2008年11月号
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日本パレットレンタル 山崎純大 社長

NOVEMBER 2008  4  「私の知る限り、変わらないですね。
四〇年間、変わっていない。
物流は ビジネスインフラの問題なのに、いま だにコストから入る。
どうやって商品 を提供したいのかというウォンツでは なく、経費がかさんでしようがない ので何とかしたいというニーズから入 る。
しかも、実行を全て物流担当者 任せにして、予算はつけず、決裁権 も与えない。
そのため、運賃でも何 でも安くたたくしかない。
全く進歩 していません」 ──そうは言っても、日本パレットレ ンタル(JPR) の事業規模は右肩 上がりで伸びている。
それだけ標準 パレットを使った一貫パレチの普及 が進んでいるということでしょう。
 「はっきりした統計はないのですけ れど、T 11 型(編集部注:JPRが 普及を進めている一一〇〇×一一〇 〇×一四四ミリサイズの標準パレッ ト) の日本での占有率は、いまだに 三十数%です。
寂しい限りです。
標 準パレットの占有率は欧州で九〇%、 オーストラリアでは九九%以上、使い 捨てパレット中心の米国やカナダでさ え五〇%を超えている。
日本と物流 先進国では大きな開きがある」  「それでも我々が事業を開始した時 にはT 11 型の占有率は二〇%を切っ ていました。
それが毎年コンマ数%ず 貧すれば鈍す ──景気が悪くなると、物流コストを 削減しようという機運が高くなりま す。
必ずしも悪い話ばかりではない。
 「誰もが固定費を流動費化しようと 考えますから、当社のようなレンタル 商売にとっては追い風です。
実際、バ ブル崩壊後も当社の事業は順調に拡 大してきたし、今回の景気低迷でも 引き合いは増えるでしょう。
ただし、 そうした会社に期待はしていません。
物流の合理化は不況だからといって、 やるものじゃない。
普段からやるん です。
そのことに目覚めている企業 と、そうではない企業の違いがあっ て、目覚めていない企業はせっぱ詰 まると我々のところに来る。
でも採 用率は低い」 ──レンタルパレットを導入する上で 何が制約になるのですか。
 「当社は単なるパレットのレンタル 屋ではなく、一貫パレチゼーション (編集部注:サプライチェーンの川上 から川下まで同じパレットを利用し て荷物をハンドリングすること)によ って合理化を提供するインテグレータ ーだと自分たちを位置付けています。
レンタル業ではなくサービス業なんで す。
実際、当社のパレットは、メーカ ーの製造ラインに投入されて、その後 のサプライチェーンを担うキーデバイ スとして利用されます」  「この一貫パレチを導入するには、 インフラを標準パレットに合わせる必 要があるため、どうしても初期コスト がかかります。
最初に経費は出てい くけれども物流全体が合理化される ためにトータルコストが下がるわけで す。
一貫パレチはそうしたスケールで 物流を見る必要がある」  「ところが、貧すれば鈍すで、目先 のコスト削減にしか考えが及ばない と、ずっと使うパレットならレンタル より買った方が得だな、などと言い 出す。
物流部長や担当者が悪いんじ ゃありません。
彼らは分かっている。
トップが無能なんです。
例えば新製 品を発売して全国一斉に出荷すれば、 どうしたって物流コストは上がりま す。
発売に合わせて在庫を積み上げ て、一気に流通させるわけですから。
そのコストは物流費ではなく販促費 です。
ところが後になって物流部長 が幹部に呼び出され、『何でこんなに 物流コストが上がっているんだ』と叱 責される。
全くの不見識です」 ──ロジスティクスやSCMのコンセ プトは日本企業の経営層にもずいぶ ん浸透したはずですが。
日本パレットレンタル 山崎純大 社長 「不況だから経費削減では進歩はない」  不況の時こそ、その会社の実力が現れる。
業績が悪化したか らと物流コスト削減に走るのは、決まってダメな会社だ。
じた ばたしても経営トップの不見識を露呈させるだけで、効率化な ど実現できるはずがない。
物流を分かっている会社は平時から 合理化に不断の努力を怠らない。
    (聞き手・大矢昌浩) 5  NOVEMBER 2008 つ上がってきている。
当社の売上高 が拡大しているのは、その恩恵を受 けているからです。
これを一〇〇% にすることが我々の最終目標です」 ──日本でパレットの標準化が遅れ ている理由は?  「T 11 型はJIS(日本工業規格) で定められた国家規格のパレットで す。
ところがJISパレットにはT 11 型以外にも複数の規格がある。
一方 で包装モジュールの規格も複数あっ て、パレットのサイズと合致していな い。
よく言われていることですけれど も、結局のところJISは機能や品 質の規格であって、標準化の促進に は役立っていない。
行政にも本気で 物流の標準化を進めようという姿勢 は見られません」 ──T 11 型では欧州や北米の規格と 合わないという声もあります。
 「欧州に輸出するときは欧州規格、 米国に輸出するときは米国規格のパ レットを使えばいい。
そしてアジア圏 はT 11 型。
この三つの経済ブロックが それぞれの標準パレットをエクスチェ ンジする仕組みを持てば良いというの が私の考えです。
それはISOの精 神とも合致しています」 ──T 11 型はアジアで本当に普及す るでしょうか。
 「今年七月に中国政府はパレットの きい。
当社としては流通業を一社ず つ回って口説き落としていきます。
そ れが当社の成長の原動力になる」 ──JPRの株式公開は計画してい ないのですか。
既に条件は充分クリ アしているようですが。
 「もちろん視野には入れています。
当社が上場することは、日本にT 11 型 パレットを普及させていくうえでも大 きなプラスになる。
ただし、今はまだ その時期ではないと認識しています。
これだけ金利が安いと株式公開で資 金調達する意味はありません。
むしろ 公開維持費用が発生するので、コスト 的にはマイナスになってしまう。
全て の環境が整った時点で満を持して上 場すればいいと考えています」 規格を変更しました。
ヨーロッパサイ ズをオミットして、T 11 型とUSサイ ズの二つを標準としました。
T 11 型 をアジアの標準にしようということに 中国政府は同意しているんです。
韓 国でも一九八五年に韓国パレットレ ンタル(現・韓国パレットプール:K PP) が設立されて以降、官民挙げ てT 11 型の普及を進めています。
ま た当社とKPPとはT 11 型をアジア 標準とするために、合弁でアジアパレ ットプールも設立しています。
日本の 政府や財界は、こうした標準化の動 きにもっと注目して欲しい」 ──パレットを標準化することの意 味や効果は、経営層には分かりにく いかも知れません。
 「アジアがサイズの違うパレットの 坩堝になれば、大変な非効率を招く ことになるのは明らかです。
やはり 経営者に目覚めてもらうしかありま せん。
目の前のコストダウンに追われ ている物流部長を、経営者の方から ロジスティクスの仕組み作りに導いて いくぐらい、日本企業のマネジメント レベルが上がってこないと難しい」  「日本でもトヨタを始めグローバル に競争している企業は、従来からき わめて緻密な物流管理を行っている。
ところが他の産業、国内市場中心で、 それほど複雑な生産技術も必要とし ないような産業では経営層も現場も 大雑把です。
海外に視察に行っても、 たいしたことなかったとバカにして帰 ってくる。
標準化の効果や全体最適 の仕組みなど何も見えていない」 標準化は小売業が主導する ──サプライチェーンの主導権はメー カーから大手小売りに移っています。
今後の標準化は小売業の動向が鍵を 握っているのでは。
 「イオンさんやヨーカ堂さんなど、 流通のメジャーどころの加工食品の 納品には、既に一〇年前くらいから 当社のパレットが指定されています。
今年七月にはベイシアさんの指定も 受けました。
コンビニもそう。
T 11 型 が流通のインフラになっている。
それ 以外のビールパレットやメーカーの自 主規格パレットが今でも納品されてい るのは全てイレギュラーです」  「川下が標準化のイニシアチブを握 っているというのは、米国のウォルマ ートの例を見れば明らかです。
ウォル マートがRFIDを付けてきなさいと 言えば、メーカーはそれに従わざるを 得ない。
しかし日本では流通が当社 のパレットを指定しても、メーカー側 ができない理由を並べる。
勘弁して 下さいがアリになっているんです。
そ れでも流通業の指定を受けるのは大 やまざき・すみひろ 1953年生まれ。
学習院大 学法学部卒。
81年、日本パ レットレンタル(JPR)入社。
2006年に代表取締役に就 任、現在に至る。
今年2月 にJPRの活動を中心に、一 貫パレチゼーションの意義を 説いた『パレットで物流が変 わる』(ダイヤモンド社発行) (右写真)を上梓した。

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