2009年1月号
特集
特集
物流機器を突破せよ セキュリティ規制が企業を選別
「
24
時間ルール」で四八時間のロス
二〇〇二年以降、米国向け海上コンテナ貨物の
リードタイムが四八時間も伸びている。
米国は〇一年 の同時多発テロ以降、輸入貨物のセキュリティ強化を 進めている。
それが米国向けに貨物を輸出する企業 のリードタイムの延長、在庫増と物流コスト増を招い ている。
これまでに最も影響が大きかったのは海上コ ンテナ貨物の「 24 時間ルール」と呼ばれるものだ。
米 国に輸出する貨物のマニフェスト(積み荷目録)情報 を、船積みの二四時間前までに米国税関・国境警備 局(CBP)に申告するようキャリアとフォワーダー に義務付けたもの。
マニフェストの必要記載事項も新たに一四項目が 追加された。
しかも情報はできるだけ正確をきさな ければならない。
品目名では「Apparel(アパレル)」 と書けば認められていたものが、「Clothing(衣服)」 や「Shoes(靴)」など商品の詳細まで明記しなけれ ば受け入れられなくなった。
提出したデータが不十分 であれば、船積みの差し止め、荷揚げの不許可、キャ リアへの罰金などの罰則が課されることもある。
船 積みが不許可になれば、日本からの出荷は次の便を 待つことになる。
出荷が一週間遅れる。
この 24 時間ルールにより、日本では荷主からキャリ アやフォワーダーに提出する積み荷情報の締め切り、 およびコンテナの搬入締め切り(CYカット) が本 船入港の一日前から三日前(いずれも営業日)に前 倒しになった。
また、キャリアからは 24 時間ルール対 応のために、B/L一件当たり平均二五ドルのサー チャージが賦課されている。
キャリア側では積み残しを防ぐため、荷主とCB Pの間に立ってデータを整える時間と、米国との時 セキュリティ規制が企業を選別 米国発のセキュリティ規制が世界に広がっている。
セ キュリティ対策とコンプライアンス(法令順守)に優れた 企業を通関面で優遇する認証制度も定着してきた。
その 対応を誤れば、グローバル・サプライチェーンから弾き出 されることにもなり兼ねない。
(梶原幸絵) JANUARY 2009 24 2001 年 図1-1 同時多発テロ以降、セキュリティ対策が世界中で実施されている WCO 米国EU 日本 2002 年2003年2004 年2005 年2006 年2007 年2008 年2009 年2010 年以降 2001.9 米国同時 多発テロ 2001.3 簡易申告 制度導入 2004.4 積荷情報等の 事前報告要請 制度導入 2002.3 CSI 導入 2002.4 C-TPAT 導入 2002.12 24 時間 ルール導入 2012 100%コンテナ・ スキャン実施 2003.6 MI 導入 2006.10月 セーフ・ポート・アクト (港湾安全法)成立 C-TPAT、CSIに 法的根拠付与 2009.1 10+2ルール セーフ・ポート・ アクトから作成 2006.6 AEOガイドライン採択 2005.4 EC関税法改正 AEO、24時間ルール に関する規定を含む 2006.12 同法施行 規則改正 2007.8 100%コンテナ・スキャン法 (9.11 委員会勧告実施法)成立 2009.7 24 時間ルール導入 2008.1 AEO制度実施 2006.3 特定輸出申告 制度導入 2007.10 特定保税承認 制度導入 2008.4 認定通関事業 者制度導入 特定保税運送 制度導入 2007.2 積荷情報等の事前 報告義務化 2007.6 輸入混載貨物等に係る詳細情報 の事前報告要請制度導入 2005.4 ノウン・シッパー/ レギュレーティッド・ エージェント制度 本格導入 2005.6 「基準の枠組み」採択 特集 25 JANUARY 2009 TAPA (輸送資産 保護協会) ISO28000、28001など 1997年 二国間政府協定による米国税関・国境警備局(CBP)と外国港とのセキュリティ・プログラム。
米 国向けコンテナ貨物を船積みする主要な外国港にCBP 職員が派遣され、当該国税関と協力して危 険度の高いコンテナを特定する。
日本では04 年から東京港などがCSI 実施港になっている 米国向け貨物の保安対策を目的とする税関と貿易物流関係者の連携強化のための官民共同プログ ラム。
対象は輸入のみ。
米国の輸入者、船社、物流業者など米国への輸入に関わるすべての民間 業者はCBP のガイドラインに従い、自社のサプライチェーンのセキュリティ管理プログラム順守を 構築・実施し、参加が認められればローリスク企業と認定され、検査の軽減など通関上のメリット を享受できる 03 年2月に本格的に開始。
船社とNVOCC(非船舶運航業者)は米国向けコンテナ貨物の船積み 港で船積み24時間前までに貨物の数量、品名、荷送り人、荷受け人などのマニフェスト(積み荷目録) 情報をCBPに提出しなければならない。
マニフェスト情報に不備があれば、船積みの差し止め、 米国での荷揚げの不許可などとなる。
CSIを補強する位置付けにある 放射性物質の拡散を防止するため、世界の主要港に放射性物質検知施設を設置をする取り組み。
これまでに中国、台湾、韓国など約30カ国で実施合意 1年間は施行期間として罰則は課さない。
24 時間ルールを補完するため、米国の輸入者に新たに 10 項目、船会社に2項目のデータ提出を義務付ける 07年8月に100%コンテナ・スキャン法が成立。
外国港で米国向け海上コンテナ貨物すべて (100%)に対して核物質検知装置とエックス線検査装置によるスキャニング検査を行う コンプライアンスとセキュリティ基準を満たした域内のメーカー、輸出者、船社、物流関連事業者 などに対し、審査・検査率の軽減など税関手続上のベネフィットを与えた 輸出入コンテナ貨物について、船積み24 時間前にマニフェスト情報を税関当局に提出しなければ ならない 以前から輸出入者は税関への事前登録が義務化され、登録後、AからDまでランク付けされていた。
これに08 年4月からAAを加え、検査率の低減など通関手続上のベネフィットを与える 船積み24 時間前に輸出入貨物のマニフェスト情報を税関当局に提出しなければならない 税関は外国から日本への船舶などの入港前に、マニフェスト情報の報告を要請できる 国土交通省が認定した特定荷主の輸出航空貨物は、特定フォワーダーが一定の保安措置を講ずる ことにより、爆発物検査が免除され、従来よりも円滑に航空機に搭載される。
荷主から航空機搭 載までの間の航空貨物を一貫して保護する。
ICAO(国際民間航空機関)の標準に準拠している 外国から日本への船舶に対し、入港前のマニフェスト情報の報告を義務化。
海上貨物は船舶の入 港24 時間前、航空貨物は航行時間により、航空機の入港5時間前から入港するときまで 積荷情報を利用した輸入申告などを大幅に拡充することを念頭に、詳細な貨物情報の事前提出を 要請できる コンプライアンスと貨物のセキュリティ管理体制が整備された事業者に審査・検査率の軽減、税 関手続の簡素化などのベネフィットを与える。
輸入者の簡易申告制度、輸出者の特定輸出申告制度、 倉庫業者の特定保税承認制度、通関業者の認定通関事業者制度、国際運送業者の特定保税運 送制度がある 国際貿易の安全と円滑化のための税関手続の枠組み。
国際貿易の安全確保と円滑化を両立させ るための基準を取りまとめた。
?事前電子貨物情報要件を国際的に調和させる、?国際的に整合の とれたリスク管理アプローチの利用、?輸出国による非破壊検知機器(大型エックス線検査装置な ど)を使用したハイリスク貨物の検査の実施、?サプライチェーン・セキュリティの基準などに適合 する民間へ供与するベネフィットの明確化、をコア・エレメント(主要要素)とし、?税関相互の協力、 ?税関と民間とのパートナーシップを二本のピラー(柱)としている 「基準の枠組み」のコア・エレメントの?を制度化するAEO 制度を実施するための技術的ガイドラ イン。
AEO の満たすべき要件、検証・認定手続、ベネフィット、相互認証について規定している SOLAS 条約の改正に伴い、発効した。
船社と港湾管理者は船舶と港湾施設の保安強化のため、 所定の安全管理を行わなければならない。
船舶保安計画、港湾施設保安計画の策定、保安職員 の配置などを義務付けている サプライチェーン・セキュリティに関するISO の規格。
AEO のコンセプトであるサプライチェーン・ セキュリティマネジメントが盛り込まれている TAPAは米国の電子機器、精密機械メーカーなどが主導し、貨物輸送の安全性向上を目的に設立 された非営利団体。
米国から欧州、アジア、南米に活動を広げている。
独自の保安要求事項(主 に倉庫での物理的なセキュリティ)を満たした物流業者を認証しており、認証取得が荷主の物流業 者選定の基準になることもある 時期 (予定を含む) 内容 02 年3月 02 年4月 02 年12月 03 年6月 09 年1月 12 年7月 までに実施 08 年1月 09 年7月 08 年4月 09 年1月 04 年4月 06 年4月 本格導入 07年2月 07年6月 08 年4月に 本格導入 05 年6月 06 年6月 04 年7月 2007年 名称 CS(I Container Security Initiative) C-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism) 24 時間ルール M(I Megaport Initiative) 10+2ルール 100%コンテナ・スキャン AEO(Authorized Economic Opetrators)制度 24 時間ルール AEO 制度 24 時間ルール 積荷情報等の 事前報告要請制度 ノウン・シッパー/ レギュレーティッド・ エージェント制度 積荷情報等の 事前報告義務化 輸入混載貨物等に係る詳細情報 の事前報告要請制度 AEO 制度 国際貿易の安全確保および 円滑化のための基準の枠組み (SAFE Framework of Standard) AEOガイドライン ISPSコード (船舶と港湾施設の国際保安 コード) TAPA 認証 実施国など 米国 EU 中国 日本 WCO (世界税関機構) IMO・SOLAS 条約(国際海上 人命安全条約) ISO 図1-2 セキュリティに関する主要な規則・制度、ガイドラインなど 差を勘案し、締め切りを三日前とした。
「それでも余 裕があるわけではない。
我々にとってはギリギリの タイミング」(商船三井の子会社MOL JAPAN) という。
一連の規制強化の影響で「ある大手自動車メーカー は、一〇年をかけてリードタイムを四八時間短縮し たのに、それが一瞬にして吹き飛んでしまった」と、 日本機械輸出組合の橋本弘二部会・貿易業務グルー プリーダーは顔を曇らせる。
これに加えて〇九年一月二六日には「 10 +2ルー ル」が新たに実施される予定だ。
米国は 24 時間ルー ルだけでは不十分として、同ルールに定められたマニ フェスト情報に加え、米国の輸入者に対して一〇項 目、キャリアに対して二項目の新たなデータの提出を 義務付ける(図2)。
申告義務は輸入者にあるが、貨物のサプライヤー 情報などが含まれているため、輸出荷主からのデー タ提供が必要になる。
24 時間ルールでは輸出荷主は キャリアにデータを提供すれば、申告はキャリアが処 理する。
しかし 10 +2では荷主が自らデータを集め、 米国側の輸入者に送らなければならない。
通常、輸出荷主が把握していない項目もある。
例 えば、コンテナ単位ならまだしも混載で出荷する場 合はフォワーダーにバンニングを任せており、バン詰 めの場所までは把握していないことが多い。
従来は 荷主が輸入者にバン詰めの場所を知らせる必要はな かった。
荷主の輸出業務プロセス全体を組み直す必 要がある。
「今のところ日本の輸出者と米国の輸入者、また米 国の輸入者とCBPとの間の情報のやりとりにどれ くらい時間がかかるかわからない。
輸出側では二日 〜五日はリードタイムが延びるという予測もある。
24 時間ルール以上に対米輸出に対する影響は大きいだ ろう。
ルールの内容自体を把握していない荷主が多 いことも問題だ」と橋本グループリーダーは懸念する。
幸い、〇八年十一月に発表された暫定最終規則で は、施行から一年間は申告漏れなどがあっても罰則 を課さない猶予期間が設けられた。
この間に、荷主 は一〇年一月の本格施行に向け手を打つ必要がある。
このほかにも米国政府は、一二年までに外国港で 米国向けのコンテナ貨物すべてを核物質検知装置と エックス線検査装置でスキャニング検査を行うとする 「一〇〇%コンテナ・スキャン法」を成立させている。
これには反対の声が多く上がっており、ある業界関 係者は「物理的に不可能。
強行すれば、米国向けの 物流はストップし、米国民にそのツケが跳ね返ること になる」と語る。
セキュリティ強化の動きは米国以外にも広がってい る。
米国と同様の 24 時間ルールはカナダとメキシコで 実施されている。
さらに〇九年は一月に中国、七月 にEUでも開始を予定している(図3、4)。
特に問題になっているのが中国の 24 時間ルール。
中 国向けも北米向けと同様、CYカットの前倒しなど が予想される。
日本発中国向けは船便での輸送時間 が米国西岸向けの一〇日、欧州向けの一カ月に比べ て数日程度と短いだけに、インパクトは大きい。
〇八年十二月時点では中国語の法令が発表されて いるだけで公式な英文訳はなく、本則を実施するた めの詳細情報(施行規則など) も発表されていない。
「深圳港でトライアルが行われる」、「一月から週に一 便、ある中国大手船社のサービスを選択し、トライア ルを実施する」などの情報も流れているが、詳細は 不明だ。
荷主、物流業者、船会社の関係者はいずれ も「わからないから準備のしようがない」、「本当に JANUARY 2009 26 日本機械輸出組合の橋本 弘二部会・貿易業務グルー プリーダー 申告者 申告事項 申告期限 ?販売者(所有者)の名前、住所 ?購入者の名前、住所 ?記録上の輸入業者番号 ?荷受け人番号 ?製造者(サプライヤー)の名前、住所 ?送り先の名前、住所 ?原産国 ?貨物のHTS番号(米国のHSコード) ?コンテナ詰めの場所 ?混載業者の名前、住所 ?ストー・プラン(積み付け計画) ?コンテナ・ステータス・メッセージ(CSM) 米国の輸入者船社 図2 10+2ルール暫定最終規則 船積み時点で入手できる最 善の情報を申告し、米国 到着24時間前までのでき るだけ早い時期に正確な情 報に修正することも可能 船積み24時間前までに申 告必須 米国到着24時間前までに できるだけ早く提出 最後の寄港地を出発した 後、48 時間以内 船社のトラッキング・システ ムに関連情報が取り込まれ た後、24 時間以内 ※海上コンテナが対象。
24 時間ルールの免除を受けているブレークバルク貨物は米国到 着前までに申告。
バルク貨物は免除 NECの田淵信也輸出 管理本部グループマネ ージャー 出発港で船積みの24 時間前 EU出港本船への船積み24 時間前 EUの最初の港へ到着4 時間前 EU港本船出港の4時間前 EUの最初の港へ到着4 時間前 EU港本船出港の4時間前 航空機の離陸次第 EUの空港から出発30 分前 EUの最初の空港へ到着4時間前 EUの空港から出発30 分前 EU入国税関へ到着2時間前 EU出国税関から出発2時間前 EU入国税関へ到着2時間前 EU出国税関から出発1時間前 外国港で船積みの24 時間前 米国船積み港から出港24 時間前 米国港入港24 時間前 米国船積み港から出港24 時間前 24 時間ルール適用除外申請による 米国船積み港から出港24 時間前 米国到着前、発地離陸次第 米国出発2時間前 米国到着4時間前 米国出発2時間前 米国到着2時間前(鉄道のみ) 国境到着2時間前(鉄道のみ) 米国到着30 分または1時間前 国境通過1時間前 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 コンテナ貨物(24 時間ルール) バルク(ばら積み貨物) 鉄道輸送・内陸水運 道路輸送 輸送モード・貨物の種類米国への申告期限 輸送モード・貨物の種類米国への申告期限 EUへの申告期限 外国港で船積み24 時間前 中国での船積み24 時間前 中国到着24 時間前 中国での船積み2時間前 発地離陸前 中国での搭載4時間前 中国到着4時間前 中国での搭載4時間前 中国側最初の駅到着2時間前 中国での荷積み2時間前 中国の目的地到着1時間前 中国での荷積み1時間前 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 コンテナ船 非コンテナ船 近距離飛行 長距離飛行 鉄道 道路輸送 近距離飛行 長距離飛行 ブレークバルク(梱包されている がコンテナ詰めされていない貨物) 図3 米国、EUの24 時間ルールと輸出入貨物情報の事前提出規則 図4 中国の24 時間ルールと輸出入貨物情報の事前提出規則 ※主要データとそれ以外で申告期限は異なる 海上輸送航空輸送海上輸送航空輸送 〇九年一月に実施が可能なのか」と首を傾ける。
そ れでもルールはルール。
守らなければ輸出が止まって しまう。
アメとムチでテロ対策を強化 24 時間ルールは米国向け輸入貨物の発地の水際を 対象としたセキュリティ・プログラムだ。
それと並行 して米国政府は米国国境を対象に、別の施策も打っ ている。
〇二年に開始した「C─TPAT(Customs- Trade Partnership Against Terrorism)」だ。
24 時間 ルールを規制による?ムチ? だとすれば、C─TPATは 特定の企業を優遇する?ア メ?としての性格を持って いる。
C─TPATとは、CBP の管轄するサプライチェー ン・セキュリティの認証制 度で、必要な基準を満たし たコンプライアンス・プログ ラムを策定した会社に対し、 通関の迅速化、検査率の軽 減などのベネフィット(利益、 優遇措置)を与えるもの。
C BPにとっては安全性の高 い事業者の貨物をそれ以外 と区別することで、危険度 の高い貨物の監視に集中で きる。
C─TPATは任意の「ボ ランタリー・プログラム」だ 特集 27 JANUARY 2009 日本通運の武井乙 哉海運事業部課長 (CSR) が、民間企業にとっては事実上の規制に近い。
プロ グラム開始前からCBPは米国の輸入上位二〇〇社 に対して強く参加を呼びかけていたという。
従来か ら各国の税関当局は、過去に違反があった企業など を記載した?ブラックリスト?を持っているといわれ る。
ブラックリストに載った企業の貨物はチェックが 厳しくなる。
一方で優良事業者は通関処理で事実上 優遇される、というのが業界の常識だ。
C─TPATの認証を受けた企業は?ホワイトリス ト?に載ったと同じメリットを期待できる。
あるい はCBPの心証を悪くしたくないといった思惑から、 内々に参加を打診されていた大手企業に続き、中小 企業もこぞって参加した。
今では一万社が参加し、米 国への輸入の五割がカバーされているという。
日本企業にとってもC─TPATは米国で事業を 行う上での必要条件となっている。
現地法人だけの 問題ではない。
C─TPATを取得した企業は、米 国内の拠点だけでなく、日本も含めた海外の主要拠 点の監査を受ける。
この監査の結果で現地法人のセ キュリティ品質がランク付けされる。
荷主企業は最高 の「ティア3」から「ティア1」まで三段階、物流企 業は「ティア2」と「ティア1」の二段階。
ランクに よって、それぞれ通関の優遇措置が異なる。
「通常は それほど違いを感じない」という声もあるが「ティア 3」にランクされる企業は一万社中、現在二四〇社 程度に過ぎず、その価値は軽視できない。
その一社、NECインフロンティア(NEC─i) ネットワークコミュニケーション事業部生産推進グ ループの岩谷龍二マネージャーは「テロや港湾ストが 起こった時にはティア3の貨物から流すとされている。
認証を取得するのはかなり大変だったが、いざとい う時にサプライチェーンを止めないために労力をかけ 三井物産の橋本茂ロジ スティクスマネジメン ト部部長 てセキュリティの管理体制を構築した。
フェンスを増 強するなど必要な投資も行った」という。
NECグループでは、米国統括会社NECコーポ レーション・オブ・アメリカ(NECAM)からの要 請で、〇四年頃から取り組みを始めた。
日本国内の 工場、物流センター、タイの生産工場などが監査を 受け、〇八年二月にNECAM、〇八年八月にNE C─iの米国法人、NECインフロンティア・インク (NEC─ii)がティア3を取得した。
「監査に対応するために、社内の意識を米国側に合 わせて意思統一を図るのに苦労した。
米国側はベネ フィット以前に、明日にでもテロが起きるかもしれず、 税関とパートナーシップを組まなければならないとい う意識を持って取り組んでいた。
しかし日本からみ ると当初は海の向こうの話だった」とNEC輸出管 理本部の田淵信也グループマネージャーは語る。
グループの中でこれにいち早く応えたのがNEC─ iだった。
NEC─iでの体制整備に当たっては、以 前からコンプライアンス・プログラムを策定して輸出 入管理を行っていたのが功を奏した。
また、「生産革 新活動に取り組み、NECロジスティクスとともに調 達から出荷までの一元管理体制を敷いていたことも 大きかった」(NEC─i事業管理部貿易管理室の片 岡俊治マネージャー)という。
NECAMとNEC、 NEC─i、NECロジスティクスによる協業が、二 社のティア3取得につながった。
コンプライアンスを武器に 米国は世界税関機構(WCO)に対しても、 24 時 間ルールやC─TPATをはじめとする自国のセキュ リティ制度を、世界標準にしようと強く働きかけて いる。
これを受けてWCOは〇五年、国際的なガイ ドライン「基準の枠組み(SEFE Framework)」を採 択した。
その内容は米国基準を色濃く繁栄したもの となっている。
C─TPATと同様、優良事業者を認 定しベネフィットを与える制度も盛り込まれている。
「AEO:Authorized Economic Operators(認定事 業者)」と呼ばれる。
これに従って各国は制度の導入または検討を進め ている。
ただし、国によって事情が異なるため、基 本は同じでも個別の制度は異なっている。
日本では 〇六年からAEO制度が本格的にスタートした(図 5)。
基準を満たし、税関から認定を受けた事業者に は、検査率の軽減と通関手続の簡素化を享受できる。
日本の通関法では、輸出入申告をする際に貨物を いったん保税地域に搬入しなければならないが、A EOの認定を受けた輸出入事業者は同規則の適用か ら除外される。
輸出では自社施設や輸送途上、輸入 では貨物到着前の申告が可能だ。
物流業者に対して は、AEO倉庫業者は保税蔵置場を届出により設置 でき、許可手数料も軽減される、などの手続の簡素 化措置を講じている。
欧州も〇八年一月にAEO制度を導入。
輸出入 に関わるすべての事業者を対象に、AEO事業者に 対して検査率の軽減、通関の円滑化を実施している。
中国も同年四月にAEO制度を開始した。
今後は制度の実効性を高めるため、二国間での相 互認証が進んでいく見通しだ。
既に米国とEUはC─ TPATとAEOの相互認証に向けた取り組みを開 始し、〇九年中の相互認証実現を目指している。
相 互認証は税関と民間企業双方にとって大きなメリッ トがある。
日本は〇八年五月、ニュージーランドと相互認証 で合意し、同年一〇月から実施。
米国、EU、カナ JANUARY 2009 28 ●自社施設や輸送途 上など、保税地域 外での輸出申告が 可能 ●貨物到着前の輸入 申告が可能 ●納税申告前の貨物 引き取りが可能 ●届出による新たな 保税蔵置場の設置 が可能 ●許可手数料の軽減 ●委託を受けた輸出貨物につい て、保税地域以外の場所にある 貨物の輸出申告を行える ●委託を受けた輸入貨物につい て、貨物の引き取り後に納税申 告を行える ●保税運送について個々の承認手 続が不要に ●認定通関業者が保税地域外で申 告を行う輸出貨物について、申 告場所から直接船積み港まで運 送することが可能に 特定輸出申告制度 簡易申告制度 特定保税承認制度 認定通関業者制度 特定保税運送制度 2006 年3 月 2001 年3 月 2007 年10 月 2008 年4 月 2008 年4 月 AEO 事業者数 176 社 65 社 42 社 5 社 0社 (08 年12 月時点) 開始時期 主な優遇措置 AEO 制度 輸出者輸入者 倉庫業者 (保税蔵置場の 被許可者) 通関業者 輸出者輸出 輸入者 輸入 倉庫業者通関業者 国際運送事業者(航空会社、 船会社、フォワーダー、トラック 事業者、港湾運送事業者) 国際運送国際運送事業者 事業者 図5 サプライチェーンと日本のAEO 制度 特集 「通関制度の抜本的な改革で国際競争力を向上する」 平田義章 国際ロジスティクス・アドバイザー 29 JANUARY 2009 ──日本のAEO制度の課題は? 「まず、通関セキュリティの確保と手続の簡素化の 問題をはっきりと分ける必要があります。
我が国の AEO制度は、あくまでも通関手続きに関する制度 になっています。
コンプライアンスが基本になって おり、セキュリティ確保をはっきりと打ち出してい ません。
これに対して米国やEUは通関手続とセキ ュリティを別個に管理しています」 「米国は独自のセキュリティ・プログラムとしてC ─TPATを策定し、EUは関税法にセキュリティの 項目を盛り込みました。
日本も当初は?日本版C─ TPAT?として検討をしていましたが、EUが関 税法を利用したのを取り入れ、?日本版AEO?と してしまい、関税法の枠内のあいまいなものになっ てしまいました。
今からでも遅くありません。
通関 手続とセキュリティを切り離すべきです」 ──AEOの認証を受けることのベネフィットもあ いまいです。
検査率を低減するといっても、優良企 業の貨物の検査率は元々低かった。
「大きなメリットはないといってもいいでしょう。
それでも欧米では、セキュリティ対策がいかに負担 でも、自国の防衛のために官民協力して推進しなけ ればならないというコンセンサスができています」 ──同じAEO制度といっても欧米と日本でそこま で性格が違えば、相互認証を進める上で問題になり ませんか。
「その可能性はあります。
AEOの相互認証に限 らず、EUの 24 時間ルールなどセキュリティに関する 規制の適用については相手国と折衝していく必要が あります。
そのために我が国は、 我が国の実情に合った、セキュ リティの考え方と基準を持って いなければならない。
いま世界 で進められているセキュリティ 強化策は米国主導のテロ対策 です。
それは米国の環境に合っ た手法であり、すべての国にそ のまま適合するわけではありません」 「日本はセキュリティを担当する専門機関の設置を 検討すべきです。
米国はセキュリティに関する組織 をDHS(国土安全保障省)に統合し、CBPを傘 下に置きました。
欧州は欧州委員会(EC)が統括 しています。
他国との交渉を有利にしていくために は、日本でもセキュリティ対策を専門的に進めるこ とが必要だと思います」 ──通関手続の簡素化については。
「どんどん進めるべきです。
手続を簡素化したか らといってセキュリティが確保できなくなるわけで はありません。
例えば欧米には輸出貨物を保税地域 で申告しなければならないとする制度はありません。
どこででも申告して許可が受けられる。
輸入も同様 です。
ところが日本はAEO制度で特定輸出者とし て認められた会社だけしかそれが認められない。
つ まり、輸出貨物はいったん保税地域に搬入しない限 り輸出申告ができないという規制が維持されている。
違反防止のためには、税関の監視機能を水際だけで なく内陸地点へも広げて強化し、違反者には厳しい 罰則を課せばよいはずです。
もっと国益を考え、国 際競争力の強化に向けて動いていく必要があります」 ──保税地域が集中する港頭地区には輸出入貨物 が集中し、交通渋滞が深刻になっています。
「港頭地区の交通渋滞は、リードタイム短縮の障 害となり、コスト増の要因になっています。
保税搬 入の原則を変更し、内陸通関のためのインフラ、具 体的にはインランドポート(内陸港湾)の設置、港 頭CY(コンテナヤード)と内陸とを結ぶ鉄道など の定時大量輸送手段の整備などを進めれば、大きな 効果が期待できます。
政府の取り組みの中にはいま、 そのための芽がみられます。
これを進めていってほ しいと考えています」 ひらた・よしあき 日本通運国際輸送事業部長、米国日本通運 副社長などを経て独立。
在米一六年。
朝日大学経営学部講師、港 湾カレッジ横浜校講師。
著書に「 21 世紀の国際物流」(文真堂・ 共著)などがある。
その他国際輸送とロジスティクス関連論文、 研究報告書多数。
ダ、豪州や中国、韓国などのアジア各国と協議・研究 を続けている。
ただし、荷主企業だけ、あるいは物 流企業だけがAEOの認証を取得してもそのメリット は限定的だ。
検査率の軽減などで扱いが違ってくる。
このため、メーカーはサプライヤーや物流業者にA EOの認証取得を求めるようになることが想定され る。
米国でC─TPATティア2を取得し、日本では 初のAEO倉庫業者となった日本通運の武井乙哉海 運事業部課長(CSR) は「許可手数料の減免など 制度上のベネフィットもあるが、顧客のニーズに対応 するため、コンプライアンス・プログラムの高度化、セ キュリティの強化に取り組んだ」と語る。
また三井物産は営業本部の物流本部から物流に関 わるコンプライアンス統括機能を切り離し、既に管理 組織にあった安全保障貿易管理機能を合わせ、本社 の管理部門として「ロジスティクスマネジメント部」を 新設。
海外にも計七人の日本人駐在員を配置し、関 連会社も含めた全社の物流コンプライアンスをグロー バルに統括している。
C─TPAT、日本のAEO輸 出者・輸入者の認証も取得した。
欧州でのAEO認 証取得についても取り組みを進めている。
ロジスティクスマネジメント部の橋本茂部長は「商 社の中では、物流に関わるコンプライアンス機能を集 約したのは当社が初めてではないか。
また、グローバ ルにここまでの体制を整備しているのは当社だけだと 認識している。
コンプライアンスのレベルを上げ、セ キュリティに関する規則・制度に対応していることは 将来的に?攻め?のツールになり得る」と語る。
サプライチェーンに穴があればスムーズな輸出入は 難しくなる。
AEO事業者だけでサプライチェーンを 形成する動きが出てくるのは必至。
対応の遅れた会社 はサプライチェーンから弾き出されることになる。
米国は〇一年 の同時多発テロ以降、輸入貨物のセキュリティ強化を 進めている。
それが米国向けに貨物を輸出する企業 のリードタイムの延長、在庫増と物流コスト増を招い ている。
これまでに最も影響が大きかったのは海上コ ンテナ貨物の「 24 時間ルール」と呼ばれるものだ。
米 国に輸出する貨物のマニフェスト(積み荷目録)情報 を、船積みの二四時間前までに米国税関・国境警備 局(CBP)に申告するようキャリアとフォワーダー に義務付けたもの。
マニフェストの必要記載事項も新たに一四項目が 追加された。
しかも情報はできるだけ正確をきさな ければならない。
品目名では「Apparel(アパレル)」 と書けば認められていたものが、「Clothing(衣服)」 や「Shoes(靴)」など商品の詳細まで明記しなけれ ば受け入れられなくなった。
提出したデータが不十分 であれば、船積みの差し止め、荷揚げの不許可、キャ リアへの罰金などの罰則が課されることもある。
船 積みが不許可になれば、日本からの出荷は次の便を 待つことになる。
出荷が一週間遅れる。
この 24 時間ルールにより、日本では荷主からキャリ アやフォワーダーに提出する積み荷情報の締め切り、 およびコンテナの搬入締め切り(CYカット) が本 船入港の一日前から三日前(いずれも営業日)に前 倒しになった。
また、キャリアからは 24 時間ルール対 応のために、B/L一件当たり平均二五ドルのサー チャージが賦課されている。
キャリア側では積み残しを防ぐため、荷主とCB Pの間に立ってデータを整える時間と、米国との時 セキュリティ規制が企業を選別 米国発のセキュリティ規制が世界に広がっている。
セ キュリティ対策とコンプライアンス(法令順守)に優れた 企業を通関面で優遇する認証制度も定着してきた。
その 対応を誤れば、グローバル・サプライチェーンから弾き出 されることにもなり兼ねない。
(梶原幸絵) JANUARY 2009 24 2001 年 図1-1 同時多発テロ以降、セキュリティ対策が世界中で実施されている WCO 米国EU 日本 2002 年2003年2004 年2005 年2006 年2007 年2008 年2009 年2010 年以降 2001.9 米国同時 多発テロ 2001.3 簡易申告 制度導入 2004.4 積荷情報等の 事前報告要請 制度導入 2002.3 CSI 導入 2002.4 C-TPAT 導入 2002.12 24 時間 ルール導入 2012 100%コンテナ・ スキャン実施 2003.6 MI 導入 2006.10月 セーフ・ポート・アクト (港湾安全法)成立 C-TPAT、CSIに 法的根拠付与 2009.1 10+2ルール セーフ・ポート・ アクトから作成 2006.6 AEOガイドライン採択 2005.4 EC関税法改正 AEO、24時間ルール に関する規定を含む 2006.12 同法施行 規則改正 2007.8 100%コンテナ・スキャン法 (9.11 委員会勧告実施法)成立 2009.7 24 時間ルール導入 2008.1 AEO制度実施 2006.3 特定輸出申告 制度導入 2007.10 特定保税承認 制度導入 2008.4 認定通関事業 者制度導入 特定保税運送 制度導入 2007.2 積荷情報等の事前 報告義務化 2007.6 輸入混載貨物等に係る詳細情報 の事前報告要請制度導入 2005.4 ノウン・シッパー/ レギュレーティッド・ エージェント制度 本格導入 2005.6 「基準の枠組み」採択 特集 25 JANUARY 2009 TAPA (輸送資産 保護協会) ISO28000、28001など 1997年 二国間政府協定による米国税関・国境警備局(CBP)と外国港とのセキュリティ・プログラム。
米 国向けコンテナ貨物を船積みする主要な外国港にCBP 職員が派遣され、当該国税関と協力して危 険度の高いコンテナを特定する。
日本では04 年から東京港などがCSI 実施港になっている 米国向け貨物の保安対策を目的とする税関と貿易物流関係者の連携強化のための官民共同プログ ラム。
対象は輸入のみ。
米国の輸入者、船社、物流業者など米国への輸入に関わるすべての民間 業者はCBP のガイドラインに従い、自社のサプライチェーンのセキュリティ管理プログラム順守を 構築・実施し、参加が認められればローリスク企業と認定され、検査の軽減など通関上のメリット を享受できる 03 年2月に本格的に開始。
船社とNVOCC(非船舶運航業者)は米国向けコンテナ貨物の船積み 港で船積み24時間前までに貨物の数量、品名、荷送り人、荷受け人などのマニフェスト(積み荷目録) 情報をCBPに提出しなければならない。
マニフェスト情報に不備があれば、船積みの差し止め、 米国での荷揚げの不許可などとなる。
CSIを補強する位置付けにある 放射性物質の拡散を防止するため、世界の主要港に放射性物質検知施設を設置をする取り組み。
これまでに中国、台湾、韓国など約30カ国で実施合意 1年間は施行期間として罰則は課さない。
24 時間ルールを補完するため、米国の輸入者に新たに 10 項目、船会社に2項目のデータ提出を義務付ける 07年8月に100%コンテナ・スキャン法が成立。
外国港で米国向け海上コンテナ貨物すべて (100%)に対して核物質検知装置とエックス線検査装置によるスキャニング検査を行う コンプライアンスとセキュリティ基準を満たした域内のメーカー、輸出者、船社、物流関連事業者 などに対し、審査・検査率の軽減など税関手続上のベネフィットを与えた 輸出入コンテナ貨物について、船積み24 時間前にマニフェスト情報を税関当局に提出しなければ ならない 以前から輸出入者は税関への事前登録が義務化され、登録後、AからDまでランク付けされていた。
これに08 年4月からAAを加え、検査率の低減など通関手続上のベネフィットを与える 船積み24 時間前に輸出入貨物のマニフェスト情報を税関当局に提出しなければならない 税関は外国から日本への船舶などの入港前に、マニフェスト情報の報告を要請できる 国土交通省が認定した特定荷主の輸出航空貨物は、特定フォワーダーが一定の保安措置を講ずる ことにより、爆発物検査が免除され、従来よりも円滑に航空機に搭載される。
荷主から航空機搭 載までの間の航空貨物を一貫して保護する。
ICAO(国際民間航空機関)の標準に準拠している 外国から日本への船舶に対し、入港前のマニフェスト情報の報告を義務化。
海上貨物は船舶の入 港24 時間前、航空貨物は航行時間により、航空機の入港5時間前から入港するときまで 積荷情報を利用した輸入申告などを大幅に拡充することを念頭に、詳細な貨物情報の事前提出を 要請できる コンプライアンスと貨物のセキュリティ管理体制が整備された事業者に審査・検査率の軽減、税 関手続の簡素化などのベネフィットを与える。
輸入者の簡易申告制度、輸出者の特定輸出申告制度、 倉庫業者の特定保税承認制度、通関業者の認定通関事業者制度、国際運送業者の特定保税運 送制度がある 国際貿易の安全と円滑化のための税関手続の枠組み。
国際貿易の安全確保と円滑化を両立させ るための基準を取りまとめた。
?事前電子貨物情報要件を国際的に調和させる、?国際的に整合の とれたリスク管理アプローチの利用、?輸出国による非破壊検知機器(大型エックス線検査装置な ど)を使用したハイリスク貨物の検査の実施、?サプライチェーン・セキュリティの基準などに適合 する民間へ供与するベネフィットの明確化、をコア・エレメント(主要要素)とし、?税関相互の協力、 ?税関と民間とのパートナーシップを二本のピラー(柱)としている 「基準の枠組み」のコア・エレメントの?を制度化するAEO 制度を実施するための技術的ガイドラ イン。
AEO の満たすべき要件、検証・認定手続、ベネフィット、相互認証について規定している SOLAS 条約の改正に伴い、発効した。
船社と港湾管理者は船舶と港湾施設の保安強化のため、 所定の安全管理を行わなければならない。
船舶保安計画、港湾施設保安計画の策定、保安職員 の配置などを義務付けている サプライチェーン・セキュリティに関するISO の規格。
AEO のコンセプトであるサプライチェーン・ セキュリティマネジメントが盛り込まれている TAPAは米国の電子機器、精密機械メーカーなどが主導し、貨物輸送の安全性向上を目的に設立 された非営利団体。
米国から欧州、アジア、南米に活動を広げている。
独自の保安要求事項(主 に倉庫での物理的なセキュリティ)を満たした物流業者を認証しており、認証取得が荷主の物流業 者選定の基準になることもある 時期 (予定を含む) 内容 02 年3月 02 年4月 02 年12月 03 年6月 09 年1月 12 年7月 までに実施 08 年1月 09 年7月 08 年4月 09 年1月 04 年4月 06 年4月 本格導入 07年2月 07年6月 08 年4月に 本格導入 05 年6月 06 年6月 04 年7月 2007年 名称 CS(I Container Security Initiative) C-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism) 24 時間ルール M(I Megaport Initiative) 10+2ルール 100%コンテナ・スキャン AEO(Authorized Economic Opetrators)制度 24 時間ルール AEO 制度 24 時間ルール 積荷情報等の 事前報告要請制度 ノウン・シッパー/ レギュレーティッド・ エージェント制度 積荷情報等の 事前報告義務化 輸入混載貨物等に係る詳細情報 の事前報告要請制度 AEO 制度 国際貿易の安全確保および 円滑化のための基準の枠組み (SAFE Framework of Standard) AEOガイドライン ISPSコード (船舶と港湾施設の国際保安 コード) TAPA 認証 実施国など 米国 EU 中国 日本 WCO (世界税関機構) IMO・SOLAS 条約(国際海上 人命安全条約) ISO 図1-2 セキュリティに関する主要な規則・制度、ガイドラインなど 差を勘案し、締め切りを三日前とした。
「それでも余 裕があるわけではない。
我々にとってはギリギリの タイミング」(商船三井の子会社MOL JAPAN) という。
一連の規制強化の影響で「ある大手自動車メーカー は、一〇年をかけてリードタイムを四八時間短縮し たのに、それが一瞬にして吹き飛んでしまった」と、 日本機械輸出組合の橋本弘二部会・貿易業務グルー プリーダーは顔を曇らせる。
これに加えて〇九年一月二六日には「 10 +2ルー ル」が新たに実施される予定だ。
米国は 24 時間ルー ルだけでは不十分として、同ルールに定められたマニ フェスト情報に加え、米国の輸入者に対して一〇項 目、キャリアに対して二項目の新たなデータの提出を 義務付ける(図2)。
申告義務は輸入者にあるが、貨物のサプライヤー 情報などが含まれているため、輸出荷主からのデー タ提供が必要になる。
24 時間ルールでは輸出荷主は キャリアにデータを提供すれば、申告はキャリアが処 理する。
しかし 10 +2では荷主が自らデータを集め、 米国側の輸入者に送らなければならない。
通常、輸出荷主が把握していない項目もある。
例 えば、コンテナ単位ならまだしも混載で出荷する場 合はフォワーダーにバンニングを任せており、バン詰 めの場所までは把握していないことが多い。
従来は 荷主が輸入者にバン詰めの場所を知らせる必要はな かった。
荷主の輸出業務プロセス全体を組み直す必 要がある。
「今のところ日本の輸出者と米国の輸入者、また米 国の輸入者とCBPとの間の情報のやりとりにどれ くらい時間がかかるかわからない。
輸出側では二日 〜五日はリードタイムが延びるという予測もある。
24 時間ルール以上に対米輸出に対する影響は大きいだ ろう。
ルールの内容自体を把握していない荷主が多 いことも問題だ」と橋本グループリーダーは懸念する。
幸い、〇八年十一月に発表された暫定最終規則で は、施行から一年間は申告漏れなどがあっても罰則 を課さない猶予期間が設けられた。
この間に、荷主 は一〇年一月の本格施行に向け手を打つ必要がある。
このほかにも米国政府は、一二年までに外国港で 米国向けのコンテナ貨物すべてを核物質検知装置と エックス線検査装置でスキャニング検査を行うとする 「一〇〇%コンテナ・スキャン法」を成立させている。
これには反対の声が多く上がっており、ある業界関 係者は「物理的に不可能。
強行すれば、米国向けの 物流はストップし、米国民にそのツケが跳ね返ること になる」と語る。
セキュリティ強化の動きは米国以外にも広がってい る。
米国と同様の 24 時間ルールはカナダとメキシコで 実施されている。
さらに〇九年は一月に中国、七月 にEUでも開始を予定している(図3、4)。
特に問題になっているのが中国の 24 時間ルール。
中 国向けも北米向けと同様、CYカットの前倒しなど が予想される。
日本発中国向けは船便での輸送時間 が米国西岸向けの一〇日、欧州向けの一カ月に比べ て数日程度と短いだけに、インパクトは大きい。
〇八年十二月時点では中国語の法令が発表されて いるだけで公式な英文訳はなく、本則を実施するた めの詳細情報(施行規則など) も発表されていない。
「深圳港でトライアルが行われる」、「一月から週に一 便、ある中国大手船社のサービスを選択し、トライア ルを実施する」などの情報も流れているが、詳細は 不明だ。
荷主、物流業者、船会社の関係者はいずれ も「わからないから準備のしようがない」、「本当に JANUARY 2009 26 日本機械輸出組合の橋本 弘二部会・貿易業務グルー プリーダー 申告者 申告事項 申告期限 ?販売者(所有者)の名前、住所 ?購入者の名前、住所 ?記録上の輸入業者番号 ?荷受け人番号 ?製造者(サプライヤー)の名前、住所 ?送り先の名前、住所 ?原産国 ?貨物のHTS番号(米国のHSコード) ?コンテナ詰めの場所 ?混載業者の名前、住所 ?ストー・プラン(積み付け計画) ?コンテナ・ステータス・メッセージ(CSM) 米国の輸入者船社 図2 10+2ルール暫定最終規則 船積み時点で入手できる最 善の情報を申告し、米国 到着24時間前までのでき るだけ早い時期に正確な情 報に修正することも可能 船積み24時間前までに申 告必須 米国到着24時間前までに できるだけ早く提出 最後の寄港地を出発した 後、48 時間以内 船社のトラッキング・システ ムに関連情報が取り込まれ た後、24 時間以内 ※海上コンテナが対象。
24 時間ルールの免除を受けているブレークバルク貨物は米国到 着前までに申告。
バルク貨物は免除 NECの田淵信也輸出 管理本部グループマネ ージャー 出発港で船積みの24 時間前 EU出港本船への船積み24 時間前 EUの最初の港へ到着4 時間前 EU港本船出港の4時間前 EUの最初の港へ到着4 時間前 EU港本船出港の4時間前 航空機の離陸次第 EUの空港から出発30 分前 EUの最初の空港へ到着4時間前 EUの空港から出発30 分前 EU入国税関へ到着2時間前 EU出国税関から出発2時間前 EU入国税関へ到着2時間前 EU出国税関から出発1時間前 外国港で船積みの24 時間前 米国船積み港から出港24 時間前 米国港入港24 時間前 米国船積み港から出港24 時間前 24 時間ルール適用除外申請による 米国船積み港から出港24 時間前 米国到着前、発地離陸次第 米国出発2時間前 米国到着4時間前 米国出発2時間前 米国到着2時間前(鉄道のみ) 国境到着2時間前(鉄道のみ) 米国到着30 分または1時間前 国境通過1時間前 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 コンテナ貨物(24 時間ルール) バルク(ばら積み貨物) 鉄道輸送・内陸水運 道路輸送 輸送モード・貨物の種類米国への申告期限 輸送モード・貨物の種類米国への申告期限 EUへの申告期限 外国港で船積み24 時間前 中国での船積み24 時間前 中国到着24 時間前 中国での船積み2時間前 発地離陸前 中国での搭載4時間前 中国到着4時間前 中国での搭載4時間前 中国側最初の駅到着2時間前 中国での荷積み2時間前 中国の目的地到着1時間前 中国での荷積み1時間前 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 輸入 輸出 コンテナ船 非コンテナ船 近距離飛行 長距離飛行 鉄道 道路輸送 近距離飛行 長距離飛行 ブレークバルク(梱包されている がコンテナ詰めされていない貨物) 図3 米国、EUの24 時間ルールと輸出入貨物情報の事前提出規則 図4 中国の24 時間ルールと輸出入貨物情報の事前提出規則 ※主要データとそれ以外で申告期限は異なる 海上輸送航空輸送海上輸送航空輸送 〇九年一月に実施が可能なのか」と首を傾ける。
そ れでもルールはルール。
守らなければ輸出が止まって しまう。
アメとムチでテロ対策を強化 24 時間ルールは米国向け輸入貨物の発地の水際を 対象としたセキュリティ・プログラムだ。
それと並行 して米国政府は米国国境を対象に、別の施策も打っ ている。
〇二年に開始した「C─TPAT(Customs- Trade Partnership Against Terrorism)」だ。
24 時間 ルールを規制による?ムチ? だとすれば、C─TPATは 特定の企業を優遇する?ア メ?としての性格を持って いる。
C─TPATとは、CBP の管轄するサプライチェー ン・セキュリティの認証制 度で、必要な基準を満たし たコンプライアンス・プログ ラムを策定した会社に対し、 通関の迅速化、検査率の軽 減などのベネフィット(利益、 優遇措置)を与えるもの。
C BPにとっては安全性の高 い事業者の貨物をそれ以外 と区別することで、危険度 の高い貨物の監視に集中で きる。
C─TPATは任意の「ボ ランタリー・プログラム」だ 特集 27 JANUARY 2009 日本通運の武井乙 哉海運事業部課長 (CSR) が、民間企業にとっては事実上の規制に近い。
プロ グラム開始前からCBPは米国の輸入上位二〇〇社 に対して強く参加を呼びかけていたという。
従来か ら各国の税関当局は、過去に違反があった企業など を記載した?ブラックリスト?を持っているといわれ る。
ブラックリストに載った企業の貨物はチェックが 厳しくなる。
一方で優良事業者は通関処理で事実上 優遇される、というのが業界の常識だ。
C─TPATの認証を受けた企業は?ホワイトリス ト?に載ったと同じメリットを期待できる。
あるい はCBPの心証を悪くしたくないといった思惑から、 内々に参加を打診されていた大手企業に続き、中小 企業もこぞって参加した。
今では一万社が参加し、米 国への輸入の五割がカバーされているという。
日本企業にとってもC─TPATは米国で事業を 行う上での必要条件となっている。
現地法人だけの 問題ではない。
C─TPATを取得した企業は、米 国内の拠点だけでなく、日本も含めた海外の主要拠 点の監査を受ける。
この監査の結果で現地法人のセ キュリティ品質がランク付けされる。
荷主企業は最高 の「ティア3」から「ティア1」まで三段階、物流企 業は「ティア2」と「ティア1」の二段階。
ランクに よって、それぞれ通関の優遇措置が異なる。
「通常は それほど違いを感じない」という声もあるが「ティア 3」にランクされる企業は一万社中、現在二四〇社 程度に過ぎず、その価値は軽視できない。
その一社、NECインフロンティア(NEC─i) ネットワークコミュニケーション事業部生産推進グ ループの岩谷龍二マネージャーは「テロや港湾ストが 起こった時にはティア3の貨物から流すとされている。
認証を取得するのはかなり大変だったが、いざとい う時にサプライチェーンを止めないために労力をかけ 三井物産の橋本茂ロジ スティクスマネジメン ト部部長 てセキュリティの管理体制を構築した。
フェンスを増 強するなど必要な投資も行った」という。
NECグループでは、米国統括会社NECコーポ レーション・オブ・アメリカ(NECAM)からの要 請で、〇四年頃から取り組みを始めた。
日本国内の 工場、物流センター、タイの生産工場などが監査を 受け、〇八年二月にNECAM、〇八年八月にNE C─iの米国法人、NECインフロンティア・インク (NEC─ii)がティア3を取得した。
「監査に対応するために、社内の意識を米国側に合 わせて意思統一を図るのに苦労した。
米国側はベネ フィット以前に、明日にでもテロが起きるかもしれず、 税関とパートナーシップを組まなければならないとい う意識を持って取り組んでいた。
しかし日本からみ ると当初は海の向こうの話だった」とNEC輸出管 理本部の田淵信也グループマネージャーは語る。
グループの中でこれにいち早く応えたのがNEC─ iだった。
NEC─iでの体制整備に当たっては、以 前からコンプライアンス・プログラムを策定して輸出 入管理を行っていたのが功を奏した。
また、「生産革 新活動に取り組み、NECロジスティクスとともに調 達から出荷までの一元管理体制を敷いていたことも 大きかった」(NEC─i事業管理部貿易管理室の片 岡俊治マネージャー)という。
NECAMとNEC、 NEC─i、NECロジスティクスによる協業が、二 社のティア3取得につながった。
コンプライアンスを武器に 米国は世界税関機構(WCO)に対しても、 24 時 間ルールやC─TPATをはじめとする自国のセキュ リティ制度を、世界標準にしようと強く働きかけて いる。
これを受けてWCOは〇五年、国際的なガイ ドライン「基準の枠組み(SEFE Framework)」を採 択した。
その内容は米国基準を色濃く繁栄したもの となっている。
C─TPATと同様、優良事業者を認 定しベネフィットを与える制度も盛り込まれている。
「AEO:Authorized Economic Operators(認定事 業者)」と呼ばれる。
これに従って各国は制度の導入または検討を進め ている。
ただし、国によって事情が異なるため、基 本は同じでも個別の制度は異なっている。
日本では 〇六年からAEO制度が本格的にスタートした(図 5)。
基準を満たし、税関から認定を受けた事業者に は、検査率の軽減と通関手続の簡素化を享受できる。
日本の通関法では、輸出入申告をする際に貨物を いったん保税地域に搬入しなければならないが、A EOの認定を受けた輸出入事業者は同規則の適用か ら除外される。
輸出では自社施設や輸送途上、輸入 では貨物到着前の申告が可能だ。
物流業者に対して は、AEO倉庫業者は保税蔵置場を届出により設置 でき、許可手数料も軽減される、などの手続の簡素 化措置を講じている。
欧州も〇八年一月にAEO制度を導入。
輸出入 に関わるすべての事業者を対象に、AEO事業者に 対して検査率の軽減、通関の円滑化を実施している。
中国も同年四月にAEO制度を開始した。
今後は制度の実効性を高めるため、二国間での相 互認証が進んでいく見通しだ。
既に米国とEUはC─ TPATとAEOの相互認証に向けた取り組みを開 始し、〇九年中の相互認証実現を目指している。
相 互認証は税関と民間企業双方にとって大きなメリッ トがある。
日本は〇八年五月、ニュージーランドと相互認証 で合意し、同年一〇月から実施。
米国、EU、カナ JANUARY 2009 28 ●自社施設や輸送途 上など、保税地域 外での輸出申告が 可能 ●貨物到着前の輸入 申告が可能 ●納税申告前の貨物 引き取りが可能 ●届出による新たな 保税蔵置場の設置 が可能 ●許可手数料の軽減 ●委託を受けた輸出貨物につい て、保税地域以外の場所にある 貨物の輸出申告を行える ●委託を受けた輸入貨物につい て、貨物の引き取り後に納税申 告を行える ●保税運送について個々の承認手 続が不要に ●認定通関業者が保税地域外で申 告を行う輸出貨物について、申 告場所から直接船積み港まで運 送することが可能に 特定輸出申告制度 簡易申告制度 特定保税承認制度 認定通関業者制度 特定保税運送制度 2006 年3 月 2001 年3 月 2007 年10 月 2008 年4 月 2008 年4 月 AEO 事業者数 176 社 65 社 42 社 5 社 0社 (08 年12 月時点) 開始時期 主な優遇措置 AEO 制度 輸出者輸入者 倉庫業者 (保税蔵置場の 被許可者) 通関業者 輸出者輸出 輸入者 輸入 倉庫業者通関業者 国際運送事業者(航空会社、 船会社、フォワーダー、トラック 事業者、港湾運送事業者) 国際運送国際運送事業者 事業者 図5 サプライチェーンと日本のAEO 制度 特集 「通関制度の抜本的な改革で国際競争力を向上する」 平田義章 国際ロジスティクス・アドバイザー 29 JANUARY 2009 ──日本のAEO制度の課題は? 「まず、通関セキュリティの確保と手続の簡素化の 問題をはっきりと分ける必要があります。
我が国の AEO制度は、あくまでも通関手続きに関する制度 になっています。
コンプライアンスが基本になって おり、セキュリティ確保をはっきりと打ち出してい ません。
これに対して米国やEUは通関手続とセキ ュリティを別個に管理しています」 「米国は独自のセキュリティ・プログラムとしてC ─TPATを策定し、EUは関税法にセキュリティの 項目を盛り込みました。
日本も当初は?日本版C─ TPAT?として検討をしていましたが、EUが関 税法を利用したのを取り入れ、?日本版AEO?と してしまい、関税法の枠内のあいまいなものになっ てしまいました。
今からでも遅くありません。
通関 手続とセキュリティを切り離すべきです」 ──AEOの認証を受けることのベネフィットもあ いまいです。
検査率を低減するといっても、優良企 業の貨物の検査率は元々低かった。
「大きなメリットはないといってもいいでしょう。
それでも欧米では、セキュリティ対策がいかに負担 でも、自国の防衛のために官民協力して推進しなけ ればならないというコンセンサスができています」 ──同じAEO制度といっても欧米と日本でそこま で性格が違えば、相互認証を進める上で問題になり ませんか。
「その可能性はあります。
AEOの相互認証に限 らず、EUの 24 時間ルールなどセキュリティに関する 規制の適用については相手国と折衝していく必要が あります。
そのために我が国は、 我が国の実情に合った、セキュ リティの考え方と基準を持って いなければならない。
いま世界 で進められているセキュリティ 強化策は米国主導のテロ対策 です。
それは米国の環境に合っ た手法であり、すべての国にそ のまま適合するわけではありません」 「日本はセキュリティを担当する専門機関の設置を 検討すべきです。
米国はセキュリティに関する組織 をDHS(国土安全保障省)に統合し、CBPを傘 下に置きました。
欧州は欧州委員会(EC)が統括 しています。
他国との交渉を有利にしていくために は、日本でもセキュリティ対策を専門的に進めるこ とが必要だと思います」 ──通関手続の簡素化については。
「どんどん進めるべきです。
手続を簡素化したか らといってセキュリティが確保できなくなるわけで はありません。
例えば欧米には輸出貨物を保税地域 で申告しなければならないとする制度はありません。
どこででも申告して許可が受けられる。
輸入も同様 です。
ところが日本はAEO制度で特定輸出者とし て認められた会社だけしかそれが認められない。
つ まり、輸出貨物はいったん保税地域に搬入しない限 り輸出申告ができないという規制が維持されている。
違反防止のためには、税関の監視機能を水際だけで なく内陸地点へも広げて強化し、違反者には厳しい 罰則を課せばよいはずです。
もっと国益を考え、国 際競争力の強化に向けて動いていく必要があります」 ──保税地域が集中する港頭地区には輸出入貨物 が集中し、交通渋滞が深刻になっています。
「港頭地区の交通渋滞は、リードタイム短縮の障 害となり、コスト増の要因になっています。
保税搬 入の原則を変更し、内陸通関のためのインフラ、具 体的にはインランドポート(内陸港湾)の設置、港 頭CY(コンテナヤード)と内陸とを結ぶ鉄道など の定時大量輸送手段の整備などを進めれば、大きな 効果が期待できます。
政府の取り組みの中にはいま、 そのための芽がみられます。
これを進めていってほ しいと考えています」 ひらた・よしあき 日本通運国際輸送事業部長、米国日本通運 副社長などを経て独立。
在米一六年。
朝日大学経営学部講師、港 湾カレッジ横浜校講師。
著書に「 21 世紀の国際物流」(文真堂・ 共著)などがある。
その他国際輸送とロジスティクス関連論文、 研究報告書多数。
ダ、豪州や中国、韓国などのアジア各国と協議・研究 を続けている。
ただし、荷主企業だけ、あるいは物 流企業だけがAEOの認証を取得してもそのメリット は限定的だ。
検査率の軽減などで扱いが違ってくる。
このため、メーカーはサプライヤーや物流業者にA EOの認証取得を求めるようになることが想定され る。
米国でC─TPATティア2を取得し、日本では 初のAEO倉庫業者となった日本通運の武井乙哉海 運事業部課長(CSR) は「許可手数料の減免など 制度上のベネフィットもあるが、顧客のニーズに対応 するため、コンプライアンス・プログラムの高度化、セ キュリティの強化に取り組んだ」と語る。
また三井物産は営業本部の物流本部から物流に関 わるコンプライアンス統括機能を切り離し、既に管理 組織にあった安全保障貿易管理機能を合わせ、本社 の管理部門として「ロジスティクスマネジメント部」を 新設。
海外にも計七人の日本人駐在員を配置し、関 連会社も含めた全社の物流コンプライアンスをグロー バルに統括している。
C─TPAT、日本のAEO輸 出者・輸入者の認証も取得した。
欧州でのAEO認 証取得についても取り組みを進めている。
ロジスティクスマネジメント部の橋本茂部長は「商 社の中では、物流に関わるコンプライアンス機能を集 約したのは当社が初めてではないか。
また、グローバ ルにここまでの体制を整備しているのは当社だけだと 認識している。
コンプライアンスのレベルを上げ、セ キュリティに関する規則・制度に対応していることは 将来的に?攻め?のツールになり得る」と語る。
サプライチェーンに穴があればスムーズな輸出入は 難しくなる。
AEO事業者だけでサプライチェーンを 形成する動きが出てくるのは必至。
対応の遅れた会社 はサプライチェーンから弾き出されることになる。
