫内作業を、必 要な知識で大まかに分類した。
各作業員には、同じ 分類に区分された作業を教え込んでいる。
作業員個人のスキルと作業人時を組み合わせてシ フトを組む。
午前中の入荷が多く、午後のピッキング が少ない日には、予めピッカーの人数を減らしておく。
午前中に入荷を終えた作業員は入荷の少ない午後か ら補充とピッキングに移れば、センターの総労働時間 を削減することが可能になる。
この「ワーク・シェ アリング」により、各作業員の手待ちの時間をなく し、その日出勤した人員をフルに稼働させることが 可能になる。
ワーク・シェアリングにはパートの定着率を高める 効果もある。
一人が一工程の作業しかできなければ、 午前中に入荷作業についたパートは午後から手が空 いてしまう。
午前中のみのシフトでは短時間勤務に なり、パートの手取りが減る。
結果として離職を招 いてしまうことになりかねない。
風間常務は「既に我々自身で実現できる作業改善 は考え得る限りやり尽くした。
もはやのりしろはほ とんど残っていない。
今後は荷主とともに調達まで 含めた一気通貫の改善に取り組み、予測精度を向上 していくしかない。
それともう一つ、現場スタッフ の定着率向上が課題だ」という。
物流センターに託児所を設置 定着率が低ければ、多能工は育たない。
レイバー スケジューリングも機能しなくなる。
逆に定着率が上 がれば多能工化が進み、生産性も上がる。
業務も安 定する。
そのために、同社は現場スタッフの評価・教 育制度の充実に加えてセンターの職場環境の整備にも 力を入れようとしている。
昨年、大阪市住之江区南港に開設した通販対応の 大型物流センター「ワールド・ロジ大阪フルフィルメ ントセンター( GREEN CUBE)」では、福利厚生設 備の充実を図った。
同センターの周辺には飲食施設が 少ないことから、従業員用にカフェテリアとレストラ ンを併設した。
二四時間営業のコンビニエンスストア もある。
子育て中の女性でもパートに出やすくなるよ う、託児所まで備えている。
資金やスペースに余裕があったわけではない。
現場 スタッフの雇用促進と定着率の向上のために必要な投 資だと判断した。
ワールド・ロジでは今後、一連の福 利厚生設備の投資コストとその効果を厳密に検証する 予定だ。
これが効を奏するか。
風間常務は期待をか けている。
31 JULY 2008 ワールド・ロジの風間 國義常務取締役
