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佐高 信
経済評論家
JANUARY 2009 74
六二億円といわれる麻生太郎の豪邸を見に
行こうと渋谷の路上を歩いていて、突然三人
が逮捕された事件について、『朝日』を含む新
聞やテレビは警察発表をそのまま流した。 渋
谷警察署とも話し合い、ただ歩いていたら、
警察がいきなり襲いかかったのに、「無届デモ」
をし、「再三の警告」を無視して、「警官に暴
力をふるった」と報じたのである。
それに参加した雨宮処凛が『創』の
二〇〇九年一月号に書いているように、「しか
し、その嘘はすぐに暴かれた。 同行した支援
者が撮影していた逮捕の動画が、YouTube
にアップされたから」だ。
この映像はネットで大きな話題となり、
一〇日で一四万回も視聴されたという。 だか
ら『朝日』をはじめとしたマスコミの「嘘」
も明々白々のものとなった。 警察発表をその
まま垂れ流すことに記者たちは何の疑問も持
たなかったのか。
事件が起こったのが一〇月二六日で、十一
月十三日に、国民新党代表代行の亀井静香、
新党大地代表の鈴木宗男、そして雨宮を世話
人として国会で抗議集会が開かれた。
十一月二一日号の『週刊金曜日』によれば、
この会場で逮捕現場を複数の角度から撮影し
た映像を検証し、一方的な逮捕だったことを
改めて確認したという。
まず鈴木はこう批判した。
「参加者は、事前に警察官と打ち合わせまで
している。 そして、タコ坊主(逮捕を指揮し
た公安刑事)が指示し、帽子の男(別の公安
刑事)の方がぶつかってきている。 警察が自
分たちでつくりあげた逮捕ではないのか」
つまり、最初から逮捕する気でいたという
ことである。 麻生内閣の官房副長官に警察庁
長官だった漆間巌が就いた。 これは極めて稀
なことで、麻生が極端なタカ派、管理派であ
ることを示している。
亀井も警察官僚だったが、その亀井が今度
の事件に危機感を露わにする。
「新聞でこの件を知ったとき、デモ参加者が
暴れたのではないかと思った。 しかし現場を
映したビデオを見れば違う。 警察の行動は行
き過ぎているのではないか。
私は取り締まる側にいた人間で、成田空港
の現場にも行ったことがある。 国民が言論活
動で意思を表すのは当然で、警察は違法行為
があった場合のみ取り締まる。 感情に走って
はならないし、恣意的な逮捕は許されない。
放置していたら、暴動になりかねないのな
らまだしも、参加人数からいってもそのよう
なことはありあえない。 警視総監に電話して、
『しっかり調べろ』と伝えた」
警察は間違うことがあるからということを
一つの理由として死刑に反対し、死刑廃止議
員連盟の会長を務める亀井ならではの発言だ
ろう。
この場で雨宮は、ボンボンの麻生がまった
く実感できない貧困の現実をこう指摘した。
「最新のデータでは、三七・八%が非正規雇
用で、非正規の八〇%が月収二〇万円以下。
住宅にも事欠き、(住民票の関係で)事実上、
投票権すらない状態に置かれている」
雨宮を真ん中に、鈴木と亀井が両脇を固め
ている写真も撮って、この集会の模様を『週
刊金曜日』で報告しているジャーナリストの林
克明は、鈴木の次の言葉が印象に残ったという。
「小泉政権成立以後、反対する人間を抑圧
する傾向が強まっている。 今度のように、貧
しい若者が自分たちで行動し始めたことは、
むしろ歓迎すべきことだ」
この若者たちに比して、「自分たちで行動
し始め」ることなく、警察発表を鵜呑みにして、
間違った記事を書いた記者たちの何という貧
しさよ。 彼らは麻生首相の誤読を嗤っている
が、明らかな「誤報」をしているのは誰なのか。
この?偽装記者?たちに、麻生を嗤う資格が
あるとは私には思えない。 少なくとも訂正だ
けは早く出すべきだろう。
麻生邸見学の若者三人をでっちあげ逮捕
警察発表を垂れ流すだけの?偽装記者?たち
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