2009年1月号
物流IT解剖
物流IT解剖
トランコム
JANUARY 2009 60
本体にIT部門を残さず すべてを子会社に移管
求貨求車事業をメーンとするトラ
ンコムの社内には情報システム部門
がない。
二〇〇〇年に一〇〇%出資 の情報子会社トラフィックアイを新 設したとき、営業部門にあった担当 部署をすべて新会社に移管。
本体に は窓口部門すら残さなかった。
以降、 社内の各事業部門は、それぞれにト ラフィックアイと連携をとりながらI T活用に取り組んでいる。
トランコムは過去一〇年にわたっ て、ほぼ一貫して売上高を伸ばして きた。
〇二年には東証二部への上場 も果たしている。
〇八年三月期の連 結売上高六二一億円は、一〇年前の 約六倍になった。
今期も一〇%近い 増収となる六八〇億円の売り上げを 見込み、中期経営計画では二〇一一 年三月期に売上高を九〇〇億円まで 伸ばす目標を掲げている。
この一〇年で主力事業は様変わり してきた。
一九九〇年代半ばは?共 同配送のトランコム?を標榜し、複 数の家電メーカーの製品を混載して 量販店に配送するサービスを中核と していた。
ところが家電量販チェー ンが自ら一括物流センターの運営に 乗り出したことなどから、共配事業 は限界に突き当たってしまった。
そこで九〇年代末に、事業の軸足 を新たな分野にシフトした。
物流セ ンターの運営を担う「ロジスティクス マネジメント事業」と、求貨求車ビジ ネスの「物流情報サービス事業」を 二本柱に設定。
物流センター事業で は、〇三年に豊田自動織機と合弁会 社を発足させるなど現場力を重視し た活動を展開している。
そして求貨 求車ビジネスは毎年およそ五〇億円 ずつ事業規模を拡大しつづけ、近年 の成長の原動力となっている。
二〇〇〇年にトラフィックアイを 新設した狙いは、既存システムの運 用と保守を中心としていたそれまで のIT部門の姿勢を改めることにあ った。
分社化して外部販売に乗りだ し、この活動を通じてITスキルの 向上を図る。
さらに将来的にはIT を切り口に物流の新規案件を受託で きるようにしていきたいという狙い もあった。
現在、トラフィックアイの社長を務 める和田拓也氏は、トランコム本体 の執行役員を兼務しており、実質的 にはグループのCIO(最高情報責 任者)の立場にある。
IT畑という より営業の専門家であり、過去のシ ステム開発においても全体をマネジメ ントする観点から携わってきた。
和田氏は現在の自身の役目を、「私 の立場は三つある。
一つはトランコ ムの東日本グループの営業チームの マネージャー。
二つ目はトラフィック アイの社長。
そして三つ目は、事業 企画の営業企画担当だ。
実はこの三 つ目が主務で、ここではグループの 各事業体にまたがる営業案件に横串 をさし、主導的にさばいていく役割 を担っている」と説明する。
IT事業の外販を凍結し 親会社の事業支援に特化 トランコムは現在、全国に八四カ所 の営業拠点を構えているが、地区や 事業部門に投資判断任せIT活用力鍛錬 求貨求車システムの自動化は志向せず トランコム 電話と人手による求車求貨事業が急成長。
インターネットを 使ってマッチング作業の自動化を目指したライバルのITベンチャ ーを退けた。
今もIT活用の主眼を人の活動を支援することに置 く。
システム部門は2000年に完全分社化し、各事業部門に投資 判断を任せることでIT活用スキルの底上げを図っている。
管理体制 IT子会社 第22 回 ◆本社組織 なし ◆情報子会社 トラフィックアイ 2000年4月にIT部門(「営業システム グループ」にあった情報システム部門)を 分社化して発足、直近の売上高は約5 億円、外販比率は2割弱、資本金5000 万円(トランコム100%)、従業員15人 《概要》 トランコム本体のIT部門の役割を、IT 子会社トラフィックアイ が果たしている。
子会社の社長を本体の営業担当執行役員が兼務する ことで、グループ全体の連携を確保している。
業務系のシステムは原則として内製を志向。
WMS は、大規模案件に は外部パッケージ、中小規模案件には自社パッケージと使い分けをして いる。
管理系でも積極的に外部パッケージを活用。
ITの年間ランニングコストは連結売上高の0.6%程度。
ただ現行の 中期経営計画では、3 年間で15 億円とこれを大きく上回る投資を予定 している。
管理系システムの強化を中心に資金を投じていく方針。
61 JANUARY 2009 たほうが有利であれば、事業部門が 外部のITベンダーと直接契約を交 わすといった判断を下す。
和田氏としては、トランコムにと って差別化に直結するシステムにつ いては、基本的に内製していこうと する意識が強い。
しかしトラフィッ クアイの直近の売上高は約五億円で、 社員一五人のうち開発担当者は五人 だけ。
すべてを自社で手掛ける余裕 はない。
このためシステムの設計ま では関与するが、開発実務は外部の パートナーに委ねることも多い。
「人事給与や会計などの基幹系の仕 組みについては、どこのシステムでも 機能的にはあまり変わらない。
しか も自分たちでゼロから開発すると相 当なコストが発生するため、パッケー ジを含めて外部を活用している。
一 方、WMS(倉庫管理システム)や TMS(輸送管理システム)のよう な現場系のシステムについては、ど んどん変わっていく事業環境に対応 していくため社内にノウハウを抱え ておく必要がある」(和田氏)という 判断だ。
現在のトラフィックアイの売上高 五億円の二割弱はグループ企業以外 を対象としている。
物流現場に精通 したITベンダーとして、その実力 は外部からも評価されてきた。
〇一 年には大手電機メーカーからTMS の開発も受託した。
こうした大型の 案件を抱えていたときには、外販比 率がほぼ五割に達していたという。
しかし、最近二年間はほぼ完全に 外販活動を停止している。
既存パッ ケージの販売などは継続しているが、 トランコムグループの仕事をこなすこ とに手一杯で外販事業に手が回らな い状態が続いている。
「親会社だけを見ていたら、トラフ ィックアイが手掛けるのは保守業務 ばかりになってしまう。
それはトラ ンコムも望んでいない」と和田氏は 言うが、今のところグループの成長 力が衰える気配はない。
内部統制へ の対応といった課題も山積している ことから、トラフィックアイが再び外 販を本格化するのはもう少し先の話 になりそうだ。
成長つづく求貨求車事業 ITの役割は人の支援 主力事業の一つで、いまやトラン コムの顔ともいうべき「物流情報サ ービス事業」には、IT活用の面か らも注力してきた。
貨物を安く運び たい荷主と、トラックの空いた荷台 を埋めたい運送事業者のニーズをマ ッチングさせるこのビジネスでは、斡 旋した運賃と実運送費の差額が収入 となる。
この事業にトランコムが着手した のは八二年に遡る。
その原点となる ?帰り荷の斡旋業?は、陸運業界では 一般に?水屋?と呼ばれてきた。
そ の多くは個人事業主が電話と人脈を 駆使して展開するニッチな商売だっ た。
会社の看板はおろか事業免許さ え持たない違法業者も多く、陸運業 界では輸送秩序を乱す輩として煙た がられる存在だった。
しかし、トランコムの武部芳宣会 長は、「市場原理に則ったサービス」 として約二五年前にこのビジネスに 着目した。
中部地区で水屋業を営ん でいた一人親方を招き、「一〇年後 に売上高一〇〇億円」という野心的 な目標を掲げて事業化に乗り出した。
当初は思ったほど売り上げは伸びな かったが、九〇年代に入る頃から成 長軌道に乗り、いまでは三五〇億円 を売り上げる同社の中核事業に育っ ている。
途中、ITバブルの時代には、こ のビジネスが世間で一躍脚光を浴び たこともあった。
IPO狙いのベン チャー企業を中心に、インターネット を活用した求貨求車システムが市場 に乱立した。
しかし、ほとんどのサ イトはすぐに運営に行きづまり、現 在ではほんの一握りのプレイヤーしか 事業部門ごとに分権的な管理体制を 敷いている。
ロジスティクスマネジメ ント事業は東日本、中部・東海、西 日本と全国を三分割して営業活動を 管理。
そして求貨求車ビジネスはこ れとは別に各地に拠点を構えている。
他にも複数の機能別子会社を抱えて、 それぞれに独自に営業活動を展開し ている。
各所で発生するシステム案件は、そ れぞれの事業部門や子会社が自分で 投資判断を下す。
経営陣としては、こ れによって事業部門がITを使いこ なすスキルを身に付けることを期待 している。
とはいえ、担当者の中に はまったくの素人も少なくない。
こ うした人たちとIT部門を橋渡しす ることも、和田氏らが本社内で担っ ている役割の一つだ。
トラフィックアイは現在、グループ のIT活用の元請け企業と位置付け られている。
事業部門がシステムを 構築するときには、必ず一度は同社 に相談する。
そのうえで社外に出し IT子会社の社長を兼ねる トランコムの和田拓也執 行役員 物流情報サービス JANUARY 2009 62 生き残っていない。
破綻したサイトの大半は、マッチン グの難しさを読み違えていた。
自動 化できると考えていた。
しかし実際 には、求貨求車事業には人間の判断 が常に要求される。
人手を介さずに 処理できるような案件がごく一部で しかなかったことと、既存の取引関 係の枠組みを超えたプレイヤーが参加 することによる協業の難しさが、多 くのITベンチャーにとって超えがた い壁となった。
経験的にそのことを熟知していた トランコムは、求貨求車システムの開 発競争には最後まで加わらなかった。
現在も同社は「アジャスター」と呼 ぶ担当者が電話で荷物と車両をマッ チングする方法を採っている。
ただし、これはITを活用してこ なかったという意味ではない。
水屋 業の近代化を目指してきたトランコ ムにとって、マッチング作業の効率 化は長年の懸案だった。
そのために はITの活用が必須であることは自 明だった。
トラフィックアイを設立し た狙いの一つとしても「物流情報サ ービス」のためのシステム構築という 目的があった。
実際、トランコムは〇三年に約一 億円を投じて「COMPASS」と いうシステムを構築している。
これ は求貨求車システムそのものではな く、?アジャスター支援システム?と 呼ぶほうが相応しい。
自動化を志向 するのではなく、マッチング担当者 の支援に徹したデータベースを中心と するシステムだ。
これによってアジャ スターは、一つの画面で大量の求貨 情報と求車情報を同時に閲覧できる ようになった。
「物流情報サービスでは情報の数の 多さが絶対的な武器になる。
従来は それぞれの担当者の頭の中にあった 情報を、データベース化して共有でき るようにした。
そうすることで担当 者の生産性を高め、全体のマッチン グ率を向上させるために情報を有効 活用していこうというのが﹃COM PASS﹄の基本的なコンセプトだ」 と和田氏は言う。
〇七年には、再び約一億円を投じ て「COMPASS」をリニューア ルした。
システム基盤をマイクロソフ ト社の「.NET」(ドットネット)に置 き換え、保守や運用の柔軟性を高め た。
その一方で、あらかじめ現場の 担当者から百数十項目に要望を吸い 上げておき、これに基づいて現場の 担当者がより使いやすい仕組みにな るように進化させた。
対象案件の規模によって 既製品と自社版を使い分け WMSについても、システム開発 の基本的な姿勢は同じだ。
「当社の現 場系のシステムにとって大切なキーワ ードは?操作性?と?シンプル?の 二つに尽きる。
システムを扱い慣れ ていない現場の人たちであっても使 い勝手がいいことを何よりも重視し ている」と和田氏は強調する。
トランコムは「e-Storage」と 「Storage-one」という独自のWMS パッケージを持っている。
そしてこ の分野では、明確に自社システムと 外部のパッケージを使い分けてきた。
新たにWMSの導入が必要な大規模 案件については、基本的に外部のパ ッケージを活用する。
そして中規模 案件には自社開発の「e-Storage」を、 そこまでの複雑な機能を必要としな い案件には「Storage-one」を適用し ている。
過去には外部パッケージの利用で 苦い経験もした。
二〇〇〇年に二カ 所のセンターに導入した外資系ベン ダーのWMSは、仕組みとしては高 く評価できるものだった。
だが結局、 二カ所とも利用を止めてしまった。
一 カ所は荷主の都合でニーズそのもの がなくなったためだが、もう一カ所 は国内のWMSベンダーが提供する パッケージへと置き換えた。
「このWMSは機能的には非常に よく網羅されていた。
しかし日本で 使うには不要な機能が多すぎて、必 要なことをやるための操作に難点が あった。
ちょっとしたカスタマイズに も非常に手間がかかることも大きか った。
技術的にはよくできていても、 実用面ではユーザーフレンドリーとは いえなかった」(和田氏) パッケージを提供する外資系企業 の経営母体が、相次ぐ身売りで頻繁 に変わったことにも難渋した。
過去 に実施した仕様変更がきちんと引き WMS マッチング担当者を支援する「物流情報サービス」のシステム アジャスター(営業スタッフ)の 配車支援システム さらなる生産性の向上を目 指し、2008 年1月に全面 リニューアルを実施 コンパスとは? ■独自開発のシステム ■各種配車支援機能 ■情報の共有と生産性向上 ■マッチング業務のシステム化 貨物情報入力画面貨物空車一覧画面 品質管理画面その他画面 63 JANUARY 2009 ることを決めた。
この経験からパッケージを評価す る際には、ベンダーの経営基盤の安定 性が重要な判断材料の一つになるこ とを学んだ。
今後、大型案件では安 定した経営母体を もつ国内の大手S Iベンダーの提供 するWMSを選択 することも視野に 入れているという。
中小規模の案 件には、トラフィ ックアイが独自開 発したWMSが適 用できる。
既に流 通関係の荷主か ら運営を任されて いるセンターなど では「e-Storage」 を導入し満足な成 果を得ている。
そ の簡易版である 「Storage-one」に ついても大手通販 のセンター事業を はじめ一〇カ所弱 のサイトで稼働中 だ。
トランコムの本 音では、どんどん 導入サイトを増やし、自社システム に実務のノウハウを蓄積していきた いところだ。
しかしユーザーの既存 システムが使えるケースで、無理に自 社システムを導入しても高コスト化し か招かない。
そこは顧客の状況しだ いで判断していく方針だ。
二〇一〇年までの三年で 開発中心に一五億を投資 他にも同社は、トラフィックアイ が開発した配送支援システムや、各 種のASPサービスなどを有してい る。
今は事実上、外販活動を凍結し ているため、システムによる優位性 を声高に主張しようとはしていない が、中堅規模の物流事業者としては 先進的なIT活用をしているという 評価を受けることが多いという。
しかし同社のIT投資の規模は、定 常的なコストとしては年間およそ四 億円。
連結売上高六二一億円(〇八 年三月期)に占める比率は〇・六% 程度に過ぎない。
数字だけを見れば 決して多くはない。
トランコム自身「必要以上に背伸 びをするつもりはないが、現状では 少なすぎる。
とくに基幹系の管理シ ステムへの投資を増やすことは絶対 に必要だ」(和田氏)と認識している。
実際、現行の中期経営計画では、二 〇一〇年までの三カ年間で保守を除 いて計一五億円程度をITに投じる 計画を立てている。
内部統制などへの対応もあって、最 近はERPの導入が検討課題に上る ようになった。
和田氏としても、「E RPの考え方は間違いなく当社にも 必要だ。
しかし現在の事業規模など を考えると、すぐにERPパッケー ジを導入すべきかどうか疑問もある。
慎重に判断していきたい」という。
WMSなど現場を支えるシステム ついては、必要なラインナップは既に 一通り揃っている。
現状で不足して いるのは、既存システムに蓄積され たデータを有効活用するための運用 上の工夫だ。
分析ツールなどを充実 させてIT活用の生産性を高めてい ければ、投資効率をさらに高めるこ とも可能とみている。
また、具体的に導入を検討しよう としているのがeラーニングの仕組み だ。
例えば物流情報サービス事業の 現場は、全国二〇数カ所に分散して いる。
?現場の知恵?を共有できれば もう一段の効率化を期待できるはず なのだが、集合研修などで実際に人 が集まるのには限界がある。
これを ITによって打破できないかと和田 氏は模索している。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 継がれず、そのために新たな要望に 対する反応が極端に遅くなる。
そう した理由から、導入から五年が経過 したのを機に、国内のWMSベンダ ーが提供するパッケージへと置き換え IT投資 情報システムのラインナップ 物流情報サービス 求貨求車システム(COMPASS)を用いて 全国の協力輸送会社とのネットワークを確立 高品質かつローコストな幹線輸送を提供 物流情報サービス 顧客の規模や設備に合わせた物流センター業務を提供 倉庫情報サービス 最適な物流センターや倉庫の 物件情報を提供 流通加工 販促物に関する業務や梱包 など多彩な加工を実施 人材派遣 保管貨物と倉庫の空きスペー物流専門のスタッフを派遣 スを的確にマッチング コンパスは、情報の共有と生産性向上を実現 した自社開発の配車支援システム システム導入による情報管理能力と、商品 特性や物理的制約などの現場の運用の両 面の要素を考慮した倉庫管理システム 一般輸送 トランコム配送ネットワークをフル活用して、顧客の ニーズにあった配送形態を提供 生協関連業務 生協個配業務に特化した子会社を設立 配車システム 調達物流生産工場生産物流物流センター販売物流得意先 全国輸送(幹線輸送) 物流センター構築運営 エリア配送 (支線配送) 情報管理情報管理 情報管理 管理セクション 豊富な実績を基にオペレーション・マネジメントの改善を実現 倉庫管理システム
二〇〇〇年に一〇〇%出資 の情報子会社トラフィックアイを新 設したとき、営業部門にあった担当 部署をすべて新会社に移管。
本体に は窓口部門すら残さなかった。
以降、 社内の各事業部門は、それぞれにト ラフィックアイと連携をとりながらI T活用に取り組んでいる。
トランコムは過去一〇年にわたっ て、ほぼ一貫して売上高を伸ばして きた。
〇二年には東証二部への上場 も果たしている。
〇八年三月期の連 結売上高六二一億円は、一〇年前の 約六倍になった。
今期も一〇%近い 増収となる六八〇億円の売り上げを 見込み、中期経営計画では二〇一一 年三月期に売上高を九〇〇億円まで 伸ばす目標を掲げている。
この一〇年で主力事業は様変わり してきた。
一九九〇年代半ばは?共 同配送のトランコム?を標榜し、複 数の家電メーカーの製品を混載して 量販店に配送するサービスを中核と していた。
ところが家電量販チェー ンが自ら一括物流センターの運営に 乗り出したことなどから、共配事業 は限界に突き当たってしまった。
そこで九〇年代末に、事業の軸足 を新たな分野にシフトした。
物流セ ンターの運営を担う「ロジスティクス マネジメント事業」と、求貨求車ビジ ネスの「物流情報サービス事業」を 二本柱に設定。
物流センター事業で は、〇三年に豊田自動織機と合弁会 社を発足させるなど現場力を重視し た活動を展開している。
そして求貨 求車ビジネスは毎年およそ五〇億円 ずつ事業規模を拡大しつづけ、近年 の成長の原動力となっている。
二〇〇〇年にトラフィックアイを 新設した狙いは、既存システムの運 用と保守を中心としていたそれまで のIT部門の姿勢を改めることにあ った。
分社化して外部販売に乗りだ し、この活動を通じてITスキルの 向上を図る。
さらに将来的にはIT を切り口に物流の新規案件を受託で きるようにしていきたいという狙い もあった。
現在、トラフィックアイの社長を務 める和田拓也氏は、トランコム本体 の執行役員を兼務しており、実質的 にはグループのCIO(最高情報責 任者)の立場にある。
IT畑という より営業の専門家であり、過去のシ ステム開発においても全体をマネジメ ントする観点から携わってきた。
和田氏は現在の自身の役目を、「私 の立場は三つある。
一つはトランコ ムの東日本グループの営業チームの マネージャー。
二つ目はトラフィック アイの社長。
そして三つ目は、事業 企画の営業企画担当だ。
実はこの三 つ目が主務で、ここではグループの 各事業体にまたがる営業案件に横串 をさし、主導的にさばいていく役割 を担っている」と説明する。
IT事業の外販を凍結し 親会社の事業支援に特化 トランコムは現在、全国に八四カ所 の営業拠点を構えているが、地区や 事業部門に投資判断任せIT活用力鍛錬 求貨求車システムの自動化は志向せず トランコム 電話と人手による求車求貨事業が急成長。
インターネットを 使ってマッチング作業の自動化を目指したライバルのITベンチャ ーを退けた。
今もIT活用の主眼を人の活動を支援することに置 く。
システム部門は2000年に完全分社化し、各事業部門に投資 判断を任せることでIT活用スキルの底上げを図っている。
管理体制 IT子会社 第22 回 ◆本社組織 なし ◆情報子会社 トラフィックアイ 2000年4月にIT部門(「営業システム グループ」にあった情報システム部門)を 分社化して発足、直近の売上高は約5 億円、外販比率は2割弱、資本金5000 万円(トランコム100%)、従業員15人 《概要》 トランコム本体のIT部門の役割を、IT 子会社トラフィックアイ が果たしている。
子会社の社長を本体の営業担当執行役員が兼務する ことで、グループ全体の連携を確保している。
業務系のシステムは原則として内製を志向。
WMS は、大規模案件に は外部パッケージ、中小規模案件には自社パッケージと使い分けをして いる。
管理系でも積極的に外部パッケージを活用。
ITの年間ランニングコストは連結売上高の0.6%程度。
ただ現行の 中期経営計画では、3 年間で15 億円とこれを大きく上回る投資を予定 している。
管理系システムの強化を中心に資金を投じていく方針。
61 JANUARY 2009 たほうが有利であれば、事業部門が 外部のITベンダーと直接契約を交 わすといった判断を下す。
和田氏としては、トランコムにと って差別化に直結するシステムにつ いては、基本的に内製していこうと する意識が強い。
しかしトラフィッ クアイの直近の売上高は約五億円で、 社員一五人のうち開発担当者は五人 だけ。
すべてを自社で手掛ける余裕 はない。
このためシステムの設計ま では関与するが、開発実務は外部の パートナーに委ねることも多い。
「人事給与や会計などの基幹系の仕 組みについては、どこのシステムでも 機能的にはあまり変わらない。
しか も自分たちでゼロから開発すると相 当なコストが発生するため、パッケー ジを含めて外部を活用している。
一 方、WMS(倉庫管理システム)や TMS(輸送管理システム)のよう な現場系のシステムについては、ど んどん変わっていく事業環境に対応 していくため社内にノウハウを抱え ておく必要がある」(和田氏)という 判断だ。
現在のトラフィックアイの売上高 五億円の二割弱はグループ企業以外 を対象としている。
物流現場に精通 したITベンダーとして、その実力 は外部からも評価されてきた。
〇一 年には大手電機メーカーからTMS の開発も受託した。
こうした大型の 案件を抱えていたときには、外販比 率がほぼ五割に達していたという。
しかし、最近二年間はほぼ完全に 外販活動を停止している。
既存パッ ケージの販売などは継続しているが、 トランコムグループの仕事をこなすこ とに手一杯で外販事業に手が回らな い状態が続いている。
「親会社だけを見ていたら、トラフ ィックアイが手掛けるのは保守業務 ばかりになってしまう。
それはトラ ンコムも望んでいない」と和田氏は 言うが、今のところグループの成長 力が衰える気配はない。
内部統制へ の対応といった課題も山積している ことから、トラフィックアイが再び外 販を本格化するのはもう少し先の話 になりそうだ。
成長つづく求貨求車事業 ITの役割は人の支援 主力事業の一つで、いまやトラン コムの顔ともいうべき「物流情報サ ービス事業」には、IT活用の面か らも注力してきた。
貨物を安く運び たい荷主と、トラックの空いた荷台 を埋めたい運送事業者のニーズをマ ッチングさせるこのビジネスでは、斡 旋した運賃と実運送費の差額が収入 となる。
この事業にトランコムが着手した のは八二年に遡る。
その原点となる ?帰り荷の斡旋業?は、陸運業界では 一般に?水屋?と呼ばれてきた。
そ の多くは個人事業主が電話と人脈を 駆使して展開するニッチな商売だっ た。
会社の看板はおろか事業免許さ え持たない違法業者も多く、陸運業 界では輸送秩序を乱す輩として煙た がられる存在だった。
しかし、トランコムの武部芳宣会 長は、「市場原理に則ったサービス」 として約二五年前にこのビジネスに 着目した。
中部地区で水屋業を営ん でいた一人親方を招き、「一〇年後 に売上高一〇〇億円」という野心的 な目標を掲げて事業化に乗り出した。
当初は思ったほど売り上げは伸びな かったが、九〇年代に入る頃から成 長軌道に乗り、いまでは三五〇億円 を売り上げる同社の中核事業に育っ ている。
途中、ITバブルの時代には、こ のビジネスが世間で一躍脚光を浴び たこともあった。
IPO狙いのベン チャー企業を中心に、インターネット を活用した求貨求車システムが市場 に乱立した。
しかし、ほとんどのサ イトはすぐに運営に行きづまり、現 在ではほんの一握りのプレイヤーしか 事業部門ごとに分権的な管理体制を 敷いている。
ロジスティクスマネジメ ント事業は東日本、中部・東海、西 日本と全国を三分割して営業活動を 管理。
そして求貨求車ビジネスはこ れとは別に各地に拠点を構えている。
他にも複数の機能別子会社を抱えて、 それぞれに独自に営業活動を展開し ている。
各所で発生するシステム案件は、そ れぞれの事業部門や子会社が自分で 投資判断を下す。
経営陣としては、こ れによって事業部門がITを使いこ なすスキルを身に付けることを期待 している。
とはいえ、担当者の中に はまったくの素人も少なくない。
こ うした人たちとIT部門を橋渡しす ることも、和田氏らが本社内で担っ ている役割の一つだ。
トラフィックアイは現在、グループ のIT活用の元請け企業と位置付け られている。
事業部門がシステムを 構築するときには、必ず一度は同社 に相談する。
そのうえで社外に出し IT子会社の社長を兼ねる トランコムの和田拓也執 行役員 物流情報サービス JANUARY 2009 62 生き残っていない。
破綻したサイトの大半は、マッチン グの難しさを読み違えていた。
自動 化できると考えていた。
しかし実際 には、求貨求車事業には人間の判断 が常に要求される。
人手を介さずに 処理できるような案件がごく一部で しかなかったことと、既存の取引関 係の枠組みを超えたプレイヤーが参加 することによる協業の難しさが、多 くのITベンチャーにとって超えがた い壁となった。
経験的にそのことを熟知していた トランコムは、求貨求車システムの開 発競争には最後まで加わらなかった。
現在も同社は「アジャスター」と呼 ぶ担当者が電話で荷物と車両をマッ チングする方法を採っている。
ただし、これはITを活用してこ なかったという意味ではない。
水屋 業の近代化を目指してきたトランコ ムにとって、マッチング作業の効率 化は長年の懸案だった。
そのために はITの活用が必須であることは自 明だった。
トラフィックアイを設立し た狙いの一つとしても「物流情報サ ービス」のためのシステム構築という 目的があった。
実際、トランコムは〇三年に約一 億円を投じて「COMPASS」と いうシステムを構築している。
これ は求貨求車システムそのものではな く、?アジャスター支援システム?と 呼ぶほうが相応しい。
自動化を志向 するのではなく、マッチング担当者 の支援に徹したデータベースを中心と するシステムだ。
これによってアジャ スターは、一つの画面で大量の求貨 情報と求車情報を同時に閲覧できる ようになった。
「物流情報サービスでは情報の数の 多さが絶対的な武器になる。
従来は それぞれの担当者の頭の中にあった 情報を、データベース化して共有でき るようにした。
そうすることで担当 者の生産性を高め、全体のマッチン グ率を向上させるために情報を有効 活用していこうというのが﹃COM PASS﹄の基本的なコンセプトだ」 と和田氏は言う。
〇七年には、再び約一億円を投じ て「COMPASS」をリニューア ルした。
システム基盤をマイクロソフ ト社の「.NET」(ドットネット)に置 き換え、保守や運用の柔軟性を高め た。
その一方で、あらかじめ現場の 担当者から百数十項目に要望を吸い 上げておき、これに基づいて現場の 担当者がより使いやすい仕組みにな るように進化させた。
対象案件の規模によって 既製品と自社版を使い分け WMSについても、システム開発 の基本的な姿勢は同じだ。
「当社の現 場系のシステムにとって大切なキーワ ードは?操作性?と?シンプル?の 二つに尽きる。
システムを扱い慣れ ていない現場の人たちであっても使 い勝手がいいことを何よりも重視し ている」と和田氏は強調する。
トランコムは「e-Storage」と 「Storage-one」という独自のWMS パッケージを持っている。
そしてこ の分野では、明確に自社システムと 外部のパッケージを使い分けてきた。
新たにWMSの導入が必要な大規模 案件については、基本的に外部のパ ッケージを活用する。
そして中規模 案件には自社開発の「e-Storage」を、 そこまでの複雑な機能を必要としな い案件には「Storage-one」を適用し ている。
過去には外部パッケージの利用で 苦い経験もした。
二〇〇〇年に二カ 所のセンターに導入した外資系ベン ダーのWMSは、仕組みとしては高 く評価できるものだった。
だが結局、 二カ所とも利用を止めてしまった。
一 カ所は荷主の都合でニーズそのもの がなくなったためだが、もう一カ所 は国内のWMSベンダーが提供する パッケージへと置き換えた。
「このWMSは機能的には非常に よく網羅されていた。
しかし日本で 使うには不要な機能が多すぎて、必 要なことをやるための操作に難点が あった。
ちょっとしたカスタマイズに も非常に手間がかかることも大きか った。
技術的にはよくできていても、 実用面ではユーザーフレンドリーとは いえなかった」(和田氏) パッケージを提供する外資系企業 の経営母体が、相次ぐ身売りで頻繁 に変わったことにも難渋した。
過去 に実施した仕様変更がきちんと引き WMS マッチング担当者を支援する「物流情報サービス」のシステム アジャスター(営業スタッフ)の 配車支援システム さらなる生産性の向上を目 指し、2008 年1月に全面 リニューアルを実施 コンパスとは? ■独自開発のシステム ■各種配車支援機能 ■情報の共有と生産性向上 ■マッチング業務のシステム化 貨物情報入力画面貨物空車一覧画面 品質管理画面その他画面 63 JANUARY 2009 ることを決めた。
この経験からパッケージを評価す る際には、ベンダーの経営基盤の安定 性が重要な判断材料の一つになるこ とを学んだ。
今後、大型案件では安 定した経営母体を もつ国内の大手S Iベンダーの提供 するWMSを選択 することも視野に 入れているという。
中小規模の案 件には、トラフィ ックアイが独自開 発したWMSが適 用できる。
既に流 通関係の荷主か ら運営を任されて いるセンターなど では「e-Storage」 を導入し満足な成 果を得ている。
そ の簡易版である 「Storage-one」に ついても大手通販 のセンター事業を はじめ一〇カ所弱 のサイトで稼働中 だ。
トランコムの本 音では、どんどん 導入サイトを増やし、自社システム に実務のノウハウを蓄積していきた いところだ。
しかしユーザーの既存 システムが使えるケースで、無理に自 社システムを導入しても高コスト化し か招かない。
そこは顧客の状況しだ いで判断していく方針だ。
二〇一〇年までの三年で 開発中心に一五億を投資 他にも同社は、トラフィックアイ が開発した配送支援システムや、各 種のASPサービスなどを有してい る。
今は事実上、外販活動を凍結し ているため、システムによる優位性 を声高に主張しようとはしていない が、中堅規模の物流事業者としては 先進的なIT活用をしているという 評価を受けることが多いという。
しかし同社のIT投資の規模は、定 常的なコストとしては年間およそ四 億円。
連結売上高六二一億円(〇八 年三月期)に占める比率は〇・六% 程度に過ぎない。
数字だけを見れば 決して多くはない。
トランコム自身「必要以上に背伸 びをするつもりはないが、現状では 少なすぎる。
とくに基幹系の管理シ ステムへの投資を増やすことは絶対 に必要だ」(和田氏)と認識している。
実際、現行の中期経営計画では、二 〇一〇年までの三カ年間で保守を除 いて計一五億円程度をITに投じる 計画を立てている。
内部統制などへの対応もあって、最 近はERPの導入が検討課題に上る ようになった。
和田氏としても、「E RPの考え方は間違いなく当社にも 必要だ。
しかし現在の事業規模など を考えると、すぐにERPパッケー ジを導入すべきかどうか疑問もある。
慎重に判断していきたい」という。
WMSなど現場を支えるシステム ついては、必要なラインナップは既に 一通り揃っている。
現状で不足して いるのは、既存システムに蓄積され たデータを有効活用するための運用 上の工夫だ。
分析ツールなどを充実 させてIT活用の生産性を高めてい ければ、投資効率をさらに高めるこ とも可能とみている。
また、具体的に導入を検討しよう としているのがeラーニングの仕組み だ。
例えば物流情報サービス事業の 現場は、全国二〇数カ所に分散して いる。
?現場の知恵?を共有できれば もう一段の効率化を期待できるはず なのだが、集合研修などで実際に人 が集まるのには限界がある。
これを ITによって打破できないかと和田 氏は模索している。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 継がれず、そのために新たな要望に 対する反応が極端に遅くなる。
そう した理由から、導入から五年が経過 したのを機に、国内のWMSベンダ ーが提供するパッケージへと置き換え IT投資 情報システムのラインナップ 物流情報サービス 求貨求車システム(COMPASS)を用いて 全国の協力輸送会社とのネットワークを確立 高品質かつローコストな幹線輸送を提供 物流情報サービス 顧客の規模や設備に合わせた物流センター業務を提供 倉庫情報サービス 最適な物流センターや倉庫の 物件情報を提供 流通加工 販促物に関する業務や梱包 など多彩な加工を実施 人材派遣 保管貨物と倉庫の空きスペー物流専門のスタッフを派遣 スを的確にマッチング コンパスは、情報の共有と生産性向上を実現 した自社開発の配車支援システム システム導入による情報管理能力と、商品 特性や物理的制約などの現場の運用の両 面の要素を考慮した倉庫管理システム 一般輸送 トランコム配送ネットワークをフル活用して、顧客の ニーズにあった配送形態を提供 生協関連業務 生協個配業務に特化した子会社を設立 配車システム 調達物流生産工場生産物流物流センター販売物流得意先 全国輸送(幹線輸送) 物流センター構築運営 エリア配送 (支線配送) 情報管理情報管理 情報管理 管理セクション 豊富な実績を基にオペレーション・マネジメントの改善を実現 倉庫管理システム
