2008年12月号
特集
特集
物流資格ガイド 生き残るには専門を二つ持て
DECEMBER 2008 12
資格だけでメシが食えるほど世の中、甘くはな
い。
それでも物流のキャリアをコアにして、もう 一つ専門領域を持つことで、職にあぶれるリスク は格段に下がる。
物流とサプライチェーン、物流 とIT、物流と語学、物流と営業等々──資格でキャ リアを武装して世界同時不況を生き延びろ。
物流マンのキャリアパス 国際宅配便のUPSジャパンが正社員ドライバー を増やしている。
協力会社に委託していた集配業務 の内製化を進めたことで、数年前まで三割程度だっ た正社員ドライバーの比率が現在は約五割に上昇し ている。
正社員ドライバーの給与水準は「外資系企 業の平均よりも少し上のレベル」というから物流業 界としては破格。
コストよりもサービス品質の向上を 優先している格好だ。
今後も正社員ドライバーは増 やしていく方針という。
ドライバーの募集は主にインターネットの求人サイ トを利用している。
ドライバー経験があり、かつ英 語表記と携帯端末の操作を厭わないことが必要条件 だが、最終的な決め手となるのは「顧客とのコミュ ニケーション能力、そして当社のカルチャーと合致す るかどうかを最も重視している」とUPSジャパン の福留秀一ジャパンヒューマンリソースマネージャー は説明する。
女性も多く活躍している。
現在はドライバーも含 円クラスの成約 が多く、高単価。
人材の流動性も 年々高まってい る。
従来からニー ズがあるとは感 じていたが、我々 側にノウハウがな かった。
専門部 隊を設置したこ とで市場の実像 が見えてきた」と いう。
求人企業は日 本市場に新たに 進出した外資系 企業やベンチャー 企業、通販会社 などが中心だ。
人材に求めるスペックは管理職と非 管理職で異なる。
二五歳から三五歳、年収で五〇〇 万円から六〇〇万円クラスの非管理職では、受発注 管理の業務経験と、そこで必要になる社内や取引先 とのコミュニケーション能力が重視される。
業務の性 格を反映して、転職候補者は女性が過半数を占める。
マネージャー以上の階層では、一転して男性が圧倒 的になる。
受発注管理、納期管理、在庫管理の実務 に加え、そのパフォーマンスを把握するKPI(重要 業績評価指標)の開発や3PLをはじめとする協力 会社の選定・管理能力が求められる。
最近ではCL O(最高ロジスティクス責任者)のポジションを新た に設置して外部からスペシャリストを招き入れる企業 も増えているという。
めて社員の三分の一が女性。
「ただし、管理職となる と比率が一六%に下がる。
これを三〇%まで持って いくことを目標にしている」と福留マネージャーはい う。
ドライバーとして入社した後に営業職や管理職 に転身する社員も多い。
毎年「ピープル・ミーティン グ」と呼ぶ個人面談を実施して一人ひとりのキャリ アパスを検討している。
UPSの米国本社の経営陣は、大部分が現場経験 を持ち勤続年数も長い内部昇進者。
パートタイムの 契約社員から出発して経営委員会のメンバーまで上 り詰めるケースも珍しくない。
物流マンのキャリアパ スを作り込むことで社員の忠誠心を高め、ドライな イメージの強い米国企業らしからぬ独自のカルチャー を醸成している。
こんな会社は終身雇用を是とする日本企業でも稀 だろう。
通常、現場出身の物流マンはマネージャー クラスで出世の壁に直面する。
実務経験をベースに 活動範囲を広げたいと望んでも、会社側にはそれを 受け入れる用意がない。
現場と経営層の距離は遠く、 物流マンの能力を適切に評価する仕組みも欠いてい る。
荷主企業や物流子会社であればなおさらだ。
しかし、ひとたび社外に目を向ければ、物流の実 務経験には意外なほどの高値がつく。
大手人材紹介 サービスのJACリクルートメントは二〇〇七年一 月に物流人材の転職をサポートする専門部隊を設置 した。
同社の渡邊公子ロジスティクス担当コンサルタ ントは「物流人材は年収七〇〇万円から一〇〇〇万 UPS ジャパンの福留秀一 ジャパンヒューマンリソ ースマネージャー アビームコンサルティ ングの四十谷裕之執行 役員プリンシパル JAC リクルートメント の渡邊公子ロジスティク ス担当コンサルタント 生き残るには専門を二つ持て 解 説 特集 13 DECEMBER 2008 渡邊コンサルタントは「この傾向は長期的に続く。
世界的な景気の低迷で足元の求人ニーズは緩んでい る。
しかし、億円レベルのキャッシュフローを生み出 すことのできるロジスティクスのスペシャリストに対 するニーズは、不況に突入したことでむしろ増えて いく」と見ている。
実務経験の豊富な物流業出身者はCLOの有力候 補だ。
ただし、物流だけしか売りがない人材の評価 は低い。
アビームコンサルティングの製造/流通統括 事業部で、中途採用責任者を兼務する四十谷(あい たに)裕之執行役員プリンシパルは「物流業務にプラ スしてITの導入や海外経験、営業や生産など二つ 以上の専門性を持っていることで活躍の場が一気に 広がる」と指摘する。
コンピテンシー VS インダストリー 同社は例年二〇〇人から三〇〇人のコンサルタン トを中途採用している。
近年はSCM領域の業務改 革が増えていることから物流専業者や物流子会社出 身者も少なくない。
四十谷プリンシパルもその一人。
大手倉庫会社のIT部門、3PL部門を経て二〇〇 〇年に同社に転じた。
物流をコアにしてSCMへと ──物流技術管理士会とは? 「現在の『物流技術管理士』と『国際物流管理 士』、その前身の『物流管理士』と『物流士』の 資格を取得した人たちのOB会です。
これまでに 延べ約八〇〇〇人の資格取得者がいますが、そ のうちの一割に当たる約八〇〇人が所属してい ます。
年会費は五〇〇〇円。
ほとんどの人が自 腹で会費を払い個人で参加しています」 ──主な活動内容は。
「現役の実務家や研究者を招いて物流の最新知 識を吸収したり、お互いの取り組みや現場を紹 介し合うことで資格取得者のフォローアップをし ています。
荷主企業や物流会社、関連ベンダーな ど、様々な顔ぶれが参加しているので、横のつな がりからビジネスが発生することもある。
会とし ても、それを奨励しています。
どんどん利用し てほしい」 ──物流技術管理士はかつては運輸大臣の認定 資格でした。
ところがその後、認定から外れて しまった。
その影響は? 「ほとんど影響はないようです。
実際、応募数 も現在まで順調に増えています。
少し口幅った い言い方になりま すが、物流技術管 理士という資格は 日本の物流、ロジス ティクスの底上げに 大きな貢献をしてい ると思います。
資格 を持つ人たちが産業界に増えてきたことが確か な力になっている。
資格を取った後、独立して 物流コンサルタントとして活躍している人も少な くありません」 ──重田会長自身もその一人ですね。
資生堂の 物流部門で活躍され、現在は東京ロジスティクス 研究所の顧問という立場で物流コンサルティング を手がけている。
「ロジスティクスが経営の中枢であることを、私 は資生堂時代に当時の福原義春社長から教えら れました。
しかし、いまだにそうした意識を持つ 経営者は少数派だと思います。
物流技術管理士 会が少しでもその啓蒙活動に貢献できたら嬉し い。
そのため皆、ボランティアでOB会に参加し ているんです」 「資格取得者が日本の物流を支えている」 物流技術管理士会 重田靖男 会長 キャリアを広げたかったことが転職の理由だという。
SCMのコンサルティングは現在、ERPの導入か ら業務プロセス改革に重点をシフトしている。
そこで は物流・販売・生産をセットにして全体を最適化す る能力が求められる。
「3PLの企画部門やコンサル ティング部門の出身者は、これまでやってきた業務 経験が大いに活かせる。
当社としては欲しい人材だ」 と四十谷プリンシパルはいう。
同社に新卒で入社した場合のキャリアパスは、まず 「コンサルタント(ビジネスアナリスト)」という肩書き でIT導入プロジェクトを数年経験した後、「シニア コンサルタント」に昇進する。
さらに「マネージャー」 に昇格すると現場のチームリーダーを任される。
そ こで成果を上げたものが「シニアマネージャー」、「ダ イレクター」そして「プリンシパル」と出世の階段を 上っていく。
組織の中核となるマネージャーの年齢層は三〇代 前半。
この頃に社内のキャリアカウンセラーと相談し て「コンピテンシー」と「インダストリー」のどちら かを自分のキャリアに選ぶ。
「コンピテンシー」とは 特定機能のスペシャリスト。
SCMもその一つだ。
一 方の「インダストリー」は産業別の専門家。
いずれの 道を進んでもキャリアアップとともに、付き合う相手 と仕事の内容は、トップマネジメントに近づいていく。
四十谷プリンシパルは「それがこの仕事の醍醐味だ。
もっとも、物流とSCMが今も自分のコンピテンシー であることは変わらない。
物流は決して傍流のキャ リアではない。
充分に普遍性を持っている」と物流 マンにエールを送っている。
※次頁から物流関連資格を一覧する。
各資格名に付 けた★印は、資格取得の難易度を弊誌が判断した もの。
一つの目安と考えてほしい。
それでも物流のキャリアをコアにして、もう 一つ専門領域を持つことで、職にあぶれるリスク は格段に下がる。
物流とサプライチェーン、物流 とIT、物流と語学、物流と営業等々──資格でキャ リアを武装して世界同時不況を生き延びろ。
物流マンのキャリアパス 国際宅配便のUPSジャパンが正社員ドライバー を増やしている。
協力会社に委託していた集配業務 の内製化を進めたことで、数年前まで三割程度だっ た正社員ドライバーの比率が現在は約五割に上昇し ている。
正社員ドライバーの給与水準は「外資系企 業の平均よりも少し上のレベル」というから物流業 界としては破格。
コストよりもサービス品質の向上を 優先している格好だ。
今後も正社員ドライバーは増 やしていく方針という。
ドライバーの募集は主にインターネットの求人サイ トを利用している。
ドライバー経験があり、かつ英 語表記と携帯端末の操作を厭わないことが必要条件 だが、最終的な決め手となるのは「顧客とのコミュ ニケーション能力、そして当社のカルチャーと合致す るかどうかを最も重視している」とUPSジャパン の福留秀一ジャパンヒューマンリソースマネージャー は説明する。
女性も多く活躍している。
現在はドライバーも含 円クラスの成約 が多く、高単価。
人材の流動性も 年々高まってい る。
従来からニー ズがあるとは感 じていたが、我々 側にノウハウがな かった。
専門部 隊を設置したこ とで市場の実像 が見えてきた」と いう。
求人企業は日 本市場に新たに 進出した外資系 企業やベンチャー 企業、通販会社 などが中心だ。
人材に求めるスペックは管理職と非 管理職で異なる。
二五歳から三五歳、年収で五〇〇 万円から六〇〇万円クラスの非管理職では、受発注 管理の業務経験と、そこで必要になる社内や取引先 とのコミュニケーション能力が重視される。
業務の性 格を反映して、転職候補者は女性が過半数を占める。
マネージャー以上の階層では、一転して男性が圧倒 的になる。
受発注管理、納期管理、在庫管理の実務 に加え、そのパフォーマンスを把握するKPI(重要 業績評価指標)の開発や3PLをはじめとする協力 会社の選定・管理能力が求められる。
最近ではCL O(最高ロジスティクス責任者)のポジションを新た に設置して外部からスペシャリストを招き入れる企業 も増えているという。
めて社員の三分の一が女性。
「ただし、管理職となる と比率が一六%に下がる。
これを三〇%まで持って いくことを目標にしている」と福留マネージャーはい う。
ドライバーとして入社した後に営業職や管理職 に転身する社員も多い。
毎年「ピープル・ミーティン グ」と呼ぶ個人面談を実施して一人ひとりのキャリ アパスを検討している。
UPSの米国本社の経営陣は、大部分が現場経験 を持ち勤続年数も長い内部昇進者。
パートタイムの 契約社員から出発して経営委員会のメンバーまで上 り詰めるケースも珍しくない。
物流マンのキャリアパ スを作り込むことで社員の忠誠心を高め、ドライな イメージの強い米国企業らしからぬ独自のカルチャー を醸成している。
こんな会社は終身雇用を是とする日本企業でも稀 だろう。
通常、現場出身の物流マンはマネージャー クラスで出世の壁に直面する。
実務経験をベースに 活動範囲を広げたいと望んでも、会社側にはそれを 受け入れる用意がない。
現場と経営層の距離は遠く、 物流マンの能力を適切に評価する仕組みも欠いてい る。
荷主企業や物流子会社であればなおさらだ。
しかし、ひとたび社外に目を向ければ、物流の実 務経験には意外なほどの高値がつく。
大手人材紹介 サービスのJACリクルートメントは二〇〇七年一 月に物流人材の転職をサポートする専門部隊を設置 した。
同社の渡邊公子ロジスティクス担当コンサルタ ントは「物流人材は年収七〇〇万円から一〇〇〇万 UPS ジャパンの福留秀一 ジャパンヒューマンリソ ースマネージャー アビームコンサルティ ングの四十谷裕之執行 役員プリンシパル JAC リクルートメント の渡邊公子ロジスティク ス担当コンサルタント 生き残るには専門を二つ持て 解 説 特集 13 DECEMBER 2008 渡邊コンサルタントは「この傾向は長期的に続く。
世界的な景気の低迷で足元の求人ニーズは緩んでい る。
しかし、億円レベルのキャッシュフローを生み出 すことのできるロジスティクスのスペシャリストに対 するニーズは、不況に突入したことでむしろ増えて いく」と見ている。
実務経験の豊富な物流業出身者はCLOの有力候 補だ。
ただし、物流だけしか売りがない人材の評価 は低い。
アビームコンサルティングの製造/流通統括 事業部で、中途採用責任者を兼務する四十谷(あい たに)裕之執行役員プリンシパルは「物流業務にプラ スしてITの導入や海外経験、営業や生産など二つ 以上の専門性を持っていることで活躍の場が一気に 広がる」と指摘する。
コンピテンシー VS インダストリー 同社は例年二〇〇人から三〇〇人のコンサルタン トを中途採用している。
近年はSCM領域の業務改 革が増えていることから物流専業者や物流子会社出 身者も少なくない。
四十谷プリンシパルもその一人。
大手倉庫会社のIT部門、3PL部門を経て二〇〇 〇年に同社に転じた。
物流をコアにしてSCMへと ──物流技術管理士会とは? 「現在の『物流技術管理士』と『国際物流管理 士』、その前身の『物流管理士』と『物流士』の 資格を取得した人たちのOB会です。
これまでに 延べ約八〇〇〇人の資格取得者がいますが、そ のうちの一割に当たる約八〇〇人が所属してい ます。
年会費は五〇〇〇円。
ほとんどの人が自 腹で会費を払い個人で参加しています」 ──主な活動内容は。
「現役の実務家や研究者を招いて物流の最新知 識を吸収したり、お互いの取り組みや現場を紹 介し合うことで資格取得者のフォローアップをし ています。
荷主企業や物流会社、関連ベンダーな ど、様々な顔ぶれが参加しているので、横のつな がりからビジネスが発生することもある。
会とし ても、それを奨励しています。
どんどん利用し てほしい」 ──物流技術管理士はかつては運輸大臣の認定 資格でした。
ところがその後、認定から外れて しまった。
その影響は? 「ほとんど影響はないようです。
実際、応募数 も現在まで順調に増えています。
少し口幅った い言い方になりま すが、物流技術管 理士という資格は 日本の物流、ロジス ティクスの底上げに 大きな貢献をしてい ると思います。
資格 を持つ人たちが産業界に増えてきたことが確か な力になっている。
資格を取った後、独立して 物流コンサルタントとして活躍している人も少な くありません」 ──重田会長自身もその一人ですね。
資生堂の 物流部門で活躍され、現在は東京ロジスティクス 研究所の顧問という立場で物流コンサルティング を手がけている。
「ロジスティクスが経営の中枢であることを、私 は資生堂時代に当時の福原義春社長から教えら れました。
しかし、いまだにそうした意識を持つ 経営者は少数派だと思います。
物流技術管理士 会が少しでもその啓蒙活動に貢献できたら嬉し い。
そのため皆、ボランティアでOB会に参加し ているんです」 「資格取得者が日本の物流を支えている」 物流技術管理士会 重田靖男 会長 キャリアを広げたかったことが転職の理由だという。
SCMのコンサルティングは現在、ERPの導入か ら業務プロセス改革に重点をシフトしている。
そこで は物流・販売・生産をセットにして全体を最適化す る能力が求められる。
「3PLの企画部門やコンサル ティング部門の出身者は、これまでやってきた業務 経験が大いに活かせる。
当社としては欲しい人材だ」 と四十谷プリンシパルはいう。
同社に新卒で入社した場合のキャリアパスは、まず 「コンサルタント(ビジネスアナリスト)」という肩書き でIT導入プロジェクトを数年経験した後、「シニア コンサルタント」に昇進する。
さらに「マネージャー」 に昇格すると現場のチームリーダーを任される。
そ こで成果を上げたものが「シニアマネージャー」、「ダ イレクター」そして「プリンシパル」と出世の階段を 上っていく。
組織の中核となるマネージャーの年齢層は三〇代 前半。
この頃に社内のキャリアカウンセラーと相談し て「コンピテンシー」と「インダストリー」のどちら かを自分のキャリアに選ぶ。
「コンピテンシー」とは 特定機能のスペシャリスト。
SCMもその一つだ。
一 方の「インダストリー」は産業別の専門家。
いずれの 道を進んでもキャリアアップとともに、付き合う相手 と仕事の内容は、トップマネジメントに近づいていく。
四十谷プリンシパルは「それがこの仕事の醍醐味だ。
もっとも、物流とSCMが今も自分のコンピテンシー であることは変わらない。
物流は決して傍流のキャ リアではない。
充分に普遍性を持っている」と物流 マンにエールを送っている。
※次頁から物流関連資格を一覧する。
各資格名に付 けた★印は、資格取得の難易度を弊誌が判断した もの。
一つの目安と考えてほしい。
