2008年11月号
ケース

環境対策 リコーロジスティクス

NOVEMBER 2008  38 環境対策 リコーロジスティクス 一運行ごとにCO2排出量を算出 作業別にマスターつくりデータ取得 車両千台の運行データを把握せよ  二〇〇五年に省エネ法(エネルギー使用の 合理化に関する法律)が改正され、二〇〇台 以上の車両を保有するトラック運送事業者と、 自社に所有権のある貨物の年間輸送量が三〇 〇〇万トンキロを超える特定荷主は、〇六年 度からエネルギー消費量・CO2排出量などの 報告書と省エネ計画書を提出することが義務 付けられた。
 特定荷主には国内の大手メーカーや流通業 者、約八〇〇社が該当し、リコーもそこに含 まれる。
このため同社は、輸送管理の大半を 委ねている物流子会社のリコーロジスティク ス(以下、リコーロジ)に、CO2排出量の 算定に必要なデータの取得・提供を要請した。
これを受けてリコーロジは、〇六年五月にリ コーと合同でプロジェクトグループを発足さ せ、改正省エネ法に対応するための検討を開 始した。
 リコーは国内有数の環境先進企業として知 られる。
リコーロジでも?持続可能な社会の実 現?というグループの経営理念を共有し、二 〇〇〇年から環境活動に本格的に取り組んで きた。
製品の販売に伴う動脈物流だけでなく、 使用済みになった製品を回収してリサイクル するまでの静脈物流についても自らネットワ ークを構築。
さらには車両の燃費改善や低公 害車の導入、輸送の往復化、モーダルシフト、 循環型エコ包装などの施策を次々に進め、環 境改善に成果を挙げている。
 今回、リコーから要請のあった改正省エネ 法への対応も、環境活動の一環ととらえ、単 に報告書作成のためにデータを把握するだけ ではなく、取得したデータを同社や荷主であ るリコーが有効に活用し、環境改善や物流効 率化につなげていくことを最終目的として取 り組むことにした。
 リコーロジで環境活動を主導する経営管理 本部と、リコー側の環境活動の中心組織であ る社会環境本部が双方の窓口となってプロジ ェクトチームを編成した。
リコー側からは社 会環境本部のほかに販売本部の物流改革グル ープやSCM推進室、製品事業部の物流改革 グループなどのメンバーがチームに加わってい る。
把握したデータをリコー側で実際に活用 して改善を進めるのはこれら直接部門だ。
そ の参加によって、データ取得活動の目的を明 確にし、実効を上げようという狙いだ。
 プロジェクトチームは、まずデータの取得方 法を検討した。
データ取得の範囲はリコーロ ジが管理する国内輸送のすべてに及ぶ。
販売 先への製品の輸送だけでなく、使用済み製品 の回収・リサイクル、保守用部品の輸送、輸 出入コンテナの港や空港への輸送も含まれる。
その輸送形態や輸送ルートはさまざまだ。
 活動地域も全国にわたる。
リコーロジは、地 域別に三愛ロジスティクス東部・関東・東京・ 中部・関西・九州という六つの子会社を持ち、 倉庫内のオペレーションや輸配送の管理を委 リコーロジスティクスは改正省エネ法に対応し、リ コー製品の販売・回収・リサイクルに伴う全輸配送 について、一運行ごとに重量・距離・車種・積載 率を把握しCO2排出量を算出するシステムを構築し た。
輸送形態別にデータ取得方法のマスターを作り、 既存の輸送管理システムにリンクさせて運用。
環境 改善へデータの高度活用を目指している。
39  NOVEMBER 2008 託している。
これらの子会社が運営する拠点 を含め、リコーロジグループとして現在、全 国に四カ所(札幌・静岡・大阪・福岡)の本 部倉庫と八〇カ所の配送拠点を設けている。
 配送拠点八〇カ所のうち六三カ所はコピー 用紙やトナーカートリッジなどの消耗品(サプ ライ品)をエンドユーザーへ配送する比較的 規模の小さな拠点だ。
このほかにブロック単 位で設けた地域倉庫(物流センター)や、大 型商品のエンドユーザー向け直送基地である 「作業店」などがある。
本部倉庫とこれらの 配送拠点が、すべての輸配送の基点となる。
 製品輸送の最も一般的なルートはリコーの 工場で生産された製品を本部倉庫に受け入れ たあと、物流センターを経由して販社や販売 店へ配送するというパターンだ。
ただし複写 機のような大型商品はエンドユーザーへ直接 届けるため、本部倉庫から作業店を経由して 直送する。
またサプライ品は、各地の配送拠 点から専用便または複写機との混載便でエン ドユーザーへ配送している。
 一方、使用済み製品はまず、エンドユーザ ーのもとから、都道府県ごとに全国八〇カ所 に設けた回収センターへ回収する。
さらに北 海道から九州まで十一カ所にあるグリーンロ ジスティクスセンターに集約して、ここで選別 作業を行う。
選別後、再生品は再生センター へ、再資源化品は全国一〇カ所のリサイクル センターへ送られる。
 回収センターとグリーンロジスティクスセン ターは、すべてリコーロジグループが運営して いる。
このうちグリーンロジスティクスセンタ ーは、ほとんどが製品の地域倉庫と同じ敷地 内にある。
回収センターも複写機やサプライ 品の配送拠点に設けており、製品を配送した 車両が同時に回収も行う。
 これら動脈・静脈輸送および部品輸送、輸 出入コンテナの国内輸送で、拠点間輸送や配 送・回収に携わる車両の数はおよそ一〇〇〇 台に上る。
このうち二五八台はリコーロジグ ループが保有する車両で、それ以外はすべて 協力会社や路線会社の車両だ。
基幹システムからデータを吸い上げる  トラック輸送の場合、報告書の作成に必要 なエネルギー消費量の算定法には、燃料法・燃 費法・改良トンキロ法の三つがある。
自社便 だけなら、燃料法に則り、実際の燃料使用量 から直接算定できる。
だが協力会社などの車 両のウエートが大きく、委託先に車両の燃料 使用量や燃費のデータ提供を求めるのは困難 なことから、これらのデータがなくても算定 可能な改良トンキロ法を採用することにした。
 改良トンキロ法は、輸送トンキロと「エネ ルギー消費原単位」からエネルギー消費量を 算定する。
エネルギー消費原単位は、軽・小 型・普通車などの車種、燃料の種類、最大積 載量、積載率によって変わる。
ガソリンと軽 油では単位発熱量が異なり、また同じ輸送ト ンキロでも、大型車に貨物を満載して運んだ 時と低い積載率のまま運んだ時とでは、環境 への影響に違いが出るからだ。
 車種や積載率などのデータをきちんと把握 して原単位の数値を細かくとることによって、 エネルギーの消費量をより正確に算出するこ とができる。
積載率を上げるなどの改善努力 も反映しやすくなる。
そのためプロジェクトチ ームは、改良トンキロ法でエネルギー消費量を 算定するために必要な貨物の重量・距離・車 CO2 排出量 エネルギー使用量 燃料使用量 図1 工場を出荷してから顧客への納品まで、複数のルートや配送手段を経ているため、 個々の配送地点間ごとにデータを収集した。
A地点(工場) C倉庫 D中継点 E配送拠点 B地点(顧客) 車両単位の 輸送重量 (トン) 輸送距離 (km) 最大 積載量 積載率 車両単位の輸送重量 /最大積載量 燃料 種類 A→B 3t 500km 軽油 4t 車 75% A→C 3.5t 15km 軽油 4t 車 87% C→D 4t 25km 軽油 6t 車 66% D→E 10t 500km 軽油 12t 車 83% E→B 3t 10km 軽油 4t 車 75% NOVEMBER 2008  40 種・燃料・積載率のデータ項目について、で きるだけ精度の高いデータを取得する方針を 決めた。
 リコーロジは国内向け製品輸送・回収・輸 出入についてそれぞれ「N─TRIS」「RE IS」「AREIS」という基幹システムを 運用している。
これらの基幹システムは、リ コーのオーダーエントリーシステムから送られ る輸送指示情報などをもとに、配車計画や輸 送実績管理を行っている。
この基幹システム を活用して一運行ごとに改良トンキロ法によ るデータの取得を行うことにした。
 国内向け製品輸送を例にとると、?工場か ら本部倉庫まで、?本部倉庫から中継拠点を 経て配送拠点まで、さらに?配送拠点からユ ーザーまでという具合に、輸送する区間ごと に基幹システムからデータを取得する。
取得 したデータを一件ずつリコーのオーダーに紐付 けて、リコーが新たに整備した「改正省エネ 法データベース」に送る。
このデータをもと に、リコー側がエネルギー消費量・CO2排出 量を算定する、という流れになる。
ドライバーの日報で実績調査  ただし基幹システムからすべてのデータを取 得できるわけではない。
重量・距離・車種・ 燃料・積載率の五項目のうち、重量について はどの輸配送ルートについてもデータがある。
リコーが製品の型番ごとに作成した商品マス ターを基幹システムの中に持っているため、マ 「拠点間マップ計測値」「区間配送みなし値」 の三通りの取得方法を設定した。
まず自社便 もしくは協力会社の固定車両で行っているル ート配送と、複写機やサプライ品のエンドユー ザー向け直送および回収について、一〇日間 にわたりドライバーの日報から全車両の輸送 距離を調査し、その平均値を「実績調査値」 とした。
 工場〜本部倉庫間などの拠点間一次輸送 は、固定車両による定期運行のため、マップ で距離を計測する市販のソフトをマスターに活 用した(拠点間マップ計測値)。
混載によるエ ンドユーザー配送や部品輸送などは配送先の 住所まで把握できないケースもあった。
この 場合は配送区域内のランドマークを届け先と みなして計測した(区間配送みなし値)。
 距離以外の車種・燃料・積載率については、 車種を特定できるかどうかがデータ取得の大 きなポイントになる。
車種さえ特定できれば 使用している燃料の種類がわかり、さらに運 んだ商品の重量から積載率を算出することも できる。
 基幹システムには自社便と協力会社の契約 車両の車種情報が登録してある。
これらの車 両による複写機とサプライ品のエンドユーザ ー向け配送については、登録された情報をも とに「N─TRIS」で配車計画を作成して いる。
このためN─TRISの配車結果から、 実際に運行した車両の情報を取得することが できる。
また工場〜倉庫間輸送のように固定 スターからオーダーごとの重量データを取得で きる。
だがこれ以外の四項目は実データを取 得できる範囲が限られる。
 実データの取得が不可能な場合は、みなし 値をもとにエネルギー消費量を算定するしか ない。
その際にできるだけ実測値に近いみな し値をとるため、項目ごとにデータの取得方 法を検討し、これをもとに「改正省エネ法マ スター」を作成した。
 基礎データの取得は改正省エネ法マスター を基幹システムにリンクさせることによって 行う。
基幹システム上の運行実績からデータ を取得できない項目については、改正省エネ 法マスターを参照しながら、項目ごとに設定 した方法でそれぞれのデータを取得した。
 改正省エネ法マスターでは、輸送を「発生 作業別」に細かく区分している。
発生作業別 とは、輸送形態、ルート、自社便か他社便か などによる区分をいう。
拠点間輸送であれば 協力会社のチャーター便か路線便かで区分す る。
ユーザーへの配送も自社便と協力会社へ の委託とに分ける。
さらに配送先が販社のよ うに固定している場合と、エンドユーザー向け のように不特定な場合とに分ける。
輸送距離 や使用車種についてどこまで実データをとれ るかは、こうした条件に左右されるため、発 生作業別に区分を行う必要があった。
 これらの区分ごとにデータ取得方法を設定 したうえで、それぞれのマスターを作成した。
四項目のうち距離については「実績調査値」 41  NOVEMBER 2008 答するなどの目的で導入したもの。
ドライバ ーがPDA(携帯情報端末)を携帯し、配送 完了時に伝票のバーコードをスキャンして情 報をサーバーに上げるという仕組みだが、端 末の操作によって走行距離を実測することも できる。
このシステムをN─TRISにリンク させて実測データを取得できるようにした。
 サプライ品のエンドユーザー向け配送車両 は、大半が傭車契約による軽貨物自動車だ。
それまでは配送距離を実績調査値によって把 握していたが、配送先が毎日変わるため、デ ータの精度は高いとはいえなかった。
全車両 台数一〇〇〇台のうち傭車契約の軽貨自動車 は六〇〇台強を占めている。
そのデータがみ なし値から実測値に変わった効果は大きい。
 今秋からは倉庫間輸送の車種についても実 データをとれるようになった。
すでに述べた ように同社の基幹システム(N─TRIS)に は自社便や契約車両の車種情報を登録してあ る。
ただしこれまではN─TRISから車種 データを取得していたのはエンドユーザー向け 配送の車両だけだった。
エンドユーザー向け 配送は件数も車両の台数も多い。
煩雑な配車 作業を効率化するため、配送拠点ではN─T RISを積極的に活用していた。
 だが倉庫間のチャーター輸送のような単純 な配車作業は、N─TRISを使わずに担当 者が手作業で行っていた。
このためN─TR ISに入力されるデータの精度に不安があっ た。
経営管理本部CSR推進室の三沢満マネ ージャーは「きちんと運用されていることが 確認できないままN─TRISのデータを使う のは危険が大きいと判断して、当初はみなし 値を採用した」と説明する。
 その後、CSR推進室ではN─TRISを 活用して実績をとってもらえるように、各拠 点を回ってデータの精度を上げることの意義 を説き現場の協力を求めた。
さらに一カ月間 かけて、各倉庫間の輸送で実際に配車された 車両とN─TRISに入力されたデータの照合 を行い、データの精度を検証した。
そのうえ で今年一〇月からチャーター輸送の車種デー タもN─TRISの運行実績データからとるこ とにした。
 精度の向上に続く課題は取得したデータを 改善にどう活かすかだ。
今年四月にリコーロ ジでは、リコーの販売本部や各事業部と共同 でデータをもとに物流改善を進める際に、ロ ジ側の交渉窓口となる担当者をそれぞれ置い た。
「この仕組みができたことで、双方が同 じ土俵の上に乗って共通のデータを見ながら 改善に取り組めるようになった意義は大きい」 と三沢マネージャーは強調する。
 今後は、輸送ルートの変更やリードタイム の見直しなどの具体的な改善策を講じること で、CO2排出量の削減にどれだけ効果が出 るかをシミュレーションできる機能を盛り込む など、データの高度活用に向けて基幹システ ムを手直ししていく考えだ。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 車両で定期運行しているケースも車種の特定 が可能だ。
 これに対して、倉庫間輸送や販社・販売店 向けルート配送の車両は運行ごとに車種を把 握するのが困難なため、使用頻度の高い車種 によるみなし値をとった。
また路線業者の車 両や臨時便は車両情報を登録していないため、 各拠点で取引のある事業者に対し、どんな車 種の車をメーンに配車しているかなどをヒア リングしてマスターを作成した。
みなし値から実測値へ  昨年四月に、この仕組みによる日々のデー タ取得を開始した。
ただしその後も、リコー へ提供するデータの精度を上げるためみなし 値ではなく実測値を取得する方法を項目ごと に検討してきた。
その結果、まず昨年一〇月 にサプライ品のエンドユーザー向け配送拠点 全六三カ所に運行管理システムを導入、距離 の実測を開始した。
 もともと、この運行管理システムは、届け 先からの配送状況についての問い合わせに即 経営管理本部CSR推進室の 三沢満マネージャー

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