2008年12月号
物流IT解剖
物流IT解剖
鈴与
DECEMBER 2008 64
グループに在籍している IT担当者は七〇〇人超
鈴与グループは港湾運送を主力と
する総合物流事業を中核として、現
在一三〇以上のグループ企業を展開
している。
総従業員数は約七五〇〇 人。
鈴与本体は未上場企業ながらグ ループの総売上高は七二〇〇億円を 超える。
商社、不動産、建設、食品、 各種サービス事業などに加え、今年 六月には航空会社を設立。
来年三月 に開港する静岡空港を拠点に自社の 航空機を運航する準備を進めている。
同社の創業は一八〇一年まで遡る。
静岡県清水港で初代の鈴木与平が廻 船問屋・播磨屋を開業してからこれ まで二〇〇年以上にわたって事業を 営んできた。
グループのトップは代々 「与平」を襲名し、現在の鈴木与平 社長で八代目を数える。
その社歴の古さとは裏腹に、こと 物流事業に関しては先進的な取り組 みが目立っている。
米国の大手フォ ワーダーとの合弁会社を設立したの が八五年。
ロジスティクスやSCMと いった欧米発の概念にもいち早く着 目してきた。
IT活用を本格化した時期も早か った。
七〇年代末には全国オンライ ンの構築に着手。
当時きわめて珍し い事例として注目された。
鈴与グル ープで現在、情報システムに携わって いる人材は少なくとも七〇〇人を超 えており、物流業界では有数の陣容 を誇っている。
もっとも、その組織体制には判然 としないところがある。
現時点で鈴 与本体の「情報システム室」に所属 している社員は、わずか七人。
IT 戦略の策定や管理業務などを手掛け ているが、グループ全体を統括して いるわけではない。
あくまでも物流 事業に関連する分野を中心に活動し ている。
この「情報システム室」を実務面か ら支えているのが、九〇年に鈴与の IT部門を母体として発足した「鈴 与システムテクノロジー」(以下、S ST)だ。
当時、五〇人近くいたシ ステム担当者の大半を別会社化した。
狙いは、専門性の高い人材の確保や、 情報事業への進出などだった。
SS Tは現在、年間四〇億円余りを売り 上げ、二〇〇人余りの従業員を抱え る鈴与直系のIT子会社として活動 している。
鈴与の情報システム室の稲野嘉教 室長は、「SSTの従業員のうち五、 六〇人を、われわれは俗に?鈴与専 属部隊?と呼んでいる。
彼らと情報 システム室の七人を一括りでみても らい、ここで当社の自前のシステム を担っていると理解してもらえば間 違いない」と説明する。
SSTの残り約一五〇人の従業員 09年末をメドに次期WMSの開発を急ぐ グループに拡散したIT部門の統合が課題 鈴 与 本社から分社化した直系の情報子会社、買収したシステム会社、さら にはNTTデータとの合弁会社や情報事業を大規模に展開する関係会社な ど、グループ各社に拡散したIT部門の集約が課題になっている。
開発を 進めている次期WMSでは、経営分析の機能を大幅に強化して管理や営 業支援に役立てていく方針だ。
情報システム室の稲野嘉教 室長 IT子会社 第21 回 ◆本社組織 「情報システム室」に7人 ◆情報子会社 鈴与システムテクノロジー:1990 年に鈴与のIT部門を分社化し発足、売上高40億 円、資本金2000万円、従業員200人。
静菱コン ピュータ:2005年に鈴与グループ入り、売上高8億 円、資本金3000万円、従業員48人。
他に情報事業 を展開する鈴与シンワートなど。
《概要》 システムの開発・運用は情報子会社を活用した自前主義が基本。
実務は 主に鈴与システムテクノロジーが担っている。
ここでグループ向けIT 支援を手掛け る一方で、外販中心のIT子会社も持つ。
鈴与本体の「情報システム室」はIT 戦略の策定や管理業務を担当しているが、グ ループ全体を統括しているわけではない。
グループのCIO的な役職は設けておらず、 情報子会社同士の連携も役員の兼務などに頼っている。
物流事業の中核システムとして99 年に稼働した「カーゴ・マスター」を利用して いる。
国内向けWMS として開発したが、バージョンアップで輸出入貨物も扱える ようにした。
現在、次期WMS の開発を構想中。
65 DECEMBER 2008 このSSTの傘下に「静菱コンピ ュータ」というシステム会社がある。
静岡三菱ふそう自動車販売のIT部 門を母体として八九年に設立された 会社で、独自のWMSパッケージを開 発・販売している。
静岡県の西部を 中心に営業活動を展開しており、〇 五年に鈴与グループ入りした。
年間 およそ八億円を売り上げ、五〇人弱 の社員が所属している。
同じ〇五年には、NTTデータと の共同出資でSCM事業を推進する 新会社「NTTデータベルSCMソ リューションズ」も設立している。
持 株比率はNTTデータが五一%、鈴 与グループが四九%で、SCMに関 連するコンサルティングやSI事業 を手掛けている。
シェアードサービスなど グループ横断機能を強化 これらIT専業者のほか、東証二 部上場の鈴与シンワートもグループ に名を連ねている。
売上高一〇〇億 円余りの会社だが、その六割以上を 「情報サービス事業」で稼ぎ出してい る。
もとは京浜地区で港湾事業など を営む会社だったが、九三年に鈴与 グループに入り、その後の相次ぐM& Aで情報サービス事業を拡大してき た。
上述したNTTデータベルSC Mソリューションズにも二九%を出 資している。
鈴与シンワートで「情報サービス事 業」に携わっている従業員は約四二 〇人。
同事業だけで年間六六億円を 売り上げている。
ただし、中心は金 融業向けのソフトウエア開発や人事 給与パッケージの開発・販売などの 売り上げで、鈴与グループの物流事 業との関わりは薄い。
人材の交流な どを通じてSSTなどとも情報交換 はしているが、過去に鈴与の情報シ ステム室と鈴与シンワートが、実務レ ベルで取引をした実績はほとんどな いという。
グループ内にIT部門が乱立し、そ れぞれの機能が重複していることは 当事者たちもわかっている。
この五 年の間に鈴与の社内では、現状のま までいいのかという議論が何度も出 ては消えた。
その結果として、グル ープの活動をIT面から支援するの はSSTの役割ということで一応は 落ち着いている。
しかし、現在の鈴与グループのI T活用は、複数の会社にノウハウや 人材が拡散してしまい、本来持って いる実力を発揮しきれていないよう にも見える。
鈴木与平社長を除けば CIO(最高情報責任者)の存在も 見当たらない。
グループのIT組織 を集約していくことは引きつづき検 討課題となりそうだ。
近年の鈴与は、グループを横断的 に管理するための組織変更を相次い で実施している。
すでに事務部門で は〇二年に鈴与マネジメントサービ スという会社を発足させ、グループ 各社の会計・税務・給与・社会保険 などを集約するシェアードサービスを 実施している。
〇四年にはグループ持株会社の鈴 与ホールディングスを新設。
その後、 鈴与の社内にも「経営企画室」を新 たに設置して、ここをグループ全体 の対外的な窓口と位置付けた。
情報 部門の枠組みを見直す前提はすでに 整っていると言える。
陸海空システムを網羅し EDIで一気通貫 鈴与は昨期(〇八年八月期)、単 体売上高九一三億円の約一・五%を IT関連のコストとして計上してい る。
この数値は五年前(〇四年度) の一・九%に比べると、かなり改善 されている。
「ネットワークの見直しやサーバー の統合などでコスト削減を進めてき た。
たとえばネットワークについては、 キャリア企業のサービスがどんどん高 度化している。
理論値で従来より五、 は、鈴与商事や鈴与自動車など主に グループ企業のIT活用を支援して いる。
グループで共有しているIT インフラの保守を担う人材も十数人 いるが、ここから物流事業を担当し ている人数だけをカウントするのは 難しい。
したがってSSTで物流事 業を支えている従業員は、おおよそ 六〇人余りということになる。
グループ戦略 システム構成 鈴与が利用しているシステム全体の概念図 港湾 航空海貨船舶DC・倉庫 通関 運輸 S-COM(コンテナターミナル) 航空貨物システム海貨工程管理 NACCS 接続 輸出入掲示板カーゴ・マスター Ver.2(保税機能付加) SHIPS 会計システム人事システムリースシステム カーゴ・マスター SIIS(在庫情報提供web) カーゴ・アイ 通関データバンク 輸出入ドキュメント管理 輸出入(国際物流)業務システム国内物流業務システム 管理系システム 情報共有システムグループウェア DECEMBER 2008 66 六倍のスピードを確保し、さらに重 要拠点については二重化も実現した うえで、コストを二割近く下げるこ とができた」(稲野室長) サーバーの統合も成果につながっ ている。
従来は一〇〇台を超すサー バーがあったが、ブレードサーバー (高集積型サーバー)への置き換えや、 最近流行りの仮想化技術(ソフトウ エアを使って仮想的なサーバーを構 築して物理的なサーバー台数を減ら す技術)の適用などによって台数を 削減してきた。
こうした施策の積み 上げがITコストの削減につながっ ている。
自らIT事業を幅広く展開してい ることもあって、技術革新への対応 は早い。
九〇年代の初頭からオープ ン化を推進しはじめ、現状では汎用 機を使ったシステムはもうほとんど 残っていない。
大半の仕組みはウィ ンドウズ上で動くようになっており、 UNIXマシンも特殊な用途にしか 使っていないという。
また、システム全体を貫く設計思 想も早くからロジスティクスやSCM を意識したものとなっている。
「通関 や船積みなどの工程は、ずっと以前 から一気通貫でつないでいる。
まだ まだバッチ的なところも多くリアルタ イムで連動しているわけではないが、 データはスムーズに流れるようになっ ている」と稲野室長は強調する。
鈴与のIT活用の根底には、二〇 年以上前に合弁した米国の大手フォ ワーダー、フリッツ(現UPS)など から受けた影響がある。
当時のフリ ッツは先進的な貨物追跡システムな どを強みに業績を伸ばしており、そ うした仕組みを持っていることが有 効なことを鈴与は肌身で感じる立場 にあった。
だからこそ国内でも、他 社に先駆けてオンライン化やEDI などを積極的に進めてきた。
同社は現在、物流分野で約六〇種 類のシステムを日常的に運用してい る。
国際物流については海貨、船舶、 輸出入、通関、保税貨物管理など業 務別にシステムを持っている。
国内物 流では、倉庫管理を中心とする「カー ゴ・マスター(Cargo Master)」、こ のシステムの中の在庫情報などをネ ット経由で関係者に提供するための 「SIIS」、そして輸送管理の「カ ーゴ・アイ( Cargo-i)」などを運用 している。
これらのシステムの大半はSST が開発した。
システム開発の原則は 自前主義だが、案件によってはパッ ケージソフトも活用する。
実際、九 九年に稼働した国内物流の中核シス テム「カーゴ・マスター」では、倉 庫への入出庫や在庫管理など の部分にパッケージを採用し ている。
パッケージベンダーと ライセンス契約を締結し、ソ ースの公開を受けて必要な機 能をカスタマイズ。
不足して いた国際物流に関する仕組み も大幅に強化してから全社に 展開していった。
外部コンサルも使って 次期システムを構想中 港湾を中心とする国際物流 をメーンとする鈴与が、国内 物流のための自前のWMSと して「カーゴ・マスター」を 開発するまでには紆余曲折が あった。
グループ内にあって、国内 でいち早く倉庫を使った物流 事業を展開したのは鈴与倉庫 (現富士ロジテック)だった。
しかし、この鈴与倉庫が九〇 年にグループから独立したこ とから、鈴与として国内物流 に本腰を入れることになった。
食品 共配事業などを対象とした自前のW MSを開発。
その後、段階的にシス テムを高度化して九九年に「カーゴ・ マスター」を稼働させた。
現時点では、〇五年に鈴与グルー プ入りした静菱コンピュータもオリジ ナルのWMSを持っているが、この パッケージは主に中小規模の荷主を 対象とする3PL事業などで活用す るツールと位置付けている。
鈴与自 身の現場管理には、他のシステムと 次期WMS サプライチェーン全般を対象に3PL 事業を展開 サプライヤー顧客 コンシューマー顧客 輸送通関輸送 荷役 航空輸送 海上輸送 保管 流通加工 陸上輸送包装梱包 SIT DC 保管 流通加工 包装梱包 DC 保管 流通加工 包装梱包 DC 鈴与カーゴネット 北海道から 九州まで 日本全国を網羅 メーカー卸・流通小売り 流通データ バンクシステム etc コンテナターミナル 情報管理システム S-COM 情報管理 システム カーゴ・マスター 配車情報 システム カーゴ・アイ 情報提供 システム SIIS 管理情報 物流情報 調達物流生産物流販売物流 荷主企業 輸送輸送輸送 67 DECEMBER 2008 実績からのCO2排出量を算定できる というものだ。
富士通がこのパッケ ージを開発したとき、鈴与も協力し てフェリーを使ったモーダルシフトの 効果などを検証したことから連携シ ステムが生まれた。
「カーゴ・マスタ ー」のデータを流し込むことによっ て、改正省エネ法に対応した報告書 の作成や、モーダルシフトの効果をあ らかじめ試算するといったことが可 能になっている。
ただし「カーゴ・マスター」も初め て導入してから約九年が経過してい る。
このため「次期WMS構想」に 既に着手しており、グループ会社が 持つWMSとの棲み分けや、それぞ れの仕組みの強みを取り込んでいく ことなどを検討している。
当然、現 在の鈴与のシステム基盤の評価や、目 指すべき方向性を確認するといった 作業も行っている。
「外部のコンサルタントにも評価し てもらい、独りよがりに陥らないよ うにしながら構想を練っている。
結 果として、われわれの考えている方 向性が間違っていないことは確認で きた。
これを今、中間報告として経 営陣に提出している。
別途、策定さ れている中長期計画とも整合性をと りながら、具体的な内容を固めてい くことになる」(稲野室長) WMSを会計に連動させ 管理や営業に活用する 次期WMSでは、システムの基本 的なコンセプト自体が見直されること になりそうだ。
「カーゴ・マスター」 をはじめとする既存システムでは、現 業をITで支援することを主眼とし てきた。
生産性の管理や、顧客別の 収益管理など、現場責任者や管理者 の改善行為に寄与する情報のアウト プットは十分とは言えなかった。
これを次期システムでは、オペレ ーションと会計システムとを連動させ て、顧客別の収益性を管理できる機 能などを盛り込んでいく方針だ。
管 理者レベルでエクセルなどを使って実 施していたデータ分析を、変動費も 含めて自動的かつタイムリーに出力 できるようにする。
収支の変化を関 係者が迅速に把握できるようにする だけでなく、現場責任者による改善 や荷主企業に対する新たな提案にも つなげる狙いだ。
ただし、こうした仕組みを実現す るには、複数の荷主向けの業務で共 用している作業や施設の費用を適切 に按分できなければならない。
物流 ABC(活動基準原価計算)と同様 の考え方を用いて、共通費を各作業 に配分するロジックを開発する必要 がある。
実は鈴与は、〇六年に半年ほどか けて、ある現場を舞台にそのための 実地検証を行っている。
ABCと同 様の手法で現場作業を分析し、ここ から導きだしたロジックで実際の会 計データを接分。
さまざまな管理指 標を算出するという作業を実施した。
その成果を次期WMSに活かす。
稲野室長は「各現場ではこうした 分析を従来から粗いレベルながらも やってきた。
その作業を自動化して 現場の負担の軽減をはかりたい。
た だし、コストの配分方法に対して現 場から不満が出たり、管理指標の提 示が逆に現場のモチベーションを下げ てしまうようでは元も子もない。
十 分にケアしながら進めていく必要が ある」と考えている。
早ければ〇九年の春にはプロトタ イプを試作し、夏の間に評価する。
こ こで評価項目をクリアできれば、年 末までをメドに正式にシステムを構 築。
これを二、三年かけて全社に展 開していくというスケジュールにな る。
現在の「カーゴ・マスター」は まだ十分に通用するとの自負がある ものの、実際の導入作業に時間を要 することを考慮するとそうそう余裕 はなさそうだ。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) の連動性などに優れた「カーゴ・マ スター」を使っている。
自らの物流事業を支える主力シス テムだからこそ、機能性を高める手 直しには手間をかけてきた。
「カー ゴ・マスターVer・2」では、もと もと国内向けだったこのシステムに輸 出入貨物を扱える仕組みを付加。
こ れによって貿易が絡む貨物の国内物 流に広く対応できるようにした。
また、今年一月には「CO2排出 量算定シミュレーションシステム」と いう機能も整えた。
富士通が開発し たパッケージ「LOMOS/EC」と 連携させることで、配送計画や運行 営業支援 WMS に連動させてCO2排出量の算定も実施 荷主企業 出荷指示CO2排出量 実績情報の提供 鈴与在庫管理システム 「カーゴ・マスター」 CO2排出量算定 シミュレーションシステム 出荷予定 データ 出荷実績 データ CO2実績 データ インターフェイス LOMOS/EC 作業 指示 作業 結果 鈴与在庫管理システムの情報 をCO2計算式に当てはめる 出荷日・納品先(距離) 重量・便など step1 実績データからCO2排出量を計算する。
step2 輸送モードの変更による排出量の削減 効果計算などのシミュレーションを行う。
※LOMOS/ECは 富士通のソフト
総従業員数は約七五〇〇 人。
鈴与本体は未上場企業ながらグ ループの総売上高は七二〇〇億円を 超える。
商社、不動産、建設、食品、 各種サービス事業などに加え、今年 六月には航空会社を設立。
来年三月 に開港する静岡空港を拠点に自社の 航空機を運航する準備を進めている。
同社の創業は一八〇一年まで遡る。
静岡県清水港で初代の鈴木与平が廻 船問屋・播磨屋を開業してからこれ まで二〇〇年以上にわたって事業を 営んできた。
グループのトップは代々 「与平」を襲名し、現在の鈴木与平 社長で八代目を数える。
その社歴の古さとは裏腹に、こと 物流事業に関しては先進的な取り組 みが目立っている。
米国の大手フォ ワーダーとの合弁会社を設立したの が八五年。
ロジスティクスやSCMと いった欧米発の概念にもいち早く着 目してきた。
IT活用を本格化した時期も早か った。
七〇年代末には全国オンライ ンの構築に着手。
当時きわめて珍し い事例として注目された。
鈴与グル ープで現在、情報システムに携わって いる人材は少なくとも七〇〇人を超 えており、物流業界では有数の陣容 を誇っている。
もっとも、その組織体制には判然 としないところがある。
現時点で鈴 与本体の「情報システム室」に所属 している社員は、わずか七人。
IT 戦略の策定や管理業務などを手掛け ているが、グループ全体を統括して いるわけではない。
あくまでも物流 事業に関連する分野を中心に活動し ている。
この「情報システム室」を実務面か ら支えているのが、九〇年に鈴与の IT部門を母体として発足した「鈴 与システムテクノロジー」(以下、S ST)だ。
当時、五〇人近くいたシ ステム担当者の大半を別会社化した。
狙いは、専門性の高い人材の確保や、 情報事業への進出などだった。
SS Tは現在、年間四〇億円余りを売り 上げ、二〇〇人余りの従業員を抱え る鈴与直系のIT子会社として活動 している。
鈴与の情報システム室の稲野嘉教 室長は、「SSTの従業員のうち五、 六〇人を、われわれは俗に?鈴与専 属部隊?と呼んでいる。
彼らと情報 システム室の七人を一括りでみても らい、ここで当社の自前のシステム を担っていると理解してもらえば間 違いない」と説明する。
SSTの残り約一五〇人の従業員 09年末をメドに次期WMSの開発を急ぐ グループに拡散したIT部門の統合が課題 鈴 与 本社から分社化した直系の情報子会社、買収したシステム会社、さら にはNTTデータとの合弁会社や情報事業を大規模に展開する関係会社な ど、グループ各社に拡散したIT部門の集約が課題になっている。
開発を 進めている次期WMSでは、経営分析の機能を大幅に強化して管理や営 業支援に役立てていく方針だ。
情報システム室の稲野嘉教 室長 IT子会社 第21 回 ◆本社組織 「情報システム室」に7人 ◆情報子会社 鈴与システムテクノロジー:1990 年に鈴与のIT部門を分社化し発足、売上高40億 円、資本金2000万円、従業員200人。
静菱コン ピュータ:2005年に鈴与グループ入り、売上高8億 円、資本金3000万円、従業員48人。
他に情報事業 を展開する鈴与シンワートなど。
《概要》 システムの開発・運用は情報子会社を活用した自前主義が基本。
実務は 主に鈴与システムテクノロジーが担っている。
ここでグループ向けIT 支援を手掛け る一方で、外販中心のIT子会社も持つ。
鈴与本体の「情報システム室」はIT 戦略の策定や管理業務を担当しているが、グ ループ全体を統括しているわけではない。
グループのCIO的な役職は設けておらず、 情報子会社同士の連携も役員の兼務などに頼っている。
物流事業の中核システムとして99 年に稼働した「カーゴ・マスター」を利用して いる。
国内向けWMS として開発したが、バージョンアップで輸出入貨物も扱える ようにした。
現在、次期WMS の開発を構想中。
65 DECEMBER 2008 このSSTの傘下に「静菱コンピ ュータ」というシステム会社がある。
静岡三菱ふそう自動車販売のIT部 門を母体として八九年に設立された 会社で、独自のWMSパッケージを開 発・販売している。
静岡県の西部を 中心に営業活動を展開しており、〇 五年に鈴与グループ入りした。
年間 およそ八億円を売り上げ、五〇人弱 の社員が所属している。
同じ〇五年には、NTTデータと の共同出資でSCM事業を推進する 新会社「NTTデータベルSCMソ リューションズ」も設立している。
持 株比率はNTTデータが五一%、鈴 与グループが四九%で、SCMに関 連するコンサルティングやSI事業 を手掛けている。
シェアードサービスなど グループ横断機能を強化 これらIT専業者のほか、東証二 部上場の鈴与シンワートもグループ に名を連ねている。
売上高一〇〇億 円余りの会社だが、その六割以上を 「情報サービス事業」で稼ぎ出してい る。
もとは京浜地区で港湾事業など を営む会社だったが、九三年に鈴与 グループに入り、その後の相次ぐM& Aで情報サービス事業を拡大してき た。
上述したNTTデータベルSC Mソリューションズにも二九%を出 資している。
鈴与シンワートで「情報サービス事 業」に携わっている従業員は約四二 〇人。
同事業だけで年間六六億円を 売り上げている。
ただし、中心は金 融業向けのソフトウエア開発や人事 給与パッケージの開発・販売などの 売り上げで、鈴与グループの物流事 業との関わりは薄い。
人材の交流な どを通じてSSTなどとも情報交換 はしているが、過去に鈴与の情報シ ステム室と鈴与シンワートが、実務レ ベルで取引をした実績はほとんどな いという。
グループ内にIT部門が乱立し、そ れぞれの機能が重複していることは 当事者たちもわかっている。
この五 年の間に鈴与の社内では、現状のま までいいのかという議論が何度も出 ては消えた。
その結果として、グル ープの活動をIT面から支援するの はSSTの役割ということで一応は 落ち着いている。
しかし、現在の鈴与グループのI T活用は、複数の会社にノウハウや 人材が拡散してしまい、本来持って いる実力を発揮しきれていないよう にも見える。
鈴木与平社長を除けば CIO(最高情報責任者)の存在も 見当たらない。
グループのIT組織 を集約していくことは引きつづき検 討課題となりそうだ。
近年の鈴与は、グループを横断的 に管理するための組織変更を相次い で実施している。
すでに事務部門で は〇二年に鈴与マネジメントサービ スという会社を発足させ、グループ 各社の会計・税務・給与・社会保険 などを集約するシェアードサービスを 実施している。
〇四年にはグループ持株会社の鈴 与ホールディングスを新設。
その後、 鈴与の社内にも「経営企画室」を新 たに設置して、ここをグループ全体 の対外的な窓口と位置付けた。
情報 部門の枠組みを見直す前提はすでに 整っていると言える。
陸海空システムを網羅し EDIで一気通貫 鈴与は昨期(〇八年八月期)、単 体売上高九一三億円の約一・五%を IT関連のコストとして計上してい る。
この数値は五年前(〇四年度) の一・九%に比べると、かなり改善 されている。
「ネットワークの見直しやサーバー の統合などでコスト削減を進めてき た。
たとえばネットワークについては、 キャリア企業のサービスがどんどん高 度化している。
理論値で従来より五、 は、鈴与商事や鈴与自動車など主に グループ企業のIT活用を支援して いる。
グループで共有しているIT インフラの保守を担う人材も十数人 いるが、ここから物流事業を担当し ている人数だけをカウントするのは 難しい。
したがってSSTで物流事 業を支えている従業員は、おおよそ 六〇人余りということになる。
グループ戦略 システム構成 鈴与が利用しているシステム全体の概念図 港湾 航空海貨船舶DC・倉庫 通関 運輸 S-COM(コンテナターミナル) 航空貨物システム海貨工程管理 NACCS 接続 輸出入掲示板カーゴ・マスター Ver.2(保税機能付加) SHIPS 会計システム人事システムリースシステム カーゴ・マスター SIIS(在庫情報提供web) カーゴ・アイ 通関データバンク 輸出入ドキュメント管理 輸出入(国際物流)業務システム国内物流業務システム 管理系システム 情報共有システムグループウェア DECEMBER 2008 66 六倍のスピードを確保し、さらに重 要拠点については二重化も実現した うえで、コストを二割近く下げるこ とができた」(稲野室長) サーバーの統合も成果につながっ ている。
従来は一〇〇台を超すサー バーがあったが、ブレードサーバー (高集積型サーバー)への置き換えや、 最近流行りの仮想化技術(ソフトウ エアを使って仮想的なサーバーを構 築して物理的なサーバー台数を減ら す技術)の適用などによって台数を 削減してきた。
こうした施策の積み 上げがITコストの削減につながっ ている。
自らIT事業を幅広く展開してい ることもあって、技術革新への対応 は早い。
九〇年代の初頭からオープ ン化を推進しはじめ、現状では汎用 機を使ったシステムはもうほとんど 残っていない。
大半の仕組みはウィ ンドウズ上で動くようになっており、 UNIXマシンも特殊な用途にしか 使っていないという。
また、システム全体を貫く設計思 想も早くからロジスティクスやSCM を意識したものとなっている。
「通関 や船積みなどの工程は、ずっと以前 から一気通貫でつないでいる。
まだ まだバッチ的なところも多くリアルタ イムで連動しているわけではないが、 データはスムーズに流れるようになっ ている」と稲野室長は強調する。
鈴与のIT活用の根底には、二〇 年以上前に合弁した米国の大手フォ ワーダー、フリッツ(現UPS)など から受けた影響がある。
当時のフリ ッツは先進的な貨物追跡システムな どを強みに業績を伸ばしており、そ うした仕組みを持っていることが有 効なことを鈴与は肌身で感じる立場 にあった。
だからこそ国内でも、他 社に先駆けてオンライン化やEDI などを積極的に進めてきた。
同社は現在、物流分野で約六〇種 類のシステムを日常的に運用してい る。
国際物流については海貨、船舶、 輸出入、通関、保税貨物管理など業 務別にシステムを持っている。
国内物 流では、倉庫管理を中心とする「カー ゴ・マスター(Cargo Master)」、こ のシステムの中の在庫情報などをネ ット経由で関係者に提供するための 「SIIS」、そして輸送管理の「カ ーゴ・アイ( Cargo-i)」などを運用 している。
これらのシステムの大半はSST が開発した。
システム開発の原則は 自前主義だが、案件によってはパッ ケージソフトも活用する。
実際、九 九年に稼働した国内物流の中核シス テム「カーゴ・マスター」では、倉 庫への入出庫や在庫管理など の部分にパッケージを採用し ている。
パッケージベンダーと ライセンス契約を締結し、ソ ースの公開を受けて必要な機 能をカスタマイズ。
不足して いた国際物流に関する仕組み も大幅に強化してから全社に 展開していった。
外部コンサルも使って 次期システムを構想中 港湾を中心とする国際物流 をメーンとする鈴与が、国内 物流のための自前のWMSと して「カーゴ・マスター」を 開発するまでには紆余曲折が あった。
グループ内にあって、国内 でいち早く倉庫を使った物流 事業を展開したのは鈴与倉庫 (現富士ロジテック)だった。
しかし、この鈴与倉庫が九〇 年にグループから独立したこ とから、鈴与として国内物流 に本腰を入れることになった。
食品 共配事業などを対象とした自前のW MSを開発。
その後、段階的にシス テムを高度化して九九年に「カーゴ・ マスター」を稼働させた。
現時点では、〇五年に鈴与グルー プ入りした静菱コンピュータもオリジ ナルのWMSを持っているが、この パッケージは主に中小規模の荷主を 対象とする3PL事業などで活用す るツールと位置付けている。
鈴与自 身の現場管理には、他のシステムと 次期WMS サプライチェーン全般を対象に3PL 事業を展開 サプライヤー顧客 コンシューマー顧客 輸送通関輸送 荷役 航空輸送 海上輸送 保管 流通加工 陸上輸送包装梱包 SIT DC 保管 流通加工 包装梱包 DC 保管 流通加工 包装梱包 DC 鈴与カーゴネット 北海道から 九州まで 日本全国を網羅 メーカー卸・流通小売り 流通データ バンクシステム etc コンテナターミナル 情報管理システム S-COM 情報管理 システム カーゴ・マスター 配車情報 システム カーゴ・アイ 情報提供 システム SIIS 管理情報 物流情報 調達物流生産物流販売物流 荷主企業 輸送輸送輸送 67 DECEMBER 2008 実績からのCO2排出量を算定できる というものだ。
富士通がこのパッケ ージを開発したとき、鈴与も協力し てフェリーを使ったモーダルシフトの 効果などを検証したことから連携シ ステムが生まれた。
「カーゴ・マスタ ー」のデータを流し込むことによっ て、改正省エネ法に対応した報告書 の作成や、モーダルシフトの効果をあ らかじめ試算するといったことが可 能になっている。
ただし「カーゴ・マスター」も初め て導入してから約九年が経過してい る。
このため「次期WMS構想」に 既に着手しており、グループ会社が 持つWMSとの棲み分けや、それぞ れの仕組みの強みを取り込んでいく ことなどを検討している。
当然、現 在の鈴与のシステム基盤の評価や、目 指すべき方向性を確認するといった 作業も行っている。
「外部のコンサルタントにも評価し てもらい、独りよがりに陥らないよ うにしながら構想を練っている。
結 果として、われわれの考えている方 向性が間違っていないことは確認で きた。
これを今、中間報告として経 営陣に提出している。
別途、策定さ れている中長期計画とも整合性をと りながら、具体的な内容を固めてい くことになる」(稲野室長) WMSを会計に連動させ 管理や営業に活用する 次期WMSでは、システムの基本 的なコンセプト自体が見直されること になりそうだ。
「カーゴ・マスター」 をはじめとする既存システムでは、現 業をITで支援することを主眼とし てきた。
生産性の管理や、顧客別の 収益管理など、現場責任者や管理者 の改善行為に寄与する情報のアウト プットは十分とは言えなかった。
これを次期システムでは、オペレ ーションと会計システムとを連動させ て、顧客別の収益性を管理できる機 能などを盛り込んでいく方針だ。
管 理者レベルでエクセルなどを使って実 施していたデータ分析を、変動費も 含めて自動的かつタイムリーに出力 できるようにする。
収支の変化を関 係者が迅速に把握できるようにする だけでなく、現場責任者による改善 や荷主企業に対する新たな提案にも つなげる狙いだ。
ただし、こうした仕組みを実現す るには、複数の荷主向けの業務で共 用している作業や施設の費用を適切 に按分できなければならない。
物流 ABC(活動基準原価計算)と同様 の考え方を用いて、共通費を各作業 に配分するロジックを開発する必要 がある。
実は鈴与は、〇六年に半年ほどか けて、ある現場を舞台にそのための 実地検証を行っている。
ABCと同 様の手法で現場作業を分析し、ここ から導きだしたロジックで実際の会 計データを接分。
さまざまな管理指 標を算出するという作業を実施した。
その成果を次期WMSに活かす。
稲野室長は「各現場ではこうした 分析を従来から粗いレベルながらも やってきた。
その作業を自動化して 現場の負担の軽減をはかりたい。
た だし、コストの配分方法に対して現 場から不満が出たり、管理指標の提 示が逆に現場のモチベーションを下げ てしまうようでは元も子もない。
十 分にケアしながら進めていく必要が ある」と考えている。
早ければ〇九年の春にはプロトタ イプを試作し、夏の間に評価する。
こ こで評価項目をクリアできれば、年 末までをメドに正式にシステムを構 築。
これを二、三年かけて全社に展 開していくというスケジュールにな る。
現在の「カーゴ・マスター」は まだ十分に通用するとの自負がある ものの、実際の導入作業に時間を要 することを考慮するとそうそう余裕 はなさそうだ。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) の連動性などに優れた「カーゴ・マ スター」を使っている。
自らの物流事業を支える主力シス テムだからこそ、機能性を高める手 直しには手間をかけてきた。
「カー ゴ・マスターVer・2」では、もと もと国内向けだったこのシステムに輸 出入貨物を扱える仕組みを付加。
こ れによって貿易が絡む貨物の国内物 流に広く対応できるようにした。
また、今年一月には「CO2排出 量算定シミュレーションシステム」と いう機能も整えた。
富士通が開発し たパッケージ「LOMOS/EC」と 連携させることで、配送計画や運行 営業支援 WMS に連動させてCO2排出量の算定も実施 荷主企業 出荷指示CO2排出量 実績情報の提供 鈴与在庫管理システム 「カーゴ・マスター」 CO2排出量算定 シミュレーションシステム 出荷予定 データ 出荷実績 データ CO2実績 データ インターフェイス LOMOS/EC 作業 指示 作業 結果 鈴与在庫管理システムの情報 をCO2計算式に当てはめる 出荷日・納品先(距離) 重量・便など step1 実績データからCO2排出量を計算する。
step2 輸送モードの変更による排出量の削減 効果計算などのシミュレーションを行う。
※LOMOS/ECは 富士通のソフト
