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2009年2月号
SOLE

ロジスティクスと管理会計数値に出ない貢献領域を把握する

FEBRUARY 2009  88 SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics 別されている。
 見方を変えると、財務会計 ( Financial Report)は「外向きの 会計」、管理会計( Management Information)は「内向きの会計」と いえる。
 それぞれの役割を具体的に捉える と、財務会計の役割は会計基準や関 連法規に従う外部報告である。
一方、 管理会計の役割は内部報告であり、 経営層が自社の業績評価・経営状 況を的確に理解するとともに、経営 戦略の立案や経営計画の策定等の意 思決定を行うことを目的としており、 数字で示された重要な情報を盛り込 んだ会計である。
必ずしも会計基準 や関連法規に従わなくてもよいこと に留意しておこう。
 冒頭述べたロジスティクスの時代 の流れの大きな変化の中では、経営 戦略、経営計画に関して俊敏な活動 が重要であり、必然的に管理会計も 発展してきた。
中小企業の特性持つ3M  ロジスティクスの大きな変化は、 企業経営活動としては全社的なSC Mという形へ発展してきている。
M. C.スコット著「バリュー・ドライ バー(企業価値創造の戦略)」の序 文には「いつからとは言えないが、 会社には二つの流れの活動があった。
一つは価値を創造する活動で、もう 一つは無駄なコストを無くする活動 である。
八〇年代後半まで、西ヨー ロッパ諸国とアメリカの企業の大多 数が、この二つの活動を識別してい たとする記録はほとんど無いと言っ てよい。
確固たる部門制組織、ゆ るぎない強固なミドルマネジメント でがっちり固められた階層制、もと もと欠けている顧客を重視すること、 それに時代遅れの生産、流通、さら には外注形態、こうした組み合わせ のすべてが非能率を示す以外の何物 でもなかった。
規模の大きさは経営 を保証するという考え方が信条とな っていた」とある。
「規模の大きさ が経営を保証する」は時代に合わな くなり、SCMが重視される時代と なった。
 SCMの真の狙いを簡潔に述べ ると、「顧客満足度」ならびに「R OA(総資産利益率)」の向上であ る。
そのために、?サプライチェー ン全体の在庫削減、?リードタイム の削減、?ローコストオペレーショ ン、を進めていく。
具体的な手段と しては、ITの活用による、購買情 報(POS)と生産情報、在庫情報 の共有化が重要である。
 目標達成のためには、サプライ チェーンの枠組みの構築が肝になる。
その要点は図1のとおり。
「サプラ ロジスティクスと管理会計 数値に出ない貢献領域を把握する  十二月度のフォーラムでは、H AHソリューションの福田誠代表に 「ロジスティクスと管理会計」をテー マにご講演いただいた。
副題は「ロ ジスティクスが経営活動に貢献する 領域として」。
管理会計と財務会計 の基本から、経営活動の評価基準、 評価方法の解説と、ロジスティクス 業務の貢献領域のかかわり合いに焦 点を当て、福田代表の住友スリーエ ム(3M)社時代の経験、研究成果 を含めて解説いただいた。
(SOL E日本支部・瀬良光弘幹事) 管理会計が迅速な活動を支援 ロジスティクスの時代の流れを大 きく捉えると、少品種大量生産・ 大量消費の時代から多品種少量生 産・多頻度出荷の時代へと大きく変 化してきた。
少品種大量生産・大 量消費の時代はいかに安く、大量に 生産するか、大量に生産された製品 をいかに効率良く消費地に配送する か、の?Manufacturing Oriented?、 ?Physical Distribution?の時代で あった。
 その後は社会の多様化、多様な需 要の開発から、多品種少量生産・ 多頻度出荷が求められる時代に移行 した。
情報処理技術が発達し、情 報系の活用が盛んになり、生産計 画機能を包括した領域:サプライチ ェーン・マネジメント(SCM)が 発展。
生産から消費者:顧客へは、 ?Customer Oriented?、?Logistics? の時代となった。
 この変化の中での会計の役割を みてみよう。
会計には財務会計 と管理会計という二つの領域があ る。
財務会計は年次決算報告のよ うに外部報告が主であり、必須で ある。
管理会計は事業・業務評価 会計、意思決定会計と内部報告 である。
我が国では財務会計、管 理会計と区分が明確であるが、米 国では?Financial Report?と、 ?Management Information?とに区 89  FEBRUARY 2009 価、ならびに事業部による経営活動 :意思決定の枠組みの構築が重要で あることを物語っている。
これには 管理会計の発展が、重要な役割を担 っている。
ABCで多角的にコスト管理  サプライチェーン・プロセスを成 功裡に導くために、ロジスティク スが貢献できる領域は、?サービ ス、?コスト、?キャピタル、であ る。
貢献度評価の一つに、売上高 物流費率(売上高に占める物流費の 割合)という指標がある。
 物流費とは、製品を顧客に届ける ための荷造り、運搬、保管等のコス トとするのが妥当である。
しかしな がら、八〇年代の米国の多くの企業 は費用を総勘定元帳の一項目として くくる方法をとっていた。
これに対 して、費用分析を精緻に行っている 企業は非常に少数だったが、3Mは 費用集計・費用分析システムを導入 し費用分析を精密に行っていた。
 以前、欧米型企業と日本型企業 のコスト管理にみる管理会計の違 いを調査比較したことがある。
特 徴としては、欧米型は?Cost Management?、日本型は?Kaizen Costing?ということが挙げられる。
 ロジスティクス分析に焦点を当て よう。
ロジスティクスコストは間接 イチェーン・プロセス」を中心とし、 「業務執行戦略」、「目標およびベン チマーク」、「情報システム/ソフト ウェア」、「生販統合計画」の確固た る枠組みを構築する。
 構築に当たる際の姿勢について、 サカタウェアハウスの「ロジスティ クス・レビュー」第一五八号「事業 システムとSCM〜グローバル環境 におけるSCM戦略の方向性〜(前 編)」からの抜粋を紹介する。
「元々 SCMというのは、日本の場合、物 流の概念から発展してきたという経 緯があるので、つい物理的なモノや 作業にこだわる傾向があると思いま という姿勢が大切だと思うのです」  この「﹃あるべき姿﹄を懸命に﹃創 造してみる﹄」で図1を今一度参照願 いたい。
図1の中のサプライチェー ン・プロセスを成功裡に導くために 大切な業務執行戦略、生販統合計 画遂行の背景を、米国産業界から注 目された3M社を事例に紹介する。
 六〇年代の産業界では、重厚長 大・少品種大量生産から軽薄短 小・多品種少量生産への移行が進ん だ。
マスプロダクション・パラダイ ムの終焉時代といえるが、3Mはそ れよりも以前から、イノベーション というテーマを一世紀にわたり追い かけてきた。
 3Mの特徴は「中小企業の連合体 組織」あるいは「中小企業の特性 と共生している大企業」といわれて いる。
全社ベースの経営目標・予算 決定および評価の仕組みの下に、事 業部単位の経営小委員会(議長は事 業部長)を中心とした事業部による 経営活動を行っている。
さらに、事 業部にとらわれない価値創造活動に 職務時間の一五%を使ってよい、と いう「 15 %ルール」があり、これが 事業部による経営活動の活性化につ ながっている。
 3Mの例は、サプライチェーン・ プロセスを成功裡に導くには全社ベ ースの経営目標・予算決定および評 す。
もちろん﹃モノにこだわる﹄と いうことは非常に良いことであり、 日本の製造業の強みにも挙げられて います。
しかし、そのことのデメリ ットもあるのではないか。
今あるモ ノ、今ある作業を超えて、事業の価 値や収益力の高い仕事の仕組みを根 本から考え直してみるには、﹃目指 したいわが社の事業の方向性や価値﹄ とか、﹃それを実現して尚且つ、収 益力のある事業の仕組み﹄を創造し、 デザインしてみるというセンスが求 められるのではないでしょうか。
そ れには、簡単には見えないが﹃ある べき姿﹄を懸命に﹃創造してみる﹄ 図1 SCM の目標達成には、サプライチェーンの枠組みの 構築が重要 業務執行戦略 ●事業価値創造 ●強さへの集中(コアコンピタンス) ●調達の決定(生産か、購入か) ●合理化 目標およびベンチマーク ●サイクルタイム ●品質 ●顧客満足度 ●コスト サプライチェーン・プロセス 調 達生 産顧客注文遂行販 売 PLAN 情報システム/ソフトウェア生販統合計画 意思決定/事業部長 出所:HAHソリューション FEBRUARY 2009  90 ジョンと戦略を四つの視点から、具 体的なアクション:戦略の立案、計 画・達成目標・評価指標の策定・ 実行を支援するとともに、実績管理、 すなわち業績管理とさらなる意思決 定につなげるということである(図 3)。
 四つの視点とは、?財務の視点 (過去)、?顧客の視点(外部)、? ビジネスプロセスの視点(内部)、? 改革と学習の視点(将来)である。
従来の財務的業績指標に偏った業績 管理の限界を打破し、広い範囲の評 (売上高利益率)」あるいは「いく ら使って、いくら売り上げているか (投下資本回転率)」から、「いくら 使って、いくらの利益を出すか(投 下資本利益率)」となり、「会計利益 からキャッシュへ、シフト」である。
 これらの企業活動評価基準の計算 式を記述しても複雑になるばかりな ので割愛するが、EVAと評価基準 におけるロジスティクスコストのか かわり合いを分かり易く可視化した チャート(図2)がある。
 ロジスティクスの評価基準であ る顧客サービスレベル、輸送コスト、 倉庫コスト、ロット費用、情報シス テムコスト、在庫保有コストなどの 諸項目が、流動資産(在庫、売掛 金)および固定資産(機器/車両等、 土地/建物等〈自社物件〉、リース 物件)とともに、EVAの計算過 程の中でどのようにかかわり合うか の理解の一助にしてもらいたい。
こ れはロジスティクスコストの削減が、 企業収益の評価尺度にどのように貢 献できるかを、簡潔に分かり易く示 したものである。
BSCで経営活動を評価  企業の経営活動の評価方法はさら に発展し、今ではバランスト・スコ アカード(BSC)が普及してきて いる。
そのコンセプトは、企業のビ いった。
 ロジスティクスコストの多くは「販 売費および一般管理費、売上原価」 に入る。
このため、精緻な「費用集 計・費用分析システム」の導入が不 可欠となる。
会計利益からキャッシュへシフト  企業活動は「原材料購入からキャ ッシュインに至る」プロセスでもある。
原材料購入に始まり、製造、加工、 包装され、製品となり、出荷に基づ く顧客への納入により売上計上され、 口座入金に至る。
お金の動きで捉え ると、製造領域では買掛金に始まり、 棚卸資産となり、販売領域では売掛 金となり、キャシュになるまでのプ ロセスである。
 企業活動が生み出す企業収益の評 価尺度は「いくら利益を上げたのか」 だけではなく「どれだけの資金を投 入として、いくらの利益を上げたか」 という認識に変化してきた。
つまり サプライチェーンの真の狙いの項で 述べたROAであり、さらにEVA ( Economic Value Added:経済付 加価値。
税引後営業利益から資本 コストを差し引いたもの)が普及し てきている。
 このエコノミックプロフィットを 経営指標の中軸に置く背景は、「い くら売って、いくら利益があるか 費であり、期間原価という大きなく くりの中で会計処理されるケースが 多いため、部門費管理システムの確 立が重要である。
そのための原価計 算技法の一つに、ABC(活動基準 原価計算)がある。
 ABCの目的は、 ?間接費比率の管理とコスト配賦の 精緻化  ・配賦基準の合理化(操業度ベー スの配賦基準の廃止)  ・配賦フローの合理化(組織間配 賦の廃止) ?販売費および一般管理費の製品原 価への配賦  ・製品への配賦  ・顧客への配賦 ?多次元的原価集計  ・製品別  ・顧客別  ・販売チャネル別  ・地域別 である。
 ABCと原価計算基準の対比の視 点で考察すると、ABCが強調して いる点は製造間接費の製品別配賦の 適正化である。
そして、販売費およ び一般管理費の製品別・顧客別へ の賦課・配賦へと必然的に展開して 図2 EVA とロジスティクスのかかわり合い EVA 税引後営業利益 (NOPAT) 資本 コスト 売上 費用 流動資産 固定資産 = WACC − − × + 顧客サービスレベル 輸送コスト 倉庫コスト ロット費用 情報システムコスト 在庫 売掛金 機器/車両等 土地・建物等(自社物件) リース物件 在庫保有コスト 出典:D.M.Rambert,“ Measuring and Selling the Value of Logistics”, The International Joarnal of Logistics Management, Vol.11, #1,2000 出所:デロイト トーマツ コンサルティング 91  FEBRUARY 2009 価基準:顧客満足度や従業員のや る気など、評価の難しい無形資産の 価値の明確化を含め、財務的業績 評価指標と非財務的評価指標を併 用する。
これにより、企業の過去、 現在、将来に向けた活動が適正であ るかどうかを総合的に判断し、意思 決定につなげていく。
 つまり、四つの視点からの戦略に 基づき、部門や個人ごとの個別の実 施項目(CSF)/数値目標(KG I) /評価指標(KPI)を設定し、 PDCA(Plan-Do-Check-Act)サ イクルを回して評価することによっ て、社内のプロセス改善や個人のス キルアップを促し、企業革新を推進 するものである。
 重要な点は、四つの視点はそれぞ れ独立ではなく、各指標間の因果関 係に基づいて設定されなければなら ないことである。
それにより、短期 的利益と長期的利益、全社目標と 部門目標、株主、顧客、従業員な どの利害関係者(ステークホルダー) 間のバランスを取りながら、統一的 な戦略策定、戦略と整合性のある実 践、意思決定を目 指す。
 四つの視点の中 におけるロジステ ィクスの貢献の領 域:サービス、コ スト、キャピタル のかかわり合いと バランスト・スコ アカードの中での 位置付けを、図3 で理解してもらい たい。
管理会計の 発展とロジスティ クスの貢献領域の 連携を的確に捉え、 管理会計を理解し、 ロジスティクスの 改革に取り組むこ とが重要なのである。
前述した欧米 型企業と日本型企業の管理会計の違 いについての比較調査では、ある日 本の大手総合電機メーカーの業績評 価基準は事業利益(おそらく税引後 営業利益)から資本コストを差し引 いた、同メーカー版のEVAとフリ ーキャッシュフローの二つのみとし ていた。
 ただし、この二つの経営評価基準 を期末または半期ごとに関係者に提 示するだけでは、アジャイル(俊敏 な)経営は成り立たない。
それをフ ォローするシステムが存在し、会計 上でみれば、それがEVA、さらに BSCへと進化した管理会計が必要 である。
 繰り返しになるが、BSCには四 つの視点があり、かつそれらは各指 標間の因果関係に基づいて明確に設 定されなければならず、コンセプト が複雑だ。
しかし、指標実績の実際 の集計・評価を大きなくくりで簡潔 に捉え、そこから詳細を評価・分析 することが重要である。
 例えば、資本コストを含む総コス トを四半期ごとに集計・評価するこ ととし、項目として?製造原価(全 社)、?ロジスティクス関連コスト、 ?棚卸資産に関する資本コスト、? 売掛金に関する資本コスト、と大き く捉える。
そしてロジスティクス関 連コストが総合的な経営評価基準に どのようにかかわり、貢献するのか を明確にして、評価・分析、意思 決定・遂行していく。
 企業活動とは、明確な経営目標 を設定し、全社員が日常業務を通し て達成を目指すことである。
その成 果が「見える、理解できる」の頻度 を高めて社員に示し、目標達成の進 捗状況を理解できる仕組みが管理会 計である。
 ロジスティクス業務は生産活動や 販売活動と異なり、非数値的評価 の部分が多い。
このため、管理会計 の下に顧客満足度の向上、投下資 本の効率的な回収に貢献する部分を 意識した活動が重要である。
次回フォーラムのお知らせ  次回フォーラムは2月16日(月)「中小企業 にみる需要超変動に対する供給施策事例」ロ ジスティクス・ブレインの小林俊一代表の講演 を予定している。
このフォーラムは年間計画に 基づいて運営しているが、単月のみの参加も 可能。
1回の参加費は6,000円。
ご希望の方 は事務局(sole-j-offi ce@cpost.plala.or.jp) までお問い合わせください。
図3 バランスト・スコアカードのコンセプト。
4つの視点から 企業活動を総合的に判断し、意思決定につなげる 顧客の視点 サイクルタイム クオリティ サービス オンタイムの 製品出荷 不良率低下 顧客満足度 財務的視点 成 長 収益性 株主資本価値 税引前利益 売上高 営業利益 株主資本利益率 エコノミックプロフィット ビジネスプロセスの視点 サイクルタイム クオリティ サービス 受注から出荷までの時間短縮 サプライヤーの欠陥率 プロセス歩留ほか 変革と学習の視点 マーケット イノベーション 継続的改善 知的資産 発売3 年以内製品の 売上高30% 以上 従業員の能力向上等 ドメイン コア・コンピタンス バランスト・スコアカード (BSC) 出所:HAHソリューション

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