2008年10月号
SOLE

作業指示書を軸とした保全作業管理

SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics OCTOBER 2008  74 書(ワークオーダー)を基軸として 起票から終結まで保全作業を一貫し て管理する(図2)。
 作業指示書は設備の管理単位と 整合した保全作業の管理単位であ る。
当該作業に係る組織・関係者 間の情報共有と責任を明確化する ものであり、保全実績収集の「デ ータボックス」でもある。
 プランニングは、保全作業範 囲・方法、安全処置、リソース(取 替部品等資材と労務)を規定する ものである。
起票者が記述した現象 を、プランナーが保全作業範囲と して確定。
放射線防護や設備の隔 離など保全作業に必要な処置を準備 して、作業指示書に記入する。
対 象設備の系統、タイプ、停止要否 などの主要情報はコード化しておく。
 スケジューリングは、保全作業の 優先度と実施時期を規定する。
運 転中保全のスケジューリングでは週 を単位として「作業実施部隊の労 務リソースを充足するよう、作業優 先度の高い作業から順に作業指示書 原子力発電所の保全業務モデル? 作業指示書を軸とした保全作業管理  前回に続き、RAMS( Reliabi lity, Availability, Maintainability and Supportability)研究会の研究 成果「原子力発電所の保全業務モ デル」を報告する。
 米国の原子力産業は、標準原子 力パフォーマンスモデル(SNPM :Standard Nuclear Performance Model)を原動力の一つにして復活 した。
SNPMの中核は前回報告 した「信頼性管理」と「保全作業 管理」だ。
今回は保全作業管理に 焦点を当て、プラント保全一般で使 われる管理手法とSNPMへの展 開を紹介する。
(SOLE日本支部・山田憲吉) 原子力産業復活の舞台裏  原子力発電所の最も基本的な業 績評価指標(KPI)は設備利用 率である。
前回でもふれたが、米 国では一九七九年のスリーマイル島 事故以来、新規プラントの建設が 停止し、設備利用率が低迷してい た。
それが八〇年代終わり頃から目 覚ましい向上をみせ、現在では九〇 %に近づいている(図1)。
米国原 子力産業の鮮やかな復活は「原子 力ルネサンス」と呼ばれ、注目を集 めている。
 原子力ルネサンスをもたらした要 因のうち、日本の新検査制度への 対応を考える上でも、まず規制と の関係を把握しておく必要がある。
米国の規制はNRC(米国原子力 規制委員会)が規定する保守規則 「10CFR50・65」を基準と して、民間規格でそれを具体的に 展開するかたちをとっている。
 米国の原子力発電所保全業務モ デルを理解するためにもう一つ前 提としておさえておくべきは、「保 全マネジメント」である。
原子力プ ラントに限らず、プラント保全一般 に適用されている一連の管理手法 だ。
中心となるのはプランニング・ スケジューリングであり、作業指示 図2 保全マネジメントで一連の流れを管理する 作業指示書起票コード化承 認コンピュータ入力 計画作成 設備を供用に戻す 週次スケジューリング 作業結果フィードバック日次スケジューリング 作業終結ファイリング 作業実施 作業指示の流れ 指示経路 図1 米国原子力発電所の設備利用率推移。
今では日本を大きく上回る 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (年) (%) 日本 米国 75  OCTOBER 2008 S( Computerized Maintenance Management System)の利用部門 としての主管業務も担当する。
 米国原子力産業復活の業界側の 原動力は、SNPMである。
SN PMは異なるプラント設備間の比較 評価を行うための共通の考え方で あり、プロセスおよびコスト管理を 標準化し、統一的な評価指標を定 義した標準業務モデルである。
SN PMの構成を図4に示す。
中央に位 置する五つのプロセスは「コアプロ セス」と呼ばれる中心的業務プロセ スである。
■Work Management(WM):作 業管理 ■Equipment Reliability(ER): 設備信頼性 ■Materials & Services(MS): 資材&サービス ■Manage Configuration( C M ) :構成管理 ■Operate Plant(OP):プラン ト運転  「プラント運転」以外はすべて保 全業務のプロセスである。
うち「作 業管理」「設備信頼性」の二つが、基 幹のプロセスとなる。
「資材&サー ビス」は狭い意味でのロジスティク スであり、周辺に位置するプロセス を選択する」ことを基本方針とす る。
一方、定期点検時や改良工事 などのプロジェクト型作業にはスケ ジューリングソフトを適用する。
保全マネジメントで稼働率向上  作業指示書を用いたプランニ ング・スケジューリングの効果は、 「レンチタイム」を指標として定量 的に評価することができる(レンチ は工具の一種であり、レンチタイム は実働作業時間の意)。
プランニン グ・スケジューリングの導入により、 率向上を実現し、経営目標達成に 資する││ここに保全マネジメント の本質的意義があると考えられる。
 プランニング・スケジューリン グを推進する保全業務支援組織は、 今後の作業の計画作成に専念する ラインから独立したスタッフ組織で あり、プランナーは優秀な技能者か ら選抜し、保全作業班の班長と同 格に処遇される。
同組織はCMM 保全作業の生産性は大幅に向上す る(図3)。
 生産性向上の効果は人員削減等 の合理化ではない。
生じた余力を予 防保全に振り向け、事後保全作業 の発生を減らすことでプラント稼働 出典: Don Nyman & Joel Levitt,“ Maintenance Planning, Scheduling and Coordination” 作業指示書受取 5 3 工具・資材の入手 12 5 作業場所への/からの移動 15 10 組織調整による遅延 8 3 作業現場における手待ち 5 2 作業開始遅れ、作業早上り 5 1 所定の休憩・息抜き 10 10 私用(余分な休憩等) 5 1 非稼働 65 35 稼働「レンチタイム」 35 65 作業時間内訳プラニング・スケジューリングなしプラニング・スケジューリングあり 事後保全環境 先行型保全環境 図3 作業指示書を用いたプラニング・スケジューリングの導入前と導入後の 生産性比較。
レンチタイムを指標とする 図4 SNPM の構成。
コアプロセスとそれを支えるプロセス群からなる リーダシップ 経営目標 マネジメント構造 SS002: ビジネスサービス SS004:人材 SS001:情報技術 SS003:情報管理 SS005-007 支援サービス T001-003 訓練 NF001-003 原子燃料 SS002 コスト/予算 LP001, 003-006 支援プロセス損失防止 作業管理(WM) 設備信頼性(ER) 資材サービス(MS) プラント運転(OP) コアプロセス構成管理(CM) 電力の生産 LP002 業績改善 図5 一般的な保全作業の分類 保守・保全 Maintenance 事後保全 Corrective Maintenance 時間計画保全 Scheduled Maintenance 状態監視保全 Condition-based Maintenance 予防保全 Preventive Maintenance OCTOBER 2008  76 含めて、米国における保全業務モデ ルを調査検討してきた。
国情の違 いはあるものの、米国原子力発電 所の保全業務モデルをベースとして、 日本の原子力発電所の保全業務革 新は進展するものと考える。
?保全作業へのコンピュータ適用  SNPMのプロセスは四階層から なり、上位二階層が標準化されて いる。
下位プロセスは各発電所の創 意工夫に委ねられる。
 近年プラント保全業務へのコン ピュータ支援には、EAM(Enter prise Asset Management)を採用 する形態が主流になってきている。
EAMの中心はCMMSだ。
設備 機器管理を土台に、作業指示書 を基軸とした保全作業の計画・実 施・結果の記録、および保全に必 要な取替部品・予備品の在庫発注 管理を支援する。
 EAM(CMMS)を中心とし て、スケジューリング、ワークフロ ー、設計図書管理、不適合管理な どの周辺ソフトウェアを組み合わせ て、保全業務を支援するコンピュー タシステムが構築されている。
 新検査制度の実施に伴い、日本 の原子力発電所の保全業務には設 備信頼性管理という新規業務が義 務づけられることとなった。
設備信 頼性管理を行うためにも、その前提 となる作業管理をはじめとする保全 業務全体のモデル化が必要である。
 そのための先進事例として、S NPMを中心に前提としての規制の あり方やプラント保全一般の手法を 業指示書を含む「ワークパッケージ」 を保全作業用に準備する。
ワークパ ッケージには作業範囲と作業の目的、 準備と確認作業、放射線被曝や産 業安全の予防措置、作業手順のほ か、取扱説明書、図面、ベンダー マニュアルなどの参考図書も含むこ とがある。
 論理的には作業指示書が上位、 ワークパッケージが下位にあると考 えられる。
?業績評価指標  SNPMでは異なるプラント間の 評価が可能となるよう、上位業務プ ロセスを標準化し、業界標準の業績 評価指標を定義している。
作業管理 プロセスに関係する業績評価指標に 以下がある。
群はコアプロセスを支える支援プロ セスだ。
米国をモデルに保全業務革新  保全マネジメントの一般論が原子 力のSNPMにどう展開されている かを、具体的に確認してみたい。
?保全作業の分類  保全作業は一般に図5(前ペー ジ)のように分類される。
SNPM 業務モデルでは、予防保全のプラン ニングは設備信頼性プロセスとして 実施し、そのスケジューリングは作 業管理プロセスが扱う。
作業管理 プロセスでのプランニング対象は事 後保全系の保全作業であり、重大 度、対象設備等により以下のよう に分類している。
?ワークパッケージ  保全マネジメントで取り上げた作 分 類 基 準 事後保全 選択保全 その他保全 軽微保全 発電プラント設備の重大な 劣化 発電プラント設備の潜在的 または軽微な劣化 足場構築等の支援作業、 改良処置等 「技能者のスキル」の下で 作業可能な軽微作業 開始のための文書化を必要 としない作業 ツールポーチ 保全 ツールポーチ:工具袋 運転中事後保全 のバックログ 運転中選択保全 のバックログ 保全作業範囲の 安定性 緊急作業 予防保全タスク 延滞件数 スケジュール 厳守度 設備信頼性の総合的評 価尺度および発電所構 成要素の状態評価 1│範囲凍結時点から 開始時点までの変動÷ 範囲凍結時点の作業範 囲 スケジュール凍結以降に 追加された緊急作業の 割合 猶予期間を過ぎても実 施できなかった予防保全 件数 完了作業数÷ 全予定作業数 同右次 回 フ ォ ー ラ ム の お 知 ら せ 次回フォーラムは10月1日(水)に「SOLE 2008 Conference 参加報告第2回」と 「SOLE日本支部年度総会」を予定している。
このフォーラムは年間計画に基づいて運営して いるが、単月のみの参加も可能。
1回の参加 費は6,000円。
ご希望の方は事務局(sole-joffi ce@cpost.plala.or.jp)までお問い合わ せください。

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