2008年10月号
物流IT解剖

日本梱包運輸倉庫

OCTOBER 2008  42 年間ランニングコストは 単体売上高の約〇・三%   日本梱包運輸倉庫(以下、日本梱 包)の業績が順調だ。
連結売上高は 過去一〇年にわたって拡大を続けて いる。
営業利益率も陸運業では屈指 の八%前後を維持。
さらに二〇一〇 年度を最終年度とする中期計画では 連結売上高二〇〇〇億円、営業利益 一六五億円を目標に置いている。
 自動車業界の物流に強みを持ち、総 売上の約六割をここで稼いでいる。
と りわけ深い関係にあるのが、連結売 上高に占める取扱いが約三割に上る ホンダグループだ。
ホンダは日本梱包 の三・二九%の株式を保有する大株 主でもあり、同社の役員には複数の ホンダ出身者が名前を連ねる。
 そのホンダは、国内物流の現場実 務を日本梱包、国際物流は日新とい う協力物流事業者の使い分けをして いる。
国内の工場から搬出された車 両を日本梱包が運び、日新の輸出拠 点に持ち込むという関係である。
こ のためホンダの主催する物流の会議 で、両社が同席する機会も少なくな いのだという。
 IT活用の面でも、日本梱包と日 新は共通点が多い(本誌〇八年八月 号参照)。
いずれも基幹システムの中 核にIBMのマシンを据えており、シ ステム開発の基本は“自前主義”だ。
導入したERPがSAP製であるこ とや、WMSがマンハッタン製である ことも同じ。
そして両社ともグルー プに情報子会社を持っていない。
 競合企業に比べて驚くほどのロー コスト運営に徹している点でも共通 している。
現在、日本梱包の「情 報管理部」の従業員数は一七人。
直 近の一五三五億円という連結売上高 や、システムの自社開発にこだわっ ていることなどを考えると、アンバ ランスに思えるほど小規模だ。
 IT投資額は一年間で三億円程 度。
直近の単体売上高九三一億円 (二〇〇七年三月期)の約〇・三% にすぎない。
ここには営業所で保有 しているパソコンなどが含まれてい ないといった事情もあるが、大手物 流事業者のなかではIT投資の水準 が最も低い。
しかも一〇年前には約 〇・四%だったというから、ますま す低下する傾向にある。
 もっとも、同社は売上高に対する 比率でIT投資にタガをはめている わけではない。
具体的な開発案件が 発生するたびに費用対効果を検討し、 有効と判断すれば資金を投じている。
案件が上がってこなければ、率先し て資金を投じないだけの話だ。
 ITを軽視しているわけではない。
むしろ得意とする自動車輸送の分野 などでは、他社に先がけて専用シス テムの開発に取り組んできた。
長ら く営業部門に所属し、現在は情報管 理部の部長を務めている栗栖隆取締 役は次のように説明する。
 「個別に必要な投資はしてきてい IT投資比率0.3 %・専任部隊17人 徹底したローコスト運営で収益支える 日本梱包運輸倉庫  最大荷主であるホンダの国内物流を幅広く担い、二輪車の輸配送では 高い国内シェアを持つ。
新車から中古車まで扱える実力を生かして共同 物流事業も主導している。
これらの事業を支えるITインフラを自前主義 と徹底したローコスト体制で開発・運営してきた。
単体売上高に占める IT予算はわずか0.3 %。
IT部門は17人という小部隊だ。
情報管理部長とコンプライアン ス指導部長を兼務する栗栖隆取 締役 IT投資 第19 回 ◆本社組織  情報管理部に17人が所 属。
他に全国約80カ所の営業所に「シ ステム管理者」と呼んでいる担当者が 計120人程度いる。
しかし、別に本業を もつ社員が兼務でIT活用を支援してい るだけのため、活動内容は簡単な技術 指導や啓蒙活動に限られている ◆情報子会社  なし 《概要》自前主義を原則としている。
過去には経営陣からIT 部門の分社化 を打診されたこともあった。
だが当事者たちは、ノウハウを社内に蓄積 するには子会社化しないほうが得策と判断している。
 主力協力ベンダーは日本IBM。
基幹システムの中核にAS/400(現 System i)を据えてきた。
今後も基幹系をオープン化するつもりはなく、 入力関連だけをオープンシステムにしていく方針。
 近年は、IT 部門に在籍する開発部隊は、営業面で差別化を追求すべき 業務に集中。
それ以外のシステムにはパッケージを採用するようになって おり、04 年にWMS、07 年にERP を導入している。
IT投資 43  OCTOBER 2008 のかなとは感じている。
もっと投資 をして新しいシステムを開発し、そ れを使って商売を回していく必要が あると思っている」 得意の二輪・四輪配送で 共同物流事業を展開   実際、具体的なニーズがあれば積 極的にシステムを開発してきた。
約 七年前から手掛けている二輪車の共 同配送事業のためのシステムは、そ の典型だ。
二輪車の国内出荷台数は 一九八二年の三三四万台をピークに 減り続けている。
〇七年には七〇万 台を割り込み、ピーク時の五分の一 近くに縮小した。
この厳しい状況を 受けて、二輪車業界では物流共同化 などの合理化策がとられてきた。
 二〇〇〇年には業界首位のホンダ と二位のヤマハ発動機が、完成車の 共同輸送の実施で合意。
この動きに スズキや川崎重工業も乗る気配を見 せ、業界ぐるみの物流プラットフォー ムができるかに見えた。
しかし、こ のメーカーによる試みは、中部地区 や九州など一部の地域で実施された だけで勢いを失ってしまった。
 その後、今度は日本梱包が主導し て二輪車共配の事業化を図った。
情 報を一括管理できる汎用的なシステ ムを同社が整えて、メーカー各社に 提案。
これが受け入れられたことか ら、業界ぐるみの共配事業が動き出 した。
例えば北陸であれば主要四メ ーカーがすべて参加しているのだと いう。
 こうしたノウハウを活用して、中 古の二輪車を全国規模で扱うビジネ スも手掛けている。
インターネット上 で中古二輪車のオークションを主催 している荷主から売買契約の成約デ ータをもらい、売り手が出品してい る車両をピックアップして一週間程 度で買い手に届ける。
北海道から沖 縄までどこで発生するか分からない 輸送ニーズを一手に引き受け、毎週 一二〇〇台以上を運んでいる。
 同社はまた、四輪車の輸送も大規 模に手掛けており、キャリアカー(車 載専用車)を約二〇〇台保有してい る。
他に二輪車と四輪車を一緒に積 める特殊車両も五〇台ほど保有して いる。
これは前述した二輪車の共配 事業を効率化するために開発した。
 こうしたハードを効率よく運用す るにはシステムの活用が欠かせない。
一台のキャリアカーへの多様な車種 の積み合わせや、効率的な配送ルー トの選択によるローコスト化などの工 夫が、この分野における強さを一層 ゆるぎないものにする。
そのために 日本梱包のIT部門も試行錯誤を続 けてきた。
 「もう二〇年ぐらい前になるが、各 地のデポを経由して運んでいた四輪 車を、工場から直送することになっ た。
このときキャリアカーに積み込む 車種や積み方をシステムで自動的に 計算できないかと考えた。
指示され た到着日時を守りつつ、運行効率も 高められる仕組みを自分たちで開発 しようとした」(栗栖取締役)  しかし、難しかった。
当時は運ぶ べき車両の台数が、保有していたキ ャリアカーの能力を上回っていた。
キ ャパオーバーになったときの調整はコ ンピュータに委ねられない。
人為的 に判断を下す必要があった。
自動化 は結局、諦めるしかなかった。
WMSとERPの導入は 人材を有効活用するため   その後、同様のシステム開発に再 びチャレンジする機会が訪れた。
「A S/400(現System i)」を基幹シ ステムに採用していることから関係の 深い日本IBMが、約六年前に「V RP(配送経路最適化ツール)」とい う製品の採用を提案してきた。
この ツールを使えば車両輸送を高度化で きるのではと考えた日本梱包は、再 びシステムの開発に取り組んだ。
 だが、やはり一筋縄ではいかなか る。
過去に四輪の輸送請求システム などを構築したときには、うちのシ ステムは競合他社より進んでいたは ずだ。
ただ最近は追いつかれてきた 営業支援 パッケージ活用 新車から中古車までカバーする二輪車輸送システム「SPIDER-NETS」 メーカー 新車物流 二輪物流 ネットワーク 中古車オークション物流 工場 生産地在庫 オークション運営会社 最寄の在庫 販社ユーザー バック オーダー輸送 指示 データ 出品 落札 データ 出荷 指示 データ 発注 データ 販売店 物流センターデポデポ販売店 ユーザー ユーザー 出品登録デポ登録デポ落札 物流センター 倉入輸送本線本線 3 次集荷2 次集荷2 次配送3 次配送 2 次輸送2 次輸送3 次配送 1 次輸送 (上) 1 次輸送 (下) 審査/査定応札(セリ) 物流センター SPIDER-NETS OCTOBER 2008  44 った。
「このときは現場から、中古車 なども一緒に運べないかというニーズ が上がってきた。
同じような車種ば かり扱うのであれば自動で処理する ことも可能だったが、サイズなどが まちまちの車種を積み合わせるとな ると、やはり人間がやるほうが効率 的だった」と、昨年まで情報管理部 長を務めていた経営企画室の杉山功 副室長は振り返る。
 折しも世の中はミニバンブームで、 背の高い乗用車が急増していた。
公 道の高さ制限に引っ掛かるためキャ リアカーに単純に二段積みできない 車種の増加は、意志決定のプロセス をより複雑化した。
事前にサイズな どの情報を入手しにくい中古車と新 車を一緒に扱ったり、キャリアカー内 部の空間を臨機応変に調整しながら 積み込む作業は、ベテランの担当者 の方が効率よく処理できた。
 またしてもシステム開発は思惑通 りに進まなかったが、このとき一つ の教訓が残った。
それまでの日本梱 包のIT活用は完全な自前主義だっ た。
しかし初めてIBMのITツー ルを利用してみて、その効果を実感 した。
これを機に外部のノウハウを 取り込もうとする意識が高まり、同 時に、情報管理部の開発部隊はより 差別化につながる業務に従事すべき と考えるようになった。
 この経験が、〇四年のWMSの導 入へとつながっている。
このとき初 めてパッケージソフトの導入に踏み切 った最大の理由は、開発期間の短縮 だった。
自社開発だと人手を割かれ るだけでなく、どうしても開発期間 が長くなる。
これでは新体制の迅速 な立ち上げを望む荷主のニーズに応 えきれなくなっていたのである。
 さらに〇六年一月からは、ER Pの導入プロジェクトをスタートし た。
自前の会計システムはすでに開 発から約二〇年が経過しており、改 めて自社開発すれば二、三年はかか る。
マンパワーも足りない。
そもそ も「経理だとか人事・給与計算は他 社と差別化を追求すべき分野ではな い。
独自性を出す必要がないのであ れば、時間と機能をお金で買ったほ うがいい」(杉山副室長)という判 断が背景にあった。
 単なる会計の処理システムではな く、ERPの導入に踏み切った最大 の理由は日本版SOX法に対応する ためだ。
内部統制を強化して決算数 値の正当性を担保するには、国際的 にも定評のあるERPベンダーの力 を利用した方が得策だ。
複数のER Pの内容を比較検討した結果、最小 限のカスタマイズで使えるという基準 でSAPを選択した。
 およそ一五カ月間の導入プロジェ クトを経て、昨年四月に新システム が稼働した。
中身にはほとんど手を 加えなかったが、システム変更の影 響が業務部門に及ぶのは極力避けた。
現場で利用している業務処理ソフト は従来通り使い続け、そこから必要 なデータがERPに取り込まれるよ うにシステムを手直ししていった。
こ うした配慮の甲斐あってスムーズに稼 働させることができた。
ERPで経営分析を強化 入力データの精度に課題   もっとも、ERPの導入をきっかけ に、大きく見直した点もある。
管理 会計の強化がそれだ。
 それ以前の日本梱包は、広域で業 務を受託している荷主について、案 件ごとに収支を算出できる仕組みを 持っていなかった。
例えば自動車の 輸送事業では、共同配送をしている 荷主ごとにコストを正確につかむ仕 組みや、収支を見る指標がなかった。
営業所ごとに独立採算制をとってい るという事情もあって、全体を見よ うとする意識が希薄だった。
 「営業所の責任者は自分のところの 数字はつかんでいた。
じゃあ全国では どうなのかとなるとドンブリ勘定と言 われても仕方のない状況だった。
それ を今回、ERPの機能を使って、荷 主別の収支やトラック一運行ごとの収 支を細かく出せるようにした。
この データを経営分析に使うことで、ど こを改善すれば、どういった効果が 出るのかが少しずつ見えるようにな ってきている」(栗栖取締役)  これに伴って現場での入力作業も 変わった。
正確な収支の把握には、 倉庫の荷主別の利用坪数や、輸送時 に料金計算の元になる重量や距離な どの情報が欠かせない。
従来は必要 のなかった細かいデータの入力作業 が、現場レベルで新たに発生するこ とになった。
 この変化に対して現場から不満が 噴出した。
システムが稼働した昨年四 月の段階では、多くの人たちが未入 力のままデータを送信してきた。
「デ ータを入力してもらうのに、かなり 苦労した。
ある程度のメドがつくま で半年ぐらいかかった」と栗栖取締 役。
それでも昨年のうちに新しい経 前情報管理部長の杉山功 経営企画室副室長 見える化 45  OCTOBER 2008 人たちがパソコンの使い方などで困っ ているときに教えるといった程度だ った。
それをERP導入プロジェク トの本格化に伴い、より重要な役割 へと改めた。
本社が進める活動の現 場への説明など、IT部門に代わっ て社内を啓蒙する立場になった。
経 営指標の算出に必要なデータの入力 を促すのも、主に彼らの役割だ。
 最近はシステム管理者を集めた“I T教育”にも力を入れている。
四半 期に一回程度の頻度で、技術的なこ とだけでなく、コンプライアンス(法 令順守)や情報セキュリティ、IT統 制などに関する教育を実施している。
 同社は従来から現場レベルでのI T教育に熱心に取り組んできた。
体 系化されたカリキュラムを用意して いるわけではないが、ERPの導入 などトピックに応じて内容を決める。
人事部が定期的に実施 している研修活動の中 でもIT教育は必須だ。
中堅クラス以上の営業 マンであれば全員が、シ ステム企画書や要件定 義書などを書けるのだ という。
 「われわれの顧客に は、業務の打ち合せ中に ﹃システムでこうやった らどうだろうか?﹄と いったアイデアがポン ポン飛び出す人が多い。
こうした話に情報管理 部の人間がすべて携わ るのは不可能だ。
ある 程度までは営業で対応 できるように日頃から 教育している。
当社の IT部門自体は小さい が、顧客のシステム的なニーズを吸い 上げることに長けた人材は結構多い」 と杉山副室長は強調する。
 こうした人材は皆、兼務で携わっ ているためITコストとしては表面 化しない。
同社の年間ITコストが 競合他社に比べて極端に低い理由は、 実はこんなところにも隠されている。
 従来の日本梱包はメーカー系の仕 事を中心に手掛けてきた。
しかし最 近は、小売り向けの一括物流事業な ども受託するようになっている。
 登山用品やスキー用品を扱う専門 店チェーンの仕事では、各店舗がウ ェブで本部に商品を発注し、このデ ータをネット経由で受け取った日本 梱包が店舗への納品を手掛けている。
一連のシステムは、ウェブ受注システ ムなどに強いITベンダーと組んで 情報管理部が開発した。
 自動車関連の仕事は、自ら共同物 流事業を主導できるほどのレベルにあ る。
「いずれは農機などでも同様のニ ーズが出てくると思う。
そのとき積 極的に打って出なければ、当社の業 績は市場の縮小とともに下降線をた どりかねない。
そうならないために は、ITと営業が二人三脚で、失敗 を恐れずに活動する必要がある」と 栗栖取締役は考えている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 営指標を出せるようにはなった。
 出てきた数値に意外性はなかった。
収支がよくないと漠然と感じていた 案件はやはり利益率が悪く、それな りに健闘していると思っていた案件 は利益が出ていた。
 それでも、本社レベルで細かい収支 を把握できるようなったことは大き な前進だった。
ただし、きちんと入 力してくれない現場をどう指導して いくかという課題は残っている。
こ うした営業所の数値は全国の集計デ ータとかけ離れているため、すぐに 分かる。
今は問題のある拠点を一つ ずつ指導して、データの精度を高め ている最中という。
現場のシステム管理者と 連携しつつ営業を後押し   こうした活動を末端レベルで実施 するときにも、情報管理部の一七人 では人手が足りない。
このため日本 梱包では、営業所ごとに“システム管 理者”と呼ぶ人たちを任命して、通 常の仕事と兼務させている。
全国に 約八〇カ所ある営業所ごとに担当者 がいて、大規模な拠点だと一カ所で 二、三人を置いているため、全国で は一二〇人程度になる。
 以前から各営業所にはシステム管 理者がいたが、その役回りは現場の IT教育 internet internet 専門店チェーン向けに開発したウェブ受発注システム データセンター 顧客WEB 発注サイト ・ログイン ・トップページ ・商品検索 ・商品一覧 ・発注入力〜発注 ・発注履歴 ・自動メール送信 ・ガイド ・在庫照会(本部のみ) 店舗DB 受注DB 商品DB 在庫DB internet internet 各店舗 ログイン 商品検索 受注入力 日本梱包運輸倉庫 在庫更新 商品マスタメンテ 店舗マスタメンテ ユーザマスタメンテ WMS 出荷指示出荷データ 納 品 本部 ・ログイン ・商品検索 ・受注入力 ・在庫照会 日本梱包運輸倉庫が 開発を担当したシステ ムの範囲

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