2008年11月号
特集

物量減少 荷物が減ると何が起こるか

NOVEMBER 2008  14 荷物が減ると何が起こるか?  リーマン破綻で突然、荷動きが止まった。
トラックや物流施設 など設備稼働率の低下が現場を襲う。
需要の低迷は国際物流にも 広がっている。
物流企業に逃げ場はない。
一方、荷主企業は固定 費負担の増大による物流コスト比率の悪化と直面している。
突破 口はどこにあるのか。
( 本誌編集部、特別協力=青木正一) 図1 国内向け出荷量の『荷動き指数』の推移 出所:日通総合研究所 注) 1. 調査対象は製造業・卸売業の主 要2,500事業所を対象とした。
2. 『荷動き指数』とは「増加」の割合 から「減少」の割合を引いたもの。
3. 点線は各期に入る前の時点の見 通しにおける『荷動き指数』(2008 年?期の『荷動き指数』は今回調 査時点の見通し)、実線は各期の 途中の時点で判断した実績見込 みの『荷動き指数』(2008年?期の 『荷動き指数』は今回調査におけ る判断)。
4. 今回調査は2008年9月中旬に実 施し、1,082社から回答を得た。
2005 ? ? ? ? 2006 ? ? ? ? 2007 ? ? ? ? 2008 (年) ? ? ? ? 20 10 0 -10 -20 -30 0 0 0 -4 2 8 8 5 10 14 10 -6 -2 3 -5 -18 -23 -25 5 10 10 9 12 16 13 5 4 3 -2 -6 -12 実績 見通し  荷動き  ──輸出入貨物も減少へ  荷動きが急速に悪化している。
今年七月〜九月(第 3四半期)の国内向け出荷量「荷動き指数」はマ イナス二三。
9・ 11 テロ事件以来の水準まで低下 した。
今年六月の前回調査時点のマイナス十二と いう見通しを、実績値は大幅に下回った。
一〇月 〜十二月は、さらに状況が悪化し、マイナス二五 まで低下することが予測されている(図1)。
 とりわけ深刻なのが国際コンテナの減少だ。
新 興国需要の拡大を追い風に、これまで一貫して伸 び続けてきた国際コンテナの荷動きが、七月〜九 月の実績では輸出入とも突然、減少に転じた。
一 〇月〜十二月は一段と悪化する見通しで、とくに 輸出は「増加」の十三%に対して「減少」が二八% と、マイナス一五ポイントに悪化する(図2)。
 「荷動き指数」とは、足元の荷動きから景気動 向を読むことを目的に、日通総合研究所が四半期 ごとに定点観測している統計指標だ。
国内主要荷 主企業の物流担当者が直近の出荷実績と翌四半期 の見通しを、前年同期比「増加」「横ばい」「減 少」から選択。
「増加」の回答者の割合から「減少」 の割合を引いた数字を指数にとる。
 日通総研で同調査を担当する佐藤信洋経済研究 部研究主査は「今年六月時点ではまだ、荷主企 業の物流担当者は事態を楽観的にとらえていた。
つまり、皆がまだ何とかなると考えていた。
とこ ろが九月のリーマンショック後、何ともならない ことが明らかになってきた。
そのため一〇月〜十 二月の荷動きの見通しが一気に悪化した。
二〇〇 八年通年の指標は恐らくガタガタになる。
当面、 特 集 特 集 回復する見込みはない」という。
 既に日本の国内貨物輸送量は一九九一年の六九 億二〇〇〇万トンをピークにして現在までに二割 以上減少している。
ただし、これは公共投資の抑 制で、自家用ダンプやタンクローリー車で近距離 輸送する砂利や生コンなどの建設関連貨物が減っ た影響が大きい。
一般の運送業の扱う通常貨物は、 在庫の集約などにより輸送距離が伸びる傾向にあ ることから、トンキロベースの国内貨物輸送量は これまでも横ばいで推移してきた。
 その間に自家用トラックから営業用トラックへ のシフトが進んだ。
営業用トラックの輸送量は総 輸送量の減少を尻目に二〇〇〇年まで増加し、そ の後もほぼ横ばいで推移している。
その結果、九 一年時点で三五・八%だった営業用トラックの分 担率は〇四年に自家用と逆転。
直近の〇六年現在 では五三・四%に達している。
同じ時期に建設関 連貨物の輸送量は減っているため、通常貨物だけ で見れば、営業用トラックの分担率はもっと増え ていることになる。
15  NOVEMBER 2008 図2 輸出入貨物量の実績と見通し 外資コンテナ 《輸入量》 外資コンテナ 《輸出量》 2008年4月 〜6月実績 2008年7月 〜9月実績 2008年10月 〜12月見通し 2008年4月 〜6月実績 2008年7月 〜9月実績 2008年10月 〜12月見通し (%)0 20 40 60 80 100 出所:日通総合研究所 24 57 19 18 60 22 13 59 28 23 59 18 16 64 20 16 61 23 増 加横ばい減 少 日通総研の佐藤信洋 経済研究部研究主査  バ ブ ル 崩 壊 以 降 、 国 内 運 送 市 場 の 規 模 は 減 少 し ているという認識は、統計を見る限り誤解に過ぎ ない。
全体のパイはむしろ増えている。
ただし、 九〇年の規制緩和以降、事業者数が五割も増加し たことで一社当たりの物量は減った。
そこに運賃 水準の低下、そしてコスト増が加わったことで、 運送会社の景況感が低迷したというのが実情だ。
 ただし、これからは様相が違ってくる。
日通総 研では〇八年の建設関連貨物を除いた通常貨物の 国内輸送量を前年比二・七%減の三〇億八〇〇 〇万トンと予測している。
〇七年までは、総輸送 量は減少しても通常貨物は増加していたが、今年 はそれも減少に転じる。
いよいよ運送市場のパイ 自体が縮小していくことになる。
 佐藤研究主査は「近年、日本の国内貨物輸送 量はGDP成長率を二〜四ポイント下回るレベル で推移している。
この現象は今後も続くだろう。
その結果、一〇年後の国内貨物輸送量は現在より 一五%〜二〇%落ち込む可能性がある。
自営転換 の進む余地はまだかなり残されているものの、営 業用トラックの輸送量も減少していくことが避け られない」と予測している。
 トラック運賃  ──値上がり基調は沈静化  原油価格は今年七月の最高値から半値以下に下 落した。
ちょうど一年前の水準まで値下がりした 格好だ。
トラックの燃料となる軽油の小売価格は 現状ではまだ高止まりしているものの、いずれ落 ち着いてくる。
これで運送会社も一息つけるかと 思えば、さにあらず。
東北に本社を置く中堅運送 会社幹部はため息をつく。
物量が急減したら……メーカー ●工場直送比率が低下  輸送ロットがまとまらないために工場直送比率が下 がる。
積載率を維持するために中継地点で荷合わせ する必要が高まり通過型センター(TC)が増加する。
●多品種小ロット対応が困難に  輸送効率が悪化することでメーカーによる多品種小 ロット対応が困難になる。
従来から多品種小ロット 対応に頭を痛めてきたメーカーは、さらに荷物が減 ることでコスト抑制が限界となり、サービスの見直 しが行われる。
●出荷頻度・配送回数の削減  得意先の採算性の判断に物流コストが反映されるよ うになる。
過剰な物流サービスを要求する顧客や不 採算荷主の契約が打ち切られる。
コスト削減を目的 とした出荷頻度、配送回数の削減に拍車がかかる。
●在庫の分散化  輸送費負担が増加することで、在庫を分散して保管 するようになる。
●物流子会社のリストラ  物流子会社の存在意義が改めて検討される。
グルー プ経営の強化とSCMの重要性の高まりによって、 外販拡大からグループへの貢献に役割を修正した物 流子会社は再び自立を迫られる。
 「いかにもタイミングが悪い。
ようやく燃料サ ーチャージを容認するムードが広がっていたのに、 これで振り出しに戻る。
今のようなお先真っ暗の 状態で、運賃の値上げを申し入れにいけば、契約 の継続自体が危うくなる。
とても強く出られる環 境ではなくなった。
自分の身の回りでも倒産や廃 業に追い込まれる運送会社が増えてきた」  本誌が今年八月時点で行った調査では、今年度 に入って約三分の一の荷主が平均四・九%の運賃 値上げを受け入れている。
燃料サーチャージも過 半数が来年度からは容認すると答えているが、突 然の世界的な不況によって値上げムードに冷や水 をかけられた格好だ。
給過多になり、需給の悪化に追い打ちをかける可 能性も指摘されている。
各社がスペースを埋める ために貨物の数量確保に走れば荷主の立場が強く なり、運賃下げ競争が広がる可能性もある。
 コンテナの荷動き悪化は利用運送業者のNVO CC(非船舶運航業者)にも影響を及ぼしている。
昨年度までNVOCCのコンテナ取扱量は右肩上 がりに成長を続けてきた。
フォワーダーも荷主の 一貫輸送に対するニーズを追い風に、NVOCC 業務を拡大。
日本インターナショナルフレイトフォ ワーダーズ協会(JIFFA)の推計によると、 日本発着の海上コンテナ貨物のうち、JIFFA の加盟企業の取り扱いシェアは昨年度で三二・六% を占めている。
 先行きの不透明感が出てきているのは、船会社 と同様だ。
関係者は「今年度の上半期はまだしも、 下半期は取扱量が激減する可能性もある」と語る。
欧米向けを得意とする大手NVOCCは、十二月 以降荷動きはさらに悪化するとみており、来年の 貨物取扱量は北米向けは三割減、欧州向けは一割 減、アジア向けは横ばいを想定しているという。
 コンテナの荷動き悪化と運賃下落により、コ ンテナ一本に満たない小口貨物(LCL: Lessthan Container Load)の混載市場にも変化の兆 しが出てきている。
荷動きの拡大に加えてジャス トインタイムの進展などを背景に、FCL( Full Container Load、コンテナ一本分の貨物)からL CLへの切り替えが進み、混載市場は拡大が続い てきた。
 しかし、ここにきて市場への追い風は弱まって いる。
FCLの運賃が下落し割安感が高くなった ため、荷主が出荷頻度を絞り、LCLをFCLに NOVEMBER 2008  16  国際輸送  ──供給過剰で海空とも総崩れ  国際輸送運賃はリーマンショック前から値下が り基調が顕著になっている。
燃料サーチャージの 高騰で荷主の支払い運賃は増えていても、航空フ ォワーダーの手取りは大幅に減少している。
加えて、 輸送モードを航空から海上輸送に切り替える動き が進み、日本発着の航空貨物輸送量は〇六年下期 から輸出入とも減少に転じている。
 海上輸送の物量も増えているわけではない。
ア ジア発米国向け荷動きは昨年一〇月以降、減少が 続いている。
日本海事センターによると、今年七 月は前年同月比一〇・八%減の一一三万五〇〇 〇TEU(速報値)。
一〇カ月連続の減少となっ た。
六月の一四・二%減を含めて二カ月連続の二 ケタ減は、九五年の月別集計開始以来初めてだ。
欧州向けも昨年までは二ケタ成長を続けてきたが、 今年に入ってからは成長率が一ケタに鈍化。
とり わけ夏頃から減速感が強まっている。
 荷動きの悪化に伴い、運賃は下落している。
北 米向けは毎年五月の運賃更改で概ね年間の運賃が 決まる。
今年は船舶燃料価格の高騰を背景に海運 各社が強気で臨んだ結果、二年連続の値上げで決 着した。
しかし、来年の運賃更改では値下がりが 予想されている。
既に四半期ごとに交渉を行う欧 州向け運賃は急落している。
各社が停滞する北米 航路から欧州に船舶を振り向けてきたこともあり、 船会社や仕向地によっては一〇月時点の運賃は四 月の半値になっているという。
 さらに、来年から二〇一〇年にかけては、コン テナ船の竣工量がピークを迎える。
スペースが供 物量が急減したら……運送業 ●零細運送会社が業態を転換  元請け物流会社は外注分の業務を自社に戻すため、 下請け中心の運送会社は仕事がなくなる。
運送だ けでは売り上げの立たなくなった中小運送会社の一 部は回収サービスやリサイクルなど産業廃棄物輸送 に流れる。
減車により最低保有車両台数五台を割 り込む運送会社が増えてくる。
脱法状態で事業を続 けるか、もしくは営業許可を持たない?白ナンバー? が増加する。
●路線便の復権で最低運賃制普及  物量が四トン車にまとまらない荷物が増えるため、 貸切輸送から特積便へのシフトが進む。
発言力の高 まった特積会社は、不採算荷主に対して最低運賃 制の導入に踏み切る。
●共同配送の拡大  自社の物流インフラでは採算が取れなくなるため全 国的な共同配送が見直されるようになる。
物量が減 るなかで荷主は?メンツ?よりも?コスト?を重視し、 今まで地方中心であった物流会社主導の共同配送が 全国的に検討されるようになる。
特 集  「3PL案件の契約は長期にわたる。
あらゆる 事態を想定し、その場合の対応を具体的な数値で 契約書に明記しておかないと、後から裁判沙汰に なってしまうことさえある。
ところが、九〇年代 に3PL事業が立ち上がった当初の案件では、そ うしたリスクヘッジを考慮せずに契約しているも のがかなりある」とセンコーの3PL子会社、ロ ジ・ソリューションの坂直登取締役は指摘する。
 実際、過去には苦い経験も味わった。
センコー で一括物流センターの運用を数多く手がけてきた 堤清彦ロジ・ソリューション3PL事業部事業部 長は「最初の失敗はピース単価。
商品価格に一定 の利率を掛けるかたちで料金を設定していたが、 商品構成の変動や 商品単価の値下が りで大きな痛手を 被った。
その反省 から現在は商品単 価が一〇%以上変 動した場合にはピース単価を変更することを必ず 契約書に明記するようにしている」と説明する。
 とりわけ最低保障は大事なポイントになる。
見 込み値から実際の物量が大きく減少した場合の対 応策だ。
3PLは荷主から提出された物流センタ ーの年間通過金額と今後の事業計画を元に施設や 人員を用意する。
通常は、その固定費部分に当た るコストを最低保障金額に定める。
月平均物量の 八〇%程度が一般的なラインになるが、実際の交 渉ではお互いの力関係にも左右される。
 こうした最低保障を3PLの契約書に盛り込む ことが現在では常識となっている。
ただし、その 表記方法については各社でバラバラだ。
最低保障 が発生する水準は定めていても、どこまで減った 場合にいくら保障するのかまでは明記されていな いこともある。
問題が現実化した時にはそれが紛 争の種になってしまう。
 設備投資の扱いにも注意が必要だ。
一年契約の 場合の設備費をどう処理するか。
あるいは五年契 約の三年目にリースで設備を投入して、その二年 後に契約を打ち切られてしまったらどうするか。
交渉が紛糾すれば、ソフトウェアのメンテナンス費 用やコンピュータ設備の代替など陳腐化の早い設 備の場合には、現場の維持運営自体が困難になっ てしまう。
 「最低保障については、ピース単価と月間通過 17  NOVEMBER 2008 集約してコストを削減しようとする動きが出てき ているという。
「世界景気の動向次第では、混載 の荷動きも止まってしまうかもしれない」と大手 混載業者の営業担当者は語る。
LCLの集荷量が 落ちれば混載業者が仕立てるコンテナの積載効率 が下がり、収益は悪化してしまう。
 低水準で推移してきた混載運賃も上昇に転じる 気配はない。
業者間の運賃競争が激しいためだ。
混載業者は船舶や倉庫などの資産を持たないため、 荷主さえおさえていればすぐにも独立開業が可能 で新規参入は多い。
航空フォワーダーやトラック 業者の参入も増えている。
 混載輸送の収益は厳しい状況が続いてきた。
「自 社混載はもうからない。
中堅業者の中には、自社 での混載輸送をやめているところもある」と大手 混載業者の関係者は語る。
自社混載は、貨物を集 められなければコンテナ輸送一本当たりの収支が 赤字になるリスクがある。
 業者間で相互にLCLの輸送を委託するコ・ロ ード(合積み)のレートは低迷を続けている。
コ ンテナ一本分のLCL貨物が集まったとしても、 自社で混載して船会社にサーチャージを含めた運 賃を払って輸送するより、すべてコ・ロードにし た方がコストの安くなるケースさえあるという。
 3PL  ──問われる契約ノウハウ  センコーは今秋、社員研修を兼ねて3PLの契 約書の棚卸しを行った。
各契約項目の有無や表記 内容について、荷主各社との契約書を横並びにし て一覧表を作成した。
その結果、内容に不備のあ る契約書がいくつも出てきた。
ロジ・ソリューションの 坂直登取締役 物量が急減したら……3PL ●物流現場のパート化比率上昇  人手不足は緩和される。
ただし、物量が減ることで 現場作業が一四:〇〇〜一五:〇〇には終わってし まうため、八時間労働の正社員を使えなくなる。
そ のためパート・アルバイトなど比率がさらに上昇する。
●荷主の物流内製化の動き  庫内作業を一〇人以下で処理できるような中小荷主 のアウトソーシングが割高になり、社内の遊休資産 の活用ニーズも生まれるため、物流内製化の動きが 出てくる。
●料金体系が料率制から個建てに  商品単価が上昇すると、センターの商品通過に対す るパーセンテージで設定していたフィーが割高になる。
そのため料金体系を個建てに変更する荷主が増える。
●専用センターが汎用化  専用センターの稼働率が下がり、汎用化していく。
設備の稼働率だけでなく、輸送面でも汎用センター は積み合わせが可能になるため有利。
3PLにとっ ても、特定の荷主に売り上げを頼るリスクが減る。
金額で料率のマトリクスを作成しておくことで不 要な論争を回避できる。
設備の問題も契約解消後 のリース残は荷主側で負担する旨を契約時に明確 にしておけばいい。
こうした契約のノウハウが今 後の3PL市場では大きくものを言うことになる」 と坂取締役は説明する。
 物流子会社  ──外販拡大再び  営業活動をしなくていい。
親会社から毎年、安 定的に仕事は来る。
給与水準も無理に物流業界の 水準に抑える必要はない。
親会社に合わせて利益 を残せるだけの料金設定をすれば済む。
それが最 終的には自分たちのクビを占めることに気付いて いなかった。
〇一年に旧・日産陸送、現在のゼロ がMBO(マネジメント・バイ・アウト:経営陣 による買収)を実施する以前の姿だ。
 実際、日産陸送時代には年収一〇〇〇万円を はるかに超えるドライバーが同社にはごろごろし ていた。
社員の平均年収も八〇〇万円に達してい た。
それでも毎年約四六〇億円の売上高と一七億 円程度の利益が残せていた。
そこに突然、日産自 動車から株式の売却と三〇%の支払い物流費の削 減を言い渡された。
 当時の売上高は四六〇億円のうち約一六〇億円 が日産向けだった。
その三〇%、約四八億円が一 気に吹き飛んだ。
当然、大幅な赤字を余儀なくさ れた。
それでもリストラだけはしたくない。
平均 年齢が四〇代後半に達していた従業員たちの雇用 を守る。
それがMBOの目的だった。
 岩下世志社長は「ムダ取り・変化・話し合い」 をキーワードにあらゆる改革を進めた。
給与水準 を引き下げ、ど んぶり勘定を改 め、品質向上に 取り組み、ぬる ま湯につかって いた企業体質を 一変させた。
〇一年と〇二年は赤字だったが、売 り上げ拡大と合理化により、〇三年には業績は黒 字に転換。
〇五年には計画通り上場を果たした。
 現在、同社は二〇一〇年に売上高を現在の倍近 い一〇〇〇億円に拡大するという強気な計画を掲 げている。
その先は自動車メーカー系物流子会社 の再編が飛躍のチャンスになると睨んでいる。
日 本の自動車業界には「十一社会」と呼ばれる物流 会社の親睦団体がある。
いずれも完成車メーカー の系列下にある物流会社だ。
 国内の自動車市場は長期的に縮小基調にある。
近く再編は起こる。
その時にゼロはライバルを吸 収し自動車業界の物流プラットフォームへ進化を 遂げたいと考えている。
ゴーン改革によって一足 先に親離れをせざるを得なかった経験が業界再編 を勝ち抜くためのアドバンテージだと自負している。
 同社のMBOの後、〇二年一月を底に五年近く 続いた景気の拡大は物流子会社の温存を許してき た。
物流子会社の外販拡大にブレーキをかけ、親 会社のSCM支援を新たな役割とするグループ経 営方針の変化もそれに役立った。
しかし、世界的 な景気の反転によって物流子会社の存在意義は改 めて問い直されることになる。
振り子が逆に振れ 外販拡大が再び物流子会社の使命として浮上する。
 総合住宅機器メーカーのクリナップは〇二年、 ノンアセット型の物流子会社クリナップロジスティ クスを設立した。
クリナップ運輸、クリナップ岡 山運輸、首都圏運輸倉庫サービスの既存の物流子 会社三社は順次、クリナップロジに吸収した。
こ れに伴い従来の車建て運賃を個建てに改め、荷役 費用も作業員一人当たりから個建てに変更した。
 住宅不況の影響を受け、クリナップの売上高は 昨年度八・一%減少し、営業損益も赤字に転落し た。
その影響で設立以来、増収増益基調できたク リナップロジの業績も昨年度は「惨憺たる結果」(ク リナップロジの大竹重雄社長)になった。
今年度 も親会社は業績予想を下方修正している。
しかし、 大竹社長は「何とか浮上できそうだ」と手応えを 感じている。
外販拡大が軌道に乗っているからだ。
 クリナップは無在庫導入システムをいち早く実 現した企業として知られている。
部材メーカーに 任せていた納品業務を毎日、必要な分だけ部材メ ーカーのもとに引き取りにいく方式に変更。
販売 物流では全国五二カ所に置いていた在庫拠点を撤 NOVEMBER 2008  18 クリナップロジスティ クスの大竹重雄社長 物量が急減したら……流通 ●在庫所有権が川下に移動  メーカーが最低出荷ロットを引き上げることで、川 下で在庫を持つようになる。
●バックヤードの拡大  大手小売業は店舗のバックヤード(ストックヤード) の面積を増やす。
財務体力、物流力のない中小小 売業はそれができないため欠品が常態化する。
●共同購買・物流が進む  流通業同士の共同購買機能および共同物流センター の設立が進む。
●中間流通業の存在価値が高まる  中間流通業の本来の機能である「ロット調整」、「品 揃え」、当日納品などの「物流サービス」が見直さ れる。
特 集 廃し、クロスドック拠点「プラットホーム」に改め、 拠点間の幹線輸送と域内の配送網を構築した。
こ うして工場から出荷した製品を翌日には顧客に届 ける体制を整えた。
 その結果、クリナップは九%近くあった対売上 高物流費比率を六%まで削減した。
さらなる物流 費比率の削減がクリナップロジ設立の動機だった。
親会社のコスト削減は子会社の事業規模を圧迫す る。
その穴を外販で埋めようという戦略だ。
改善 のノウハウと六八のプラットホームからなる輸配送 ネットワークがその武器になる。
 実際、設立当初、七%だった外販比率を昨年度 は二〇%にまで引き上げた。
外販の荷主数は六〇 社を超えている。
大竹社長は「外販をさらに拡大 しなければならない。
この二〜三年のうちに、四 〇%にはもっていきたい」と先を急いでいる。
 物流不動産  ──オフバランス化台頭  物流不動産ファンドのプロロジスやAMBに、 物流施設のオフバランス化を相談するメーカーが 増えている。
これまで日本市場でのオフバランス 化は、プロロジスがその先鞭を振るってきた。
松 下ロジスティクス(現パナソニックロジスティクス) や資生堂、三洋電機などから既存の物流施設を買 い上げ、それを同じ相手に賃貸する「セール&リ ースバック」を実施してきた。
 その引き合いが増えている理由を、物流不動産 業界関係者は次のように指摘する。
「所有と運用 の分離という欧米型の考え方が日本にも浸透して きたという見方もあるだろうが、もっと大きい理 由は資金繰りだ。
この不況で荷主企業や物流会社 は痛んでいる。
不動産などの資産を売却し、手元 の現金を増やしたいというのが本音だろう」  オフバランス化を推奨する外資ファンドにとっ ては追い風のはずだが、AMBプロパティジャパ ンの石田英俊リーシング・シニア・ヴァイスプレジ デントの表情は複雑だ。
「本来、物流アセットのオ フバランス化というのは景気や自社の業績が良好 なときにこそ行うべき積極的な戦略。
事業を効率 化し、企業成長を加速する手法であるべきだ。
マ イナス・マインドから実行するスキームではない。
好景気の時にオフバランス化するのと比べて、S PC(特別目的会社)の設立条件や不動産評価 額など、あらゆる面で見劣りする。
本来は考える タイミングではないというのが個人的な見解だ」  足元ではファンドの手がける大型物流施設の空 室率上昇が懸念されている。
「ここまで急激に景 気が冷え込むと、物流施設への需要は減ってくる。
短期的な視点からは、空室率の上昇は避けられな いのではないか」と、一五不動産情報サービスの 曽田貫一社長は物流不動産市況を分析する。
 シービー・リチャードエリスが発表している首 都圏の空室率推移を見ると、今年に入って空室率 が急上昇しているのがわかる。
直近の速報では 三・五ポイント改善しているが、来期以降は空室 率が再上昇する可能性をレポートは示唆している。
 「これから物流施設を賃貸で手当てする荷主に とってみればプラスの局面ではないか。
新規物件 がマーケットに溢れるが、空室率は高いので賃料 は下がるか、せいぜい横ばい。
建築コストが上が っているとはいえ、この局面で賃料に転嫁すると いうことは考えにくい状況だ」(曽田社長) 19  NOVEMBER 2008 04年 3 月 6月 9月 12月 05 年3月 6月 9月 12月 06 年3月 6月 9月 12月 07 年3月 6月 9月 12月 08 年3月 6月 9月 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 10.110.4 5.0 4.6 3.1 11.7 9.5 9.1 7.5 8.6 8.1 5.1 8.4 8.9 7.7 5.3 16.4 18.0 14.5 (%) ●首都圏の賃貸型物流施設の空室率 ※来期については空室率が再上昇する可能性を示唆 出所:シービー・リチャードエリス総合研究所 物量が急減したら……その他 ●数十坪〜三〇〇坪規模のニーズに対応する中小倉庫 会社に荷物が戻ってくる ●一トンのバン型車、二・五トン車、八トン車の車両ニー ズが高まる ●外資系物流不動産ファンドの撤退が始まる ●物流の可視化の必要性が薄まり、物流IT需要が低 下する ●中古トラックの供給が増えて価格が低下。
国内運送 会社の購入が進むだけでなく、ロシアをはじめ右ハ ンドル国への輸出が増加する ●高速道路の利用者数が減少して「昼間割引」が導 入される ●CO2排出量が自然に減少する ●物量の減少によるコスト効率の悪化から新たな物流 改善ブームがくる NOVEMBER 2008  20 の武器になる。
 実際、設立当初、七%だった外販比率が昨年度 は二〇%にまで引き上げた。
外販の荷主は六〇〜 七〇社になっている。
大竹社長は「外販をさらに 拡大しなければならない。
この二〜三年のうちに、 四〇%にはもっていきたい」と先を急いでいる。

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